スーパーなどでコンソメを買う場合に、普通のコンソメと無添加のコンソメが並んでいたら、無添加のコンソメを手に取る人も多いのではないでしょうか。
無添加のコンソメは、普通のコンソメよりも身体に良さそうな印象を受けますが、実は、そこにはいろいろなカラクリが潜んでいます。そして、近い将来、無添加のコンソメが激減してしまうかもしれないのです!
この記事では、添加物が気になる人が無添加のコンソメについて知っておきたいことを解説するとともに、本当の意味で”無添加”である市販のコンソメをご紹介します。
目次
そもそも無添加のコンソメって何が無添加なの?
”無添加”と聞くと、なんとなく身体に良さそうなイメージがありますよね。
コンソメをはじめ、市販の調味料や加工食品のパッケージに「無添加」と書かれている製品をよく見かけますが、そもそも無添加とはいったい何が無添加なのでしょうか?
また、コンソメの場合は何が入っていない製品のことを無添加のコンソメと呼ぶのでしょうか。
一般的に”無添加”とは食品添加物が無添加ということ
無添加のコンソメとは、いったい何が入っていないのか?ということに対するヒントは、製品の原材料表示で探すことができます。
何が入っていないコンソメが無添加になるのかを探るために、無添加の製品と無添加でない製品の両方がラインアップされている、ネスレ日本の『マギーブイヨン』の原材料で比較してみましょう。
ちなみに、『マギーブイヨン』はブイヨンという商品名ですが、食品の分類的にはコンソメと同類の調味料です。
食塩、砂糖、デキストリン、牛脂、でん粉(小麦を含む)、粉末しょうゆ(大豆を含む)、シーズニングパウダー、配合調味料、たまねぎ、酵母エキス、にんにく/調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、クエン酸、香辛料抽出物、香料、酸化防止剤(ビタミンE)
食塩(国内製造)、シーズニングパウダー(デキストリン、ビーフエキス、トマトエキス、その他)、乳糖、砂糖、酵母エキスパウダー、粉末しょうゆ(大豆・小麦を含む)、オニオンエキスパウダー、牛脂、でん粉、香辛料、ガーリックパウダー
上の2商品の原材料を見比べてみると、『マギーブイヨン』の原材料は「/」で区切られていて、『マギーブイヨン 無添加』には「/」の区切りがないことがわかりますよね。
この「/」の記号が食品添加物を使っている目印になります。
食品表示法では、食品添加物を使っている食品は「/」の後ろに使用している添加物を書く決まりになっているため、原材料表示にこの「/」があるかないかで、食品添加物を使っているかどうかがわかります。
ですから、原材料表示を見ると、『マギーブイヨン 無添加』には食品添加物が入っていないということがわかりますよね。
「〇〇無添加」や「〇〇不使用」と書いてあることも
『マギーブイヨン 無添加』のように、商品名に「無添加」が付いている商品の他に、パッケージに「〇〇無添加」や「〇〇不使用」と書かれているコンソメもあります。
例えば、「保存料無添加」や「化学調味料不使用」などの表示がありますが、これらはその商品に特定の食品添加物が使われていないことを示しています。
コンソメによく見られるものは「化学調味料無添加」もしくは「化学調味料不使用」で、そのコンソメには化学調味料を使っていないことを強調しているパターンです
健康イメージの悪い「化学調味料」
「化学調味料」に明確な定義はなく、一般的に、糖やでん粉に発酵処理を施してうま味成分だけを抽出した食品添加物のことをいいます。原材料表示では、”調味料(アミノ酸等)”が化学調味料に該当します。
現在は「うま味調味料」という呼び方になってきていますが、一般的には、まだまだ「化学調味料」と呼ばれることが多いようです。
食品添加物の健康への影響については専門家のなかでも賛否両論があるものの、基本的には国が安全であると認めた成分です。
しかし、一般的には悪いイメージを持つ人も多く、特に保存料や化学調味料のイメージは悪いようですね。そのため、コンソメにも「化学調味料無添加」をうたった商品が多く存在します。
「酵母エキス」は無添加表示の落とし穴?!
食品添加物は、加工食品の製造過程で必要な成分や、品質や保存性を向上される目的で使用されます。厚生労働省が認めている食品添加物は、2021年1月時点で829品目です。
しかし、それ以外にも、食品添加物によく似た性質であるにもかかわらず、「食品」の扱いで使用されている成分が多くあります。
例えば、下の「無添加」のコンソメの原材料表示を見てみましょう。「/」で区切られた原材料は記載されていないので、食品添加物は無添加であることがわかりますね。
食塩(国内製造)、シーズニングパウダー(デキストリン、トマトエキス、酵母エキス、チキンエキス、その他)、砂糖、デキストリン、酵母エキス、昆布エキス、香辛料(ガーリックパウダー、ローレル、黒こしょう)、でん粉、米油、(一部に小麦・鶏肉を含む)
しかし、この原材料のなかには、食品添加物と極めて似たような性質でありながら、厚生労働省が認可した添加物には含まれていないために、「食品」として扱われている成分があります。それが、「酵母エキス」です。
酵母エキスは天然の酵母から人工的に抽出されたうま味成分で、化学調味料と同じ目的で使われています。同じような成分に「たん白加水分解物」があります。
食品添加物に準ずる「食品」も多々ある!
「酵母エキス」や「たんぱく加水分解物」は、名目上は食品添加物ではなく食品扱いですが、人工的な処理を加えて抽出しているという点では化学調味料と同じです。つまり、食品添加物に近い成分と言えますよね。
同様に、分類上は食品扱いですが食品添加物に似た成分もたくさんあります。
上の原材料だと、デキストリン、トマトエキスやチキンエキスなどの〇〇エキスなども、原料は天然の食品ですが人工的な処理を施して抽出されています。
これらの成分が身体に影響を与えるかどうかについては、食品添加物と同様に専門家の間でも意見が分かれています。しかし、食品添加物ではなくても、似たような性質の成分が多くあることを覚えておくとよいかもしれませんね。
近い将来「無添加」のコンソメ&ブイヨンが減るって本当?!
ここまで説明してきたように、食品添加物に含まれないけれども同じような性質を持つ成分と食品添加物では、これまで線引きが非常に曖昧でした。
しかし、食品表示のルール改正によって、今後はコンソメの「無添加」表示にも変化があるかもしれません。詳しく解説しましょう。
2022年3月に食品表示法が改正
これまで、食品添加物の「無添加」や「不使用」という表示に特に規制はなく、虚偽ではない限りメーカーや販売者側が比較的自由に「無添加」や「不使用」の表示を使うことが許されていました。
しかし、消費者の誤解や混乱を招く恐れがあると問題視する声も多くあったことを受けて、消費者庁は2022(令和4)年3月30日付で、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を新たに策定しました。
これにより、食品添加物の無添加・不使用の表示について、新たに10項目に分けた細かいルールが決められました。
今後「無添加」や「不使用」の表示が使えなくなる?!
新たなガイドラインでは、「同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示」についても言及されています。その一例として以下のような事例があげられています。
原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示(することを禁止する)
「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」 類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
つまり、化学調味料が含まれていなくても、酵母エキスやたん白加水分解物のように、天然の食品からうま味成分(アミノ酸)を抽出した成分を使用していれば、「無添加」や「不使用」の表示が難しくなることが考えられます。
実際には、細かい条件が設定されているので、その条件にどの程度当てはまるかどうかで、「無添加」や「不使用」の文字を表示できるかが決まるようです。
無添加のコンソメが激減するかも!
2022年8月時点で、「無添加」・「化学調味料無添加」・「化学調味料不使用」と書いてあるコンソメでも、ほとんどの製品に酵母エキスやたん白加水分解物が使用されています。
ネスレ日本 『マギー コンソメ無添加』
シマヤ 『無添加コンソメ(顆粒)』
ユウキ食品 『マコーミック 化学調味料無添加コンソメ』
成城石井 『化学調味料不使用 野菜ブイヨン』
オーサワジャパン 『オーサワの野菜ブイヨン』
茅乃舎 『野菜だし 化学調味料保存料無添加』
パルシステム(生協)『国産ビーフのコンソメ(顆粒)』
この新たなルールに移行するために、2024(令和6)年3月末まで約2年間の猶予期間が設けられています。
ですから、2024年の春には「無添加」や「化学調味料不使用」のコンソメが事実上激減してしまうことも十分に考えられますね。
パッケージではなく原材料表示を確認することが大切!
現行の食品表示法では、「添加物無添加」の表示に関する規制はなかったため、パッケージに”化学調味料無添加”などと書かれていても、実際には酵母エキスやたん白加水分解物が使用されているコンソメもたくさんあります。
今後はルール改正により、「無添加」と表示されたコンソメが減ることも考えられます。
ですから、食品添加物や食品添加物に準ずる食品が使われているかどうかを知るには、パッケージではなく必ず原材料表示で確認するようにしましょう。
化学調味料不使用!酵母エキスなし!正真正銘の無添加のコンソメ3選
食品添加物無添加、特に、化学調味料無添加のコンソメにこだわりたいのであれば、食品添加物と似たような材料も避けたいところですよね。
そこで、無添加にこだわりたい人のために、化学調味料も酵母エキスも使われていない、正真正銘の無添加コンソメをご紹介しましょう。
国産鶏と国産有機野菜使用!光食品 『チキンコンソメ』
光食品は、国産原料や有機原料を使い、素材そのものの味を生かした食品づくりを行っているメーカーです。食品添加物は一切使用せずに、調味料などの加工食品を作っています。
光食品の『チキンコンソメは』、飼料にもこだわって育てた国産の鶏ガラと有機野菜を原料とした液体タイプのコンソメです。
化学調味料などの食品添加物だけでなく、酵母エキスやたんぱく加水分解物なども使用していません。
また、1年以上熟成させた有機丸大豆醬油、国産粗糖、沖縄の海塩など、使用している調味料にもこだわっていることが特徴です。
とりがらスープ(鶏骨(国産)、食塩)、食塩、有機醤油(大豆・小麦を含む)、砂糖、有機たまねぎ、有機にんじん、有機キャベツ、有機セルリー、香辛料
減塩食や離乳食にもおすすめ!前田屋 『無添加チキンコンソメ』
前田屋の『無添加チキンコンソメだし』は、「株式会社前田家」が展開するオリジナルブランド「Rich life(リッチライフ)」の商品のひとつ。
国産原料、食品添加物不使用など10個の厳しい独自基準に基づいて製造されています。
食品添加物はもちろん、酵母エキスやたん白加水分解物も使用せず、長州鶏や国産野菜を原料とした洋風だしです。
本来は、コンソメとは野菜や肉から取ったブイヨンに塩などで味付けをしたスープの素のこと。
前田屋の『無添加チキンコンソメ』は食塩などで味付けをしていないので、厳密に言えばコンソメではなくブイヨン(洋風だし)の部類に入りますね。塩分不使用の洋風だしなので、減塩をしたい人や離乳食にもおすすめです。
鶏肉(国産)、玉ねぎ(国産)、キャベツ(国産)、人参(国産)、セロリ(国産)、おから(国産)、(一部に鶏肉・大豆を含む)
イタリアのオーガニック食材使用!アルチェネロ 『有機野菜ブイヨン』
アルチェネロはイタリアの有機農業の農業協同組合で、有機農法で栽培し収穫した農作物を原料とした食品添加物無添加の食品を製造販売しています。
『有機野菜ブイヨン』は、動物由来のだしは使わずに有機野菜のみでだしを取ったブイヨンをベースに、有機砂糖や有機ハーブなどで味付けをした野菜本来の風味を味わえるスープの素です。
日本の「有機JAS認証」と「EUオーガニック認証」を取得しているコンソメです。もちろん、食品添加物だけでなく酵母エキスやたん白加水分解物も使用していません。
食塩、有機乾燥ポテトフレーク、有機とうもろこし粉、有機乾燥野菜(たまねぎ、にんじん)、有機砂糖、有機ウコン、有機セロリ、有機ナツメグ、有機バジル、有機パセリ、有機トマト
まとめ:無添加コンソメは今後の動向に注意!原材料を確認して購入しよう!
無添加のコンソメというと、一般的には食品添加物の化学調味料(うま味調味料)を使用していないコンソメのことを指します。
しかし、実際には、酵母エキスやたん白加水分解物のような化学調味料に極めて似ている成分を使っているコンソメもたくさんあります。
食品表示法のルール改定により、今後は”無添加”と表示されたコンソメが激減する可能性もありますが、表記だけに惑わされずに、原材料を確認して選ぶようにしましょう。
また、ルール改定を受けたメーカー側が新たな無添加コンソメを発売する可能性も十分にあり得るので、今後の動向を見守りたいですね。