パームが体に悪いって本当?体への悪影響や健康維持の方法を徹底解説
パーム油が体に悪いってよく聞くけど本当かな?どんな風に悪いんだろう?
そもそも、パーム油ってあんまり見ないよね?私たちに関係あるの?

パーム油は体に悪い!と聞いたことがありませんか?

健康に良くないらしいということは聞くけれど、パーム油がどのような油なのか良く知らないという人も多いのではないでしょうか。

実は、パーム油は私たちの食生活に切っても切れない油であり、そして、摂りすぎると体に悪い影響を及ぼす可能性がある油なのです。

パーム油とはどのような油で健康にどのような影響を及ぼすのか?そして、健康を害さないようにするにはどうすればよいのか、詳しく解説します。

体に悪いという噂のパーム油!見たことないけどどんな油なの?

体に悪いという噂のパーム油!見たことないけどどんな油なの?

パーム油は体に悪いというけれど、スーパーに売っているところを見たことはないですよね。もちろん、購入して家で使っている人もいないと思います。

では、パーム油とはどのような油なのでしょうか?そして、私たちの食生活にどのように関わっているのでしょうか?

そもそもパーム油ってどんな油なの?

パーム油は、「アブラヤシ」という植物の実から搾り取れる油のことです。アブラヤシの果実から取れる油を「パーム油」、種子から採れる油を「パーム核油」といいます。

ちなみに、「ヤシ油」と呼ばれる油はココナッツオイルのことで、パーム油とはまったく異なります。

パーム油は生産量、消費量ともに世界で最も多い油で、8割以上がマレーシアとインドネシアで生産されています。

パーム油のほとんどは食用として利用されていますが、それ以外に、石鹸や洗剤、口紅や塗料などにも利用されています。

パーム油は日本の食生活と切っても切れない関係

農林水産省が2022年8月に発効した「我が国と世界の油脂をめぐる動向」によると、2021年のパーム油の輸入量は約64万トンで、そのうちの約8割が食用として利用されているそうです。

単純計算で、1人あたり年間約4kgのパーム油が食用として利用されていることになります。

しかし、スーパーなどではパーム油は販売されていませんし、パーム油を家庭で使うことはほぼありませんよね。

それもそのはずで、パーム油は他の植物油に比べて価格が安く使い勝手が非常に良いために、そのほとんどが業務用として加工食品等に利用されているのです。

知らず知らずのうちに毎日口にしている!

農林水産省の2015年のデータでは、国内でパーム油の利用内訳は以下のようになっています。

農林水産省の2015年のデータでは、国内でパーム油の利用内訳は以下のようになっています。

マーガリン・ショートニングと加工食品で全体の約7割を占めていますよね。実に年間で約45万トンがマーガリンや加工食品などに使われていることになります。

一般家庭で食べているパーム油は主にマーガリンや加工食品に入っていますが、原材料表示に「パーム油」と表示されていることは少なく、「植物油」や「植物油脂」と表示されていることがほとんどです。

また、「ショートニング」や「マーガリン」と表示されている食品にもパーム油は使用されています。

パーム油が使われている加工食品の一例

加工食品:

インスタント麺、カレーやシチューのルー、冷凍食品、ホイップクリーム、ふりかけなど

お菓子・アイスクリーム:

チョコレート、アイスクリーム、クッキー、パン、ドーナツ、ケーキ、スナック菓子など

ファストフード:

フライドポテト、フライドチキンなど

食品に使われているパーム油は多種多様。加工食品の大半に使われていると言っても過言ではありません。

私たちは毎日知らず知らずのうちに多くのパーム油を口にしていることがわかりますよね。

発がん性のリスクがあるって本当?!

パーム油は、インドネシアやマレーシアなど現地で製油される際に、酸化防止剤としてBHA(ブチルヒドロキシアニソール)という添加物が使用されますが、このBHAに発がん性がある可能性があるかもしれないと言われています。

1983年に伊藤信行氏(現・京都大学薬学研究科名誉教授)らによって、ラットによる実験で発がん性が認められたことが発表されました。

しかし、その後の研究や議論を経て、世界的にはBHAの人への発がん性は考慮しなくてもよいという結論に落ち着いているようです。

一方、厚生労働省は、”弱いながらもラットに対し発がん性を示す”という理由から、パーム油とパーム核油以外ではBHAの食品添加物としての使用を認めていません

BHAの発がん性については、人には影響なさそうだけど、リスクも考慮した方がいい、というところでしょうか。

摂りすぎは危険!パーム油が体に悪いとされる理由とは?

摂りすぎは危険!パーム油が体に悪いとされる理由とは?

パーム油が体に悪いと言われている理由は発がん性のリスクがあることよりも、摂りすぎることで生活習慣病や動脈硬化などの原因になることにあります。

では、パーム油には健康に対してどのようなリスクがあるのでしょうか。

パーム油が体に悪いとされる理由は飽和脂肪酸にあり!

油脂は脂肪酸という成分がたくさん集まってできています。脂肪酸は種類によって性質や体への影響が大きく異なります。

脂肪酸は飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に大きく分けられます。一般的には飽和脂肪酸は常温では固体で動物性の油脂に多く含まれ、不飽和脂肪酸は常温で液体で植物性の油脂に多く含まれています。

パーム油が体に悪いとされる理由は飽和脂肪酸にあり!

パーム油の原料はアブラヤシという植物でパーム油も植物油の仲間です。

しかし、私たちがよく知っているキャノーラ油(菜種油)やオリーブ油などの植物油と大きく異なる点は、パーム油は常温で固体だということ。つまり、パーム油には飽和脂肪酸が多く含まれているのです。

パーム油が体に悪いとされる理由は飽和脂肪酸にあり!

キャノーラ油やオリーブ油と比較するとパーム油は飽和脂肪酸の量が多く、どちらかというとバターに近い組成の油だということがわかります。

パーム油が健康に良くないと言われている理由として、他の植物油に比べて飽和脂肪酸を多く含み、加工食品などに多く含まれているために摂取量が多くなりがちということが問題なのです。

飽和脂肪酸は健康にとって悪なの?

健康診断の血液検査の項目に、「中性脂肪」、「LDLコレステロール」、「HDLコレステロール」というものがありますよね。

これらの数値は血中脂質の量を示していて、数値は生活習慣病や動脈硬化の指標となります。

・中性脂肪:

主に体のエネルギー源となる。余ったものは脂肪として蓄えられる。血中に増えすぎるとLDLコレステロールを増やす。

・LDLコレステロール:

肝臓で作られたコレステロールを体の各組織に運ぶ働きがある。

・HDLコレステロール:

使われずに余ったコレステロールを回収して肝臓に戻す働きがある。

HDLコレステロールは、細胞膜やホルモンの材料になるなど体には欠かせない成分ですが、使い切れずに血中に増えすぎると動脈硬化などの原因となるため、「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

それに対し、HDLコレステロールは血中に余っているコレステロールを回収し、動脈硬化を抑制するため「善玉コレステロール」と呼ばれています。

飽和脂肪酸を摂りすぎるとLDLコレステロールを増やします。よく言う「血液ドロドロ」の状態ですね。その結果、動脈硬化が進行し健康に害を及ぼすリスクが高くなります。

がんに次ぐ死因!動脈硬化はこんなに怖い!

動脈硬化とは、血管が老化によって硬くなる現象のことです。加齢によっても血管は徐々に老化しますが、血中にLDLコレステロールが増えると動脈硬化はさらに進行します。

単に硬くなるだけでなく、狭くなることで血管に負担がかかり、血管がもろくなって傷付きやすくなります

LDLコレステロールが増えると血管の壁に蓄積して炎症を起こし血管の膜を傷付けます。すると、傷を修復しようとして血小板が集まってきて、そこに血栓を作ります。

そして、何かのはずみで血栓がはがれて流されると心臓や脳の血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気を引き起こしてしまうのです。

動脈硬化が原因の心血管疾患による死亡率は年々増え、5人に1人が動脈硬化に起因する病気で亡くなっています。

パーム油に注意が必要な理由とは?

パーム油は、他の植物油と比べると飽和脂肪酸の量が圧倒的に多いですが、肉類や乳製品などに多い動物性の脂質に比べると飽和脂肪酸はまだ少ない方ですよね。

しかも、LDLコレステロールを増やしにくくする働きがあるオレイン酸もたくさん含まれています。

それなのに、パーム油が健康に良くないと言われる理由は、その摂取量の多さにあります。

パーム油は多くの加工食品に使用されているため、気付かないうちにかなり多くの飽和脂肪酸を摂取している可能性があるからです。

その結果、血中のLDLコレステロールが増えて動脈硬化が進行するリスクが高くなってしまいます。

トランス脂肪酸より安全って嘘?

トランス脂肪酸とは、マーガリンやショートニングの製造時などに生成される脂肪酸の一種です。

大量に摂取すると心筋梗塞や心筋症などの冠動脈疾患のリスクを増やすため、WHO(世界保健機関)はトランス脂肪酸の摂取量を摂取エネルギーの1%未満にするように勧告しています。

それにより、油脂の摂取量の多い欧米では、トランス脂肪酸を制限している国も多くあります。

パーム油にはトランス脂肪酸が含まれていないことから、近年は欧米を中心にトランス脂肪酸入りの油脂の代替品として使われることが増えてきました。

しかし、摂りすぎると動脈硬化のリスクが高まることはトランス脂肪酸と同じです。

トランス脂肪酸が含まれていないから安全なのではなく、摂りすぎないようにすることが大切だと言えますよね。

パーム油とうまく付き合うには?体に悪いデメリットを減らす方法を伝授!

パーム油とうまく付き合うには?体に悪いデメリットを減らす方法を伝授!

パーム油は加工食品に多く使用されているので、加工食品を食べる頻度を減らすとパーム油の摂取量も必然的に下がってきます。

健康維持のためには、加工品を食べる頻度を減らすことが最も効果的ですが、なかなか難しいですよね。

そこで、パーム油の健康へのデメリットを減らすには、他の食べ物や生活習慣で補うことが大切になってきます。

飽和脂肪酸の摂取量を減らす

飽和脂肪酸は、パーム油の他に肉や乳製品などの動物性の食品に多く含まれています。ですから、普段の食生活で飽和脂肪酸の摂取量自体を減らす工夫をしてみましょう。

飽和脂肪酸の摂取量を減らす方法

・肉の量を減らし、魚の量を増やす

・肉は脂身の多い部位を減らし、牛肉や豚肉ならもも肉、鶏肉なら胸肉やささみなど脂身の少ない部位を増やす。肉の余分な脂身は取り除く。

・バターの代わりにオリーブ油やキャノーラ油などを使う。

・牛乳の代わりに豆乳を使う など

特に、青魚(サバ、ブリ、サンマ、イワシ、アジ、マグロなど)には、体に良いオメガ3の油がたくさん含まれています。普段の食生活に積極的に取り入れるようにしましょう。

豆類、緑黄色野菜、食物繊維をしっかりと摂る

健康を維持するためには、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂ることが大切です。

これらの栄養素をバランスよく摂るために、できるだけ多くの食材を使って料理をするようにしましょう。

また、中性脂肪は増えすぎるとLDLコレステロールを増やすことも分かっています。

栄養バランスのよい食事にプラスして、LDLコレステロールや中性脂肪を下げる効果が期待できる食材を積極に摂ることが大切です。

LDLコレステロールを下げる効果が期待できる食品には、次のようなものがあります。

大豆製品

大豆たんぱくにはLDLコレステロールを下げる効果があることが確認されています。

その他にも大豆サポニン、レシチンなど健康に良い多くの成分が含まれていて、LDLコレステロールや中性脂肪を減らす効果HLDコレステロールを増やす効果血栓をできにくくする効果などが期待されています。

また、大豆は良質なたんぱく質が豊富に含まれていることも大きなメリットです。豆腐、納豆、豆乳などの大豆製品を毎日しっかり食べるようにしましょう。

コレステロールを下げる効果が期待できる特定保健用食品(トクホ)の豆乳も販売されているので、うまく利用するとよいですね。

食物繊維や緑黄色野菜

食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がありますが、なかでも水溶性食物繊維には、コレステロールから作られる胆汁酸を便によって排泄して血中のコレステロールを下げる働きが期待できます。

また、不溶性植物繊維は血糖値の上昇を抑えて中性脂肪の蓄積を抑える効果が期待できます。

海藻、きのこ、ごぼうなどの野菜、米や小麦、芋類など食物繊維を多く含む食材をしっかりと食べるようにしましょう。

また、緑黄色野菜は食物繊維の他に抗酸化作用のあるビタミンが豊富に含まれているため、LDLコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を予防する効果も期待できます。

不飽和脂肪酸はバランスが大切

オメガ3、オメガ6、オメガ9などの不飽和脂肪酸には、LDLコレステロールを減らす効果やHDLコレステロールを増やす働きが期待できます。

しかし、その一方で、オメガ6の脂肪酸(大豆油、ごま油など)は摂りすぎると動脈硬化のリスクを増やす可能性があるので注意が必要です。

特に積極的に摂りたい油がオメガ3です。オメガ3には中性脂肪を減らす働きがある他、コレステロールも減らすのではないかと期待されています。

オメガ3が多い青魚やえごま油やアマニ油を毎日摂るようにしましょう。

パーム油のデメリットを補うには運動も欠かせない!

パーム油の摂りすぎによる動脈硬化のリスクを減らすためには、栄養バランスの良い食事やコレステロール・中性脂肪を下げる食生活をすると同時に、運動も重要なポイントとなります。

特に、有酸素運動はLDLコレステロールを減らしHDLコレステロールを増やす効果が期待できます。

有酸素運動とは、中等度の負荷(軽く息が切れる程度の負荷)を継続的にかける運動のことで、例えば、ウォーキング、水泳、ジョギング、サイクリング、エアロビクスなどがあります。

厚生労働省は、コレステロールや中性脂肪のコントロールに効果的な運動として、1日合計30分以上の中等度の有酸素運動を少なくとも週3回、できれば毎日行うことを推奨しています。

まとめ:パーム油の摂りすぎは体に悪い可能性大!加工食品には要注意!

パーム油は多くの加工食品やマーガリンなどに使われていて、他の植物油に比べて飽和脂肪酸がかなり多いことが特徴です。

飽和脂肪酸は摂りすぎるとLDLコレステロールを増加させ、動脈硬化のリスクを高めます。

飽和脂肪酸は肉や乳製品など動物性の脂にも多く含まれていますが、パーム油の場合多くの加工食品に使用されているため、過剰摂取になる心配があるため注意が必要です。

パーム油の過剰摂取は加工食品を食べる頻度を減らすことで防げますが、なかなか難しい一面もありますよね。

ですから、パーム油による体への悪影響をできるだけ防ぐには、他の食生活や運動習慣に気を配ることが大切です。いつまでも健康に過ごせるように、食生活や運動習慣を見直してみませんか?

おすすめの記事