普段当たり前のように食べているものが体に悪いという話を聞くと、心配になりますよね。
コーンスターチは、日常的に使う頻度が高いわけではないけれど、食べる機会も多くある存在。アレルギーについてもよくわからない、という人も多いのではないでしょうか。
この記事では、コーンスターチがアレルギーを引き起こすか、体に悪いリスクがあるのかどうかを解説するとともに、食べる際の注意点などもご紹介します。
目次
コーンスターチにアレルギーを引き起こす成分は入っているの?
食物アレルギーの代表格といえば、卵や小麦、牛乳などを思い浮かべますよね。このうち、小麦は卵、牛乳に次いで3番目にアレルギー患者が多く、食物アレルギーの原因の約10%を占めています。
コーンスターチは見た目は小麦粉に似ていますが、コーンスターチでもアレルギーを起こすことはあるのでしょうか?
コーンスターチの原料はとうもろこし
コーンスターチは、その名の通りとうもろこし(corn) のデンプン(starch)です。
普段、私たちが食用として食べているスイートコーンではなく、スイートコーンよりもでん粉が多いデントコーンという品種のとうもろこしが使われています。
コーンスターチは、乾燥させたとうもろこしを水に浸してやわらかくし、機械で細かく粉砕してふるいや遠心分離にかけて、皮・胚芽・たんぱく質を取り除き、でん粉だけを分離します。
そして、得られたでん粉をさらに水洗いして不純物を取り除きます。つまり、コーンスターチはとうもろこしの非常に純度の高いでん粉というわけですね。
コーンスターチはアレルギーの原因になる?
コーンスターチの原料であるとうもろこしは、まれに食物アレルギー反応を示すことがわかっています。食物アレルギーの原因となる物質はほとんどがたんぱく質。
とうもろこしアレルギーの原因物質も、とうもろこしに含まれるたんぱく質やたんぱく質から作られる酵素です。
コーンスターチは、製造段階でたんぱく質を分離するため、アレルギーを引き起こす可能性はともろこしよりもさらに低くなります。
しかし、100%除去できているという保障はないので、コーンスターチが原因でアレルギー反応が起こることもゼロではないと言えますね。
コーンスターチのアレルギーはどんな症状が出るの?
コーンスターチが原因でアレルギー反応が起こった場合は、他の食物アレルギーと同じような症状が出る可能性があります。
◆皮膚症状
かゆみ、蕁麻疹や発疹ができる、赤く腫れる、むくみなど
◆目の症状
目の充血、まぶたの腫れ、かゆみ、涙目など
◆口や鼻の症状
唇や口の中の腫れや違和感、喉のイガイガ、鼻水、くしゃみ、鼻詰まりなど
◆呼吸器の症状
喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)、咳、息苦しさ、喉が締め付けられる、声がかすれる、ケンケンというかん高い咳など
◆消化器の症状
気持ち悪い、吐き気、嘔吐、下痢など
◆全身症状
アナフィラキシー(複数の症状が同時に見られる)、アナフィラキシーショック(ぐったりする、意識がもうろうとする、意識を失う、唇や爪が紫色になるなど)
食物アレルギーの症状の多くは、食べてから約30分以内に発症する「即時型アレルギー」ですが、食べてから数時間~数日後に発症する「遅延型アレルギー」のタイプの人もいるため注意が必要です。
また、食べただけでは症状が出ないけれども、食べて数時間以内に運動をすることで、重度のアレルギー症状が出る「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を起こす人もいます。
仮性アレルギーの可能性もあり!
食物アレルギーは、アレルゲンとなる物質が体内に入ると身体が「異物」と判断し、免疫が過剰に反応することで起こります。
しかし、食品のなかには、その成分自体が食物アレルギーと同じような症状を引き起こす化学物質(ヒスタミン、アセチルコリン、チラミンなど)を含んでいる食物も多くあります。
これらは、食物アレルギーと同じような症状を引き起こすために「仮性アレルギー」と呼ばれていますが、食物アレルギーとは違い、アレルギーのない人や健康な人でも食物アレルギーのような症状が出ることがあります。
とうもろこしにはヒスタミンが含まれているため、まれに仮性アレルギーを引き起こすことがあります。
コーンスターチでアレルギー反応が起こるリスクのある人
コーンスターチでアレルギー反応が出ることはまれですが、とうもろこしアレルギーの人は念のため注意をした方がよいでしょう。
また、何らかのアレルギーがある人は、よく似た構造の物質を原因物質(アレルゲン)と勘違いして、アレルギー症状を引き起こす「交差反応」を示すこともあります。
とうもろこしはイネ科の植物なので、イネ科の花粉症の人がとうもろこしを食べるとアレルギー反応が出る可能性があります。
コーンスターチを食べた後に何らかの症状が出ても、それがアレルギーなのか交差反応なのか、もしくは仮性アレルギーなのかは、検査をしないとわかりません。
ですから、異変を感じた場合は自己判断せずに、必ず受診するようにしましょう。
コーンスターチのアレルギー表示に関する注意点
コーンスターチでアレルギー反応を起こしたことがある人やとうもろこしでアレルギー反応を起こしたことがある人は、食品を選ぶ際にどのような点に注意する必要があるのでしょうか。
とうもろこしはアレルギーの表示義務がない!
食品表示法では、容器包装された加工食品に一定量以上含まれているアレルギー物質を表示するように決められています。
なかでも、卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そばの7品目は「特定原材料」といい、アレルギー反応を示す人や、重症化するリスクの高いため、必ず表示するように義務付けられています。
また、大豆、ごま、豚肉、オレンジなどの22品目が、「特定原材料に準ずるもの」として、できるだけ表示するように推奨されています。
しかし、とうもろこしは、アレルギー症状を引き起こす可能性のある食品でありながら、表示義務や表示が推奨されている29品目に含まれていません。
つまり、もしその食品にコーンスターチが含まれているとしても、原材料表示に書かれているとは限らない、ということになりますね。
どこを見ればコーンスターチが入っているとわかるの?
では、その食品にコーンスターチが入っているのかどうかは、どこを見ればわかるのでしょうか?
コーンスターチが原材料として使われている場合は、パッケージの原材料表示に「コーンスターチ」と書かれています。
しかし、原材料表示に「コーンスターチ」と書かれていなくても、コーンスターチ由来の原材料を使っていることも多々あります。
例えば、加工食品や飲料の原材料としてよく使われる水あめや「ブドウ糖果糖液糖」、「デキストリン」などはコーンスターチから作られています。
また、ビールの原材料を見ると「スターチ」と書かれていますが、この「スターチ」もコーンスターチが使われているケースが大半です。
つまり、原材料表示に「コーンスターチ」と書かれていなくても、コーンスターチやコーンスターチ由来の原料が使われていることもあるのです。
ですから、残念ながら、その食品にコーンスターチが使われているかどうかを100%知ることは非常に難しいと言えます。
食品以外にもコーンスターチが使われている!
コーンスターチが原材料として使われているものは、実は食品だけではありません。食品以外のものにも多くの商品にコーンスターチが使われています。
食品以外にコーンスターチが使われているものの代表が化粧品です。
ベビーパウダー、フェイスパウダー、アイシャドウやチークなどのパウダータイプの化粧品をはじめ、リップスティックや保湿化粧品などにもコーンスターチが使われているものがあります。
また、医薬品や段ボールなどに使う糊などにもコーンスターチが使われています。
これらが原因でアレルギー症状を引き起こすことはまれのようですが、とうもろこしアレルギーが疑われる人は、知っておいた方が良いかもしれませんね。
アレルギーが心配!赤ちゃんにコーンスターチを食べさせていい?
コーンスターチが原因でアレルギー症状が発症することは少ないとはいえ、赤ちゃんに食べさせるとなるとアレルギーが心配ですよね。コーンスターチはいつ頃から食べさせてよいのでしょうか?
コーンスターチはいつから食べられるの?
個人差もありますが、赤ちゃんに離乳食を開始する時期は生後5~6ヶ月頃が適当とされています。
離乳食を始めたばかりの赤ちゃんは、まず口の中で舌を使って食べ物を前から後ろに送り、飲み込む練習からスタートします。
そのため、離乳食を開始してすぐの時期は、すり潰したお粥や野菜、ヨーグルト状のとろみのある食材などが適しています。
コーンスターチは離乳食にとろみを付けるために使えるため、離乳食を始めた5~6ヶ月頃から食べさせて問題ありません。
片栗粉は冷めるととろみがなくなりますが、コーンスターチで付けたとろみは冷めてもそのままなので、コーンスターチは離乳食にとろみを付ける食材として、とても重宝します。
コーンスターチを初めて与える場合に注意すること
とうもろこしは、頻度は少ないですがアレルギー反応を引き起こすアレルゲンとなり得る食材です。
コーンスターチはとうもろこしよりもさらにアレルギー反応を引き起こす可能性は低い食材ですが、アレルギーのリスクはゼロではないことを覚えておきましょう。
赤ちゃんにコーンスターチを初めて食べさせる時は、万一アレルギー反応を起こしても対処できるように、平日の昼間など病院があいている時間帯に与えるようにしましょう。
食物アレルギーのほとんどは食べてから30分以内に起こるので、まずはひと口だけ与えて様子を見るようにします。そして、大丈夫なようであれば、少しずつ量を増やしていきましょう。
離乳食が進んでもコーンスターチは重宝する!
離乳食は赤ちゃんの成長に合わせて、ペースト状→舌でつぶせる固さ→歯茎でつぶせる固さ→歯茎で噛める固さと進めていきます。
離乳食が進むにつれて、固形分を大きくしていき量も増やしていきますが、1歳までの赤ちゃんは噛んで飲み込むという一連の流れがなかなかうまくできません。
そこで、離乳食にとろみを付けてあげると口の中をゆっくりと通るため、噛んで飲み込むという動作がしやすくなります。
赤ちゃんは熱いものが食べられないので、冷めてもとろみが消えないコーンスターチはとても重宝します。
離乳食にコーンスターチを使う場合の注意点
離乳食にコーンスターチを使う場合は、コーンスターチと水を1:2の割合で混ぜた水溶きコーンスターチを、調理の最後に加えて離乳食にとろみを付けます。
この時、とろみが付きすぎると赤ちゃんが食べづらくなるので、水溶きコーンスターチは少しずつ入れて、ゆるくとろみが付く程度に調整しましょう。
また、火が通り切っていない生のデンプンは消化が悪いので注意する必要があります。
コーンスターチに火が通る(糊化する)温度は片栗粉よりも高い62~74℃なので、片栗粉でとろみを付けるよりも長めにしっかりと火を通すことが大切です。
アレルギー以外でもコーンスターチが体に悪いって本当なの?
コーンスターチが体に良くない影響を与えるいちばん大きな要因は食物アレルギーですが、それ以外でもコーンスターチは体に悪いという話を聞いたことがあるのではないでしょうか?
コーンスターチが体に悪いという話は本当なのでしょうか?
コーンスターチが体に悪いと噂される理由
コーンスターチが体に良くないとされている理由は二つあります。
その1:遺伝子組み換えの原料を使っている
コーンスターチの原料となるデントコーンのほとんどはアメリカなどから輸入していますが、アメリカで栽培されているとうもろこしは、遺伝子組み換え種が一般的です。
遺伝子組み換え技術とは、他の生物から取り出した有用な遺伝子を作物などに組み込んで、寒さに強い、病気に強いなどの新たな性質を持った品種を人為的に作り出す方法です。
従来の交配による品種改良よりも短期間かつ低コストで行えるメリットがあります。
遺伝子組み換え食品は安全だという見方をする研究者がいる一方で、もともと自然界に存在しなかった品種なので、人体や環境に悪影響を与えるのではないかという見方をする専門家もいます。
その2:添加物として「無水亜硫酸」が使われている
市販のコーンスターチの原材料表示を見ると、ほとんどのコーンスターチに「酸化防止剤(無水亜硫酸)」と書かれています。
国が定めた添加物の分類上の理由から「酸化防止剤」と表示されていますが、コーンスターチを製造する際に、原料の乾燥とうもろこしを浸漬してやわらかくする目的で利用される添加物です。
別名は「二酸化硫黄」で、主にワインの劣化や熟成しすぎを防ぐ目的や、かんぴょうやドライフルーツなどの漂白剤として使われます。
無水亜硫酸は安全な添加物として食品への使用が認められている一方で、頭痛や肝機能の低下などの中毒症状を引き起こすという見方をする専門家もいます。
コーンスターチは食べない方がいいの?
では、遺伝子組み換え食品や無水亜硫酸が体に悪影響を与えるということは本当なのでしょうか?コーンスターチはあまり食べない方がよいのでしょうか?
遺伝子組み換え食品は体に悪い?
農作物の遺伝子組み換え技術は1980年代初期から始まっていましたが、本格的に行われるようになったのは、アメリカで初めて遺伝子組み換え食品が販売された1996年以降です。
歴史がまだまだ浅いため、安全性については専門家の間でも賛否両論があり、まだまだ研究途上と言えます。
日本で流通している遺伝子組み換え食品は、国が安全であると認めた食品だけです。しかし、安全性の面で抵抗がある人は、原材料表示に「遺伝子組換えでない」と書かれているコーンスターチを選ぶとよいでしょう。
添加物の「無水亜硫酸」は体に悪い?
亜硫酸塩の別名は二酸化硫黄。火山ガスにも含まれる成分で、高濃度の場合は皮膚、目や喉などの粘膜を刺激したり、呼吸困難や喘息の発作を引き起こしたりすることで知られています。
しかし、食品添加物のように微量の摂取ならば特に問題ないとされています。
食品添加物の取りすぎは体に悪いという風潮が強いことも事実ですし、専門家の間でも添加物が体に与える影響の見解は分かれているのも事実です。
しかし、食品添加物として使用される無水亜硫酸の量は、極々微量。
リスクはゼロとは言い切れませんが、添加物によって体に害が及ぶことよりも、食生活の偏りによって生活習慣病になるリスクの方がはるかに高いという見方もできます。
どうしても添加物が気になるなら、無水亜硫酸が添加されていないコーンスターチを選ぶとよいですね。
まとめ:コーンスターチのアレルギー等のリスクはゼロではない!
コーンスターチの原料であるとうもろこしにはアレルゲンとなる成分が含まれているため、アレルギー症状を引き起こすことがあります。
コーンスターチの場合、アレルゲンとなるたんぱく質は製造段階で除去されるためリスクは低いですが、アレルギー反応がないわけではありません。
万一、コーンスターチを食べて体に異変を感じたら、すぐに受診するようにしましょう。
また、遺伝子組み換えとうもろこしや添加物が体に悪影響を与えるという見方をする専門家がいることも事実です。
極度に恐れる必要はありませんが、気になるのであれば、これらを使っていないコーンスターチを選んだり片栗粉で代用したりするなどして対処するとよいですね。