【徹底比較】ラードと牛脂は何が違う?味の違い・栄養素・使い方まで

ラードと牛脂。どちらも肉の脂肪の塊ですが、どのような違いがあるのでしょうか?

ラードは豚の脂、牛脂は牛の脂ということは何となくわかっていても、何がどう違うのかよくわからない、という人も多いのではないでしょうか。

脂肪の塊であるし、身体に悪そうという理由で敬遠しがちなラードや牛脂ですが、実は意外に優秀な面があるのです。この記事では、味の特徴や栄養成分、使い分ける方法など、ラードと牛脂の違いをご紹介します。

「ラードと豚脂」「ヘットと牛脂」は同じもの?

「ラードと豚脂」「ヘットと牛脂」は同じもの?

多くの人にとってラードや牛脂は日常的に使う頻度が少なく、あまりなじみがないものかもしれませんね。まずは、ラードや牛脂とはそもそも何のことなのか、詳しくご紹介していきましょう。

ラードとは?豚の脂とどう違う?

食用の豚の脂を精製したものをラードといいます。そのうち、豚の脂だけで作られたラードが純製ラード、豚の脂にパーム油などの植物油を混ぜたものは調整ラードと呼ばれています。

スーパーなどでは、マヨネーズのようなチューブの容器に入った純製ラードが販売されています。

純製ラードは、豚の脂を高温で炊き、抽出された上澄みの部分だけを集めた脂です。

豚肉の脂は指で強く押すとやっとへこむくらいの固さですが、精製されたラードはやや硬めのクリーム状。溶け出した豚の脂だけを集めているので、色も真っ白です。

ラードの原料は主に背脂

豚脂(とんし)には、主にロースの上側に付いている背脂、バラ肉の間に挟まっているバラ脂、内臓のまわりに付いている腹脂などがありますが、このうちラードとして使われるのは、背脂と腹脂です。

背脂は、ロースの上側に付いている脂で、いわゆる背中の皮下脂肪ですね。ラーメンによく使われている脂です。それに対し腹脂は腸などの内臓まわりに付いている脂肪で、市場にはほとんど出回っていません。

豚は太っているイメージがあるかもしれませんが、実は豚は体脂肪率が低い動物です。豚舎で肥育されている豚でさえ体脂肪率は15%前後、放牧飼育の豚なら脂肪の割合はさらに低くなります。

つまり、ラードは一頭の豚から1割程度しか取れません。特に、腹脂は希少なので、一般的なラードの原料には主に背脂が使われています。

牛脂とは?ヘットとはどう違うの?

ラードが豚の脂であるのに対し、牛脂は牛の脂のこと。牛肉の脂身の塊は牛脂、精製したものはヘットと呼ばれています。

牛は豚と違って体脂肪は多めで30%程度。牛脂は1頭から取れる量が多く、しかも大半は捨ててしまうため、肉屋やスーパーなどで肉を買うと、牛脂やヘットは少量であれば無料でもらえることがほとんどです。

牛脂になる部位には、ケンネ脂、チチカブ脂、背脂があります。それぞれの特徴は次のとおりです。

ケンネ脂

牛の腎臓のまわりに付いているぶ厚い脂肪です。1頭の牛から取れる量がとても多く、牛脂のほとんどがケンネ脂です。常温では非常に固い脂ですが、もろく崩れやすい特徴があり、手や包丁で潰すと粉々になります。

ケンネ脂は非常に溶けやすく、加熱すると筋などをほとんど残さずに溶けてしまいます。ケンネ脂で赤身を焼くと肉に浸透して、風味が肉に移りやすい脂です。

チチカブ脂

雌牛の乳房から取れる脂肪で、ダボ脂とも呼ばれています。1頭の牛から取れる量はそれほど多くないので、あまり市場には出回りません。

常温では固くしっかりと締まっていて、手で強く押すと潰れますが、ケンネ脂のように粉々にはなりません。加熱しても溶けにくい脂で、溶けた後に繊維や筋などの塊が多く残ります。

背脂

サーロインやロースの上にあり、風味の良い最上質の脂肪です。肉の上に乗っているのでノリ脂とも言います。

常温でも柔らかく、キメが細かてくしっとりとしているという特徴があります。ケンネ脂よりも融点が低く、加熱すると非常に溶けやすい脂です。

ラードと牛脂の特徴を比較してみよう!

ラードと牛脂の特徴を比較してみよう!

ラードと牛脂では、どのような違いがあるのでしょうか?味や栄養分などを比較してみましょう。

どっちがおいしい?ラードと牛脂の味の違い

豚肉と牛肉では、味は明らかに違いますよね。では、ラードと牛脂にも味の違いはあるのでしょうか?それぞれの味の特徴をまとめてみました。

ラードの風味の特徴

ラードの大きな特徴のひとつは旨味が強いことです。ラードの旨味のもとはイノシン酸。

肉や魚介類に含まれていて、特にかつお節に多く含まれていることで知られる旨味成分です。豚肉は、肉類の中でも特にイノシン酸が多く含まれているという特徴があります。

そして、もうひとつの特徴はコク。コクがとても強いので、ラードを使うことで料理に深いコクを与えられます

ラードのコクは豚肉特有の甘みや香り成分などに由来していますが、人によっては独特のクセを感じる人もいるようです。

牛脂の風味の特徴

牛脂にも、牛肉特有の旨味やコクが含まれていますが、牛肉の旨味成分は豚肉ほどは多くないので、ラードに比べるとクセの少ない脂といえます。

牛脂の風味は牛の産地やランクに大きく影響を受けるという特徴があります。外国産の牛から取れる牛脂は、クセが少なく風味も淡泊です。

一方、国産牛から取れる牛脂は、旨味やコクに加え、特有の甘みが外国産の牛脂よりも強くなります。

特に差を感じられるのが和牛の牛脂。和牛特有の強い甘みと芳香があり、ランクが低めの牛肉から取れる牛脂との差は歴然です。

どっちが溶けやすい?ラードと牛脂の融点の違い

肉のおいしさは、脂の融点に大きな影響を受けると言われています。ヒトの体温は36℃前後なので、脂の融点がそれよりも低いとコクや旨味を感じやすくなります。

ラードの融点

ラードの融点は28~40℃前後と言われています。特に内臓から取ったラードは融点が低めで、背脂のラードの融点が34~40℃前後であるのに対し、内臓脂のラードの融点は28~34℃前後です。

ラードの融点はヒトの体温より低い場合が多いので、常温では固まっていても口に入れると体温でラードが溶けます

そのため、ラードを使って作った料理は、冷めた状態で食べたとしてもラードの旨味やコクを感じることができます。

牛脂の融点

牛脂の融点は、牛の種類によって大きく変わります。代表的な品種による牛脂の融点をまとめると次の表のようになります。

主な品種牛脂の融点
輸入牛、ヘット40~50℃
国産の乳用種20~40℃
国産の交雑種15~30℃
黒毛和種10~30℃

輸入牛の牛脂や精製したヘットの融点は体温よりも高いですが、国産牛の牛脂は体温よりも低めであることがわかります。国産牛肉の場合、値段が高くなればなるほど、融点が低くなります。

特に黒毛和牛の融点は非常に低く、常温に置いておくだけで牛脂が溶けだしてくることがあります。黒毛和牛が口の中ですぐにとろけてなくなる理由は、牛脂の融点が非常に低いためです。

ダイエットの敵はどっち?ラードと牛脂のカロリーの違い

牛肉と豚肉のカロリーを比較すると、同じ部位の場合は豚肉の方がカロリーが低い傾向があります。では、ラードと牛脂では、どちらのカロリーの方が高いのでしょうか?食品成分表で比較すると次のようになります。

部位100gあたりのカロリー
ラード889
牛脂(ヘット)869
ぶたロース脂身695
国産乳用種ロース脂身703

上記の表のうち、上2段が精製したラードとヘットのカロリー、下2段が豚脂と牛脂の背脂を丸ごと食べた場合のカロリーになります。どちらも、牛と豚では大してカロリーの差がないことがわかりますね。

参考までに、植物油でのカロリー890kcalくらいなので、精製したラードやヘットのカロリーは植物油ともほぼ同じくらいと考えてよさそうです。

ラードや牛脂は健康に良くないって本当?

ラードや牛脂は健康に良くないって本当?

通常、一般家庭で料理に使う油は、サラダ油、キャノーラ油、オリーブオイルといった植物油がほとんどで、ラードや牛脂を日常的に使う人はあまりいませんよね。

ラードや牛脂などの動物性の脂は健康にあまり良くないという話も聞くかと思いますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?

飽和脂肪酸は身体に良くない?

動物性の脂も植物油も脂肪酸と呼ばれる物質がたくさん集まってできています。脂肪酸はその構造によって飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に分けられます。

飽和脂肪酸:常温で固体の脂肪酸で、肉や乳製品などに多く含まれる

不飽和脂肪酸:常温で液体の脂肪酸で、植物の種子や青魚などに多く含まれる

以前は、飽和脂肪酸は摂りすぎるとLDL(悪玉)コレステロールが増え、不飽和脂肪酸をたくさん摂るとHDL(善玉)コレステロールが増えると言われていました。

増えたLDL(悪玉)コレステロールは動脈硬化を進行させ、その結果、狭心症や心筋梗塞を引き起こしやすくなります。

そのため、飽和脂肪酸の多いラードや牛脂は身体に悪いというイメージを持っている人が多いようです。

ラードや牛脂が身体に良くないとは一概に言えない!

しかし、最近は研究が進み、ラードや牛脂に含まれるステアリン酸のように、HDL(善玉)コレステロールを増やし、LDL(悪玉)コレステロールを抑制する飽和脂肪酸があることもわかってきました。

 飽和脂肪酸
(g/100g)
うちステアリン酸
(g/100g)
不飽和脂肪酸
(g/100g)
うちオレイン酸
(g/100g)
ラード39.2917.953.3748.3
ヘット41.0514.548.6241.2
なたね油7.060~286.1979.8
オリーブオイル13.291.081.2810~35

また、植物油よりは少ないものの、ラードや牛脂にも不飽和脂肪酸が含まれています。

例えば、ラードの脂肪酸の約4割、牛脂の脂肪酸の約5割を占めるオレイン酸には、LDL(悪玉)コレステロールを下げる働きがあります。

つまり、ラードや牛脂が健康に良くないとは一概に言えないことがわかりますよね。

ラードや牛脂の過剰摂取には要注意!

ラードや牛脂にLDL(悪玉)コレステロールを減らす働きのある脂肪酸が含まれているとは言っても、飽和脂肪酸を摂りすぎると少なからず身体に悪い影響を与えるのも事実です。

また、不飽和脂肪酸のなかには、身体の中で合成できない必須脂肪酸も含まれているので、たくさん摂る必要があります。

ですから、ラードや牛脂の摂りすぎは禁物。普段食べることの多い肉や乳製品にも飽和脂肪酸はたくさん含まれているので、ラードや牛脂を頻繁に使うと、飽和脂肪酸を摂りすぎてしまう可能性もあるので注意が必要です。

ラードと牛脂の使い方!どう使い分けるのが正解?

ラードと牛脂の使い方!どう使い分けるのが正解?

ラードと牛脂の特徴や違いについて解説してきましたが、実際に料理に使う場合、どのように使い分けをすればよいのでしょうか?ラードと牛脂の使い方について解説します。

代用もOK!ラードにも牛脂にも合う料理

ラードも牛脂もどちらも肉の脂身。風味に差はありますが、基本的には同じように使うことができます

どちらを使うのかは好みで選みで選べばOK。迷う場合は、コクや旨味が欲しい場合はラードを、脂の甘みや芳香を加えたい場合は牛脂を使うとよいでしょう。

炒め物、焼き物、揚げ物などの場合、どのような料理でもどのような素材にも、ラードや牛脂はよく合います。それ以外に、ラードや牛脂の少し意外な使い方をいくつかご紹介しましょう。

煮物に入れる

煮物にラードや牛脂を加えると、豚肉や牛肉を入れなくても肉の風味が効いたコクのある仕上がりになります。

例えば、大根やかぼちゃ、白菜の煮物などにはラード、おでんやじゃがいもの煮物などには牛脂、といった具合に、豚肉や牛肉が合う煮物を参考にして、ラードを入れるか牛脂を入れるかを決めるとよいでしょう。

炊き込みごはんに入れる

炊き込みごはんの定番といえば鶏肉を思い浮かべるかもしれませんが、豚肉や牛肉も炊き込みごはんによく合います

実際に、沖縄の「ジューシー」や、三重県の「肉ごはん」のように、豚肉や牛肉を使った炊き込みごはんの郷土料理もあるくらいです。

炊き込みごはんを作る時に、ラードや牛脂を少し入れると、コクや旨味・風味がアップします。

あっさりとした味ではなく、少しこってりとした炊き込みごはんを作りたい場合におすすめの方法です。

ラードごはん&卵かけごはん

台湾には「猪油拌飯(ツゥーヨウバンファン)」という料理があります。

猪油とはラードのこと。字から何となく想像が付くと思いますが、ラードを熱々のごはんの上に乗せて、しょうゆを垂らしかき混ぜて食べる料理です。

また、「猪油拌飯」に生卵を乗せて食べる方法もあるそうです。まさに台湾版の卵かけごはんといったところですね。

牛肉、生卵、しょうゆ味の組み合わせはすき焼きで実証済みなので、ラードの代わりに牛脂を乗せてもよさそうです。

ラードには意外な使い方もあり!

ラードがよく合う料理はごはんやおかずだけではありません。実はお菓子作りにもラードはよく使われています

よく知られているところでは、沖縄のサーターアンダギーやちんすこう。沖縄は豚肉文化なので、お菓子にもラードが使われているのですね。

他にも、中国の「杏仁酥(アンニンスー)」やスペインの「ポルボローネ」など、世界中にラードを使ったクッキーが存在します。

クッキーを作る際に、バターの代わりにショートニングを使うとホロホロサクサクの食感になりますが、ラードを使っても同じように軽い食感のクッキーに仕上がります。

ラードはショートニングよりも旨味やコクが強いので、サクサクしている上に味わい深いクッキーができ上がります。

牛脂を使って安い牛肉をグレードアップ!

国産牛や和牛の牛脂は、甘みや風味が豊かで融点も低いのが特徴ですが、この特徴を利用すると輸入牛肉や安い国産牛肉をワンランク上の風味にグレードアップすることができます。

ポイントは国産牛の牛脂を使うこと。国産牛や和牛を取り扱っている肉屋で調達すると確実ですね。上質の牛脂なら尚良しです。

牛脂を溶かして肉を焼くだけでも風味は全然違いますが、牛肉に切り込みを入れて、肉の間にみじん切りにした牛脂を入れ込んでから数時間寝かせておくと、さらに風味が良くなります。

ラードと牛脂を料理に使う方法は?

市販のラードは精製されているので、どのような料理にもとても使いやすい形状です。サラダ油の代わりに使う場合も、味にコクや旨味を出すために加える場合も、市販のラードをそのまま使えます

一方、牛脂の場合は、スーパーなどで肉を買った際にサービスでもらえる精製ヘットもありますが、多くの場合は肉屋で調達する牛脂の塊を使うことになります。

余裕があれば、牛脂を炊いて自家製ヘットを作っておくと料理が楽になります。

自家製ヘットを作ることが面倒であれば、3~4cmくらいの大きさに切って、塊のまま使ってしまいましょう。

フライパンで加熱したり、汁や油の中に直接入れて加熱したりして脂分を抽出してから、残った部分を取り出すとよいですね。

ケンネ脂ならほぼ溶け切ってしまうので、細かくみじん切りにして直接料理に入れてもよいでしょう。

まとめ:ラードと牛脂を活用してワンランク上の味を楽しもう!

ラードと牛脂の違いは豚の脂と牛の脂!ただそれだけだと思っていたのならもったいない!ラードの大きな特徴はコクと旨味が強いこと、そして牛脂の大きな特徴は甘みと香りが優れていることです。

この特徴を生かせば、家で作る料理をプロの味に近付けることができ、ワンランク上の料理を楽しめます。使いすぎなければ健康にも悪影響を与える心配も少ないので、ぜひ試してみてくださいね。

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