ココナッツミルクには、食用のものと肌用(美容用)のものがあることはご存じでしょうか?
日本では、ココナッツオイルはスキンケアオイルとしてあまり浸透していませんが、果たして食用のココナッツオイルを肌に塗っても良いのでしょうか?
この記事では、食用のココナッツオイルと肌用のココナッツオイルの違いや、ココナッツオイルをスキンケアに使う場合のメリット・デメリットなどについてご紹介します。
↓食用のココナッツオイルの効果についてはこちらの記事をチェック♪
目次
ココナッツオイルは肌に使えるの?食用と肌用の違いは?
ココナッツオイルというと食用のイメージがありますが、肌の手入れにも使えるのでしょうか?
まずは、ココナッツオイルを肌に使えるかどうか、食用と肌用の違いはどこにあるのか、などについて解説します。
ココナッツオイルとは?
ココナッツオイルはココヤシの実(ココナッツ)の種子の胚乳(種子の内側についている白い部分)を絞った液体から抽出したオイルです。ココナッツオイルは製法によって以下の2種類に大きく分けられます。
・バージンココナッツオイル(VCO):
ココナッツを圧搾してオイルを抽出・濾過しただけのココナッツオイル
・RBDココナッツオイル:
ココナッツの胚乳を高温で乾燥させてオイルを抽出し、精製(Refine)、漂白(Bleach)、脱臭(Deodorize)の処理が行われたココナッツオイル
バージンココナッツオイルは、白色がかっていて特有の甘い香りがあります。
バージンココナッツオイルのなかでもグレードの高いものはエキストラバージンオイルと呼ばれています。RBDココナッツオイルは無色無臭です。
ココナッツオイルは肌に使えるの?安全性は?
食用としてのイメージが強いココナッツオイルですが、美容用としての用途が多いオイルでもあります。
肌用としては40年以上の使用実績があり、スキンケア製品、メイクアップ製品、シャンプー、石鹸などに使われています。
医薬品や医薬部外品のリストが示されている「日本薬局方」や「医薬部外品原料規格2021」にも掲載されていて、身体への安全性も確立されているので、肌にも安心して使えることがわかりますよね。
また、アレルギー性もほどんどないと言われています。
食用と肌用のココナッツオイルの違いは?
ココナッツオイル100%の商品の場合、食用として売られているココナッツオイルも肌用(美容用)として売られているココナッツオイルも、基本的に同じものです。
しかし、日清オイリオの公式サイトのQ&Aでは、ココナッツオイルを肌に塗っても大丈夫か?という質問に対し以下のように回答がされています。
食用であり、化粧品としての評価はしておらずお勧めできません。使用される方の体質・体調によっては、肌をいためてしまう場合があります。
https://www.nisshin-oillio.com/
これはどうしてでしょうか?
食用ココナッツオイルを肌に使ってもいいの?
中身が同じなのに、食用ココナッツオイルと肌用ココナッツオイルが存在する理由は、法律で食品と化粧品は分けて販売しなければならないと決められているからです。
食用のココナッツオイルは「食品衛生法」の規格に基づいて、また、肌用のココナッツオイルは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の規格に基づいて、製造や品質検査を行っています。
つまり、中身は同じでも、食用のココナッツオイルを肌に使用した場合の検査はしていないし、肌用のココナッツオイルは食べたときの安全性を検査していません。
ですから、どちらの場合も安全性は保証できない、ということになるのです。
ココナッツオイルを肌に使った場合の効果とデメリット
ココナッツオイルを食用として利用した場合、さまざまな健康効果を期待して研究が進められている反面、飽和脂肪酸の摂りすぎによる健康への悪影響も懸念されています。
では、肌用のココナッツオイルはどうでしょうか?ココナッツオイルを肌に使用した場合の効果と、気を付けるべきデメリットについて解説します。
ココナッツオイルは酸化されにくい
油脂は数種類の脂肪酸という成分によって構成されています。脂肪酸にはさまざまな種類がありますが、構造の違いによって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
飽和脂肪酸は酸素と結びつきにくい構造をしているので、酸化されにくいことが特徴です。
美容オイルの種類 | 飽和脂肪酸 (%) | 不飽和脂肪酸 (%) |
---|---|---|
ココナッツオイル | 84 | 16 |
オリーブオイル | 13 | 87 |
ローズヒップオイル | 7 | 93 |
アルガンオイル | 18 | 82 |
アーモンドオイル | 8 | 92 |
グレープシードオイル | 15 | 85 |
一般的に、植物性の油脂は不飽和脂肪酸を多く含んでいますが、ココナッツオイルは約84%が飽和脂肪酸。
つまり、植物性のオイルであるにもかかわらず、他の美容オイルと比べると酸化されにくい油であることが、ココナッツオイルの大きな特徴のひとつとしてあげられます。
肌用のオイルは酸化すると、オイル自体が劣化するだけではなく、肌荒れや湿疹を引き起こしたりシミやくすみの原因になったりすることもあると言われているので、注意が必要です。
しかし、ココナッツオイルは飽和脂肪酸が多く非常に酸化しにくいので、その点は安心して使えますね。
ココナッツオイルの成分別に見る効果
脂肪酸にはたくさんの種類があり、それぞれ特徴的な作用があります。ココナッツオイルに含まれている主な脂肪酸は以下の通りです。
脂肪酸の種類 | 脂肪酸名 | 比率(%) |
---|---|---|
飽和脂肪酸 | カプリル酸 | 7.7 |
カプリン酸 | 6.2 | |
ラウリン酸 | 47.0 | |
ミリスチン酸 | 18.0 | |
パルミチン酸 | 9.5 | |
ステアリン酸 | 2.9 | |
不飽和脂肪酸 | オレイン酸 | 6.9 |
リノール酸 | 0.2 |
上記の成分のうち、ラウリン酸・パルミチン酸・ミリスチン酸は洗浄作用や泡立ち作用があるため、石けんに合成されボディーソープ、洗顔フォーム、シャンプー、シェービングフォームなどに利用される成分です。
また、パルミチン酸とステアリン酸は乳化剤として利用され、ステアリン酸は、油性基剤(軟膏やクリームのベース)としても利用されています。
また、不飽和脂肪酸であるオレイン酸には、エモリエント効果(肌からの水分の蒸発を防ぐことでうるおいを保持して、肌を柔らかく保つ効果)があることでも知られています。
ココナッツオイルを肌に使うことで得られる効果
ココナッツオイルを肌に使ういちばんの効果はエモリエント効果です。皮膚の表面に薄く塗ることで油膜のバリアを作り、肌の内部の水分やうるおい成分が蒸発するのを防ぎます。
エモリエント効果によって水分が肌の内部に留まるので、肌がしっとりとうるおうだけでなくプルプルと柔らかい状態の肌を保つ効果が期待できます。
ただし、肌の内部にもともとある水分の蒸発を防ぐだけで、肌の内部に水分やうるおい成分を与えるわけではありません。
ですから、乾燥肌の人はココナッツオイルを使う前に化粧水などでしっかりと保湿をすることが大切です。
人によっては注意が必要!大きなデメリットは2つ
ココナッツオイルを肌へ使うことの安全性は確立されていますが、人によってはダメージを受けることもあるので注意が必要です。
肌荒れの原因になる場合もあり
ココナッツオイルに含まれる脂肪酸のうち、カプリル酸やカプリン酸は皮膚刺激性をもつことで知られています。
実際に、ココナッツオイルを化粧品やスキンケア製品に配合する場合は、これらの成分の配合量を抑えたり、除去されたりしているそうです。
しかし、ココナッツオイルの場合はカプリル酸やカプリン酸は除去されずに含まれています。
ですから、人によっては、ココナッツオイルを肌に塗るとピリピリとした刺激や、肌荒れ、湿疹などを生じることがあるために注意が必要です。
毛穴を詰まらせる原因になることも
アメリカでは、ココナッツオイルは毛穴を詰まらせるリスクが高いということは周知の事実だそうです。
というのも、アメリカでは化粧品やスキンケア製品などの成分が「コメドジェニック指数(Comedogenic scale)」で評価されているからです。
「コメドジェニック指数」とは、アメリカ皮膚学会が学会誌に掲載した評価方法で、毛詰まりを引き起こしてニキビの原因になる可能性を0(なし)~5(非常に高い)の5段階で示しています。
美容オイルの種類 | コメドジェニック指標 |
---|---|
ココナッツオイル | 4 |
オリーブオイル | 2 |
ローズヒップオイル | 0-1 |
アルガンオイル | 0 |
アーモンドオイル | 2 |
グレープシードオイル | 2 |
一般的には、コメドジェニック指数が2以下の場合は、毛穴を詰まらせるリスクが低いとされているようです。
ココナッツオイルのコメドジェニック指数は4となっており、美容オイルとして使われることの多い他のオイルよりも高いことがわかりますね。
日本では「ノンコメドジェニックテスト」という同様の評価方法があるそうです。ココナッツオイルに関してはデータがないのでわかりませんが、アメリカの「コメドジェニック指数」はひとつの目安となりそうですね。
人によっては、ココナッツオイルが毛穴を詰まらせる原因になり得ると言えそうです。
ココナッツオイルを肌に使う価値はあるの?
ココナッツオイルは天然のオイルであり、安全性も確立されています。肌に塗ることで内部の水分の蒸発を防いで肌を柔らかく保つエモリエント効果があることは認められています。
しかし、エモリエント効果を持つオレイン酸の含有量は低く、ココナッツオイル自体のエモリエント効果は一般的なオイルと比べると特別高いわけではありません。
ですから、人によっては肌荒れ、湿疹、ニキビなどのトラブルを引き起こす原因になり得ることを考慮すると、肌用の美容オイルとしてわざわざココナッツオイルを選ぶほどのことはないかもしれませんね。
ココナッツオイルの肌への効果のウソ・ホントを検証!
インターネットでココナッツオイルの肌への効果を調べていると、エモリエント効果以外にもさまざまな効果が書かれています。これらは本当に効果が期待できるのでしょうか?検証をしてみましょう。
ニキビを予防できる?
腸内細菌が腸内環境を守っているように、皮膚にも常在菌が存在して皮膚の健康を守っています。主な皮膚の常在菌には以下のようなものがあります。
・表皮ブドウ球菌:
汗や皮脂を餌として脂肪酸やグリセリンを作る。脂肪酸は黄色ブドウ球菌の増殖を防ぎ、グリセリンは皮膚のバリア機能を保つ役割をする。
・アクネ桿菌:
皮脂を餌として脂肪酸やプロピオン酸を作り出して皮膚表面を弱酸性に保ち、皮膚上の病原菌の増殖を抑える役割をする。一方、皮脂の分泌量が増えたり毛穴をふさがれたりすると、アクネ桿菌が増殖してニキビの原因となる。
・黄色ブドウ球菌:
通常は悪さをしないが、皮膚がアルカリ性に傾くと増殖して皮膚炎などの原因となる。また、傷口で増殖すると化膿する。
ココナッツオイルの主成分であるラウリン酸は抗菌作用があることで知られていて、アクネ桿菌や黄色ブドウ球菌にも効果があることがわかっています。
しかし、ココナッツオイルがニキビ治療に有効であることは証明されていません。
実際に、ラウリン酸では黄色ブドウ球菌の増殖を抑えられたが、バージンココナッツオイルでは抑えられなかったという研究結果も存在します。
皮膚の常在菌はバランスを保つことで皮膚の健康を守っています。もし、ココナッツオイルの抗菌作用でバランスが崩れたら、皮膚の状態が悪くなってしまってかえって大変ですよね。
日焼け止めとして使える?
インターネットで検索すると、天然植物オイルに日焼け止め効果があると書かれているサイトが多くあります。
それによるとココナッツオイルのSPF値は8、アボカドオイルは15、ラズベリーシードオイルに至っては30~50程度と書かれています。
天然オイルで日焼け止めを作る研究が進められていることは事実のようですが、これらの数値はあくまでも実験レベルではっきりと認められたものではないようです。
また、測定方法が正式な方法とは違うと真っ向から反論する論文も出ています。
いずれにしても、効果が証明されたわけではないので安易に信用することは危険ですよね。もし、効果が本当だとしてもSPF値が8ならば、大した日焼け止め効果は期待できなさそうです。
ビタミンEで美肌・アンチエイジング効果あり?
インターネットやSNSで検索すると、ココナッツオイルには一般的なビタミンE成分であるトコフェロールの40~60倍の抗酸化作用のある「トコトリエノール」が含まれていて、美肌、美白、アンチエイジング効果があるという情報をよく見ます。
ビタミンEには、抗酸化作用、血行促進作用、新陳代謝の促進作用があることは事実です。
しかし、実際にはトコトリエノールの抗酸化活性はトコフェノールと同程度、しかも、動物に使用した場合の生物活性はトコフェノールの1/3程度しかないことがわかっています。
また、ココナッツオイルのビタミンE含有量はわずか0.0005%。これらの数値からしても、ココナッツオイルのビタミンEによる効果は大して期待できないと言えそうですね。
クレンジングオイルの代わりに使える?
ココナッツオイルなどの天然オイルはクレンジング剤の代わりになるのでしょうか?ココナッツオイルのクレンジング効果は、半分は本当で半分は効果を期待できないと言えます。
油汚れは油で落ちるため、天然オイルを使うと純粋な油性基剤の化粧品であれば簡単に落とせます。しかし、シリコーンオイルなどを使用したウォータープルーフタイプの化粧品は落とすことができません。
また、ココナッツオイルは毛穴をふさぐリスクもあるため、クレンジング剤として頻繁に使わない方がよいかもしれませんね。
まとめ:食用のココナッツオイルを肌に使うことはおすすめできない!
食用のココナッツオイルと肌用(美容用)のココナッツオイルは基本的に中身は同じですが、食用は食品衛生法、肌用は薬機法と、品質などに関する規格が異なります。
食用のココナッツオイルを肌に使った場合のテストは行われていないので、安全に使用できるとは言い切れません。
ココナッツオイルの肌への効果を見ても、一般的な植物オイルの効果は期待できるものの、他のオイルと比べて特に優れているわけでもありません。
ですから、肌にココナッツオイルを使いたい場合に、食用のココナッツオイルを無理して使うメリットはあまりないと言えるでしょう。