濃口醤油と薄口醤油の違いは?塩分や使い分けなど徹底解説!
濃口醤油と薄口醤油の違いって何?どう使い分けたらいいの?

そんな疑問にお答えします。

スーパーに行くと、様々な醤油が並んでいますが、それらがどう違うのか、料理をする際にどのように使い分けたらいいのか、分からないことってありますよね。

この記事では、濃口醤油と薄口醤油の違いや特性、使い分け方などについて詳しく解説していきます。

濃口醤油と薄口醤油の違いって何?

濃口醤油と薄口醤油の違いを比較しよう

醤油を上手に使うためには、醤油の特徴を知ることが大切です。濃口醤油と薄口醤油を、「作り方」「塩分」「色・味・香り」「地域」「賞味期限」で比較してみましょう。

作り方に違いはある?

濃口醤油と薄口醤油の製法は、基本的にはほぼ同じです。ただ、薄口醤油は濃口に比べると、食塩水量が多く、発酵熟成期間がやや短く、甘酒等を加えるといった特徴があります。

私たちにとても身近醤油ですが、どのように造られるか知らないという方も多いでしょう。醤油の製法を簡単にまとめると次のようになっています。

濃口醤油ができるまで

1.蒸した大豆(または、脱脂加工大豆)と炒って砕いた小麦をほぼ等量ずつ混ぜる

2.1に種麹(たねこうじ)を加えて「しょうゆ麹」を作る

3.2に食塩水を加えて「諸味(もろみ)」とし、タンクに仕込む

4.3を時々かきまぜながら、約6ヶ月発酵・熟成させる

5.4をしぼってできた生揚げ醤油を加熱(火入れ)する

薄口醤油の場合は、上の製法の3にある食塩水を濃口醤油より約2割多く使用します。これは、色をうすくするためです。食塩水が多くなるので味をまろやかにするため、しぼる前(製法5の前)に甘酒等を添加します。

また、濃口醤油は約6ヶ月かけて発酵・熟成させますが、薄口醤油は6ヶ月弱と少し短くなっています。これも、薄口醤油の色をうすくするための工夫です。

塩分が高いのは、濃口?薄口?

醤油に含まれる食塩分が高いのは、薄口醤油です。醤油の製法でみたとおり、もろみを仕込む際、薄口は濃口より食塩水を多く使用しますので、塩分が高めになります。

「うすくち」と聞くと、「味が薄く、塩も少ないのだろう」と勘違いしそうですね。実際、キッコーマン株式会社のお客様相談センターには、

うすくちを減塩の醤油と思って使ったら、ふだんの醤油よりも塩辛かったんですが…

といった電話がときどきあるそうです。濃口醤油と薄口醤油、塩分の違いはどのくらいなのでしょうか。

濃口と薄口の塩分濃度の違い

・濃口醤油 約16%

・薄口醤油 約18%

薄口醤油の方が濃口よりも若干塩分濃度が高いですが、薄口醤油を使った料理の食塩分が高いというわけではありません。

というのも、薄口醤油は、食塩分が高めのため、少量の醤油で塩味を整えることができます。少量の薄口醤油を使うことにより、料理全体の塩分を変えることなく、料理の色をうすく仕上げることができるのです。

ちなみに、一般的なレシピに書かれている『醤油』とは濃口醤油のことを指します。『醤油:大さじ1』と書かれているところに、薄口醤油大さじ1を投入してしまうと塩辛くなってしまいますので、注意してください。

色・味・香りの違いがポイント

調味料としての醤油の決め手となる、色・味・香りなどにも次のような違いがあります。

色の濃さの違い

濃口醤油と薄口醤油の色を比べると、薄口醤油の色の方がうすいです。

財団法人日本醤油技術センターの資料によると、濃口醤油の色は透明感のある明るい赤橙色で、薄口醤油の色は濃口よりうすい(濃口の1/3のうすさ)とされています。

味や香りの違い

味は、うま味成分で決まりますが、このうま味成分も濃口の方が多く、濃口醤油は塩味のほかに、深いうま味、まろやかな甘味、さわやかな酸味、味をひきしめる苦味をあわせ持っています。

また、濃口醤油は火入れをしっかりすることにより、香りを強く出すようにしているため、芳醇な香りもあります。一方、薄口醤油は、濃口醤油に比べ、味や香りも弱くなっています。

使い方の違い

濃口醤油は、しっかりとした色、味、香りを持ち、調理用としても卓上用としても使用することができる万能調味料です。

一方、薄口醤油は、色をつけたくない料理や、醤油のにおいを控えたり、素材のうま味を引き出すときなどには薄口醤油が向いています。

料理の色・味・香りをどうしたいかによって、濃口、薄口を使い分けることがポイントになります。

地域性にも違いあり

濃口醤油と薄口醤油は、これまでみてきたようにさまざまな違いがありますが、地域的な違いどうでしょうか?濃口醤油は江戸時代に関東で発展し、次第に全国に普及したようです。

現在では全国で生産、消費されており、醤油生産量の約8割を占めています。料理レシピなどに使われている一般的な「醤油」とは、この濃口醤油のことです。

一方、薄口醤油は、江戸時代に兵庫県龍野で初めて作られたといわれています。薄口醤油の生産量は、醤油生産量の約1割で、主に関西で多く使用されています

そば、根菜、赤身魚のようにくせのある素材の多い関東では、味や香りがしっかりしている濃口醤油が合い、うどん、葉菜、白身魚のような淡白な素材の多い関西では、だしと薄口醤油を使ったやさしい味が合うという違いがみられるようです。

賞味期限に違いはあるの?

濃口醤油と薄口醤油の賞味期限には違いがあります。薄口の方が、濃口よりも賞味期限が短いです。醤油は一種の保存食品ですので、品質の安定性はかなり高くなっています。

しかしそれでも、時間の経過とともに少しずつ色が濃くなり、香りと味もほぼ同時に劣化することが官能検査で確認されています。

そのため醤油業界のガイドラインでは、色がうすいことを特徴とする薄口醤油の賞味期限を、濃口醤油より半年ほど短く設定しているようです。

古くなると、醤油は黒ずんでしまいます。色と風味が劣化してしまった醤油を使う場合は、焼肉のたれやのりの佃煮など、煮詰める料理に使うとよいでしょう。

※醤油の賞味期限や保管方法などについては、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。

濃口醤油と薄口醤油はどう使い分ける?

濃口醤油と薄口醤油はどう使い分ける?

一般的に使われている醤油は濃口醤油で、卓上用や料理用として幅広く利用できる万能醤油です。

濃口醤油が1本あればほぼ何にでも使えるのですが、素材や好みによって、薄口などの他の種類の醤油も使い分けてみると、食事がより楽しくなると思います。ここでは、料理ごとの使い分け例をご紹介していきます。

すき焼き:関東風 vs 関西風

すき焼きは、濃口醤油を使うのが一般的です。特に関東風のすき焼きには、濃口で決まりでしょう。すき焼きは地域や家庭で各々のやり方があると思いますが、関東風と関西風では大きな違いがあります。

(1)関東風すき焼き

関東風すき焼きは割り下と呼ばれる煮汁で煮るのが特徴です。割り下は、出汁・酒・みりん・砂糖・醤油で作られたり、水・酒・砂糖・醤油で作られたりとさまざまですが、割り下に使われる醤油は濃口です。

関東では濃口醤油が一般的ですし、すき焼きは特に色をきれいにみせたり、淡白な味を楽しんだりするものではないので、わざわざ薄口醤油を使う必要はないといえるでしょう。

(2)関西風すき焼き

割り下で煮る関東に対して、関西のすき焼きは先に牛肉を焼いてから、味つけをしていきます。

筆者は関西出身ですので、すき焼きのときは割り下は作らず、牛肉が焼けたら直接砂糖や酒、醤油を加えて調味していくことが多いです。

関西では薄口醤油を常備している家庭が多いのですが、すき焼きについては濃口醤油を使うのが主流なようです。

濃口醤油の方が、薄口醤油に比べて料理の味をおいしくしてくれるうま味成分が多いので、すき焼きには濃口醤油を使うのがおすすめといえます。

卵かけご飯に合う醤油は?

卵かけご飯に醤油は欠かせませんね。しかし、濃口と薄口のどちらの醤油が合うかは、はっきりとした結論を出すのが難しいでしょう。

卵の甘みなど、卵そのものの美味しさを味わいたいのであれば、薄口醤油がよいといえます。薄口醤油は色・味・香りが控えめですので、卵の黄身そのものの濃厚な味や美しい色を楽しむことができます

一方、醤油のコクや香りと共に卵を味わいたいという方には、濃口醤油がよいでしょう。

また、生卵が少し苦手というお子様などが卵かけご飯にチャレンジする場合も、まずは味や香りが強い濃口醤油を使ってみるのがよいのではないでしょうか。

ただ、醤油だけだと少し味がキツく感じるかもしれません。そんなときは、近年人気の「卵かけご飯専用醤油」を使ってみるのもよい方法かと思います。

卵かけご飯専用醤油は、醤油にみりんやだしなどを加えたもので、各メーカーからさまざまものが販売されています。

でも毎日卵かけご飯を食べるわけじゃないから、専用醤油を買うのはちょっと…とためらう方は、手作りしてみてはいかがでしょうか?

卵かけご飯に合うだし醤油のレシピをご紹介します。醤油だけよりもやさしい味になり、ご飯と卵をさらに上手につないでくれるでしょう。

卵かけご飯に合うだし醤油のレシピ

【材料】(1人〜2人分)

・醤油:小さじ2

・酒:小さじ2

・みりん:小さじ2

・かつおぶし:2グラム

【作り方】

1.小鍋に酒、みりんを入れ、煮切ってから火をとめる

2.1にかつおぶしを入れて2分待つ

3.2をキッチンペーパーなどでこす。

4.3に醤油を加えて混ぜる

また、卵かけご飯には「たまり醤油」も合うといわれています。濃口醤油や薄口醤油は、大豆と小麦がほぼ半々で造られますが、たまり醤油は大豆100%に近いです。

とろ味、うま味が強く、濃厚な味わいのたまり醤油は、卵かけご飯用の醤油に甘みはいらないという方におすすめです。

ひと味違う卵かけご飯を食べたいときには、卵かけご飯専用醤油やたまり醤油を試してみるのもよいでしょう。

煮魚の味付けには濃口?薄口?

煮魚の場合は、魚の種類や状態によって、濃口醤油と薄口醤油を使い分けます

生臭さのある青魚(かつお、さば、さんま、いわしなど)や鮮度が低下した魚には、濃口醤油を使用します。濃口醤油はにおい消しの効果が高く、しっかりとした味がつくからです。

それに対して、白身魚を煮る場合や、新鮮な魚の持ち味を生かして調理したい場合は、薄口醤油を用います。コクや風味が少ない薄口醤油で、短時間であっさりと煮るのがよいでしょう。

ちなみに、魚を煮る場合や煮物などの際、醤油を濃いまま使うと強い浸透圧の作用で材料の水分が出て固くなってしまいます

醤油をだしか水で割って、その中に材料を入れて煮るということを忘れないようにしましょう。

刺身や冷奴は好みでOK

刺身や冷奴に合う醤油というのは、本当にお好みによると思います。

素材の味をそのまま楽しみたい場合は薄口醤油、醤油のうま味や香りと合わさった深みのある味を感じたい場合は濃口醤油がよいでしょう。

刺身では、塩で食べてもおいしい鯛やヒラメなどは薄口が合い、脂ののったトロやブリなどは濃口醤油が合うといわれています。

冷奴の場合、大豆の味がしっかりしている高級豆腐などには、薄口醤油がよいかもしれません。ただ、冷奴には濃口醤油をかけるのが一般的と思われます。濃口醤油はどの豆腐にも相性が良いです。

関西・関東で分かれる『うどん、炊き込みご飯』

うどん、炊き込みご飯については、薄口醤油に軍配が上がります。薄口醤油は、色がうすいので、汁や素材の色が美しく仕上がります。香りも控えめで、素材の持ち味を生かした料理に向いています。

うどん、炊き込みご飯、茶碗蒸し、お吸い物などには薄口醤油がよいでしょう。ただし、薄口醤油は濃口醤油に比べて、うま味などの成分が少ないためコクがなく、食塩濃度は濃口より高いという特徴があります。

ですので、薄口醤油を使用する際は、だしをたっぷり使ってコクのない分を補い、塩分をやわらげて味に丸みをもたせることが大切です。

まとめ:用途や好みに合わせて、濃口醤油と薄口醤油を使い分けよう!

濃口醤油は万能醤油で、幅広く利用できます。薄口醤油は濃口に比べて色・味・香りが少なく、素材の味や色を生かしたい場合に向いています。用途や好みに合わせて、楽しみながら濃口、薄口を使い分けてみましょう。

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