【食塩水の化学式は難しい?】食塩水の化学知識を分かりやすく解説

なめると塩辛い味がする食塩は、人間が生きるために必要なミネラルです。食塩(塩化ナトリウム)の化学式は「NaCl」なのはみなさんご存じでしょう。

そんなの簡単。学校で習ったからみんな知ってるわ。

中学校の理科の授業で、元素記号を習いますね。では食塩を水に溶かした食塩水の化学式は、どのように表すかご存じでしょうか。

え?食塩と水を混ぜるのだから、NaClとH2Oが出て来そうだけど…。学校で習ったような気がするけれど、どうだったかしら…?

この記事では食塩水を元素記号で表すとどうなるのか、食塩水の知識や家で出来る実験などを詳しくご紹介します。

食塩水の化学式、どれが正解?

食塩水の化学式、どれが正解?

食塩は日本人のどこの家にもある、基本の調味料ですね。食塩が食卓にないお宅は、あまり見かけないでしょう。食塩(塩化ナトリウム)の化学式はNaCl、みなさん学校で習った簡単な化学式です。

 

ところで食塩を水に溶かした食塩水、これも食塩と水だけの単純な物質に思えます。一般の私たちには単純と思える食塩水を化学式で表そうとすると、少し面倒なことになるようです。

 

ネット上でいくつもの意見に分かれる、食塩水の化学式について見ていきましょう。

【その1】NaClとH2O

一つ目の意見は「NaClH2O」または「NaClH2O」というもの。これは塾や学校の先生のブログでも、複数見かけた答えです。もしテストに食塩水の化学式を書く問題が出たら、この答えを書いておけばまず間違いないでしょう。

 

この問題は高校の化学の「純物質と混合物」の授業で出てくるようです。

 

「食塩」や「水」は、それぞれ他の物質が混じっていないため「純物質」と呼ばれます。それに対して「食塩水」等の、2つ以上の物質が混ざったものは「混合物」と呼ばれています。

 

混合物の化学式はそれぞれの純物質の化学式を並べたものになり、空気なども酸素や二酸化炭素、窒素などの混合物のため「O2CO2N2」と表されます。

【その2】NaCl aq

答えが出て一安心と思ったら、ネット上では食塩水の化学式には他にも答えがある様子です。食塩水の化学式の二つ目の意見は「NaCl aq」または「NaCl(aq)」というもの。

 

これは論文などによく見かける表現で、「aq」は「アクア」の略で水のことを言います。食塩に水を加えた水溶液であることを現していて、化学反応式を書く時などに用いるようです。

 

水をアクアと呼ぶなんて、ちょっと専門家っぽくてかっこいいですね。食塩水を表現する化学式としては、間違いでは無いようです。

【その3】食塩水は混合物なので一つの化学式では表せない

さてここで、根本から考えをくつがえす意見が出て来ました。「食塩水は混合物なので、一つの化学式では表せない」というものです。

 

高校の化学の授業で食塩水の化学式を「NaCl+H2O」と習うのに、それが間違っているのでしょうか?

 

化学式の定義は本来、1つの単体の物質や化合物の構造を表すものです。高校の授業で習う食塩水の化学式は、分かりやすく説明するために便宜的に「+」を使って表現しているとのこと。

 

結論としては、本来は混合物である食塩水を化学式で表すことはできないが、高校の授業では便宜的にNaClH2O」として教えているようですね。いや、奥が深いです。

水に溶けた食塩を化学式とイオン式で表すと?

水に溶けた食塩を化学式とイオン式で表すと「NaCl → Na⁺ +Cl⁻」です。食塩は水に溶けると、イオンに分かれて水の中に存在します。

 

Na⁺は「ナトリウムイオン」で、Cl⁻は「塩化物イオン」と呼ばれています。水は電気を通しませんが食塩を溶かすことで電気が流れるようになるのは、食塩が水の中でイオンに分かれるからです。

 

食塩に電気を通すと工業で使える様々な便利な物質が得られるために、工業の分野では食塩水は大変重要な物質として使われています。

【化学式だけじゃない!】食塩水ってどんな物質?

【化学式だけじゃない!】食塩水ってどんな物質?

食塩水は私たち一人一人の体の中や、母なる海にも大量に存在しています。私たちは食塩をしょっぱい味を付ける調味料としてしか、認識していないことが多いですね。

 

化学や数学で取り扱われることの多い食塩水は、調味料としてだけでなく様々な特徴があります。ここからは食塩水と砂糖水との違いや、食塩水の性質などについて見ていきましょう。

味だけじゃない、砂糖水との違い

食塩水と砂糖水、おなじような白い粉を溶かした液体です。食塩水はしょっぱい、砂糖水は甘い味がします。砂糖と間違ってコーヒーに食塩を入れて、飲んだらビックリなんて漫画やドラマでよく見ますね。

 

食塩は自然に存在する無機物で、砂糖は植物が作り出す有機物です。人間の栄養の面からみると、ミネラルと炭水化物の違いがあります。

 

ミネラルは人の体の機能を維持したり、調整したりする働きがあります。炭水化物はエネルギーとして、体の中で燃やして使われている物質です。

 

砂糖水と食塩水は味以外にも、「電気を通すか通さないか」の違いがあります。学校で習いますので、知っている人も多いでしょう。

食塩水は何性?

食塩水は「中性」とは小学校で習いますね。ところが実際に実験してみると、中性のはずの食塩水が弱いアルカリ性を示すことがあるそうです。

 

蒸留水に実験用の「塩化ナトリウム」を溶かした場合は、赤色リトマス試験紙の色に変化はありません。同じ蒸留水に市販の「食塩」を溶かした場合、濃度が高い食塩水の赤色リトマス試験紙はうす青色に変化するとの実験結果が出ています。

 

市販の食塩には塩化ナトリウム以外のミネラルが混ざっていることが、原因として考えられるそうです。試せる人は試してみてはいかがでしょうか。

水と食塩水は沸点や融点が違うの?

みなさんはパスタやほうれん草をゆでる時に、食塩を入れますか?お湯に食塩を入れる理由はいくつかあるものの、その一つに沸点が上昇することが挙げられます。

 

またアイスクリームを作るときに氷に塩を振りかけると、冷凍庫を使わずにアイスクリームを完成させられます

 

これは「凝固点降下」という現象で、氷に食塩をかけることで本当なら0度で氷になる水が凍らずに溶けてしまうのです。この時に周りの熱を奪うので、さらに氷の温度が下がり冷凍庫を使わずにアイスクリームを作ることができます。

食塩水を蒸留してみよう

食塩水を蒸留してみましょう。食塩水の「蒸留」とは、食塩水の中から真水を取り出すことです。この方法を覚えておけば、もし海で漂流しても海水から真水を作って生き残れるかもしれませんよ。

 

化学の実験ではフラスコや細い管などを使って複雑な装置を使いますが、家にある道具を使って作ることが出来ます。

食塩の蒸留
食塩の蒸留

【材料】

・寸胴鍋:1

・底の丸い鍋(中華鍋など):1

・小さい鍋か耐熱のコップ:1

・海水(食塩水):適量

 

【作り方】

1.寸胴の鍋に海水を入れて空の耐熱のコップを置きます。

2.上に海水(水道水)を入れた中華鍋を置きます。

3.寸胴を熱していくと中華鍋の鍋肌に水蒸気がたまり、ぽたぽたと真水がコップの中に溜まっていきます。

【ポイント】

寸胴に入れる海水は、コップより低い位置に水面が来るようにしましょう。中華鍋に入れる海水は蒸気を冷やして水にするためのものなので、海水でも水道水でも大丈夫です。寸胴の海水が沸騰した後は、弱火でじっくりと真水を集めてください。

食塩水を電気分解すると何が起こる?

食塩水を電気分解する実験は学生時代にやりましたね。食塩水は食塩(塩化ナトリウム)「NaCl」を水「H2O」に溶かしたものです。溶液の中ではそれぞれの物質はイオンとして存在しています。

食塩水のイオン

・塩化物イオン:Cl

・ナトリウムイオン:Na

・水素イオン:H

・水酸化物イオン:OH

塩化ナトリウム溶液に電極をつなげて電気を流すと、陽極(+極)では塩化物イオンが塩素になります。また陰極(-極)では水素イオンが水素になります。

 

陽極:2Cl→Cl22e

陰極:2H2e→H2

 

ナトリウムイオンと水酸化物イオンは安定しているため、そのまま水溶液の中に存在し続けます。これを化学式で表すと以下のようになります。

 

NaClH2O→NaOHCl2H2

 

食塩水を電気分解すると、塩素(Cl2)と水素(H2)、水酸化ナトリウム(NaOH)の3つの物質に分かれます。

 

以前色々な意味で話題になった「次亜塩素酸水」も、食塩水や塩酸を膜で仕切って電気分解することで作られる物質です。次亜塩素酸の化学式は「HClO」で、強い殺菌力があります。次亜塩素酸は不安定な物質で長期保存には向きません。

まとめ~食塩水の化学式は単純じゃない

私たちが毎日食べる料理の味付けや、スポーツ飲料にも入っている身近な調味料の食塩。食塩水の化学式は、学校で習う以外にも表現の方法がありました。

 

普段食塩水の化学式のことなどは考えずに暮らしていますが、実は周囲を見回すとそこには食塩から作られる化学製品があふれているようです。日本で消費される食塩の約90%は、工業や医療など食べる以外に使われています

 

最近では食塩水から作られる消毒液なども、話題になりました。身近な食べ物なのに意外とその利用方法を知られていない食塩には、まだまだ秘められた力があるのかもしれません。

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