そう思っている人も多いのではないでしょうか?
牛脂の賞味期限をインターネットで調べてみても、はっきりとした答えが出てきません。そこで、牛脂の日持ちはどのくらいなのか、また、保存方法はどうすればよいのか、さまざまな角度から探ってみました。
目次
牛脂の賞味期限は牛脂の種類によって変わる!
牛脂は読んで字のごとく牛の脂分のことですが、大きく分けると2種類の牛脂が存在します。牛脂の種類によって賞味期限も変わってくるので、違いを覚えておくとよいでしょう。
肉屋で入手できる未精製の牛脂
未精製の牛脂とは、牛の脂身をそのまま切り取ったもの。肉屋で牛肉を購入すると、無料で付けてくれる牛脂ですね。
主に、腎臓の周りに付いているケンネ脂、乳房の脂肪であるチチカブ脂、ロースやサーロインに付いている背脂などを切り取っただけの牛脂です。
牛の脂身を切り取っただけなので、色は黄色やピンクがかった鈍い白色で、見た目もゴツゴツとしています。フライパンなどで焼くと、脂が溶けた後にコラーゲンや筋などが残ります。
スーパーで貰える抽出・精製した牛脂
ケンネ脂などの牛の脂身から、脂分だけを抽出・精製した牛脂です。よく、スーパーの精肉売り場で、「ご自由にお取りください」と書いて置いてある牛脂ですね。
脂分だけを高温で抽出し、筋やコラーゲンなどは取り除かれているので、色はきれいな白か薄く黄色がかった白色をしています。見た目もキメが整っていて、どちらかというとサラサラとした感じのする脂です。
脂分だけを抽出しているので、フライパンなどで加熱すると全部きれいに溶けてしまいます。また、添加物として「酸化防止剤(V.E.)」を入れている精製牛脂も多くあります。
牛脂の種類によって賞味期限が変わる理由は?
では、なぜ精製した牛脂と未精製の牛脂とでは賞味期限が変わってくるのでしょうか?その理由は、精製した牛脂と切り取っただけの牛肉の脂身とでは成分が変わってくるからです。
脂質(g) | 水分(g) | たんぱく質(g) | |
---|---|---|---|
精製した牛脂 | 99.8 | 微量 | 0.2 |
和牛の背脂 | 78.0 | 17.7 | 4.2 |
国産牛の背脂 | 80.5 | 15.6 | 3.7 |
輸入牛の背脂 | 73.1 | 19.9 | 5.7 |
このように、精製した牛脂はほぼ油脂分のみであることに対し、切り取っただけの脂身には水分やたんぱく質が含まれています。
油脂分だけの牛脂と水分やたんぱく質を含む牛脂とでは、劣化の仕方が変わります。このことが賞味期限にも影響してくるのです。
未精製の牛脂の賞味期限と保存方法
では、肉屋で手に入れられるような未精製の牛脂はどのくらいの日持ちがするのかについて、検証していきましょう。
市販の牛脂の賞味期限を調べてみた
通販で購入できる未精製の牛脂の賞味期限を調査してみると、次のようになりました。
商品A:冷凍180日
商品B:冷蔵4日 冷凍2か月
商品C:冷凍保存で90日
商品A:冷凍で30日
商品B:冷蔵5日以内、冷凍で1ヶ月
商品C:冷凍保存で3週間
商品D:冷蔵保存で約14日間、冷凍保存で約30日間
消費期限は製造元や販売元が決めるので、商品によってけっこうバラつきがあります。真空パックをされている牛脂は冷凍で2~3ヶ月、真空パックではない包装の牛脂は冷凍で1ヶ月程度の商品が多く見られました。
未精製牛脂の冷凍および冷蔵の場合の日持ちの目安は?
通販の未精製牛脂の賞味期限を参考にすると、肉屋で入手できるカットしただけの牛脂の日持ちは冷凍保存で1ヶ月程度、冷蔵の場合だと4~5日が妥当だと言えるでしょう。
公益財団法人『日本食肉消費総合センター』によると、牛肉の冷蔵室での保存の目安は、薄切りで3日、切り身で4日、ブロックで5日、冷凍保存の目安は約1ヶ月だそうです。
つまり、未精製牛脂の場合も、牛肉とほぼ同じ保存期間と考えておくとよさそうです。
おすすめの保存方法は?
未精製の牛脂も、良い保存状態で冷凍すれば1ヶ月程度は安全な状態で食べられますが、保存方法が悪いと冷凍焼けを起こすなどして劣化が早まってしまう可能性があります。
冷凍保存する場合は、以下の点に注意しましょう。
1.入手したらできるだけ早いうちに冷凍する
2.小分けにしてラップでしっかりと包んでから、ファスナー付きのフリーザーバックで密閉して冷凍する
3.再冷凍すると傷みやすくなるので、解凍した牛脂は2~3日中に使い切る
ちなみに、フリーザーバッグはまとめ買いをしておくと、コスパ的にもかなり助かりますよ。大容量のコスパのいいものは薬局などでもあまり見かけないんですよね。
また、通販を利用する際には、ハピタスのようなサイトを使うとお得です。ここのバナーを経由して楽天などの通販で購入するだけで、現金等価のポイントが1%もらえます。1%値引きは案外侮れません…!
また、冷凍せずに冷蔵保存して数日で使い切る場合も、ラップに包んでから袋に入れて密閉しておくとよいでしょう。
スーパーで貰える小袋入りの牛脂の賞味期限と保存方法
では、スーパーの精肉売り場で無料で貰える小袋入りの牛脂の日持ちはどれくらいなのでしょうか?
似たような脂の賞味期限を調べてみた
業務用に発売されている一斗缶入りの精製牛脂(脂質100%・酸化防止剤入り)の賞味期限は、未開封で270日です。
しかし、工場で滅菌された状態で一斗缶に充填された精製牛脂が未開封、つまり空気に触れていない状態での保存期間。小袋入りの牛脂とは保存条件が違い過ぎるために、あまり参考にはなりません。
そこで、似たような他の固形油脂の同じような条件、つまり空気に触れやすくなった開封後の日持ちについて調べてみました。
・ラード:冷暗所で常温保存。「開封後は賞味期限にかかわらず、早めにお召し上がり下さい」
・ショートニング:冷暗所で常温保存。「開封後は、お早めにお召し上がりください」
・マーガリン:冷蔵庫で保存。「賞味期限にかかわらず、早めにお召し上がりください」
・バター:冷蔵庫で保存。「開封後は、お早目にお召し上がりください」
どの固形油脂も、開封後は早めに使用するようにというだけで、具体的な保存期間については示されていませんでした。
しかし、『マリンフード株式会社』のHPには、「マーガリンは開封後1ヶ月を目安に使い切ることをおすすめ。」
また、『株式会社ニチレイ』のHPには、「バターは開封後2週間以内に使うことが望ましい」と書かれているので、参考にできますね。
小袋入りの牛脂の日持ちの目安はどう考えればよい?
スーパーで無料で貰える小袋入りの牛脂は、大半のものが脂肪分だけを抽出・精製している牛脂です。
つまり、含まれている水分とたんぱく質は未精製の牛脂よりも確実に少ないので、最低でも未精製の牛脂よりも同程度か、それよりも少し長く日持ちがすると考えられます。
小袋入りの牛脂の賞味期限を探るために、他の固形油脂と成分を比較してみましょう。
脂質(g) | 水分(g) | たんぱく質(g) | 飽和脂肪酸(g) | 不飽和脂肪酸(g) | |
---|---|---|---|---|---|
牛脂(精製) | 99.8 | 微量 | 0.2 | 41.05 | 48.62 |
ラード | 100 | 0 | 0 | 39.29 | 53.37 |
有塩バター | 81.0 | 16.2 | 0.6 | 50.45 | 20.11 |
ショートニング | 99.9 | 0.1 | 0 | 46.23 | 47.10 |
マーガリン | 83.1 | 14.7 | 0.4 | 23.04 | 52.30 |
上の表を見ると、精製牛脂の成分は常温保存の可能なラードやショートニングと似ていますよね。
そして、開封後は冷蔵保存で1ヶ月が目安というマーガリンよりも水分は少なく、酸化しやすい不飽和脂肪酸の量もやや少なめです。
つまり、常温保存もできないことはないけども、冷蔵保存すると1ケ月程度は日持ちがすると言えそうですよね。
小袋の牛脂のおすすめの保存方法は?
小袋に入った牛脂は冷蔵保存で1ヶ月程度は日持ちがしそうとは言え、実際に細菌検査をしたわけではないので確実だとは言えません。
SNSでは、「冷蔵庫で放置していたらカビていた」という書き込みが多いことからも、すぐに使わない場合は、冷蔵保存よりも冷凍保存の方が確実ですね。
長く保存しない場合は冷蔵庫で保存しても問題ないでしょうが、使用する前に、カビが生えていないか、変色していないか、異臭がしないかどうかを必ず確認するようにしましょう。
賞味期限を過ぎた牛脂はどうなるの?身体への影響は?
では、牛脂が古くなるとどのような劣化が起こるのでしょうか?そして、古くなった牛脂を食べると身体にどのような影響があるのでしょうか?
牛脂の劣化その1:油脂分が酸化する!
油が酸化すると身体に良くないらしいということはよく耳にしますよね。
例えば、揚げ物の油を何度も使っていると油が酸化して、色が真っ黒になってきて泡がたくさん立つようになり、不快な臭いを放つようになってきますよね。これと同じように、牛脂も古くなると酸化してしまいます。
これは、構造的に不安定な不飽和脂肪酸という油脂の成分が酸素を結びつくことにより、過酸化脂質という身体に有害な成分を作り出してしまうためです。
油脂の酸化は、酸素に触れることの他に、温度になること、太陽光や蛍光灯などの光に当たることによっても起こります。
酸化した牛脂を食べるとどうなるの?
古くなった油で作った揚げ物を食べると、気持ちが悪くなったり胸やけがしたりすることがありますよね。植物油の場合は、3回くらい揚げ物をすると油の酸化が進むので、新しい油に交換した方がよいと言われています。
では、牛脂の場合はどうでしょうか?油脂の酸化を早める不飽和脂肪酸の量を植物油と比較してみましょう。
飽和脂肪酸(g) | 不飽和脂肪酸(g) | |
---|---|---|
牛脂(精製) | 41.05 | 48.62 |
和牛背脂 | 26.44 | 43.21 |
国産牛背脂 | 32.71 | 40.59 |
なたね油 | 7.01 | 86.19 |
ごま油 | 15.04 | 78.78 |
オリーブ油 | 13.29 | 81.28 |
牛脂の場合、不飽和脂肪酸の量は植物油の約半分ほど。代わりに酸素と結びつきにくい飽和脂肪酸が多いため、植物油に比べると酸化しにくいという特徴があります。
そうは言っても、牛脂はまったく酸化しないというわけでなく、少しずつ酸化は進んでいきます。そのため、長期間保存した牛脂を食べると古い植物油と同じように胸やけなどを起こすことがあります。
さらに、不快な臭いを明らかに感じるようになると、腹痛、下痢、嘔吐などの食中毒に似た症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。
牛脂の劣化その2:腐敗とカビ
未精製の牛脂は、普通の牛肉と同じように腐ったりカビが生えたりします。その要因となるのが、未精製の牛脂に含まれている水分やたんぱく質です。
牛脂に細菌が繁殖すると、たんぱく質を分解して有害物質を作り出し腐敗が始まります。また、真菌という微生物が繁殖するとカビが発生します。
微生物が繁殖するためには、水分と栄養分が必要です。未精製の牛脂には、細菌や真菌が増殖するために必要な栄養分(たんぱく質)や水分が含まれているので、腐ったりカビが生えたりすることがあるのです。
精製をして完全に油脂分だけを抽出して水分とたんぱく質が除去された牛脂は、腐敗やカビが発生する可能性はとても低いと言えます。
しかし、スーパーで貰える精製牛脂でも、製造工程によっては水分やたんぱく質が残っている牛脂もあります。
そのため、袋入りの牛脂も長期間保存しておくとカビが発生することもあるので注意しましょう。
まとめ:牛脂の賞味期限は冷凍保存で1ヶ月程度がひとつの目安
牛脂は植物油脂と比べると酸化しにくいことが特徴ですが、まったく酸化しないわけではありません。長期間保存していると酸化が進み、身体に良くない影響を与えることもあるので注意が必要です。
また、植物油脂と違い多少の水分やたんぱく質が含まれていることもあるので、カビや腐敗にも注意する必要があります。
冷凍保存の場合、1ヶ月程度は安全に食べられそうですが、風味が落ちてくる可能性もあるので、できるだけ早めに使い切るようにすることがおすすめです。