和食のレシピを見ていると、多くの料理に使われているみりん。
身近な調味料のようだけど、みりんがどのような役割をしているのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、みりんの持つ効果や役割に注目し、料理においてどのような役割をするのか、また、健康効果や美容効果があるのかどうかについて、詳しくご紹介していきます。
みりんはこんなにすごかった!8個の調理効果をご紹介!
みりんとは、もち米と焼酎などのアルコールと米麹を混ぜて熟成させた調味料のこと。日本酒と同じくらいのアルコールを含んでいて、熟成中にもち米のでんぷんが糖に変わります。
言うならば、甘い料理酒といったところでしょうか。事実、江戸時代には、高価な砂糖の代わりとして庶民の間で重宝されていたそうです。
和食においても、みりんは主に甘い味を付けるために使いますが、料理におけるみりんの効果はそれだけではなく、実にたくさんの役割があるのです!
みりんが持つ多くの調理効果をご紹介しますね。
みりんの調理効果その1:まろやかで上品な甘みを付ける
調理において、みりんは主に甘い味付けのために利用されますが、実際に、みりんには約45%の糖類が含まれています。
みりんの糖分の約8~9割はブドウ糖(グルコース)で、それ以外にも麦芽糖や多種のオリゴ糖などが含まれていることが特徴です。
糖は種類によって甘さの特徴が変わります。みりんの糖分の大部分を占めるブドウ糖は、甘さの度合が砂糖の6~7割程度なので上品で優しい甘さです。
また、イソマルトオリゴ糖というオリゴ糖は、塩角(塩のとがった味)を取って味をまろやかにする効果があります。
みりんにはブドウ糖を主体にたくさんの種類の糖類が含まれているので、料理に使うとまろやかで上品な甘さを付けることができるのです。
みりんの調理効果その2:豊かなうま味を生み出す!
みりん(本みりん)は、蒸したもち米に米麹と焼酎などのアルコールを加え、熟成させて製造します。
熟成の過程で、もち米に含まれているたんぱく質からアミノ酸が作り出されますが、その中にうま味成分の一種であるグルタミン酸やアスパラギン酸がたくさん含まれています。
100gのみりんに含まれているうま味成分は約360mg。量にすると、マグロやアジ、さらにはしらす干しなどの魚類と同程度か、むしろ多いくらいです。
いかに、みりんにうま味成分がたくさん含まれているかがわかりますよね。
調理方法によってうま味がさらにアップ!
みりんのうま味成分のなかでも特に多い成分がグルタミン酸です。
グルタミン酸は昆布に大量に含まれているうま味成分で、鰹節に多く含まれているイノシン酸や、干しシイタケに多く含まれているグアニル酸と合わさると、相乗効果でうま味が倍増することが知られています。
ですから、かつおだし、いりこ(煮干し)だしや、干しシイタケの戻し汁といっしょに調理すると、うま味が大幅にアップして、吸い物や煮物がさらにおいしくなります。おすすめですよ。
みりんの調理効果その3:料理に深いコクを出す
料理にコクを出す、コクのある味、とよく言いますよね。
コクは料理のおいしさに欠かせないものですが、味の複雑さや厚み、まろやかさ、芳醇な香り、味の広がりなどが生み出す味といわれています。
みりんには、ブドウ糖やオリゴ糖などによるまろやかな甘み、有機酸(乳酸、クエン酸など)の酸味、アミノ酸のうま味が含まれています。
これらの味に熟成によって生まれる芳醇な香りが複雑に絡み合って、料理にコクを与えます。
さらに、みりんを加熱すると、みりんに含まれる糖とアミノ酸がメイラード反応と呼ばれる化学変化を起こします。
すると、料理にコクを与える成分や香ばしさや甘い香りなどが増え、さらに深いコクを生み出すのです。
みりんの調理効果その4:味を染み込みやすくする
みりんには、食材に味を染み込みやすくするという特徴があります。これは、みりんに含まれるアルコールの効果によるものです。
アルコールは分子が小さく食材に染み込みやすいため、アルコールが含まれているみりんは砂糖よりも早く食材に染み込むという性質があります。
また、アルコールには、周囲に存在している糖分、うま味成分、塩分、酸といった調味成分を取り込んで、いっしょに食材に染み込むこともみりんの大きな特徴のひとつです。
そのため、料理にみりんを使うと味が食材に染み込みやすくなるだけでなく、味が均一に染み込んで仕上がりがおいしくなるというメリットがあります。
みりんの調理効果その5:野菜の煮崩れを防ぐ
いも類やかぼちゃなど、でんぷん質の多い野菜は煮崩れしやすいですよね。
これは、でんぷんが水を吸って膨らんではがれやすくなっている上に、ペクチンという細胞同士を繋ぎとめる役割をしている糖が熱で分解されやすくなってしまうためです。
アルコールや糖には、ペクチンの分解を防いでいも類やかぼちゃなどの煮崩れを防ぐ効果があり、さらにアルコールと糖の両方が合わさった方が、煮崩れを防ぐ効果が高いこともわかっています。
みりんはアルコールと糖の両方が含まれているだけでなく、ペクチンが最も分解されにくい弱酸性の調味料なので、みりんを入れるといもやかぼちゃが煮崩れしにくくなるのです。
みりんの調理効果その6:料理に”照り”や”ツヤ”や焼き色を付ける
魚や鶏の照り焼きにみりんは欠かせませんよね。これは、みりんに含まれる糖の力によるものです。
加熱されてアメ状になった糖が料理の表面を覆うことで照りが生まれます。また、煮物にみりんを入れると表面にツヤが出て、仕上がりがきれいになります。
砂糖を使っても照りやツヤを出すことはできますが、複数の糖を使った方が照り・ツヤが出やすくなるといわれています。
みりんには8種類以上の糖が含まれているので、砂糖を使うよりもきれいな照りやツヤが出やすくなります。
また、みりんに含まれる糖とアミン酸には、加熱によって化学反応を起こして褐色に変化する性質もあります。みりんはこんがりとおいしそうな焼き色を付けることにも関わっているのですね。
みりんの調理効果その7:下味によって魚の煮崩れやうま味の流出を防ぐ
魚は加熱すると身が崩れやすくなりますよね。特に、煮物にすると身がボロボロに崩れてしまうこともあります。
これは、魚の筋肉繊維のたんぱく質が加熱によって固まって収縮し、崩壊してしまうために起こります。
みりんには、加熱による魚の筋繊維の崩壊を防いで、煮崩れしにくくする効果があります。
みりんに含まれるアルコールは分子が小さく食材に染み込みやすいという特徴があるので、みりんを下味に使用してみりんの成分を魚に染み込ませるとさらに効果的です。
また、みりんには肉や魚のエキスの流出を抑える効果もあるため、下味に利用すると一石二鳥ですよね。
さらに、肉の下味にみりんを加えると、肉の保水効果を高めて肉を柔らかくする効果も期待できます。
みりんの調理効果その8:食材や料理の臭みを消して風味を良くする
みりんには、魚や肉の生臭みなどの食材の不快な匂いを取り除く効果があります。
しかも、アルコールによる消臭と、みりんに含まれる糖やアミノ酸などが引き起こす化学反応による消臭と、ダブルの消臭効果が働くので高い効果が期待できますよね。
アルコールによる消臭効果は、食材に染み込みやすい性質と、加熱によって蒸発しやすい性質を利用したもの。
食材に染み込んだアルコールは、蒸発する際に臭みのもととなる成分もいっしょに連れて行ってくれる性質があります。
化学反応による消臭は、主に糖とアミノ酸によるもの。糖とアミノ酸が化学反応を起こすことで、消臭だけではなく食欲をそそる好ましい香りを付ける効果まであるのです。
その他にもさまざまな調理効果が!
みりんが料理にもたらす効果として、主要なポイントを8個ご紹介しました。
しかし、みりんにはこれ以外にも、脂質の酸化を抑える効果、でんぷんの老化を遅らせる効果、殺菌・防腐効果などさまざまな調理効果があることが報告されています。
また、みりんを調理に使うと、ひとつの効果だけでなく複数の効果が重なり合って、料理をよりおいしくすることに役立っています。
例えば、古い米や安い米などを炊く際にみりんを少し加えると、ツヤツヤでふっくらと炊きあがることが知られています。
これは、米の吸水が良くなること、古米臭や糠臭などの不快な臭いを取り除くこと、米の表面にツヤを出す効果など、さまざまなみりんの特性を利用した方法です。
みりんに健康効果や美容効果はある?飲むと身体に良いの?
現在は調味料として使われているみりんですが、戦国時代から「甘いお酒」として飲用されていたそうです。
江戸時代になると庶民にも広がり、夏には、滋養強壮と暑気払いの目的で、本みりんと焼酎を1:1で割った『本直し(柳陰)』というお酒が好んで飲まれていたようです。
昔は滋養強壮のために飲まれていたというみりんですが、果たして健康効果は期待できるのでしょうか?
本みりんの栄養成分
みりんにはどのような栄養素が含まれているのでしょうか。日本食品標準成分表2020年版(八訂)で調べてみました。
以下のグラフは、30~39歳の女性が1日に必要とされる栄養素の摂取目標量に対して、みりん100g中に含まれる栄養素がどれくらいの割合であるかを示しています。
上のグラフを見ると、もし1日に100g(約83ml)のみりんを飲んだとしても、1日の必要カロリーの1割程度を摂れるだけで、それ以外の栄養素はほぼ摂れないことがわかりますよね。
ましてや、1人分の料理に使うみりんの量はせいぜい10g程度なので、料理にみりんを使っても栄養はほとんど摂れないと考えてよいでしょう。
みりんに健康効果や美容効果はある?
みりん100g中に含まれているたんぱく質(アミノ酸)、ビタミン、ミネラルはほとんど含まれていないため、これらの栄養素による健康効果や美容効果はほぼないと言えます。
それ以外に、みりんの健康や美容への効果が期待できる要素として、以下の3つが考えられます。
オリゴ糖が腸内環境を整える
みりんには、少なくとも8種類以上の糖が含まれていて、その中にはオリゴ糖も含まれています。
オリゴ糖には、乳酸菌やビフィズス菌など腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える働きがあるため、便秘の解消や予防に効果が期待できます。
また、オリゴ糖は難消化性で胃や腸でほとんど消化吸収されずにそのまま大腸まで届くため、食べても太りにくい特徴もあります。
ただし、太らないからといってオリゴ糖を食べ過ぎると腹痛や下痢を引き起こすため注意が必要です。
GI値が低く血糖値が上がりにくい
GI(Glycemic Index)値とは食後の血糖値の上昇度を表す数値です。糖質を食べると体内でブドウ糖に分解され血液中に吸収されます。
血液中のブドウ糖の量を表した数値が血糖値です。食後に血糖値が急激に上がると、糖尿病や肥満のリスクが高まります。
GI値の高い食品は血糖値を急激に上げ、逆にGI値の低い食品は血糖値を緩やかに上昇させます。上白糖のGI値が109であるのに対し、みりんの血糖値はわずか15。
そのため、砂糖で甘さを付けるよりもみりんで甘さを付けた方が、糖尿病や肥満のリスクが低くなることが考えられます。
身体を温める作用がある
みりんは薬膳料理の調味料としてよく使われます。中医学(中国伝統医学)では、みりんの効能として血行を良くして身体を温める作用があるとされています。
中医学では冷えは万病の元と考えられているので、みりんで身体が温まると病気にかかりにくくなるというわけですね。
しかし、これはみりんの効果というよりは、みりんに含まれるアルコールの効果であると言えます。日本の「酒は百薬の長」ということわざも、中医学の考えから来ているそうです。
みりんを飲むと身体に良いの?悪いの?
結論から言うと、適量のみりんをそのまま飲んでも身体に特別悪いわけではないが、決して良いわけでもない。ということになります。
その理由は、糖質以外の栄養素がほとんど含まれていないことと、みりんに期待できる健康効果や美容効果は他の食品からでも十分に得られることのふたつです。
ですから、あえてみりんを飲むメリットは少ないと言えますよね。
試しに、みりんを飲んでみたいと思うならば、原材料をよく見て選ぶようにしましょう。
みりんは調味料として製造されているため、糖類などが添加されている商品もあります。おすすめは、原料が米、米麹、焼酎だけで、昔ながらの製法で作られている本みりんです。
まとめ:みりんは万能調味料!みりん効果でおいしい料理を作ろう!
みりんを知らない人はいないけど、みりんの効果はなかなかわかりづらいですよね。
しかし、みりんには、うま味やコクを加えたり、味を染み込みやすくしたりするなど、料理をおいしくする効果がたくさんあります。
味付けだけではなく、野菜や魚の煮崩れを防ぐ効果、料理に照りやツヤを与える効果など、料理をおいしく見せるためにも欠かせない調味料です。
みりんは、もともとは和食の調味料ですが、洋食や中華料理にもおすすめ。安価で使いやすい点もうれしいですよね。
今までみりんを使ってきた人も、あまり使ってこなかった人も、みりんをもっと活用して料理のレパートリーを増やしてみませんか。