そんな疑問に答えます。
日本人にとって欠かせない調味料のひとつである醤油。普段から使うことが多いだけに、アレルギーについても気になりますよね。
この記事では、醤油はアレルギーの原因になるのかどうかや、間違えやすい症状、さらにはアレルギーの人でも食べられる醤油について紹介します。
目次
醤油はアレルギーの原因になる?
卵、牛乳、小麦は食物アレルギーの原因になることがよく知られていますよね。醤油の原料は大豆と小麦ですが、アレルギーを引き起こす原因になるのでしょうか?
まずは、醤油が食物アレルギーの原因になるのかどうか?について解説します。
アレルゲンとしての小麦と大豆
醤油がアレルギーを引き起こすとすれば、問題になってくるのは小麦と大豆です。
消費者庁の「平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」によると、食物アレルギーを持っている人のうち、小麦がアレルゲンの人は全体の10.6%、大豆がアレルゲンの人は全体の約1.8%を占めています。
特に小麦は、卵(34.7%)、牛乳(22.0%)とともに、三大アレルゲンと呼ばれており、アレルギーの原因となる割合が高いので注意が必要です。
では、小麦と大豆を主原料とする醤油でアレルギー症状が出ることはないのでしょうか?
醤油のアレルギー、厚生労働省の見解は?
醤油は、大豆と小麦を麹菌で発酵・熟成させて搾ったものです。例えば1Lの醤油を作るとすると、大豆と小麦はそれぞれ200g前後必要だといいます。原料にはかなりの量の小麦や大豆を使用することがわかりますね。
食物アレルギーのアレルゲンとなるのは、食物中に含まれる特定のタンパク質。小麦にも大豆にもアレルギーを引き起こす特定のタンパク質が含まれています。
しかし、厚生労働省は、
・醤油に使用される小麦は、醸造の過程で小麦アレルゲンが消失する
・小麦タンパクと同様に、醤油の大豆タンパクも発酵過程で分解が進む
という理由から、アレルギーがある場合でも、基本的に除去しなくてもよいという見解を示しています。
小麦・大豆アレルギーの人は醤油を使ってもいい?
厚生労働省は、小麦や大豆のアレルギーがあっても“基本的に”醤油を摂取することはできるとしています。
しかし、裏を返せば、少数ではあるけれども、醤油を食べてアレルギー症状が出る人はいる、ということになりますよね。
食物アレルギーの症状は多種多様で、100人いれば100通りの反応の仕方があると言われています。実際に、小麦に対して重篤なアレルギー反応を示す人など、醤油を食べられない人もいるようです。
ですから、離乳食などで初めて醤油を食べさせる時や、醤油を食べて調子が悪くなった場合などは、「醤油はアレルギーの心配がないから」と安易に考えないようにすることが大切です。
もし発症したらどんな症状が出るの?
醤油がアレルギーの原因になることは少ないとは言っても、醤油を食べてアレルギー症状を引き起こすこともあります。万一、発症した場合にはどのような症状が見られるのでしょうか?
食物アレルギーの多くは「即時型」と言われ、その多くは食べた直後から2時間後くらいまでの間に症状が出現します。具体的な症状としては他のアレルギー症状と同じように以下のようなものがあります。
・皮膚症状(じんましん、かゆみ、発疹など)
・目・鼻・喉の症状(くしゃみ、鼻水・かゆみ、赤く腫れるなど)
・呼吸器症状(咳、喘鳴、息が苦しいなど)
・消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐)の他
・全身に重篤な症状が見られるアナフィラキシーショック
唇が腫れた?!醤油アレルギーと紛らわしい症状
醤油を食べて、体に異変が生じたり体調が悪くなったりした時に、食物アレルギーとは別の原因であるケースもあります。
ここからは、アレルギー様症状(アレルギーと同じような症状)を示す他の要素について解説します。
接触性皮膚炎
醤油を食べた後に、唇や口の周りがかゆくなったりヒリヒリしたりする、赤く腫れた、発疹が出た、というような皮膚症状が出ることがあります。
こういった症状が見られる場合、食物アレルギーではなく接触性皮膚炎である可能性も少なくありません。
接触性皮膚炎とは、いわゆる「かぶれ」のこと。何らかの刺激が与えられることにより皮膚がかゆくなったり、赤く腫れたりする症状です。
醤油の場合は、醤油の塩分が刺激となって皮膚がかぶれてしまうことがあります。特に、肌が弱い人や乾燥肌の人、皮膚炎になりやすい人、アトピー性皮膚炎のなどは要注意です。
ヒスタミン食中毒
ヒスタミン食中毒とは、ヒスチジンという物質を大量に含む食材を食べたことが原因で起こる食中毒のことです。
食べた直後から1時間後くらいまでの間に、口の周りや顔面が赤く腫れる、じんましん、頭痛、吐き気や嘔吐、下痢などの症状が現れます。重篤の場合には呼吸困難に陥ったり意識をなくしたりするケースもあるようです。
ヒスチジンは、主に鮮度の落ちた魚や甲殻類に含まれることがよく知られていますが、その他にも、野菜や果実、ナッツやキノコ類、チーズ、肉類、などにも微量に含まれています。
また、醤油や味噌などの発酵食品を作る過程で生成することもあるようです。
食物不耐症
食物不耐症は、体内で特定の食品の消化や吸収が完全にできないことが原因で、下痢などの消化器症状や、皮膚が赤く腫れるなどのアレルギー様症状が出る疾患です。
有名なものとしては、牛乳を飲むとおなかを壊してしまう乳糖不耐症があります。
醤油の場合、考えられる食物不耐症の原因にアルコールがあります。多くの醤油には3~5%程度のアルコールが含まれています。
まれに、アルコール不耐症の人が醤油を食べると醤油に含まれる微量のアルコールに反応し、アレルギー様症状が引き起こすことがあるようです。
※醤油のアルコールについては以下の記事でも解説しています。
自己判断せずに受診を!
食物アレルギーと接触性皮膚炎・ヒスタミン食中毒などのアレルギー以外の疾患は、症状がとてもよく似ているので簡単には区別が付きません。
醤油を食べた後に、何かしらの異変が体に生じた時は、自己判断せずに必ず医師の診察を受けるようにしてください。
受診する際は、醤油をどういう料理に使ったのか、他に食べた料理は何か、どのような症状が何分後くらいに出たかなどについて、できるだけ詳細にメモを取っておきましょう。
できる限り詳しい状況を伝えられるようにしておくと、診断の役に立ちます。できれば、アレルギー症状が出た時の食事の内容だけではなく、その日1日に食べたものをすべてメモしておくとよいでしょう。
醤油アレルギーでも食べられる醤油をご紹介
醤油にアレルギー反応を示す人や醤油によるアレルギーが心配な場合には、小麦や大豆を使用していない醤油があると安心ですね。そこで最後に、醤油アレルギーの人でも食べられる醤油をご紹介します。
大豆や小麦を使っていない醤油はあるの?
原料として小麦を使っていない醤油にはたまり醤油があります。たまり醤油は基本的に小麦を使用せずに大豆だけで仕込む醤油です。
ただし、最近は香りを引き立たせるために少量の小麦を使用しているたまり醤油も増えています。アレルギー対策としてたまり醤油を購入する場合は、必ず原材料表示を見て、小麦を使用していないたまり醤油を選ぶようにしてください。
一方、大豆を使用していない商品も存在します。JAS(日本農林規格)からすると大豆を使用していない商品は醤油の定義を満たしていないので、厳密に言うと、醤油ではなく『しょうゆ風調味料』に分類されます。
たまり醤油の詳細および、スーパーで購入可能な大豆不使用のしょうゆ風調味料については、以下の記事で説明していますので、ぜひご覧ください。
小麦・大豆不使用の『しょうゆ風調味料』もおすすめ
アレルギー対応のしょうゆ風調味料は、上記で紹介した商品以外にも販売されています。インターネットなどで購入でき、醤油の代用として使用できるしょうゆ風調味料を2つご紹介しましょう。
※醤油を自宅にある他の調味料で代用したいという方は、以下の記事を参考にしてみてください。
1.そら豆醤油(高橋商店)
約400年の歴史を持つ、香川県の小豆島の老舗醤油醸造メーカーが作ったアレルギー対応のしょうゆ風調味料。香川県と共同で特許を取得している商品です。
原材料はそら豆と食塩のみ。大豆の代わりにそら豆を発酵・熟成させて作られています。
小豆島は古くから醤油醸造が盛んで、現在でも昔ながらの「木桶仕込み」が主流だそうです。そら豆醤油は伝統の醤油づくりのノウハウを駆使して作られているので、こいくち醤油に近い風味を味わえます。
2.四穀しあわせ醤油(ちば醤油)
四穀(よんこく)しあわせ醤油は、1854年(嘉永7年)創業の千葉県香取市にある老舗しょうゆメーカーが作るアレルギー対応の調味料です。
原材料は、脱脂胡麻、食塩、粟、稗(ひえ)、黍(きび)。これらの穀物は放っておいても育つ強い作物なので、化学肥料や農薬も使用せずに栽培されています。
胡麻を使用しているので、残念ながら胡麻アレルギーの人は食べられてませんが、口コミ評価でもおいしいと評判のしょうゆ風調味料です。
まとめ:醤油のアレルギーは基本的に問題ない場合が多い
醤油の原料となる小麦や大豆のタンパク質は、醸造の過程でアミノ酸に分解されるので基本的には問題ない場合が多いと言われています。
しかし、アレルギーの症状は千差万別。過信はせずに、何かあった時はすぐに受診して医師に相談するようにしましょう。