近年味噌の健康パワーが見直されてきました。味噌は塩分の多い食品として一時期敬遠されていた時期もありましたが、発酵食品である味噌ならではの栄養が分かってきています。
減塩味噌や便利なだし入り味噌も人気で、使いやすさや豊富な栄養成分から味噌汁を毎日飲む人も増えてきています。
この記事では味噌の栄養成分や健康効果について解説します。昔から日本人になじまれてきた味噌の力を再確認してみましょう。
目次
【種類別】味噌の塩分・栄養成分を比較しながら解説
日本各地にさまざまな種類のある味噌。味噌の製法は、ほとんどが江戸時代に確立したと言われています。江戸時代には味噌にまつわることわざもたくさん作られました。
「味噌の三礎(みそのみそ)」は味噌には「味礎、身礎、美礎」の3つの「礎(そ:土台の意味)」があるとの、しゃれたことわざです。
昔から栄養豊富な食品として知られてきた味噌の、塩分や栄養成分について見ていきましょう。
味噌の塩分濃度を比較
味噌と言えば、やはり気になるのは塩分量ですね。文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」から、主な味噌の100g当たりに含まれる塩分を見ていきましょう。
・米味噌 信州味噌など:12.4g
・米味噌 減塩タイプ:9.7g
・米味噌 西京味噌など:6.1g
・麦味噌:10.7g
・豆味噌(八丁味噌など):10.9g
味噌は種類によって塩分量がかなり違っているのが分かります。栄養豊富な味噌を毎日体に摂り入れるために、塩分量は買う時にチェックしておきましょう。
味噌の主な栄養成分って?
味噌は栄養豊富と言いますが、実際にはどのような栄養成分が含まれているのでしょうか。
主要な味噌の栄養成分表
米味噌 | 麦味噌 | 豆味噌 |
|
---|---|---|---|
エネルギー | 182kcal | 184kcal | 207kcal |
たんぱく質 | 12.5g | 9.7g | 17.2g |
脂質 | 6.0g | 4.3g | 10.5g |
炭水化物 | 21.9g | 30.0g | 14.5g |
ナトリウム | 4900mg | 4200mg | 4300mg |
カリウム | 380mg | 340mg | 930mg |
カルシウム | 100mg | 80mg | 150mg |
マグネシウム | 75mg | 55mg | 130mg |
リン | 170g | 120mg | 250mg |
鉄 | 4.0mg | 3.0mg | 6.8g |
ビタミンE | 9.6mg | 6.0mg | 17.4mg |
ビタミンK | 11㎍ | 9㎍ | 19㎍ |
ビタミンB群 | 5.64mg | 4.64mg | 4.89mg |
葉酸 | 68㎍ | 35㎍ | 54㎍ |
脂肪酸 | 5.69g | 3.98g | 9.79g |
水溶性食物繊維 | 0.6g | 0.7g | 2.2g |
不溶性食物繊維 | 4.3g | 5.6g | 4.3g |
食塩相当量 | 12.4g | 10.7g | 10.9g |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より
栄養豊富と言われる味噌ですが、特に豆味噌(八丁味噌など)の栄養成分の量の多さが目につきます。
豆味噌は米や麦を使わずに豆だけを発酵させて作られているため、大豆の豊富な栄養成分がたっぷりと含まれている食品なのですね。
基礎食品群で味噌は何群?
私たちの食生活のバランスを整えるための便利なツールに「6つの基礎食品群」があります。
・1群:魚、肉、卵、大豆、大豆製品
・2群:牛乳、乳製品、改装、小魚類
・3群:緑黄色野菜
・4群:淡色野菜、果物
・5群:穀類、いも類、砂糖
・6群:油脂類、脂肪の多い食品
6つの食品群からまんべんなく、毎日30品目以上の食べ物を摂ることを目標にします。味噌は大豆の加工品ですので、この食品群の中では「1群」に分類されています。
『もろみ味噌』と普通の味噌、栄養の違いはあるの?
「もろみ味噌」とは、麦や大豆、米から作った麹に塩水を加えて熟成したものです。この工程は醤油を作る時と同じもので、もろみ味噌を絞って取り出した液体が醤油になります。
もろみ味噌と普通の味噌との違いは、もろみ味噌は麦や大豆がツブツブしているところ。居酒屋のメニューなどで見かけることのある食べ物です。
もろみ味噌の栄養は通常の味噌と同じで、たんぱく質や脂質、ナトリウムなどのミネラルやビタミン類です。
味噌を濾したあとの残りカスに栄養はあるの?
市販の味噌はすでにこした状態で売られているため、こすことはほとんどないかもしれません。手作り味噌やつぶ味噌、麦味噌はつぶが残っているため、こし器などでこして使うことが多いようです。
味噌をこしたあとの残りカスの中には栄養がいっぱい。舌触りや食感が気になる人はこした方が美味しく食べられますが、栄養の点で見るとつぶも一緒に食べることをおすすめします。味噌の豊富な栄養を余さずに体に取り入れられますよ。
ちなみに、手作り味噌は添加物が入っていませんので、健康面を気にしてらっしゃる方には特におすすめです。
手作りと聞くとハードルが高いように思われるかもしれませんが、最近では手軽に作れるリーズナブルな手作りキットなども販売されています。こちらの記事で特集をしていますので、ぜひあわせて参考にしてみてくださいね。
味噌に含まれる7種類の注目の栄養素
大豆は栄養豊富な食品ですが、加熱調理をしても消化吸収があまり良くないのが残念な点です。大豆を発酵させて味噌にすることで、大豆が分解されて体に栄養が吸収されやすくなります。
また発酵の段階で大豆にはなかった栄養分も生まれ、一つの食品にこれほどの栄養素が豊富に含まれるのは珍しいと言われています。
ここからは味噌の主な7つの栄養素について見ていきましょう。
【大豆と言えば!】大豆たんぱく質
味噌に含まれる代表的な栄養成分と言えば、「大豆たんぱく質」ですね。
大豆は昔から「畑の肉」と呼ばれ、肉に負けないたんぱく質を含むことで知られてきました。味噌には発酵により大豆たんぱく質から分解された、人間の体に必要とされる必須アミノ酸9種類がすべてバランスよく含まれています。
・血中コレステロールを低下させる効果
・肉のたんぱく質に比べ低カロリー
・脂質の代謝を促すことによるダイエット効果
たんぱく質は、人間に無くてはならない大切な栄養素です。味噌汁などで毎日摂りたいですね。
味噌を摂りたいけれど市販されているサイズのものは使いきれない…、という方は小容量タイプの味噌の選び方のコツも参考にしてみてください。
大豆イソフラボンは女性の味方
「大豆イソフラボン」は女性ホルモン(エストロゲン)に分子構造が似ているため、エストロゲンに似た作用を持つことがわかり、近年女性の健康のために注目されている成分です。
・エストロゲンの不足を補う効果
・細胞の新陳代謝を高める効果
・悪玉コレステロールを排除する効果
大豆イソフラボンは大豆を食べるだけでは吸収できないため、発酵させて分解する必要があります。味噌は日々の食事で、効果的に大豆イソフラボンを摂れる食品です。女性の美容にも効果が期待できますよ。
【体に必須】大豆レシチン
「大豆レシチン」は脂肪酸の一種ですが、体内で合成されない必須脂肪酸が多く、コレステロールを含まないのが特徴です。
・動脈硬化や脳卒中などの予防効果
・肝臓から中性脂肪を運び出す効果
・脳の神経伝達物質の材料になり、脳の働きを活発にする効果
ビタミンEはレシチンを酸化から守る働きがあります。またレシチンとたんぱく質を一緒に摂ることで、中性脂肪の排出効果が高まります。
ビタミンEやたんぱく質の含まれている味噌は、レシチンの働く理想的な栄養バランスと言えるでしょう。
【サビから守る!】大豆サポニン
「大豆サポニン」には強い抗酸化作用があります。大豆を煮た時に石鹸のような泡が見られますが、この泡がサポニンで「天然の界面活性剤」とも呼ばれています。平安時代には、大豆を煮た汁で髪を洗ったのだそうですよ。
・活性酸素を消去する効果
・免疫力を向上させる効果
・肝機能を向上させる効果
大豆以外にもサポニンを含む食品はありますが、大豆サポニンは安全性が高いことが特徴です。大豆の胚芽に多く含まれるため、大豆を丸ごと食べられる味噌は大豆サポニンを無駄なく摂取できる優れた食品です。
【塩分の調整役】カリウム
「カリウム」はミネラルの一種で、血圧を調節して体内の水分の調整を行う働きをしています。野菜類や海藻に多く含まれています。
・塩分を排出し、高血圧を予防する効果
・むくみの予防、改善の効果
・筋肉や心臓の動きを正常に保つ効果
味噌は塩分が多いイメージがありますが、カリウムも含む栄養バランスのいい食品です。味噌汁を作るときにカリウムの豊富な野菜やとろろ昆布などの海藻を具にすると、さらにナトリウム分の排出効果が期待できますよ。
【みんな知ってる】カルシウム
「カルシウム」は誰でも一度は聞いたことのある、骨の健康に欠かせない栄養素です。「骨粗しょう症の予防にカルシウムを」との言葉はよく聞きますね。
・骨や歯の材料になる
・神経が興奮するのを抑える効果
・筋肉を収縮させるのに必要
味噌自体にもカルシウムが含まれますが、味噌汁にすると具の豆腐や海藻類などに含まれるカルシウムも摂れます。具だくさんの味噌汁でカルシウムをしっかりとりましょう。
【腸活!】食物繊維
食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」があり、味噌には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が両方含まれます。
・食後の血糖値の上昇を抑制する効果
・コレステロールを排出する効果
・腸の働きを刺激しておなかの調子を整える効果
食物繊維は大腸で善玉菌のエサになることで、善玉菌が増加します。味噌の製法で水煮大豆を使う味噌と蒸し大豆を使う味噌とでは、水溶性食物繊維の量が2倍も違うことが分かっています。
味噌は栄養の詰まったスーパーフードだった
「味噌の医者いらず」など、味噌には健康に効果のある栄養が豊富に含まれています。酵母や発酵の過程で発生する乳酸菌も消化吸収の働きを助ける効果があり、豊富な栄養成分を吸収しやすい形になっています。
味噌には大豆由来の独特な栄養もたくさんあり、女性にうれしい成分も豊富で健康だけでなく美容にも効果が期待できます。
具だくさんのお味噌汁にすれば、さらにプラスの栄養分が摂れますよ。ぜひ毎日の食卓に味噌を使った料理を取り入れてくださいね。