身近な食材で様々な料理に使えるにんにく。独特の香りが特徴的で、にんにくが効いた食事というのは本当に美味しくてついつい食べ過ぎてしまいますよね。
さてそんなにんにくですが、漢字でどのように書くのかあなたはご存じでしょうか?
そう思っている方が大半だと思いますが、実はスマホやパソコンでにんにくを変換すると
・大蒜
・葫
・忍辱
と出てくるんです。
はっきり言って、どれもにんにくとは読めないような気がします。しかしこれらの漢字には、きちんとその由来や成り立ちが存在するんですよ。
目次
にんにくは漢字で書くと大蒜?葫?その由来や成り立ちとは
日本ににんにくが伝来したのは今からおよそ1500年前と言われています。
実はにんにくが日本にやってきた当初から「にんにく」と呼ばれていたわけではありません。大蒜や葫という字が使用されており、これらは古事記や日本書紀にも記載されています。
現在ではにんにくという呼び方が一般的ですので、大蒜も葫も昔の読み方ではなく「にんにく」という読み方をしているんですね。
大蒜の読み方やその由来
古代日本ではにんにくのことを「蒜(ひる)」もしくは、「大蒜(おおびる)」と呼んでいました。蒜という字はネギやノビルなど、香りが強く食用となるユリ科ネギ属の多年草を総称する古名です。
意外に思うかもしれませんが、にんにくもユリ科ネギ属に入るネギの仲間なんですよ。
同じネギ属のノビルと区別をするためにノビルは「野蒜」、にんにくは「大蒜」と表記されるようになったようです。
葫の由来や成り立ち
葫という字は、昔の中国で使われていた漢名からきているようですね。
にんにくはシルクロードを通り西域諸国から中国へ伝えられたとされています。西域諸国(胡地)から持ち帰られたもの、ということで中国ではにんにくのことを「葫」と呼んでいました。
それが日本でも使われるようになったわけです。
にんにくは漢字で書くと忍辱?その読み方は仏教が由来
古来日本で呼ばれていた「ヒル」もしくは「オオビル」という呼び方がすたれ、「にんにく」という呼び方が一般的になったのは鎌倉時代以降とされています。
にんにくの語源と由来については諸説あるようですが、有力なのが仏教用語の忍辱が語源となった説です。全国に仏教が広まったことで、にんにくという読み方も世に広がっていったのでしょう。
仏教用語の忍辱には、
「侮辱や苦しみに耐え忍び、心を動かさないこと」
「種々の侮辱や苦しみを耐え忍んで、怒り・恨み・悪意などの心を持たないこと」
という意味があります。
いったいこの仏教用語がどうして食材のにんにくに使われるようになったのでしょうか?
説1:にんにくの強烈な匂いに耐えることが忍辱
にんにくの匂いは当時の人々にとっては耐えがたい匂いだったと言われています。僧侶たちは、この強烈な匂いのある食べ物を食さなければいけないという修行に耐える必要がありました。
この厳しい修行に耐えなければいけない、修行こそが忍辱であるという意味でその食べ物のことを「忍辱」と呼ぶようになったという説です。
説2:忍辱の修行に耐えるための体力作りに食べる
にんにくを食べると疲労回復に効果があったり、滋養強壮に効果があるとして現代では健康食品などにも使われていますよね。その効果は大昔から信じられていました。
古代エジプトではピラミッドを建設中の労働者に、スタミナをつけるためにんにくが配給されていた言われるほどのパワーを持っています。
僧侶たちも厳しい荒行(忍辱)に耐える体力をつけるため、にんにくを食べていたことからその名前がついた、という説です。
説3:禁止されていたにんにくを食べるための隠語が忍辱
仏教ではにんにくのような香りの強い食材は葷(くん)と呼ばれ、情欲・憤怒が増進する食品として禁止されていました。
地域によってその内容は違うようですが、主に
・にんにく
・玉ねぎ
・ねぎ
・ニラ
・ラッキョウ
があげられていて、これらをまとめて五葷(ごくん)と呼んでいます。
実は禁止されてはいたものの、中にはこっそりにんにくを隠れて食べていた僧侶もいたようですね。そんな時に仏教用語である忍辱を隠語として使っていたことが、にんにくの語源になったと言われている説です。
まとめ:にんにくは時代によって読み方や漢字が変わっていた!
にんにくは時代によって漢字やその読み方も、色々と変化を遂げてきたんですね。にんにくという呼び方の語源は仏教からきている説が濃厚なようですが、中にはにんにくの強烈な匂いを憎むという意味で
・匂悪(においにくむ)
・香匂憎(かにおいにく)
の略ではないか、という説もあるそうです。これはちょっと無理やりな気もしますよね…。
とはいえ現代ではあまり漢字でにんにくを書くことはありませんし、見かけることもほとんどありません。私もずっとにんにくは平仮名かカタカナが普通だと思っていたので、今回調べてみてとても勉強になりました。
今後にんにくを食べる時に「昔の僧侶は、隠れてこれ食べてたのかな~」なんて思い出してしまうかもしれませんね。