と、先日友人に聞かれていろいろ調べてみました。
すると、「9~11ヶ月から」「1歳を過ぎてから」「1歳半を過ぎてから」「2歳を過ぎてから」とネットの情報はマチマチ!その理由も「ホントかよ?!」と疑問に思うようなことも多く、「結局、何が正解なんだ?」という疑問が増すばかり!
そこで正解を探すべく、管理栄養士である筆者がマヨネーズは何歳から食べられるのかについて徹底検証してみました!
目次
『マヨネーズはいつから?』根拠の仮説を立ててみた!
マヨネーズの主原料は、植物性油脂、卵、お酢の3つ。これらを機械で乳化させたのがマヨネーズです。「マヨネーズをいつから食べさせていいのか?」の要因になるのは、この3つの原料が関係しているのではないかと思われます。
マヨネーズは何歳からOKかの糸口を探るために、まずはこの3つの原料が赤ちゃんに与える影響について仮説を立ててみました。
離乳食期の『油脂』の影響は?
市販のマヨネーズに含まれている脂質の量はなんと70~75%前後!マヨネーズのほとんどが油なんですね!農林水産省の規格でも油脂が65%以上含まれていないと、「マヨネーズ」を名乗ってはいけないという決まりがあります。
油脂はカロリーがとても高いので、食べ過ぎると太るし生活習慣病のリスクも高まるので注意が必要!また、油脂は消化が遅いので、内臓がまだ未熟な赤ちゃんは食べ過ぎないように注意しなければいけません。
マヨネーズをいつから食べさせていいか?ということには、このあたりの要因が関係してくるのではないかと思われます。
離乳食期の『卵』の影響は?
卵の問題のひとつにサルモネラ菌による食中毒があります。
しかし、市販のマヨネーズは製造工程でサルモネラ菌は殺菌されるのに加え、酢や塩の影響でマヨネーズの中では繁殖が抑えられることがわかっています。ですから、市販のマヨネーズに関しては、サルモネラ菌による食中毒の心配はあまり考えなくてもよさそうです。
もうひとつ考えられる問題点が卵アレルギーです。
乳児で食物アレルギーのある子どもは全体の約10%いると考えられていて、そのうち卵が原因になっているのは1歳児で約4割、0歳児で約6割にも上ります。
ですから、赤ちゃんにマヨネーズを与えるときは、卵アレルギーに対してかなり慎重になる必要があることは間違いありません。
離乳食期の『味の濃さ』の影響は?
マヨネーズを舐めてみるとわかりますが、わりとしっかりとした塩味を感じます。また、マヨネーズの味は濃いか?薄いか?と言われると、濃い方の部類に入りますよね。
赤ちゃんの離乳食は薄味が基本です。人間の味覚形成は、離乳食を始める頃にはすでに始まっていると言われています。
ですから、早い段階で濃い味を覚えてしまうと、味の濃い食べ物を好むようになり、大人になった時に生活習慣病を引き起こすリスクが高くなってしまいます。
マヨネーズを赤ちゃんに与える時は、そのあたりも注意する必要がありそうです。
【仮説】卵アレルギーの問題がいちばんの理由か
マヨネーズを食べさせることが赤ちゃんに与える影響として、油脂の量が多い、卵アレルギーの危険がある、味の濃さの影響がある、という3つの可能性が考えられます。なかでも、卵アレルギーは赤ちゃんに湿疹や下痢などの体調不良を引き起こすだけでなく、時には生命の危険すら伴うものです。
ですから、マヨネーズはいつから食べさせてよいか?ということに関しては、まず卵アレルギーについて考える必要があります。
『マヨネーズはいつから?』アレルギーの観点で検証!
離乳食期の赤ちゃんにはいつからマヨネーズを食べさせてよいのか?ということを考えるにあたり、問題になりそうなポイントは見えてきました。
まずは、赤ちゃんにとって最も注意する必要がある卵アレルギーの観点から、いろいろ検証していきたいと思います。
厚労省による『離乳食の進め方』の指針
国が提唱している離乳食の指針は、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」で示されています。「授乳・離乳の支援ガイド」は2019年に12年ぶりに改訂され、卵に関する項目も見直されています。
表1 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」による卵の食べさせ方の指針
2007年度版 | 2019年度版 | |
---|---|---|
生後5、6ヶ月頃 | 慣れてきたら潰した豆腐・白身魚などを 試してみる | 慣れてきたら潰した豆腐・白身魚・卵黄等を 試してみる |
7、8ヶ月頃 | 卵黄1~全卵1/2 | 卵黄1~全卵1/3 |
9~11ヶ月頃 | 全卵1/2 | 全卵1/2 |
12~18ヶ月頃 | 全卵1/2~2/3 | 全卵1/2~2/3 |
表1に示した通り、2019年度版では卵黄の開始時期が早まり、7、8ヶ月頃の全卵の目安量が少し減らされています。
マヨネーズは全卵がOKとはっきりしてから
離乳食では、しっかりと加熱したゆで卵の卵黄を耳かき1杯程度を食べさせることから始ます。そして、大丈夫なら少しずつ量を増やして、卵黄1個分を問題なく食べられるようになったら、全卵へと移っていきます。
卵黄から始める理由は、卵の主要なアレルゲンは卵白に含まれているから。余程強い卵アレルギーでない限り、卵黄にアレルギー反応を示すことがほとんどないからです。
卵アレルギーのリスクを考えると、離乳食でマヨネーズを食べさせるには、全卵を食べても問題ないことがはっきりわかってから!という点は大前提ですね。
マヨネーズの原料は生卵!離乳食に生卵はNG?
『マヨネーズはいつからOK?』を考えるときにもうひとつ見逃せないポイントが、マヨネーズの原料は生卵だということです。
表2は生卵と加熱した卵のオボアルブミン (OVA)オボムコイド (OVM)という卵のアレルゲン物質の量との比較です。加熱した卵は生卵よりもアレルゲン物質は少なくなっています。
表2 生卵と加熱した卵のアレルゲン残存率の比較
生卵と比較した 抗原残存率 |
|||
OVA | OM | ||
生卵 | - | - | |
温泉卵 | 0.9106 | 0.1436 | |
炒り卵 | 0.0932 | 0.1507 | |
ゆで卵 | 12分固ゆで卵 | 0.0001 | 0.1177 |
20分固ゆで卵 | 5.0E-5 | 0.0612 |
※伊藤節子「食物アレルギー患者指導の実際」より抜粋
また、表3は加熱した卵を問題なく食べられる場合に、理論上は生卵ならどれくらい食べても問題ないか、という数値です。
この表からすると、12分加熱した固ゆで卵を1/2食べても問題ない9~11ヶ月の時期に、食べても問題ないであろうマヨネーズの量は1回当たり0.08gとなりますね。
ちなみに、マヨネーズ0.1gは市販のマヨネーズの細い方のノズルから細く出して1cmくらいの量です。
表3 卵アレルギー児の食事指導用のOVA・OM食品交換表
食品名 | VOA量を基準にした 摂取可能量 | OM量を基準にした 摂取可能量 |
|
---|---|---|---|
12分間固ゆで卵Mサイズ1/4個 摂取可能な場合(125g) | マヨネーズ | 0.04g | 41g |
炒り卵1/4個分(調理前125g) 摂取可能な場合 | マヨネーズ | 36g | 53g |
※伊藤節子「食物アレルギー患者指導の実際」より抜粋
卵アレルギーの観点で考えると9~11ヶ月から
これまでの検証結果をふまえ、『マヨネーズはいつからOK?』を卵アレルギーのリスクの点から見てみましょう。結論としては、1回の離乳食で加熱した全卵1/2個を問題なく食べられる9~11ヶ月頃が、マヨネーズを食べ始めてもいい時期として妥当ではないかと考えられます。
アレルギーのリスクを考えると、9~11ヶ月頃に全卵1/2個が問題なく食べられるようになったのを確認してから、マヨネーズを食べさせ始めるのがよさそうです。
『マヨネーズはいつからOK?』油脂と濃い味の影響は?
卵アレルギーのリスクだけを考えた場合、マヨネーズは9~11ヶ月頃の離乳後期から食べさせるのがよさそうだということがわかりました。では、残り2つの問題点、マヨネーズには油脂が大量に含まれている点と味が濃い点ついてはどうなのでしょうか?
離乳食期の赤ちゃんに与える影響について考えてみましょう。
離乳食でどれくらいの脂肪分を食べさせていいの?
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」には、油脂の摂り方に関する注意点は詳しく書かれていません。ですが、「油脂類も少量の使用とする」、「脂肪の多い肉類は少し遅らせる」、「塩分や脂肪の少ないチーズも用いてよい」と書かれていることからも、離乳食期の油脂は少量が基本です。
厚生労働省の食事摂取基準から計算すると、9~11ヶ月の脂肪分の1日の摂取目安は男児で約31g、女児で約26.7gです。マヨネーズ小さじ1杯(5g)の脂質の量は3.7g。マヨネーズ小さじ1杯で1日の摂取カロリーの約12~13%を摂取してしまうことになるので、使う量には注意した方がよさそうです。
離乳食に調味料は使わない方がいいの?
赤ちゃんは、生まれた時にはすでに味覚が備わっていて、生後6ヶ月くらいからどんどん発達していくそうです。つまり、離乳食を始める頃にはもう味覚が発達し始めているということになります。
赤ちゃんの味覚は旨味や甘味(ごはんの甘さ)などのから発達し始めるので、離乳食初期はだしで味付けをするのが基本。しかし、味覚の発達に伴い、味付けが単調だと赤ちゃんがだんだん飽きてきたり好き嫌いが出てきたりするのです。
ですから、9~11ヶ月頃の離乳後期になると、調味料で薄味に味付けをして、素材の味を生かしつつ味のバリエーションを増やすことも大切になってきます。
【結論】結局マヨネーズはいつからOKなの ?
これまで検証した結果を踏まえ、赤ちゃんにマヨネーズはいつからOKなのか、結論をまとめてみましょう。
結論から言うと、離乳後期(9~11ヶ月頃)からマヨネーズを食べさせ始めても問題はなさそうです。ただし、いろいろと条件付きです!次のような点に注意する必要があります。
加熱した全卵が大丈夫とはっきりしてから!
最も気を付けなければならないのは、アレルギーの問題。12分以上しっかりと加熱した固ゆで卵1/2個を食べても、問題ないことがはっきりしてから!というのが絶対条件です。
9~11ヶ月頃の離乳後期に入ったらOK、というのはあくまでも目安。離乳食の進行具合は赤ちゃんによって違います。発達のゆっくりな赤ちゃんは離乳食の開始が遅くなることもあるでしょうし、逆に開始が順調でも離乳食に慣れるのに時間がかかる赤ちゃんもいます。
目安にとらわれすぎず、赤ちゃんの成長に合わせることが大切です。また、すでに卵でアレルギー症状が出たことがある場合は、必ずかかりつけの医師の指示に従いましょう。
最初はごく微量から始めること!
全卵1/2個が問題なく食べられるようになっても、マヨネーズも大丈夫という保証はまったくありません。マヨネーズは生卵を使っているからです。
生卵はアレルゲンの量が多いので、最初は卵黄の時と同じように耳かき1杯程度のごく微量から始めるようにしましょう。
離乳後期になると食事は朝・昼・夜の1日3回が目安ですが、マヨネーズを試すときは、かかりつけ医が開いている時間の食事で食べさせるようにすると安心です。
食物アレルギーの多くは即時型といって、食べてから15~30分程度、長くても2時間以内にアレルギー症状が出ます。食べてからしばらくは様子を見るようにしましょう。
また、マヨネーズを食べさせてみて問題がなくても、1歳半頃まではほんの少量に抑えておいた方がよさそうです。
『マヨネーズはいつからOK?』のウソ&ホント
マヨネーズはいつから赤ちゃんに食べさせていいのかについて、ネットで検索をすると、さまざまな情報が出てきます。しかし、サイトによって情報が違っていたり、根拠がよくわからなかったりすることも多々あります。
そこで次に、ネットに多く出ている情報が本当なのか、考察してみましょう。
Q1.「1歳から」「1歳半から」は間違いなの?
間違っているというわけではありません。マヨネーズは赤ちゃんにとって、少なからずアレルギーや消化不良のリスクのあることは事実だからです。
9~11ヶ月頃に食べさせるよりも、1歳半を過ぎてから食べさせる方が当然リスクは減ります。
Q2. 2歳までは食中毒になりやすいからダメ?
少なくとも市販のマヨネーズに関しては間違っていると言って問題ありません。
市販のマヨネーズは製造工程で卵が殺菌されていますし、製造後のマヨネーズの中では最近の繁殖が抑えられます。そのため、市販のマヨネーズが原因で食中毒になるリスクは低いと言えるでしょう。
ただし、他の食材と同じように、保存状況や調理の状況によっては食中毒が起こる場合があります。衛生管理や保存方法には注意するようにしましょう。
Q3. 卵アレルギーのある子には注意して与える?
時々、「卵アレルギーのある子にマヨネーズを与える場合は注意が必要」と書いてあることがありますが、これは絶対にやってはいけません。アレルギーの強い子なら、アナフィラキシーショックを起こしたり命にかかわったりするケースもあります。
卵アレルギーのある場合は、かかりつけ医の方針に必ず従うようにしてください。
Q4. 早くから食べさせるとアレルギーになりやすい?
以前は関連があるという説もあったようですが、現在は見解が変わっているようです。
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド2019年版」にも、「離乳の開始や特定の食物の摂取開始を遅らせても、食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はない」と明記してあります。
Q5. 卵黄だけのマヨネーズならアレルギーになりにくい?
卵黄だけのマヨネーズでもアレルギーを引き起こす可能性があります。アレルゲンは卵黄にはほとんど含まれていませんが、卵黄を分離する際にある程度の卵白の混入は避けられないからです。
卵黄だけを分離してもある程度の卵白は入っています。
Q6. アレルギー用のマヨネーズがおすすめ?
卵を使用していないアレルギー用のマヨネーズだと、確かに卵アレルギーの心配はありません。しかし、離乳期に使えるマヨネーズの量はごく少量。ですから、わざわざアレルギー用のマヨネーズを使用しなくても、他の食材で十分代用できます。
どのマヨネーズが全卵を使っていて、どれが卵黄のみのマヨネーズなのか、といったマヨネーズの種類ごとの特徴については以下の記事でまとめていますので、ぜひ本記事と併せてご覧ください。
Q7. 絶対に加熱しないとダメ?
加熱した方が安心な場合もあります。かと言って、加熱をすれば大丈夫とも言い切れません。
卵白に含まれるアレルゲンは加熱によって症状が出にくくなるのは確かです。しかし、固ゆでたまごは大丈夫だけど、卵焼きやプリンはダメというケースもよくあります。
それと同じように、マヨネーズでアレルギー症状が出るかどうかも加熱具合によって変わります。加熱したからOKとは考えず、ごく微量から試してみるようにしましょう。
Q8. 1回の使用量の目安は小さじ1/2~3/4?
これに関しては、まったく根拠がないと考えてよいでしょう。
厚生労働省の指針でも、マヨネーズや他の調味料の量に関する記載はありませんし、離乳期に小さじ1/2~3/4のマヨネーズは明らかに摂り過ぎです。マヨネーズを本格的に料理に使うのは、もっと大きくなってからにしましょう。
Q9. マヨネーズは素材の味を消すから使わない方がいい?
マヨネーズに素材の臭いや風味を低減させるマスキング効果があることはよく知られています。確かに、素材の味を消すことはあるのですが、それを逆手に取ると、赤ちゃんが嫌がるような苦味などをごまかす効果も期待できます。
離乳期は使える量が限られているのでなかなか難しい面もありますが、いろいろな食材を食べさせるという視点で考えると、マヨネーズのマスキング効果を利用するのもいいかもしれません。
Q10. 添加物が心配だから手作りがおすすめ?
添加物については賛否両論あるのでここでは触れませんが、離乳食期に手作りのマヨネーズを食べさせるのはおすすめできません。
市販のマヨネーズと違い、手作りのマヨネーズは殺菌ができません。そのため、作る時に卵の殻に付着しているサルモネラ菌が混入する恐れがあるからです。
抵抗力の弱い赤ちゃんは食中毒のリスクが高く、重症化しやすい傾向があります。食中毒の観点からすると、手作りマヨネーズは生卵と同じように2歳以下の乳幼児は避ける方が無難です。
まとめ:マヨネーズはいつから?絶対的な正解はなし!
育児本などに書かれている離乳食の進め方や保健所などの指導は、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」に準じていますが、あくまで目安にしかすぎません。
マヨネーズはいつから食べさせても大丈夫か?ということに関しても同じで、9~11ヶ月頃からごく少量なら食べさせることはできても、これもあくまで目安です。
また、マヨネーズは離乳期に無理して使わなくても、もっと大きくなってからの方がいいという考えも一理あります。
赤ちゃんが飽きないように味のバリエーションを増やすという意味では有効ですが、マヨネーズの代わりにヨーグルトや酢を使うこともできます。
離乳食期にマヨネーズを使う場合は、うまく工夫をして食べさせ過ぎることのないように気を付けましょう。