ココナッツオイルを売っている通販サイトなどを見ていると、ココナッツオイルは熱を加えても酸化しにくいから安心と書かれているものをよく目にします。これはどのようなことを意味しているのでしょうか?
また、キャノーラ油やオリーブオイルなどと比べて、あまりなじみのないココナッツオイル。買ったのはいいものの、保存方法や賞味期限がわからずに困ってしまうことはありませんか?
この記事では、ココナッツオイルの酸化、賞味期限や保存方法などについて、詳しく解説します。
目次
ココナッツオイルは酸化しにくいって本当なの?
酸化した油は身体に良くないと聞いたことはありませんか?酸化した油が身体に悪いとなると、もしもココナッツオイルが酸化しにくいのであれば安心だと言えますよね。実際のところはどうなのでしょうか?
そもそも油が酸化するとはどういうこと?
油の酸化とは、簡単にいうと油の成分に酸素が結びつくことです。油は長期間保存したり、揚げ物などの高温の料理に使うと劣化しますが、この劣化はすべて油の酸化によって起こります。
油は脂肪酸という成分からできていますが、脂肪酸はその性質によって「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」というものに分けられます。
飽和脂肪酸は酸素と結びつきにくい構造をしているので酸化しにくく、逆に不飽和脂肪酸は酸素と結びやすい構造をしているので酸化しやすいという特徴があります。
ココナッツオイルはほとんどが酸化しにくい「飽和脂肪酸」
一般的に、酸化しやすい不飽和脂肪酸は常温では液体で、植物性の油や魚の油に多く含まれています。しかし、ココナッツオイルは植物性油のなかでも特殊な存在で、酸化しにくい飽和脂肪酸が非常に多いことが特徴です。
不飽和脂肪酸 (g) | 一価不飽和脂肪酸 (g) | 多価不飽和脂肪酸 (g) |
|
---|---|---|---|
ココナッツオイル | 84.0 | 6.6 | 1.5 |
なたね油(キャノーラ油) | 7.1 | 60.1 | 26.1 |
オリーブ油 | 13.3 | 74.0 | 7.2 |
ごま油 | 15.0 | 37.6 | 41.2 |
あまに油 | 8.1 | 15.9 | 71.1 |
ラード | 39.3 | 43.6 | 9.8 |
不飽和脂肪酸は、その構造によってさらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」とに分けられます。
多価不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸よりもさらに酸化しやすい成分です。ココナッツオイルは多価不飽和脂肪酸がとても少ないことから考えても、酸化しにくい油であることがわかると思います。
ココナッツオイルは酸化の心配はないの?
ココナッツオイルが酸化しにくいとは言っても、酸化する不飽和脂肪酸も少し含まれています。ですから、長時間空気に触れさせていると、徐々に徐々に酸化は進んでいきます。
これまで説明してきた油の酸化は、空気中の酸素に触れることで起こるいわゆる「自動酸化」と呼ばれる酸化です。油は、空気との接触以外にも、光、熱、水、金属に触れることで酸化が起こります。
特に、熱によって起こる酸化は、自動酸化と比べると酸化する速度がとても速く、不飽和脂肪酸だけでなく飽和脂肪酸でも起こることがわかっています。
ですから、酸化しにくいココナッツオイルも、揚げ物や炒め物に使うと酸化しやすくなります。
油が酸化するとどうなるの?
油脂が酸化すると、過酸化脂質と呼ばれる物質を作り出します。実はこの過酸化脂質が、いろいろなところで悪さをする物質なのです。
揚げ油でたくさん揚げ物をしたり何度も同じ油で揚げたりすると、揚げ油が黒っぽくドロドロになり、すえたような匂いがしてきますよね。これも過酸化脂質の仕業です。
過酸化脂質は消化酵素で分解されにくいので、食べ過ぎると胸やけや胃もたれが起こりやすくなります。
鼻につくような匂いがするほど酸化している油を食べると、頭痛や嘔吐・下痢といった食中毒に似た症状が出ることもあるので注意が必要です。
ココナッツオイルの賞味期限と保存方法
ココナッツオイルも時間が経つと少しずつ酸化は進むので、いつまでも食べられるわけではありません。では、ココナッツオイルの賞味期限はどのくらいなのでしょうか?賞味期限と保存方法について解説します。
ココナッツオイルの賞味期限と開封後の使用期限
日清オイリオの公式サイトの情報によると、未開封の『日清 有機エキストラバージンココナッツオイル』の賞味期限は1年半となっています。
また、開封後は、賞味期限にかかわらず、1~2ヶ月を目安に使い切ることを推奨しています。
ココナッツオイルは他の植物油と比べて酸化しにくい特徴がありますが、賞味期限も長めに設定しているのでしょうか?他の植物油と比べてみました。
保存方法 | 未開封 | 開封後 | |
---|---|---|---|
日清有機エキストラバージンココナッツオイル | 常温、暗所保存 | 1.5年 | 1~2ヶ月を目安 |
日清キャノーラ油 | 常温、暗所保存 | 1.5年 | 1~2ヶ月を目安 |
BOSCO エキストラバージンオリーブオイル | 常温、暗所保存 | 2年 | 1~2ヶ月を目安 |
かどや純正ごま油(PET) | 常温・暗所保存 | 1.5年 | 1~2ヶ月を目安 |
日清アマニ油フレッシュキープボトル | 常温・暗所保存 | 1年 | 1~2ヶ月を目安 |
雪印メグミルク純製ラード | 直射日光、高温を避け保存 | 180日 | お早めに |
この表を見る限り、ココナッツオイルは劣化しにくいとはいえ、他の植物油とだいたい同程度の賞味期限が設定されています。
ですから、ココナッツオイルの未開封および開封後の目安としては、キャノーラ油やオリーブオイルなどと同じような感覚で使い切るようにすればよいですね。
ココナッツオイルの保存方法
ココナッツオイルの融点は約24℃。20℃以下では白い固形、20~25℃ではペースト状、そして、25℃以上では透明の液体になります。
ココナッツオイルのパッケージには、「常温、暗所保存」と書かれています。
冷蔵庫に入れる必要はありませんが、油の酸化は温度や光の影響を受けやすいので、できるだけ涼しくて光の当たらない場所に保存することが望ましいですね。
夏場で室温が高くなりそうな場合は、冷蔵庫に入れる方がよいかもしれません。開封後も同様に常温・暗所保存で大丈夫ですが、2ヶ月くらいを目途に使い切るようにしましょう。
酸化しているかどうかの見分け方
ココナッツオイルは他の植物油と比べると酸化しにくい油ですが、万一酸化してしまった場合は身体に悪影響を与える可能性があるので使用しないようにしましょう。
酸化しているかどうかの見分け方でもっともわかりやすいポイントが「匂い」です。
劣化していないココナッツオイルの場合、バージンココナッツオイルは甘い芳香で、RBDココナッツオイル(精製しているもの)は無臭です。
酸化が進むと他の油と同じようにすえたような酸化臭がするようになります。また、油で熱した時に泡立ちが激しくなることもあります。
新鮮なココナッツオイルの匂いや状態を覚えておいて、少しでも異変を感じたら使わないようにした方が無難です。
ココナッツオイルにもカビが生える?!
SNSなどを見ていると、ココナッツオイルにカビが生えた!と書かれていることがあります。
ココナッツオイルは脂肪分が100%。カビは水分のない状態では生育できないので、カビが生えないのではないかと思えますよね。
しかし、過去にも、日清オイリオをはじめ、数社が扱っている未開封のココナッツオイルにカビが生えていて、自主回収に至った例がいくつかあります。
ココナッツオイルは固まっていると白いので、カビの見分けが付きにくいかもしれません。
表面にもやもやとした物体が付いている場合や、湯煎などで溶かした際に溶けない白い塊がある場合は、カビを疑った方がよいでしょう。
カビを生やさないようにするには
ココナッツオイルの輸入者のひとつである「株式会社朝日」は、ココナッツオイルにカビが生えた原因として、海外で製造したココナッツオイルの瓶の洗浄不足、殺菌不足を挙げています。
瓶の汚れ以外にも、ココナッツオイルをスプーンなどで取る際に、水分や他の液体などが混入するとカビが生える可能性があるので注意が必要です。
ココナッツオイルを取る時は乾いた清潔なスプーンなどを使い、他の食品や調味料などが入らないように注意しましょう。
プラスチック容器での保存はNG!
多くのココナッツオイルには、開封後は常温もしくは冷暗所に保存をして、1~2ヶ月を目安に使い切るように書かれています。それ以外にも、以下のような注意点が書かれていることがあります。
- ・本品はポリスチレン製の容器(カップラーメン等)には使用しないでください。
- ・オイルの性質上、プラスチック、スチレン系樹脂の容器への使用はお控えください。
これはどういうことなのでしょうか?調べてみると、「CIVGIS(チブギス)オーガニックエキストラバージンココナッツオイル」のパッケージに次のように書かれていました。
・プラスチック使用によるBPA(内分泌攪乱化学物質としての懸念)が溶け出すリスクを避けるためにガラス瓶を使用しています。
つまり、プラスチックやポリスチレンなどはココナッツオイルに触れると変質して、BPA(ビスフェノールA)という身体に悪影響を及ぼす可能性のある物質が溶け出す恐れがあるそうです。
ですから、ココナッツオイルをプラスチック容器で保存したり、カップ麺に直接入れたりすることは避けるようにしましょう。
まとめ:ココナッツオイルも酸化する可能性がある!
ココナッツオイルは、大部分が酸化しにくい飽和脂肪酸でできているために、他の植物油と比べると酸化しにくいという特徴があります。
しかし、まったく酸化しないわけではなく、長期間保存していると少しずつ酸化が進んでいきます。
特に、加熱すると飽和脂肪酸でも酸化が進むため、一度加熱したココナッツオイルを使い回すことは避けた方が無難です。また、水分などの混入によってカビが発生することもあります。
保存方法に注意して、開封したココナッツオイルはできるだけ早めに使い切るようにしましょう。