みりん(本みりん)といえば和食に欠かせない調味料のひとつですよね。ほとんどの人は本みりんをスーパーで購入しているのではないでしょうか。
スーパーで購入した本みりんを使っても十分おいしい料理は作れるのですが、実は、スーパーで販売されているみりんよりもずっとおいしいみりんがあります。
それは、余計な原料が一切無添加の昔ながらの製法で造られている本みりんです。
この記事では、昔ながらの製法で造られている無添加の本みりんが、一般的な本みりんとどのように違うのか解説するとともに、おすすめの無添加の本みりんも合わせてご紹介します。
目次
昔ながらの無添加の本みりんとは?普通のみりんと何が違うの?
では、余計な原料が一切含まれていない昔ながらの製法で造る本みりんとは、いったいどのようなみりんなのでしょうか。
スーパーでよく見かけるペットボトルの本みりんと何が違うのでしょうか?
そもそもみりんって何?どういう調味料?
みりん(本みりん)とは、もち米、米麹、焼酎などのアルコールを原料とした甘みのある調味料です。
アルコール度数は14%前後なので、日本酒や料理酒と同じくらいですね。みりんには、糖分が約45%含まれているので甘い料理用の酒といったところでしょうか。
みりんは、主に和食の甘い味付けをしたり、料理に照りやツヤを出したりするために使用します。それ以外にもさまざまな効果を発揮して、和食などの料理をおいしくしてくれます。
本みりんの原料と基本的な製造方法
本みりんの原料は、主にもち米、米麹、アルコールの3つ。それ以外に水あめなどが入っている本みりんもあります。
米麹とは、蒸した米に麹菌を植え付けて繁殖させたもののことで、みりんの他には日本酒、焼酎、味噌、甘酒、塩麹などの発酵食品を作るために使われています。
日本酒や焼酎の場合は、麹(こうじ)で米を発酵させることでアルコールが造られます。
一方、本みりんは、蒸したもち米と米麹に焼酎などのアルコールを混ぜて、タンクで一定期間熟成させて造ります。
つまり、本みりんは日本酒と違い、アルコールを最初から混ぜて造っているのですね。米と米麹とアルコールを混ぜて熟成させることで、米のでんぷんが糖に変わるため甘い味になるのです。
みりん風調味料は本みりんとは違うの?
スーパーに行くと、本みりんの他に『みりん風調味料』というものが売っていますよね。みりん風調味料とは、みりんに似せて造られた調味料のことです。
本みりんと同じように甘い調味料ですが、いちばんの違いはみりん風調味料にはアルコールが含まれていないこと。酒税がかからないため、本みりんよりも安価で購入できることがメリットです。
みりん風調味料は、水あめ、料理酒などの醸造調味料、酸味料、うま味エキスなどを混ぜ合わせて製造されます。
本みりんは無添加ですが、みりん風調味料の多くは食品添加物が添加されています。
また、みりん風調味料は原料をブレンドするだけで本みりんのように熟成しないので、料理に甘みを付けることはできても、料理に深いコクを出したり、味を染み込みやすくしたりすることはできません。
本みりんにも2通りのタイプがある!
基本的に、もち米、米麹、焼酎やアルコールを混ぜて熟成させて造ったアルコール入りの調味料のことを本みりんと呼んでいます。
本みりんは原料や製造方法によって、さらに2通りのタイプに分けられます。
1.標準(工業的)製法の本みりん
ひとつは、工業的な製法で造られる標準製法と呼ばれる本みりんです。
もともとは、戦後の米不足の折に、少ないもち米で本みりんを製造するために開発された方法ですが、低コストで大量生産ができるため、現在では標準製法が主流になっています。
標準製法の本みりんの特徴は、本格焼酎のかわりに工業的に製造された醸造アルコールを使用していることと、水あめ、アミノ酸系の調味料、酸味料などを添加して味を調整していること。
また、原料の米も、外国産の安価な米が多く使用されています。
標準製法の本みりんは熟成期間が短く大量生産が可能なだけでなく、安価な原料で造られているため、低価格で購入できることが大きなメリットといえますね。
2.伝統製法による昔ながらの本みりん
もうひとつが、江戸時代から続く昔ながらの製法で造られている本みりんです。
原料は、もち米、米麹、本格焼酎のみ。それ以外の原料は一切無添加です。もちろん、水あめや醸造アルコールも入っていません。
伝統製法の本みりんの多くは、厳選された良質の国産原料を使います。焼酎も伝統製法で造る米焼酎がほとんどです。
伝統製法の大きな特徴は、長期間じっくりと熟成させること。
標準製法のみりんは仕込んでから40~60日熟成させると完成しますが、伝統製法の本みりんは60~90日熟成させた後、仕上がったみりんをさらに半年~3年程度タンクで熟成させます。
長期間の熟成により、甘みや旨味、コクや香りがさらに増し、味わい深い本みりんに仕上がります。
糖もアルコールも無添加の伝統製法の本みりんはここがすごい!
工場で大量生産される標準製法の本みりんに対し、伝統製法の本みりんは酒蔵で職人の手によって長い時間をかけて熟成される本みりんと言えますよね。
手間や時間がかかる上に厳選した原料が使用されているので、高級で価格も高めです。
しかし、伝統製法の本みりんには、標準製法の本みりんでは決して味わえないおいしさがあります。伝統製法で造られる本みりんのメリットをご紹介します。
1.天然の糖が造り出すまろやかな甘み
本みりんには約45%の糖質が含まれています。みりんのいちばんの目的は料理に甘みを付けることなので、甘みの質はとても大切ですよね。
標準製法の本みりんには天然の糖類の他に、水あめなど工業的に製造した糖類もたくさん含まれています。
一方、伝統製法の本みりんに含まれている糖は熟成中にもち米のでんぷんから分解されてできた天然の糖類だけ。
米のでんぷんを分解してできた8種類以上の天然の糖類が含まれています。そのため、伝統製法の本みりんは標準製法の本みりんよりも上質でまろやかな甘みを味わえます。
2.旨味が強くコクが深い
伝統製法の本みりんは、長ければ2~3年間も熟成して製造します。
長い熟成の間にもち米のでんぷんからたくさんの糖ができるだけでなく、もち米に含まれているたんぱく質もアミノ酸に分解されます。
分解されたアミノ酸には、うま味の素となる成分もたくさん含まれています。
長く熟成すればするほどうま味成分も増えていくので、伝統製法の本みりんには、熟成期間が短い標準製法の本みりんよりもはるかに多い量のうま味成分が含まれているのです。
そのため、伝統製法で造る本みりんは旨味が強く、深いコクがあります。
3.本格焼酎による豊かで芳醇な香り
標準製法の本みりんには、甲類焼酎などの工業的に製造された醸造アルコールを使用しています。
醸造アルコールはアルコールの純度が高く、クリアでクセのない味わいが特徴なので、醸造アルコールを使用した本みりんは香りも控えめです。
それに対し、本格焼酎(乙類焼酎)は、原料由来の芳醇な香りがあることが大きな特徴です。
伝統製法の本みりんは本格焼酎を使用しているので、本格焼酎の芳醇な香りがそのまま本みりんの香りとして残ります。
4.雑味が少なく飲んでも美味しい!
糖や醸造アルコールを添加した本みりんであっても、料理に使うとみりんの調理効果が十分に発揮されて、料理をおいしく造ることができます。
そのまま舐めたり飲んだりすることもできますが、決しておいしいものではありませんよね。
それに対し、昔ながらの伝統製法で造られている本みりんは、厳選された原料を使い、米麹もこだわって酒蔵独自のものが造られています。
そして、時間をかけてじっくりと熟成していくため、甘みの質や香りが良く、コクは深く、逆に雑味がほとんどありません。
伝統製法の本みりんはそのままでもおいしく飲めるので、炭酸水や果汁を加えてカクテルを作ったり、お菓子作りに利用したりすることもできます。
糖も醸造アルコールも無添加!おすすめの伝統製法の本みりん5選
原料がもち米、米麹、本格焼酎だけで、水あめなどの糖類と醸造アルコールが無添加の伝統製法の本みりんには、工業的に造られた標準的な本みりんよりもはるかに美味しいことがメリットです。
そして、日本酒や焼酎と同じように、酒蔵によって原料も製法も異なるため、銘柄によってまったく違う味わいがあります。
伝統製法で造られたこだわりの本みりんのなかから、特におすすめの商品を厳選してご紹介しましょう。
常に人気ランキング上位!角谷文治郎商店 『三州三河みりん』
醸造に適した水と温暖な気候に恵まれた愛知県東部の三河地方は、約250年前からみりん造りが盛んで、現在でもみりん製造業者数が全国一位を誇る地域です。
200年以上も続く伝統的な製法で造られる「三河みりん」は、その質の良さからプロの料理人たちの間でも定評があります。
三河みりんのなかでも特に人気の高い本みりんが、角谷文治郎商店の『三州三河みりん』です。
角谷文治郎商店の本みりんは、1910年(明治43年)の創業当時から、”米一升・みりん一升”がモットー。一升(1.8L)の本みりんを造るために、できる限り自然に近い形で栽培された良質なもち米を一升(1.5kg)使った贅沢な造りが特徴です。
角谷文治郎商店では、精米を自社で行い、仕込みに使用する焼酎も自家醸造というところからも、原料に対するこだわりが伝わってきますよね。
でき上がるまでに2年かかるという『三州三河みりん』は、上品でキレの良い甘さと良質の米の豊かなコクと旨味をたっぷりと感じられる味わいで、料理はもちろん、そのまま飲んでも美味しいと評判です。
有機認証を受けた純国産本みりん 『有機三州味醂』
角谷文治郎商店では、「日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)」の有機米加工酒類の認定を受けている本みりんも製造しています。
『有機三州味醂』は、自然の生態系を利用して特別に栽培された国産の有機米を原料とした本みりんです。
お米本来の甘さや豊かな香り、旨味やコクなどがさらに増した芳醇な深い味わいを楽しめます。
高評価!白扇酒造 『福来純「伝統製法」熟成本みりん』
「白扇酒造」は、岐阜県南部の川辺町にある酒蔵です。江戸時代後期からみりん造りを行っていて、その伝統的な製法を今も守り続けています。
『福来純「伝統製法」熟成本みりん』は、白扇酒造の看板商品で、Amazonや楽天などで常角谷文治郎商店の『三州三河みりん』とにランキングTOPを争う人気商品です。
江戸後期から伝わる昔ながらの伝統製法に従い、米麹は機械を使わずに昼夜手作業で育て、仕込みに90日、熟成に3年もの時間をかけて製造しています。
手間暇かけてでき上がった熟成本みりんは琥珀色で、上品で深みのある甘みとコクが特徴です。
このみりんを使うだけで料理がワンランクおいしくなるのはもちろん、お酒としてそのまま飲んでも、コクがあるのにスッキリとしたおいしさと評判で、ロックで飲んでいる人も多いようです。
少し良い日本酒と同程度の価格であるにもかかわらず、人気ランキング上位という事実が、おいしさを証明していますよね。
三河みりん元祖の酒蔵の看板商品!九重味淋 『本みりん 九重櫻』
「九重味醂」は1772年創業。創始者の石川八郎右衛門信敦が三河地方で初めてみりんの製造を手掛けたそうです。
その後、三河でみりんの製造が広まったとのことなので、九重味醂は三河みりんの先駆者と言えますよね。九重味醂では、250年前から伝承された伝統的な手法を守り続けています。
『本みりん 九重櫻』は、厳選された良質のもち米、二昼夜かけてじっくりと仕込んだ米麹、良質の原料で造った本格米焼酎を仕込み、2~3ヶ月熟成してできたみりんをさらに1年~1年半もの間じっくりと貯蔵熟成させます。
でき上がった本みりんを貯蔵熟成させる場所は、1706年建てられ、創業当初からずっと使い続けられている九重味醂の「大蔵」です。
温度変化の影響を受けにくい環境でじっくりと熟成されることで、深い味わいと芳醇な香りが生み出されます。
金沢の老舗酒蔵の本みりん!福光屋 『三年熟成 純米本味醂 福みりん』
「福光屋」は、1625年(寛永2年)創業で、金沢で最も歴史の長い老舗の酒蔵です。
百年もの時間をかけて作り出される白山山系の地下水と、土づくりからこだわった契約栽培米を使用して、上質な純米造りの日本酒を醸造しています。
400年続く伝統を守りつつも、時代とともに進化し続けてきた福光屋が手掛ける熟成本みりんが、 『三年熟成 純米本味醂 福みりん』です。
地元・石川県産のもち米と、酒の旨味を引き出す麹米造りに最適な「フクノハナ」、そして自家製の米焼酎を、日本酒造りで培ってきたノウハウを生かして仕込み、3年以上熟成させています。
こだわり抜いた原料を使用し、日本酒造りの伝統の技で仕上げた本みりんをさらに3年以上熟成させることで、まろやかで濃厚な甘み、深いコクと芳醇な香りが生み出されます。
豊かな味わいの『三年熟成 純米本味醂 福みりん』は、お酒として飲んだりアイスクリームにかけたりしてもおいしいと評判です。
300余年変わらぬ伝統製法! 馬場本店酒造 『最上白味醂』
千葉県佐倉市に蔵を構える「馬場本店酒造」は、江戸時代から続く老舗の酒蔵です。江戸時代から続く馬場本店酒造で代々受け継がれてきた教えは、”みりんの味は変えるな”ということ。
みりんの味が変わると料理の味も大きく変わる、料理の味が変わったら料理屋の致命傷にもなりかねない、という教えだそうです。
みりんの味を変えないために、 『最上白味醂』は江戸時代後期から伝承されてきた製法を貫き、変わらぬ味を守り続けています。
現在も昔ながらの和釜米を蒸し、天保年間に建てられた蔵で仕込みを行っているそうです。
『最上白味醂』、精米歩合の高い米を使用しています。日本酒で例えると吟醸酒のようなものですね。まろやかで自然な甘みと深いコク、そして、雑味が少なくスッキリとした味わいが特徴です。
『最上白味醂』はクセがなくスッキリとコクのある甘さなので、そのまま飲むとまるでデザートワインのような味わいを楽しめます。
まとめ:無添加の伝統製法の本みりんで料理がワンランクアップ!
市販されている本みりんの大半は、糖や醸造アルコールを加えて短期間で熟成させて大量生産をしたもの。安価で気軽に使用できるのがメリットですよね。
それに対し、昔ながらの伝統製法で造る本みりんは時間も手間もかかるため、調味料としては値段もかなりお高め。
しかし、もち米、米麹、本格焼酎のみで造られた昔ながらの本みりんは、甘さの質もコクも旨味も大量生産で造られる本みりんとは雲泥の差です。
料理に使うと味がワンランクアップすることは間違いなし!
リキュールのような味わいなので、お酒として飲むために購入する人も多いようです。使ったことがない人は、ぜひ一度試してみてくださいね。