ヘルシーなイメージのあるオートミールですが、オートミールでおいしいパンを作れるのでしょうか?また、小麦粉のパンとはどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、オートミールを使ったパンと普通のパンとの違いを解説するとともに、オートミールを使ったパンの基本的な作り方と上手に作るコツをご紹介します。
目次
オートミールのパンと普通のパンは何が違う?
普通のパンは小麦粉(強力粉)で作りますが、オートミールを材料として作ったパンは普通のパンとどのような違いがあるのでしょうか。
オートミールってどういう穀物?
オートミールとは、オーツ麦(えんばく)という麦の種子を食べやすく加工したシリアルのことで、蒸してローラーで平たく伸ばしたタイプのものやさらに細かくカットしたタイプのものがよく使われています。
小麦は製粉して、パンや麺類、お菓子などの材料として使いますよね。
一方、オートミールをよく食べる欧米では主にお粥やシリアルとして食べるほか、ケーキやクッキーやパンなどの生地に混ぜ込んで使うこともよくあります。
オートミールは小麦粉よりも食物繊維やミネラルが多い特徴があります。ですから、オートミールで作ったパンは、小麦粉のパンよりも栄養価が高いこともメリットのひとつです。
一般的な小麦のパンが膨らむ原理は?
一般的にパンを作るには、小麦粉(強力粉)、砂糖、イースト菌、塩に水を入れて捏ねた生地を発酵させてからオーブンで焼き上げます。
小麦粉にはグルテンという弾力のある成分を作るたんぱく質が含まれているため、水を入れて捏ねることで生地に薄い膜ができます。
また、パン生地を発酵させると糖やでんぷんがイーストによって分解されて炭酸ガスが発生します。
すると、グルテンの薄い膜が風船のような役割をして、発酵によって生じた炭酸ガスを生地の内部に溜め込むためにパンが膨らむのです。
オートミールのパンは小麦のパンよりも硬いって本当?
小麦粉にはグルテンの膜を作るたんぱく質が含まれているのに対し、オートミールの原料であるオーツ麦(えんばく)には、グルテンを作り出すたんぱく質が含まれていません。
そのため、オートミールでパンの生地を作ってもグルテンの膜ができないので、イーストによる発酵でできた炭酸ガスを生地の内部に留めにくくなります。
また、オーツ麦はでんぷんや糖の割合が小麦よりも少ないため、発酵によって作り出される炭酸ガスも小麦のパン生地よりも少なめです。
オートミールはグルテンの膜も作らず、発酵によって作られる炭酸ガスも小麦より少ないため、オートミールで作るパンは小麦粉で作るパンに比べると膨らみにくく、ずっしりと目の詰まったパンになるという特徴があります。
オートミールのパンは小麦パンよりダイエットに向いている?
オートミールはダイエットに良いと聞いたことはありませんか?オートミールを使ったパンはダイエットにおすすめなのでしょうか。
オートミールで作った丸パン1個分と小麦粉で作った丸パン1個分の栄養を比較してみましょう。
これを見るとわかるように、カロリーや糖質量は小麦粉のパンもオートミールのパンも大差ありません。むしろ、カロリーはオートミールパンの方が少し高いくらいです。
しかし、注目すべきポイントは食物繊維の量です。オートミールのパンは小麦粉のパンの3.5倍の食物繊維が含まれています。
しかも、オートミールには不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のバランスが理想的であるため、腹持ちが良く、腸の環境を整えて便通を促す効果が期待できます。
また、糖の吸収が穏やかなため血糖値が上がりにくく、体内で脂肪に変わりにくい性質もあります。小麦粉のパンよりもミネラル分が豊富なので栄養価が高い点もうれしいですよね。
オートミール100%のパンは意外に簡単!作り方とおいしく作るコツ
オートミールでパンを作ると小麦粉で作る普通のパンよりも生地が膨らみにくく、目の詰まったハードなパンになる特徴があります。
しかし、少し工夫をすることで、もちもちとしたおいしいオートミールパンを作れます。
オートミールだけのパンを膨らませるコツは?
小麦粉を使わずにオートミールだけでパンを作りたい場合は、イーストによる発酵だけでは生地が膨らみにくいので、ベーキングパウダーを併用するとよいでしょう。
ベーキングパウダーは、重曹(炭酸水素ナトリウム)など水を加えると炭酸ガスを発生する性質がある成分を利用したケーキなどに使用する膨張剤です。
例えば、ケーキは卵やバターなどの起泡性を利用して膨らませますが、泡立て具合によって膨らみ方が変わるので、ベーキングパウダーを加えるとより膨らみやすくなります。
オートミールだけでパンを作る場合も同様で、ベーキングパウダーを補助的に使うことで生地が膨らみやすくなります。イーストによる発酵をせずに、ベーキングパウダーだけで作る方法もあります。
パン作りに適したオートミールの種類は?
オートミールは加工方法によっていくつかの種類がありますが、パン作りにはどのオートミールを使うとよいのでしょうか。
パンを作る場合は、オートミールはクイックオーツか、もしくはパウダー状に粉砕したオートミールを使うとよいでしょう。
クイックオーツを使うともちもちとずっしりとした食感になりやすく、パウダー状に粉砕したオートミールを使うとよりキメの細かいもちふわのオートミールパンを作れます。
オートミールをパウダー状にするにはミルやフードプロセッサーを使うと便利です。ミキサーは機種によって使えるものと使えないものがあるようなので取り扱い説明書をよく見るようにしましょう。
フードプロセッサーがない場合はすり鉢でするか、ストックバックなどの破れにくい袋に入れて上から麺棒を転がして粉砕する方法もあります。
市販のオートミールパウダーを利用するとさらに簡単です。
手間いらず!オートミール100%のもちもちパンのレシピ(イースト発酵あり)
小麦粉(強力粉)を使わずにオートミールのみで作るパンはグルテンを形成しないので、普通のパンのように捏ねる必要がありません。
材料を混ぜて発酵させて焼くだけなので、初めてでも意外に簡単!ドライイーストによる発酵とベーキングパウダーのダブル使いでもちふわのパンを作れます。
オートミールだけで作ると生地に弾力が足りないので成形しにくくなるため、「サイリウム(オオバコ)」という食物繊維の粉を加えて作ることが多いですが、今回はスーパーで入手しやすい材料だけでできるレシピをご紹介します。
【材料】(6個分)
オートミール 150g
片栗粉 大さじ2
砂糖 10g
塩 2g
ドライイースト 3g
ぬるま湯 160~200g
オリーブオイル 10g
【作り方】
1.オートミールは、ミルや麺棒などでパウダー状に粉砕する。
2.ボウルに1のオートミール、片栗粉、砂糖、ドライイーストを入れ、上からぬるま湯(人肌くらいの温度:35~40℃)を入れる。
3.ヘラで全体をよく混ぜ、全体が混ざったら塩とオリーブオイルを入れてさらによく混ぜる。
※この時の状態は、ヘラで生地をすくって落とすとドロドロとリボン状になるくらいの柔らかさ。
4.ラップをして15分程度常温で放置しておく。
5.オートミールが吸水して生地全体がまとまってくるので、生地を4分割する。
※まとまりが悪いようであれば、さらに5分ほど休ませる。
6.手に水を付けて軽く丸め、クッキングシートを敷いた天板の上に並べる。
7.約35℃で20~30分、ひと回り大きくなる程度まで発酵を行う。
8.180℃に予熱をしたオーブンで15~20分程焼く。
【ポイント】
・3で生地が硬いようであれば、ぬるま湯の量を増やしてみてください。
・生地が柔らかく、手で丸めにくい場合はシリコン型などに入れて焼くとよいでしょう。シリコン型などに入れて焼く場合は、表面をヘラでなめらかにならしてください。
混ぜて焼くだけ!発酵なしのオートミール100%もちもちパンのレシピ
オートミール100%のパンは、ドライイーストを使って発酵せずにベーキングパウダーだけで作る方法もあります。今回は、ヨーグルトを使ったもちもちオートミールパンをご紹介します。
【材料】(18cmのパウンドケーキ型1個分)
オートミール 120g
卵 1個
ヨーグルト 150g
牛乳または水 30cc
砂糖 20g
ベーキングパウダー 6g
【作り方】
1.オートミールはミルや麺棒などでパウダー状に粉砕しておく。
2.ボウルに卵と砂糖を入れて泡だて器でよく混ぜ、ヨーグルトと牛乳(水)を加えてさらによく混ぜる。
3.パウダー状にしたオートミールを入れてヘラで全体をよく混ぜ合わせる。
4.ラップをして常温で15分程度放置して、オートミールに吸水させる。
5.ベーキングパウダーを入れてよく混ぜる。
6.クッキングペーパーを敷くか油を塗ったパウンド型に流し、180℃のオーブンで35~40分程度焼く。
7.串をさして、生焼けの生地が付いてこなければでき上がり。
【ポイント】
・オートミールは粉砕せずにクイックオーツをそのまま使ってもよいでしょう。その場合は放置時間を長めにしましょう。
・焼成中に表面が焦げそうになってきたら、アルミホイルを上に乗せて焼くとよいでしょう。
ふんわりオートミールパンは小麦粉と併用で!基本レシピをご紹介!
オートミールでパンを作ると膨らみにくいという特徴があるので、小麦で作る普通のパンよりも硬くなりがちです。
では、ふんわりと柔らかいオートミール入りのパンを作るにはどのようにすればよいのでしょうか。
ふんわりとおいしいオートミールパンを作る方法は?
オートミールで作ったパンが硬くなりがちな理由は、オートミールは生地の内部に空気を溜める膜の役割をするグルテンを形成しないことが最大の要因です。
グルテンを作るたんぱく質は小麦粉にしか含まれていません。
ですから、オートミールのパンをふんわりと仕上げるには、オートミールに加えて小麦粉(強力粉)を併用するか、グルテン粉(小麦粉からグルテンを抽出した粉)という材料を入れる必要があります。
グルテン粉はスーパーなどでは手に入りにくいので、手軽なのはオートミールと強力粉を併用する方法ですよね。
強力粉にオートミールを混ぜて普通のパンと同じように発酵させて作ることで、オートミール入りのふわふわのパンを作れます。
オートミールと強力粉の割合はどれくらいが良い?
基本的に、強力粉の割合が高いとグルテンが多くなるのでふわふわになりやすく、オートミールの割合が増えると食物繊維やミネラルの量は増えますが硬めのパンになってしまいます。
できるだけふわふわのオートミールパンを作りたいのであれば、強力粉とオートミールの割合は4:1か3:1くらいにするとよいでしょう。
上の表を見るとわかるように、強力粉とオートミールの割合が3:1の場合と4:1の場合では、栄養価は大きく変わりませんよね。
4:1でも小麦粉のパンよりも栄養価は十分高くなるので、最初は4:1の割合で作る方法がおすすめです。
粉砕なし!もちふわオートミールパンの基本レシピ(強力粉併用)
今回は、オートミールと強力粉の割合が1:4のオートミールパンのレシピをご紹介します。ドライイーストを使用して発酵させるタイプの手ごねのオートミールパンです。
【材料】(6個分)
☆強力粉 160g
☆オートミール(クイックオーツ) 40g
☆ドライイースト 3g
☆塩 4g
☆砂糖 15g
バター 15g
ぬるま湯 150g
【作り方】
1.バターは常温に戻しておく。
2.ボウルに☆の材料を入れてよく混ぜ、その上に人肌程度の温度のぬるま湯を加え、ヘラで全体が均一の状態になるまで混ぜる。
3.2を台に出し、手の平の下半分で生地を向こう側に薄く伸ばして手前に丸める、を繰り返して捏ねる。
4.生地にある程度弾力が出てきたら、室温に戻したバターを包みさらに捏ねる。
5.生地を両手で薄く伸ばしてみて、千切れずに薄い膜が張るようになるまでしっかりと捏ねる。
6.捏ね上がったら、表面の膜が張るように全体を裏返すようにして丸めて下をしっかりと閉じる。
7.ボウルに入れてラップをして一次発酵を行う。(目安:35℃で40分)
8.全体が2倍くらいに膨らんだら、人差し指に粉を付けて生地に突っ込んで、指を離しても跡が戻らなければ発酵完了。
9.台に取り出して軽く押してガスを抜く。6等分して軽く丸め、固く絞った濡れ布巾(キッチンペーパー)をかけて10分休ませる。
10.きれいに丸め直し、クッキングペーパーを敷いた天板に間隔をあけて並べ、濡れ布巾をかけて二次発酵を行う。
11.生地が1.5~2倍になったら霧吹きで水をかけ、190℃に予熱をしたオーブンできれいな焼き色が付くまで10~15分くらい焼く。
基本的に、小麦粉のパンを作る方法と同じ工程で作れます。
ふわふわオートミールパンを失敗なく作るためのポイント
パンを失敗なく作るためには、生地を両手で伸ばした時に薄い膜が破れずにできるまでしっかりと捏ねることと、生地に指を突っ込んだ時に指の後が戻らなくなるまで発酵することが大切です。
生地を捏ねる工程はホームベーカリーの捏ね機能を使うと簡単です。
発酵は足りなくてもやり過ぎても失敗するので注意しましょう。発酵に最も適した条件は、気温30~40℃で湿度が70~80%です。
オーブンの発酵機能を使えば簡単ですが、庫内が乾燥しないように、お湯を入れた器をいっしょに入れるようにしてください。
オーブンの発酵機能がない場合は、熱していないオーブンに熱湯を入れた器といっしょに入れるとよいでしょう。
オートミールだけのパンは意外に簡単!ふわふわパンには強力粉を!
オートミールを使って作るパンには、強力粉とオートミールを併用する方法とオートミール100%で作る方法があります。
強力粉にオートミールを混ぜたパンはふわふわになりやすいですが、一般的なパンと同様に手間と時間がかかることが難点です。
一方、強力粉を使わずにオートミール100%のパンはふわふわにはなりにくく、もちもちと重たい感じになりがちです。
しかし、手間も時間もかからずに簡単に作れることと、強力粉と混ぜるよりも栄養価が高くなるというメリットがあります。
どちらも一長一短なので、お好みに合わせて作ってみてくださいね。オートミールを使ったいろいろなアレンジパンのレシピは、別記事でご紹介しますね。