わさび鍋って知っていますか?
私も最初に聞いた時は激辛料理を想像したのですが、どうも違うようで食べた人の話では絶品だと評判です。
そこで、わさび鍋とはどのような料理なのか、どこへ行けば食べられるのか、そして、自分で作ることはできないのか?わさび鍋について気になることをいろいろ調べてみました。
目次
わさび鍋ってどういう料理?
まずは、わさび鍋がいったいどのような料理であるのかについて、詳しく探ってみましょう。
天城湯ヶ島(静岡県伊豆市)のご当地料理
結論から言うと、わさび鍋というのは伊豆・天城湯ヶ島のご当地料理です。静岡県は水わさび(清流で栽培されるわさび)の日本有数の産地です。
・天城山系の年間降水量が3,000〜4,000ミリとかなり多いこと
・雨水が噴火堆積物の層を通って養分を豊富に含む湧水になること
・湧水の水温が年間を通して13℃前後であること(水わさび栽培の適温は12~15℃)
このような理由から、伊豆地方は良質の水わさびが採れることで知られています。
なかでも天城湯ヶ島産のわさびは、全国わさび品評会で農林水産大臣賞および林野庁長官賞を受賞した回数が最も多く、質の高さが評価されています。その上質なわさびをたっぷりと使用して作るのが、湯ヶ島のわさび鍋です。
わさび鍋の特徴は?
天城湯ヶ島のわさび鍋の定義はたったひとつだけ。伊豆市の天城湯ヶ島地区で栽培・収穫された生わさびを使うこと。出汁やスープの種類、鍋に入れる具材に特に決まりはありません。
醤油ベースの味付けをした出汁・スープで野菜や肉や魚などを煮込み、具材が煮えたら大量の大根おろしを加え、最後に丸々1本分の湯ヶ島産の生わさびをすりおろして鍋に加えるのが一般的な作り方のようです。
実際に、湯ヶ島地区ではわさび鍋を提供している宿や飲食店がいくつかありますが、中に入っている具材はさまざまです。
共通しているのは、わさび鍋の材料には地元で採れる食材を多く使っていることなので、わさび鍋はまさにご当地鍋と呼ぶのにふさわしい料理と言えますね。
辛いものが苦手な人でも食べられる?
わさびと言えば、鼻にツーンと抜ける辛さが特徴ですよね。丸々1本分のおろしたての生わさびが入っていると聞くと相当辛そうに思えますが、実際はどうなのでしょうか?
わさびの辛味成分は「アリルイソチオシアネート」という物質です。
わさびには「シニグリン」という辛味の素になる成分と「ミロシナーゼ」という加水分解酵素が入っていて、わさびをすりおろすことによってシニグリンとミロシナーゼと水分とが混ざり合い、辛味成分のアリルイソチオシアネートが生成されます。
この成分は揮発性が高いため、加熱するとより揮発しやすくなります。つまり、わさびを入れて加熱すると、辛味が抜けてわさびの風味だけが残るという仕組みです。
また、大根もわさびと同じアブラナ科の植物。大根おろしにも同じ辛味成分が含まれています。おろし大根を熱い鍋に入れることで、わさびと同じように辛味成分が抜けて、よりまろやかな味になるのです。
逆に、わさびの辛さを楽しみたいなら、わさびをなるべく加熱しないようにするとよいですね。
本場のわさび鍋はどこで食べられる?
天城湯ヶ島には、わさび鍋を食べられる食堂や温泉旅館が全部で5ヶ所あります。どこでどのようなわさび鍋を食べられるのか、詳しく紹介していきましょう。
あまご茶屋
あまご茶屋は地元のあまご養魚場直営の店。柿木川源流近くで養殖したアマゴと湯ヶ島産のわさびを使った料理の専門店です。
あまご茶屋で食べられるわさび鍋は、1日5食限定。もともと湯ヶ島の旅館でしか提供されていなかったわさび鍋を、宿泊以外で来る人にも食べてほしいという理由から始めたそうです。
醤油ベースのアマゴの出汁に、新鮮なアマゴ、伊豆産の原木 しいたけ、わさび田で栽培したクレソン、えのき、白菜などを入れて煮込み、最後に大根おろしとおろしたてのわさびを加えます。
わさび鍋を味わった後は、別注文のごはんと卵のセットを注文しておじやにするのがおすすめです。
★店舗情報
住所 静岡県伊豆市市山540-1
電話 0558-85-2016
営業時間 11:00~15:00(定休日:水曜、繁忙期は営業)
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伊豆天城温泉郷 吉奈温泉 御宿 さか屋
吉奈温泉の「御宿さか屋」では、わさび鍋付きのプランで予約するとわさび鍋を食べられます。
さか屋のわさび鍋は、牛すじで取った出汁に、キンメダイなどの伊豆の地魚や貝、豚バラ、黒はんぺん、伊豆の名水で作った豆腐、天城どんこという しいたけなどを入れたもの。
大根おろしとすりおろしたわさびを入れて煮立たせると、牛すじの出汁と爽やかなわさびの風味が絡み合います。
・さわやかな香りと旨味の濃いお鍋でした
・特に鍋の最後の出汁は不思議と辛さよりもわさびのよい香りが印象的
・あんなにわさびを入れても味が崩れず、素晴らしいバランスのお出汁だったのに驚き
★宿情報
住所 静岡県伊豆市吉奈101
電話 0558-85-1100
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天城湯ヶ島温泉 湯ヶ島たつた
湯ヶ島温泉の「湯ヶ島たつた」は、年間を通して風情ある川床で食事を楽しめる宿で、わさび鍋は基本の夕食のメニューに含まれています。
湯ヶ島たつたのわさび鍋は、天城軍鶏(シャモ)仕立て。天城軍鶏で取った醤油ベースの出汁に、天城軍鶏、修善寺湯葉、や水菜などの野菜とたっぷりの大根おろしを入れて煮込み、最後にすりおろした山盛りの湯ヶ島わさびを入れてひと煮立ちさせます。
天城軍鶏の出汁の味とわさびの風味が絶妙なバランスで、〆は雑炊にしていただきます。
・すっと抜ける爽やかなわさびと大根おろしの風味に、柔らかい天城軍鶏の旨味が調和して最高
・わさびのツンとした香りと、爽やかな味わいが軍鶏の出汁と合い美味しかった
・わさび独特の尖った辛味はないのに、わさびの風味はしっかりあるという美味しさ
★宿情報
住所 静岡県伊豆市湯ケ島347
電話 0558-85-0511
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舩原温泉 もの忘れの湯 船原館
舩原温泉の「船原館」は、囲炉裏を囲んで食事を楽しめる宿です。
わさび鍋は、天城軍鶏のガラ出汁とかつお出汁を合わせた醤油ベースのスープに、合鴨、船原産のしいたけ、ごぼうを入れて煮込み、さらに修善寺湯葉とたっぷりの三つ葉が入ります。
最後に大量の大根おろしと、その場ですりおろした湯ヶ島わさびを入れて出来上がり。
軍鶏とかつおの出汁に しいたけの旨味が加わったやさしい味わいのスープに、わさびの爽やかな香りが絶妙にマッチします。
わさび鍋は基本の料理コースのメニューに含まれているので、年間を通して食べることはできますが、10月中旬~5月初旬は猪鍋が基本になります。
ですから、この時期にわさび鍋を食べたい場合は予約時に伝えておくようにしましょう。
・辛そうって感じがしましたが大根おろしとの相性がよいのか甘辛くて凄く美味しかった
・絶品で、コクのあるスープにすっきりしたワサビが合い、何杯もおかわりしました
・わさびが苦手なのでちょっと心配だったのですがすごく美味しかった
★宿情報
住所 静岡県伊豆市上船原518-1
電話 0558-87-0711
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天城湯ヶ島温泉郷 白壁
天城湯ヶ島温泉の「白壁」は、その名のとおり白壁となまこ壁が趣深い里山の古民家風で、わさび料理が自慢の温泉宿。以前は「白壁荘」という名でしたが、2019年に「白壁」としてリニューアルされました。
わさび鍋は白壁の名物料理で、基本プランの料理メニューに含まれています。
白壁のわさび鍋は、天城軍鶏のスープで天城軍鶏、天城産の しいたけ、赤水菜などの天城産の季節の野菜などを煮込み、たっぷりの大根おろしとその場ですりおろした湯ヶ島わさび、そして、天城産のクレソンをたっぷり入れたものです。
軍鶏の濃厚なスープに野菜の甘みとわさびの爽やかな風味が混ざりあります。おいしい出汁をたっぷりと吸った〆の雑炊も評判です。
・鍋の中で辛みは結構飛んでおり、わさび独特の風味が残り、本当に絶品でした
・天城軍鶏のプリプリの食感と風味豊かなわさびとの相性は抜群
・天然わさびは火を通すと辛味が柔らかくなり、軍鶏のお出汁もまろやかに。クレソンが重要です。
★宿情報
住所 静岡県伊豆市湯ケ島1594
電話 0558-85-0100
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湯ヶ島のわさび鍋を再現してみよう!
伊豆・天城湯ヶ島のご当地料理であるわさび鍋。食べに訪れた人に絶品だと評判の鍋を、家庭で再現できるとうれしいですよね。ここからは、家でもできるわさび鍋のレシピをご紹介します。
湯ヶ島のわさび鍋の再現レシピ
中日新聞の「2018年新年特集・中部7県 自慢の味」で掲載されていた、船原館によるわさび鍋のレシピをご紹介します。
【材料】(4人分)
わさび 1本
大根 半分
干し しいたけ 6個
ごぼう 50g
鴨肉 100g
生湯葉 6枚
三つ葉 3束
だし汁 600cc (かつおと昆布で取った出汁に、みりんと醤油を加えて味を調える)
【作り方】
1.しいたけは水で戻してそぎ切りにし、ごぼうはささがきにする。
2.戻したしいたけとささがきごぼうに、しいたけの戻し汁、醤油、みりんを加えて下味をつける
3.鍋に味を調えただし汁を入れ、2を入れて煮る。煮立ってきたら鴨肉を加えてさらに煮込む。
4.鴨肉に火が通ったら、生湯葉と三つ葉、大根おろしを入れ、最後にすりおろしたわさびを入れると完成。
【ポイント】
・わさびを卸し金ですりおろす時は、力を入れずに円を描くようにするのがポイントです。
・わさびは、加熱すればするほど辛味成分が飛びます。わさびの辛さを味わいたい人は、わさびを入れてすぐに火を消すとよいでしょう。
・〆は雑炊がおすすめです。
いろいろアレンジしてみよう!
ご紹介したレシピでは、鴨肉や湯葉、三つ葉などを使っていましたが、湯ヶ島の他のわさび鍋の特徴を参考にして、いろいろとアレンジをしてみるのもよいですね。
例えば、かつお出汁に鶏ガラスープの素を入れてもよいですし、湯葉の代わりに豆腐、鴨肉の代わりに鶏のもも肉を入れてもよいですね。
また、干ししいたけの代わりに生のしいたけやエノキなどを入れたり、白菜や人参などを入れたりするのもおすすめです。
とにかく、最後にたっぷりの大根おろしとわさびを入れるのがポイントなので、もっと簡単にしたいのであれば、市販の鍋スープなどを使用してもよいと思います。
わさびは市販のチューブでもできますが、わさび本来の香りを楽しむなら、できるだけ生のわさびをすりおろして入れようにしたいですよね。
材料を取り寄せるとさらに本格的に!
わさび鍋はシンプルな味付けであるだけに、よい素材を使うとさらにおいしくなりますよね。湯ヶ島の本場の味にさらに近づけたいのなら、こだわりの材料をお取り寄せしてみてはいかがでしょうか。
特に欠かせないのは天城産の水わさびです。もしくは伊豆産のわさびでもよいと思います。良質のわさびは辛味の中にある甘さや香りがとてもよいので、ぜひ使ってみたいものです。
また、天城軍鶏を取り寄せるのはなかなか難しそうなので、他の産地の軍鶏や地鶏などを取り寄せてみてもよいですね。
まとめ:湯ヶ島のわさび鍋を食べてみよう!
伊豆・湯ヶ島のわさび鍋は、湯ヶ島のなかでも食べられるところが限られているので、まさにご当地料理と言えますね。現地でなければなかなか味わえない料理なので、ぜひ一度湯ヶ島に足を運んで食べてみてください。
とは言っても、なかなか気軽に行くというわけにはいかないので、家でオリジナルのわさび鍋を作ってみるのもおすすめです。ぜひ、試してみてくださいね。