味噌に入っているアルコールはどんなもの?【酒精】の役割とは?

味噌は大豆と塩、米や大麦の麹から作られる、日本食に欠かせない発酵食です。発酵の過程で原材料の中にはなかった物質も生まれ、とても豊富な栄養が含まれています。

この間味噌を買ってきてパッケージを開けたら、ぷーんと日本酒のようなアルコールの匂いがしたの。悪くなってないか心配、食べられるかしら…?

味噌からお酒のような匂いがするのは普通のことですので、まずは安心してください。

味噌からアルコール臭がしても大丈夫ってことは、味噌にはアルコールが含まれているの?

発酵度合いや加工方法によって多少の違いはありますが、味噌にはアルコールが入っています。この記事では味噌に入っているアルコールの種類や、味噌とアルコールの関係や豆知識を紹介します。

味噌にアルコールは入ってるの?

味噌にアルコールは入ってるの?

市販の味噌には大きく分けて2種類のアルコールが含まれています。1つは発酵の段階で自然に発生するアルコールです。

 

麹菌は味噌の中で米や麦のでんぷんを糖に分解し、その糖をアルコールと二酸化炭素に分解します。そのため十分熟成していればどの味噌にも少量のアルコールが含まれています

 

もう1つは出荷の直前に混ぜる「酒精」と呼ばれるアルコールです。ではまず酒精について、入れる理由など詳しく見ていきましょう。

「酒精」って何?どうして入れているの?

「酒精(しゅせい)」はエチルアルコールのことで、日本では食品添加物に指定されています。エチルアルコールは日本酒などのお酒に普通に含まれ、口に入れても大丈夫な物質です。

 

酒精はトウモロコシやサトウキビを発酵させたあと、蒸留して作られています。これは焼酎やウオッカなどと同じ作り方です。

 

酒精には酵母菌の働きを止め、二酸化炭素の発生を防ぐ役割があります。酒精のメリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

酒精のメリット・デメリット

【酒精のメリット】

・パッケージが膨らんだり破裂したりするのを防ぎ、流通コストや味噌の価格を下げる

・味噌の発酵を止め、おいしい状態で長く保存することが可能になる

・化学薬品と違い自然なアルコールなので安心

 

【酒精のデメリット】

・味噌にアルコールの苦い味がつく

・混ぜることで味噌の香りや風味が落ちる

・麹菌や微生物の活動が停止する

酒精を入れることで発生するメリットやデメリットを考慮して、無添加の味噌にするか酒精の入った味噌にするのか選びましょう。

 

※添加物の有無や素材にこだわるなら、手作り味噌もおすすめですよ。ご興味のある方はぜひこちらの記事も参考にしてみてくださいね。

アルコール臭、どうして起こる?

市販の味噌でアルコール臭が気になるのは、新しい味噌のパッケージを開けたタイミングが多いですね。これは出荷の前に混ぜた酒精の匂いが残っているためです。

 

アルコールは揮発性ですので、使っているうちに匂いはしなくなります。また味噌汁などの加熱する料理なら、調理の過程でアルコール分は揮発します

どうしても気になるようなら、一度全体を混ぜてアルコールを飛ばすか、電子レンジで加熱するといいでしょう。

 

手作り味噌からアルコール臭がするときは発酵が進んでいる証拠です。これ以上発酵させたくない場合は、一度上下をよく混ぜてから冷蔵庫などの温度の低いところに味噌を移動させましょう。

味噌のアルコール度数はどのくらい?

市販の酒精の入った味噌のアルコール度数は、1.5~4%程度です。ビールは5%程度、日本酒は15%前後のアルコール度数があります。

 

実際に食べる量を考えてみましょう。味噌汁にした場合、味噌は10倍希釈が一般的なので0.150.4%のアルコール度数になります。

さらに調理の際に加熱することを考えれば、妊娠中の女性やお子さんが食べても安心なアルコール量であることがわかります。運転の前に味噌汁を飲んでも飲酒運転になることはありません。

 

※小さなお子さんへの味噌の使い方についてはこちらの記事で詳しく解説をしています。

酒精を入れた味噌は意味がない?

酒精を入れて麹菌などの微生物の活動を停止させた味噌は、もう意味がないのでしょうか。結論から言うと、麹菌などの微生物は生きて届かなくても腸にいい影響があります。

 

味噌に含まれる乳酸菌や麹菌は人間の体に入ると、胃酸や胆汁にさらされてほとんどが死んでしまうと言われています。しかし腸の中の善玉菌のエサになるほか、酵母菌が生成する酵素が善玉菌を増加させることが研究で分かっています。

 

味噌は長期熟成させると発酵の過程で発生したアルコールで、自ら麹菌などの微生物の活動を停止させていきます。あまり神経質にならずに、おいしい味噌を楽しみましょう。

味噌とアルコールの意外な関係

味噌とアルコールの意外な関係

味噌は発酵食品なので、アルコールとは切っても切れない関係があります。味噌の中に自然に含まれるだけでなく、調理の過程や食べた後もアルコールと関わっています。

 

ここからは味噌とアルコールについての豆知識を見ていきましょう。

味噌汁の【いい香り】はアルコール?

よく「味噌汁は煮え花」と言います。「煮え花(にえばな)」とは、味噌汁がぐらっと沸騰する直前(または直後)のことです。

実際に煮え花で火を止めた味噌汁と、ぐつぐつ煮込んだ味噌汁を食べ比べると香りが全然違っているのがわかります。実はこの香り成分、集めて蒸留させると火が着くのです。中身はなんとアルコールがほとんど

アルコールは90度以上になると揮発するため、煮え花で火を止めることでアルコールの香りの立ったおいしい味噌汁が味わえるのだそうですよ。

味噌は体内のアルコールを分解する

味噌汁は二日酔いに効くとよく聞きます。お酒を飲んだ後のシメや、飲み過ぎた朝に味噌汁を飲むと早くアルコールが排出される効果があるのはどうしてでしょうか。

 

お酒を飲み過ぎた翌日は、お酒の利尿効果のために脱水症状になっています。味噌汁は水を飲むよりも体に早く水分が吸収されるため、水分補給に効果があります

 

また味噌には「コリン」という物質が含まれており、肝臓の働きを助けてくれます。肝臓でアルコールを早く排出することができるために、二日酔いに効果があるのです。

味噌にアルコールが含まれるのは普通のこと

味噌には自ら発酵で作るアルコールと、出荷直前に混ぜるアルコールの2種類が含まれています。どちらも同じエチルアルコールで口に入れても安全なものです。

 

無添加味噌にも酒精の入った味噌にも、それぞれにメリットとデメリットがあります。どのような使い方をするのかによって、自分に合った味噌を選んでくださいね。

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