乳製品である牛乳の代わりにオーツミルクやアーモンドミルクなど様々な種類の植物性ミルクが登場する中、牛乳と同じような使い勝手の良さと健康・美容面のメリットでも根強い人気の豆乳。
普段から牛乳の代わりに豆乳を飲んでます!という方も多いのではないでしょうか。
そこで気になるのはカルシウム問題。一日に必要とされるカルシウムの摂取量は豆乳で補えるの?豆乳と牛乳のカルシウム含有量はどれくらい違うの?そんな疑問を一緒に解決していきましょう!
目次
豆乳に含まれるカルシウム量はどれくらい?
「豆乳」は大豆を原料とした見た目は牛乳そっくりの植物性飲料。名前に「乳」とあるので乳製品と思われがちですが、豆類に分類されるので牛乳とは全くの別物です。
ということは栄養素も、もちろんカルシウムの含有量も全く違います。どちらも積極的に取りたい食品ではありますが、「カルシウム」で比較するとどちらが効果的なのでしょうか。
【豆乳と牛乳】カルシウム含有量比較
カルシウムは骨や歯の形成、維持に必要となる栄養素で、牛乳をはじめとする乳製品に豊富に含まれています。
対して大豆由来の「豆乳」に含まれるカルシウムの量はどれくらいなのでしょうか。200mlあたり(コップ一杯分)で牛乳と比較してみましょう。
カルシウム含有量(200mlあたり) | |
---|---|
無調整豆乳 | 30mg |
調整豆乳 | 62mg |
牛乳 | 220mg |
「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
豆乳と牛乳のカルシウム量の差は歴然!牛乳と同じ量のカルシウムを摂取するには、よりカルシウムを多く含む調整豆乳であっても牛乳の3倍以上の量を飲む必要があります。
あれれ?どうして調整豆乳の方が無調整豆乳よりカルシウム量が多いの?と思った方もいらっしゃいますよね。
実はどのメーカーの調整調乳も無調整豆乳よりカルシウム量が3~6倍多く含まれています。こちらも200mlあたりで比較してみましょう。
無調整豆乳 | 調整豆乳 | |
---|---|---|
紀文 | 34mg | 109mg |
スジャータ | 17mg | 110mg |
マルサン | 21mg | 71mg |
(各メーカー公式HPより)
調整豆乳は文字通り「調整」された豆乳のこと。飲みやすいように味を調整するだけでなく、栄養素も調整されています。
調整豆乳には骨粗しょう症の治療薬や妊婦、発育期の児童のカルシウム補給に使われる「乳酸カルシウム」が添加されているため、無調整豆乳よりもカルシウム含有量が多くなっているんです。
まとめると、カルシウム量だけで比較するなら牛乳>調整豆乳>無調整豆乳ということになります。
カルシウム摂取が目的なら牛乳に軍配
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると一日に必要なカルシウムの推奨量は平均650mg以上。
最もカルシウムが必要とされる12~14歳男児にいたっては一日あたり991mg!牛乳4.5杯分に相当します。
同じカルシウム量を豆乳のみで摂取しようとすると比較的カルシウム量の多い調整豆乳であっても約16杯飲む必要があります。
牛乳からのカルシウム摂取が推奨されるのには圧倒的な含有量以外にも理由が…!
それは「吸収率」の良さ!牛乳に含まれる乳糖がカルシウムの吸収を促す働きをするため、最もカルシウム吸収率の高い食品と言われています。
牛乳にはない魅力がいっぱい!豆乳を飲むメリット
豆乳はカルシウムの含有量では牛乳に敵いませんが、私たちの体に必要な栄養素がたっぷり含まれる優秀な食品です。
豆乳にはカルシウムの吸収率を高めるあのミネラルや貧血に悩む女性に欠かせない成分も豊富に含まれているんですよ。
カルシウムの吸収を助けるマグネシウムが豊富
マグネシウムもカルシウム同様、骨や歯の形成・維持を担っているミネラルの一つ。別名「カルシウムのブラザーイオン」と呼ばれ、カルシウムの吸収や働きを促し、骨の強化や骨密度維持に欠かせません。
マグネシウムは豆類、魚介類、野菜に多く含まれており、特に木綿豆腐には1丁(350g)あたり200mgと豊富に含まれています。同じ大豆から作られる豆乳もマグネシウムが豊富。
無調整豆乳であればコップ1杯(200ml)あたり50mgのマグネシウムを摂取することができます。
対して牛乳コップ1杯に含まれるマグネシウム量は20mg。骨の健康維持には豆乳と牛乳どちらもバランスよく摂取するのが理想的ですね。
骨密度低下を防ぐ大豆イソフラボン
豆乳にはポリフェノールの一種であるイソフラボンが含まれています。
女性は閉経後、骨の新陳代謝の際にカルシウムが骨から流出するのを防ぐ女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が減少します。その結果起きるのが骨密度低下や骨粗しょう症。
豆乳に含まれる大豆イソフラボンはこのエストロゲンと似た分子構造、働きを持つため、エストロゲンの代わりとして骨の健康維持に役立つことが期待できます。
大豆イソフラボンについては過剰摂取による健康への悪影響も気になるところ。厚生労働省HPによると「大豆イソフラボンの健康への有害な影響は、現時点では確認されていない」そう。
大豆イソフラボンは摂取した2~3日後には体外に排出されてしまうので、大量に飲んだからと言ってすぐに健康被害が出るわけではありません。
ただしどんな食品でも摂りすぎは良くないので、毎日適量をコツコツと摂取することが大切ですね!
鉄分豊富だから貧血対策にも◎
カルシウム含有量では牛乳に負けてしまいますが、豆乳の方が圧倒的に多いのが「鉄分」!
コップ1杯あたり牛乳にはわずか0.02mgしか含まれていないのに対し、豆乳(無調整)にはなんと2.4mgもの鉄分が含まれています。
鉄は血液中に含まれるヘモグロビンの材料になるので貧血対策として積極的に摂取したいミネラルの一つ。1日あたりの推奨摂取量は平均10mgとされていますが月経のある女性は不足しがちです。
鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、植物性食品である豆乳に含まれるのは「非ヘム鉄」の方。
非ヘム鉄は吸収率が10%以下と低いため、ビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に摂取することで吸収率を高める工夫をしましょう。
また、豆乳飲料には鉄分がほとんど含まれないため、鉄分補給を優先したい場合は無調整か調整豆乳を選ぶようにしましょう。
豆乳で効率的にカルシウムを摂取するなら?
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロ。実は日本人の約70~80%は乳糖不耐症と言われ、実際に牛乳を避けている方もいるのではないでしょうか。
そのほかにも乳製品アレルギーや、ベジタリアンやヴィーガンなどのライフスタイルによって食生活に制約がある方も。
ここでは、様々な理由から牛乳を控えたい方向けに効率よくカルシウムを摂取するポイントをご紹介します!
もはや牛乳越え!?カルシウム強化豆乳
調整豆乳や豆乳飲料に分類される豆乳の中には、カルシウム含有量が牛乳顔負けの商品も!
タンパク質 | カルシウム | 鉄 | イソフラボン | |
---|---|---|---|---|
無調整豆乳 | 8.3g | 34mg | 1.1g | 58mg |
調整豆乳 | 7.0g | 109mg | 0.9mg | 45mg |
調整豆乳+Ca | 6.0g | 244mg | 0.68mg | 37mg |
豆乳飲料+Ca | 2.2g | 350mg | ー | 6mg |
(紀文公式HPより抜粋)
例えばチョコミント味や焼き芋味など独自のフレーバーで豆乳飲料を展開する「紀文」からはその名も「カルシウムの多い豆乳飲料」が発売されています。
カルシウム含有量はなんと350mg!牛乳の約1.6倍です。さっぱりしたヨーグルト風味なので豆乳が苦手な方も飲みやすそうですね。
カルシウム増強目的で添加されている乳酸カルシウムは「乳」と付いてはいますが、植物由来なので乳アレルギーの方でも安心して飲むことができます。
カルシウム摂取だけでなく豆乳本来の味わいやそのほかの栄養素もバランスよく摂りたい方には調整豆乳やカルシウム入り調整豆乳がおすすめ。
豆乳飲料に比べて添加物が少ないので、マグネシウムや鉄、イソフラボンなど豆乳に豊富に含まれる栄養素の損失を抑えることができます。
豆乳+牛乳の相乗効果で吸収率UP!
どんなに身体にいいと言われる食品も単品摂取ではあまり意味がありません。栄養素を身体に吸収するためにはそれを助ける別の栄養素が必要となります。豆乳と牛乳はまさにお互いの持つ栄養素が必要不可欠な関係性。
牛乳に含まれるカルシウムの吸収・定着のためには豆乳に含まれるマグネシウムやイソフラボンが、豆乳に含まれる非ヘム鉄の吸収には動物性たんぱく質つまり牛乳が大事な役割を果たします。
すでに豆乳を飲む習慣がある方は牛乳割りに、シチューやスープなどの料理に使う際には牛乳と1:1で混ぜ合わせるのがおすすめです。
豆乳特有の風味が牛乳と合わさることで和らぐので豆乳が苦手な方もぜひ試してみてください。
カルシウム豊富な食材の合わせ技レシピ
どの食材も吸収率こそ牛乳に及びませんが、栄養素の相乗効果を意識すれば牛乳以外の食材からもカルシウムをたっぷり摂取することができます。
豆乳をそのまま飲むのに飽きてきた方にもおすすめのレシピをご紹介します!
小松菜と干しえびの豆乳リゾット
小松菜も干しエビもカルシウム含有量はトップクラス!それぞれ1食分あたり小松菜は136mg、干しエビは213mgのカルシウムが含まれています。
大豆イソフラボン×カルシウムの相乗効果でイライラ感の軽減や骨粗しょう症の予防が期待できますよ。
【材料】(2人分)
・無調整豆乳 2カップ
・干しエビ 大さじ2
・小松菜 1/3束
・ごはん 2膳分
・水 1カップ
・顆粒コンソメ 小さじ1
・粉チーズ 大さじ3
・塩 小さじ1/4
・こしょう 少々
【作り方】
1.小松菜は1cm長さに切っておく。
2.鍋に豆乳、水、顆粒コンソメを入れて中火にかけ、小松菜、干しエビ、ご飯を加えて混ぜ、3〜5分煮る。
3.粉チーズ、塩、こしょうを加えてざっと混ぜる。
【ポイント】
干しエビと粉チーズに含まれる動物性タンパク質によって豆乳に含まれる非ヘム鉄の吸収率が高まります。よりカルシウム量を増やしたい方は豆乳の半分を牛乳に置き換えても良いですよ。
スキムミルク入り黒ゴマ豆乳ラテ
いつもの豆乳ラテにカルシウム豊富なスキムミルクと黒ゴマを入れて手軽にカルシウムを補給しましょう。
スキムミルクは牛乳から水分や脂肪分を取り除いてパウダー状にしたもの。栄養素が凝縮されているのでカルシウムやタンパク質の含有量が牛乳より多く、カロリーは牛乳の約半分!ダイエット中の方にもおすすめです。
【材料】(1人分)
・調整豆乳 180ml
・黒ゴマペースト 大さじ1/2
・スキムミルク 小さじ2
・ぬるま湯 大さじ2
【作り方】
1.カップにぬるま湯を入れ、スキムミルクを少しずつ加えながらしっかり溶かす。(ダマにならないように注意!)
2.黒ゴマペースト、調整豆乳を加えてよく混ぜ、電子レンジで温める。
【ポイント】
調整豆乳の代わりに無調整豆乳+はちみつ(または黒糖)にすると豆乳の栄養素をより多く摂取することができますよ。
仕上げにきな粉を振るのもgood!豆乳は温めの際に吹きこぼれることがあるので注意してくださいね。市販品の粉末「黒ごまラテ」を黒ゴマペースト+スキムミルクに置き換えれば、さらに飲みやすさUpです。
飲みすぎ注意!カルシウムを豆乳で摂取する際の注意点
一日に必要なカルシウムを豆乳から摂取しようとすると、無調整豆乳であれば約21杯、調整豆乳であれば10杯飲む必要があります。
実際にはほかの食品からもカルシウムは摂取できるので上記の量を毎日飲むのは現実的ではないですが、豆乳を過剰に摂取(例えば毎日1~2L飲み続けた場合)すると次のような症状が現れることがあります。
・カロリー過多や肌荒れ(特に油分・甘味料が添加された調整豆乳や豆乳飲料)
・生理不順(イソフラボンが女性ホルモンに似た働きをするため)
・下痢(マグネシウムによる便秘改善効果によるもの)
毎日無調整豆乳を1~2パック飲む程度であれば身体への悪影響はありません。仮に1日くらい飲み過ぎたとしても、長期的に飲み過ぎなければ大丈夫!
むしろ身体に嬉しい効果がたくさん期待できるので、毎日適量を飲み続けることをおすすめします。
豆乳+αで効率的にカルシウムを摂取しよう!
カルシウム摂取という点では豆乳を牛乳代わりに飲むことはおすすめしません。
ただ、豆乳(特に調整調乳)はカルシウム量が決して低いわけではないので、牛乳と合わせて摂取したり、ほかのカルシウム豊富な食品で不足分を補いながらであれば豆乳をメインにしても問題ありません。
その場合はカルシウム量が強化された豆乳飲料なども上手に取り入れて効率的に摂取することも大切ですね。
豆乳にはカルシウムだけでなく、健康や美容にいい栄養素が豊富に含まれています。今日から1日1杯を習慣にしてみませんか?