肉や魚、乳製品、はちみつなどを食べないヴィーガン(ビーガン)の人たちは、バターの代替品として、豆乳と植物油脂を使った「ヴィーガンバター」と呼ばれるバターを作って食べています。
日本ではヴィーガンの人は少ないですが、SNSでもおいしい!と評判で、豆乳を使ってオリジナルのバターを作って愛用している人も多いようです。
豆乳を使って作る「ヴィーガンバター」とはどのようなバターなのでしょうか?材料や簡単な作り方についてご紹介します。
目次
豆乳で作るバター(ヴィーガンバター)ってどんなもの?
ヴィーガンの人たちがバター代わりに食べている「ヴィーガンバター」とはどのようなものなのでしょうか?豆乳を使ってどのように作るのでしょうか?
バターは生クリームを振るとできる!
バターの原料は牛乳(生乳)です。正しくは、牛乳を遠心分離機にかけてクリームと脱脂乳に分け、できたクリームだけを攪拌して作ります。
手作りバターを作るには、瓶やペットボトルに乳脂肪が40%前後の生クリームを入れてフタをし、上下に激しく振り続けると、やがて、だんだんとバターの固まりができてきます。では、豆乳ではどうでしょうか?
豆乳を振るとバターになるの?
クリームには40%前後の乳脂肪が含まれています。この乳脂肪は小さな粒子で薄い膜に包まれているので、激しく振ると乳脂肪を包んでいる膜が破れて中の脂肪分が出てきます。この乳脂肪分がバターです。
豆乳(無調整豆乳)には牛乳と同じくらいの脂肪分が含まれていますが、含まれているのは乳脂肪ではなく主にリノール酸という、常温で液体の不飽和脂肪酸です。
生クリームのように、豆乳から脂肪分を分離した豆乳クリームも売っていますが、豆乳や豆乳クリームをどれだけ振ってもバターのように固まることはありません。
豆乳を使った「ヴィーガンバター」とはどんなもの?
豆乳の脂質は乳脂肪のように自然に固まらないため、ヴィーガンバターは常温で固まるココナッツバターの性質を利用して固めます。
具体的には、溶かしたココナッツバターに豆乳を混ぜて、再度冷やして固めるという方法です。
牛乳ではなく植物性の豆乳から作っているので「ヴィーガンバター」という名前で呼ばれていますが、純粋においしい!とヴィーガンでない人たちでも好んで食べている人が多いようです。
豆乳バターを作るために必要な材料は6つだけ!
豆乳を使ったヴィーガンバターは、以下のような材料を使います。
「ヴィーガンバター」のベースとなるココナッツオイル
ココナッツオイルの融点は24℃。20℃くらいから溶け始め、25℃くらいになると完全に溶けてさらさらとした透明な液体になります。
20~25℃くらいの室温ではペースト状です。ヴィーガンバターはココナッツオイルのこの性質を利用して固めます。
ココナッツオイルには、ココナッツから絞っただけのバージンココナッツオイルと、精製したRBDココナッツオイルとがありますが、ヴィーガンバターには精製した無香のココナッツオイルがおすすめです。
バターの風味を決める豆乳
牛乳の代わりに使う材料が豆乳です。ヴィーガンバターの風味のベースとなる材料です。
豆乳には、大豆を蒸して搾ったままの無調整豆乳と、糖分や油分を入れて飲みやすい味にした調製豆乳とがありますが、ヴィーガンバターを作る場合は無調整豆乳を使う方法が一般的のようですね。
大豆の濃厚さやまろやかさを出すためには大豆固形分が多い豆乳がおすすめです。ヴィーガンにこだわらないのであれば、特濃タイプの調製豆乳でもよいでしょう。
豆乳は開封後は傷みやすいので、開封したての豆乳を使うようにしましょう。
豆乳に粘度を付ける酢
豆乳にはたんぱく質が含まれているため、酢を入れることでたんぱく質が凝固し、ヨーグルトのようなドロドロの状態になります。
豆乳に酸を入れて粘度を高めることで、豆乳と油脂が混ざりやすくします。また、pHを下げることで保存性も良くなります。
酢はどのようなものでもかまいませんが、米酢や穀物酢はカドのある酸味があるため、ヴィーガンバターにしたときに酸味や匂いが気になるかもしれません。
リンゴ酢、ワインビネガー、黒酢などのできるだけまろやかな酢がおすすめです。酢の代わりにレモン汁を使ってもよいでしょう。
味に深みを出す塩
ヴィーガンバターに味を付けるための調味料です。なくてもかまいませんが、塩を少し入れると味に深みが出ておいしくなります。また、塩分を加えることで保存性も良くなります。
塩は入れすぎると塩辛くなるので注意してください。乳製品のバターにも有塩バターと無塩バターがあり、一般的に有塩バターには1.5~1.6%程度の塩が加えられています。
豆乳でヴィーガンバターを作る場合も、塩は同じくらいの量がおすすめです。また、岩塩は溶けにくいので避けた方がよいでしょう。
コクを出すためのアーモンドプードル
アーモンドを粉末状にしたものです。アーモンドパウダー、アーモンド粉末などとも呼ばれます。
豆乳を使ったヴィーガンバターはアーモンドプードルがなくても作れます。
しかし、アーモンドプードルを入れるとアーモンドの風味や香ばしさが加わるだけではなく、ヴィーガンバターのコクを出す役割をするので、ぜひ入れたい食材ですね。
アーモンドの皮をむいて粉末状にしたものと、皮ごと粉末状にしたものがあり、どちらを使ってもかまいませんが、皮ごと粉末状にしたアーモンドプードルの方が香ばしさやコクが強くなります。
ミルク感を出す「ニュートリショナルイースト」
ニュートリショナルイーストとは、サトウキビなどの糖蜜で培養した酵母のこと。
あまり耳慣れない食材ですが、ビタミンB12などのビタミンB群や亜鉛など、菜食主義で不足しがちな栄養素を含むため、ヴィーガンではよく使われている食材です。
一般的に、酵母は食品を発酵させる目的で使いますが、ニュートリショナルイーストはチーズのような風味があることから、乳製品の代替品としても使われています。
豆乳を使ったヴィーガンバターを作るために必ずしも必要な食材ではありませんが、ミルキーな風味やコクが出るので、バターに近い風味に仕上げたいのならぜひ加えたい食材です。
誰でも簡単に作れる!豆乳ヴィーガンバターの作り方
材料さえそろえてしまえば、豆乳を使ったヴィーガンバターはとても簡単に作れます。今回は2通りの作り方をご紹介します。
ヴィーガン豆乳バターの基本のレシピ
最初に、豆乳を使ったヴィーガンバターの基本の作り方をご紹介します。
【材料】
ココナッツオイル 60g
アーモンドプードル 20g
豆乳 40g
ニュートリショナルイースト 1.5g
塩 1.5~2g
酢 2.5g
オリーブオイルなどの植物油 15g
【作り方】
1.ココナッツオイルは湯煎で溶かしておく。
2.ボウルに豆乳と酢を入れてヘラなどでよく混ぜておく。
3.2に溶かしたココナツオイルと他の材料をすべて入れて、ハンドミキサーでクリーム状になるまでしっかりと混ぜる。
4.瓶や型などの容器に入れて、冷蔵庫で冷やし固める。
【ポイント】
・夏場など室温が高めの場合は、冷水でボールを冷やしながら混ぜると分離しにくくなります。
・黄色い色を付けたい場合は、ターメリックをほんの少し加えてください。
豆乳ヨーグルトを使った発酵ヴィーガンバターの作り方
日本の一般的なバターは非発酵バターですが、ヨーロッパでは原料のクリームを乳酸菌で発酵させてから作る発酵バターが主流です。発酵クリームを使うことでバターに独特の風味と深いコクが出ます。
発酵させたクリームの代わりに市販の豆乳ヨーグルトを使うことで、発酵ヴィーガンバターも簡単に作れます。
【材料】
豆乳ヨーグルト 45g
ココナッツオイル 35g
オリーブオイルなどの植物油 15g
塩 1g
ニュートリショナルイースト 1g
【作り方】
1.ボウルにザルを乗せてキッチンペーパーを敷き、豆乳ヨーグルトを入れてラップをして冷蔵庫で2~3時間水切りをする。
2.ココナッツオイルは湯煎で溶かしておく。
3.ボウルに水を切った豆乳ヨーグルトと他の材料をすべて入れ、ハンドミキサーでクリーム状になるまでしっかりと攪拌する。
4.瓶や型などに入れて冷蔵庫で冷やし固める。
【ポイント】
・夏場など室温が高い場合は、冷水でボウルを冷やしながら攪拌するようにしてください。
・豆乳ヨーグルトは開封したての新鮮なものを使うようにしてください。
いろいろなアレンジも自由自在!
豆乳を使った手作りのヴィーガンバターは、いろいろなアレンジも簡単にできます。
例えば、ココナッツオイルを無香の精製タイプではなくバージンココナッツオイルに変えると、ココナッツ風味のバターになりますし、ココナッツオイルの一部をピーナツバターに置き換えるとピーナツバター風味になりますよね。
ヴィーガンにこだわらないのであれば、さらにアレンジの幅が広がります。はちみつやメイプルシロップを入れて甘さを付けてもよいですし、ココアや抹茶、レーズンなどを入れるのもおすすめです。
また、ガーリックパウダーや乾燥ハーブを入れてガーリックバターにすることもできます。塩の代わりにクレイジーソルトなどのハーブ塩を入れてもよいですね。
豆乳を使ったヴィーガンバターの日持ちとカロリー
豆乳を使って作るヴィーガンバターの保存性はどれくらいなのでしょうか?また、ヴィーガンと聞くとヘルシーなイメージがありますが、本当にヘルシーなのでしょうか?
手作りヴィーガンバターの日持ちは?
開封後の豆乳や豆乳ヨーグルトは、あまり日持ちがしないため、豆乳で作るヴィーガンバターも保存性があまりよくありません。冷蔵庫に保存し、なるべく、3~4日を目安に使い切るようにしましょう。
3~4日で使い切れないようであれば、作りたてをフリーザーバックに入れて冷凍庫で保存してください。冷凍庫なら2~3週間の日持ちが可能です。
シリコンのチョコレート型(シリコンモールド)などを利用して小分けにしておくと便利です。
豆乳を使ったヴィーガンバターはヘルシーなの?
一般的な有塩バターと、レシピでご紹介した豆乳を使った基本のヴィーガンバターの栄養成分を比較してみましょう。
よくレストランなどで出てくる1回分のバターやマーガリンは7~8gなので、8g当たりの栄養成分を比較してみました。
有塩バター | 豆乳ヴィーガンバター | |
---|---|---|
エネルギー | 56kcal | 46kcal |
水分 | 1.2g | 2.3g |
脂質 | 6.5g | 4.8g |
飽和脂肪酸 | 4.0g | 3.0g |
食塩相当量 | 0.15g | 0.11g |
手作りのヴィーガンバターは一般的な有塩バターに比べると、水分が多めで脂質がやや少なめ。その分、カロリーもやや低めです。
また、摂りすぎると動脈硬化などのリスクが高まる飽和脂肪酸も、手作りのヴィーガンバターの方がやや少ないことがわかりますね。
まとめ:ヴィーガンではない人も!豆乳で作るオリジナルバターを楽しもう!
豆乳とココナッツオイルで作るヴィーガンバター。SNSを見ると、ヴィーガンではないけれどおいしい!という書き込みも多くなかなか好評です。
一般的な店ではあまり売ってない上に市販品は価格も高めなので、手作りをしている人も多いようですよ。
材料は普段家に常備していないような特殊なものもありますが、材料さえそろえてしまえば失敗も少なく簡単!自分好みの固さや味にアレンジすることができるのもうれしいポイントですよね。
ぜひ、一度、豆乳からオリジナルバターを作ってみませんか?