果糖ブドウ糖液糖ってご存じですか?
果糖ブドウ糖液糖はペットボトルの飲料や、お菓子などに幅広く使われている甘い食品です。価格が安く使いやすいことから、日本では市販されている様々な食品に添加されています。
果糖ブドウ糖液糖は名前は聞いたことが無くても、知らないうちに食べたり飲んだりしている食品です。この記事では果糖ブドウ糖液糖とはどんな食品なのか、体への影響について詳しく解説します。
目次
果糖ブドウ糖液糖ってどんなもの?
暑い夏に飲みたくなるアイスコーヒーに入れるガムシロップは、ほとんどが果糖ブドウ糖液糖から作られています。
果糖ブドウ糖液糖は高い温度では甘味があまり感じられず、温度が低くなると甘味が強くなる性質があります。そのためアイスコーヒーや清涼飲料水など、冷たくして飲む食品に使われることが多いようです。
では果糖ブドウ糖液糖の砂糖との違いや成分、どのようにして作られるのかについて見ていきましょう。
砂糖との違いは?
砂糖と果糖ブドウ糖液糖の違いは、大きく分けて2つあります。1つは原料の違いです。砂糖はさとうきびやてんさいを原料にしているのに対し、果糖ブドウ糖液糖はトウモロコシやいもが原料として使われます。
もう1つは分子の構成の違いです。砂糖も果糖ブドウ糖液糖も果糖とブドウ糖から出来ています。砂糖はブドウ糖と果糖の分子が結合していますが、果糖ブドウ糖液糖はブドウ糖と果糖の分子がばらばらに入っています。
砂糖は体に入った時、果糖とブドウ糖に分解されるワンクッションがあります。果糖ブドウ糖液糖は最初から分解されているため、そのまま素早く体に吸収されるのです。
どうやって作られるの?
果糖ブドウ糖液糖はトウモロコシや、いものでんぷんが原料です。でんぷんを分解してブドウ糖にし、さらにブドウ糖の一部を果糖に変換することで作られています。
ブドウ糖を果糖に変換することを「異性化」と呼び、果糖とブドウ糖を主成分にする液状の糖を「異性化糖」と言います。異性化糖には以下の種類が存在します。
・ブドウ糖果糖液糖:果糖が50%未満含まれている
・果糖ブドウ糖液糖:果糖が50%以上90%未満含まれている
・高果糖液糖:果糖が90%以上含まれている
・砂糖混合異性化液糖:異性化液糖にその糖の量を超えない砂糖を加えたもの
ブドウ糖は砂糖の7割程度の甘さしかないのに比べ、果糖は砂糖の1.2~1.7倍の甘味度があります。
果糖分55%の果糖ブドウ糖液糖は砂糖と同じくらいの甘味度になるため、日本では果糖分55%のものが一番多く流通しています。
果糖とブドウ糖の違いって?
果糖もブドウ糖も共にはちみつや果物に含まれる糖で、自然界に普通に存在している物質です。果糖は「フルクトース」と呼ばれ、天然の糖の中では一番甘味があります。
果糖は体に入ると肝臓に運ばれ、インスリンを必要とせずに代謝されます。果糖が過剰になると脂肪肝になると考えられています。
一方のブドウ糖は「グルコース」と呼ばれ、自然界に一番多く存在する糖です。ブドウ糖は体に入ると小腸から吸収され、脳や体のエネルギーとして使われます。ブドウ糖が血中に増えるとインスリンが分泌されます。
『果糖ブドウ糖液糖』は食品添加物?
なんとなく果糖ブドウ糖液糖には食品添加物のイメージがありますね。日本では果糖ブドウ糖液糖は砂糖やオリゴ糖などと同じ、天然の甘味料として「食品」に分類されています。
ペットボトルのジュースなどの成分表を見ると、一番前に果糖ブドウ糖液糖が載っていることがあります。これはそのペットボトル飲料には、果糖ブドウ糖液糖が食品として一番多く含まれているとの意味です。
日本で使用できる食品添加物は食品衛生法で決められています。果糖ブドウ糖液糖は食品に分類されているため、厚生省の発表している「指定添加物リスト」の中には入っていません。
果糖ブドウ糖液糖のデメリットとは
果糖ブドウ糖液糖は甘いジュースのほか、スポーツ飲料やかば焼きのたれ、焼き肉のたれなどにも使われています。またパンやお菓子の甘味にも使われることがあるようです。
果糖ブドウ糖液糖はたくさんの食品に使われているのに、どうしてお砂糖のようにお店に売っていないのでしょうか。
名前にある通り「液糖」でシロップの状態の糖なので、顆粒や粉状にできないことが原因のようです。果糖ブドウ糖液糖は、現在もっぱら業務用の甘味料として流通しています。
ここからは果糖ブドウ糖液糖のデメリットについて見ていきましょう。
太るって本当?ダイエット中でも大丈夫?
カロリーゼロ以外の糖分は砂糖でも果糖ブドウ糖液糖でも、摂り過ぎれば肥満になる可能性があります。
前の方にも書きましたが、果糖ブドウ糖液糖は果糖とブドウ糖がすでに分解された形で存在しているため、体に入ると素早くダイレクトに吸収されます。
素早く吸収された糖のエネルギーとして使われた余りは、脂肪分として体に蓄積されます。ゆっくり吸収された糖に比べ、脂肪になる確率が高いと言われています。
特に果糖はインスリンを分泌しないので満腹感を感じにくく、大量に甘いものを摂取しやすくなるのだそうです。ダイエット中には控えた方がよさそうですね。
糖尿病への影響にも注意が必要
果糖ブドウ糖液糖などの糖分は「ペットボトル症候群」と呼ばれる症状と密接な関係があると言われています。
ペットボトル症候群とは急性の糖尿病のことで、スポーツドリンクや清涼飲料水を大量に体に摂り入れ続けた若者に多いことから名づけられました。
ペットボトルの甘い飲料には100ml当たり5~10gの糖分が入っており、500mlの甘い飲み物を1本飲むだけで、25~50gの糖分を摂ることになります。これは3gのスティックシュガーなら8~17本分に相当します。
甘い飲み物を飲むと血糖値が上がり、血糖値が上がるとのどが渇いて飲み物が欲しくなり、甘い飲み物を飲んでまた血糖値が上がり…と繰り返します。
特に夏場などの暑い時期には、かなりの本数のペットボトル飲料を飲んでしまうこともあるでしょう。
この悪循環を繰り返すうちに、インスリンがうまく分泌されなくなり、糖尿病のような症状が出て最後には本当の糖尿病になってしまうのだそうです。
※果糖ブドウ糖液糖が入っているドリンク・入っていないドリンクについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、本記事と併せて参考にしてみてください。
脳が砂糖を欲しがるってホント?
「甘い」は「うまい」の語源だそうです。甘いものを摂ると、脳から快楽物質のドーパミンが出ます。他の味に比べて甘い味は脳に強い刺激があり、快楽物質を求めてまた甘いものを摂ることを繰り返すことがあります。
よく「脳のエネルギーになるのはブドウ糖だけ」という話を聞きます。脳の栄養のために甘いものを摂ろうと、甘い飲み物やお菓子を摂るのは正しいのでしょうか。
砂糖など手に入らない昔の人は、ブドウ糖を摂取しなかったのだから頭がぼーっとしていたことになりますね。それは少しおかしいような気がします。
実は人間は肝臓でアミノ酸などからブドウ糖を作ることが出来るのです。
脳のエネルギーがブドウ糖なのは間違いでは無いのでしょうが、特に砂糖などの甘いものを摂らなくてもきちんと他の栄養を摂っていれば脳のエネルギーが不足することはありません。
赤ちゃんが摂取しても大丈夫??
果糖ブドウ糖液糖を1歳未満の赤ちゃんに与えないように、とのネットでの書き込みが散見されました。これは1986年から2020年までに42例を数える、「乳児ボツリヌス症」との関連があるようです。
この乳児ボツリヌス症はハチミツが原因と考えられる症例が続き、死者も出たそうです。事態を重く見た厚生労働省が「赤ちゃんにハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」との注意喚起を行いました。
これを見たどなたかが拡大解釈をして、ハチミツの他に黒糖や果糖ブドウ糖液糖などにもボツリヌス菌がいるとの書き込みをしたことが原因のようです。
果糖ブドウ糖液糖にはボツリヌス菌の繁殖が無いように処理基準が決められていますので、基本的には心配はないと考えられます。
とはいえ大事なお子さんですので、1歳を過ぎるまではリスクの可能性のある食品は与えないのも一つの選択かもしれません。
果糖ブドウ糖液糖の体への意外な影響とは?
日本では一般庶民が砂糖を自由に食べられるようになったのは、明治時代以降と言われています。甘いものは美味しいので、現代の人たちは砂糖を摂り過ぎているようです。
果糖ブドウ糖液糖も適量を摂る分には、人間の体に影響をもたらすことはありません。問題になっているのは摂り過ぎていることですので、誤解のないようにしてくださいね。
ここからは思いがけない病気と、果糖ブドウ糖液糖との関係について見ていきましょう。
痛風と果糖ブドウ糖液糖には関係がある?
痛風とは「風が吹いても痛い」ことから名前が付いた、激痛を伴う病気です。
血液中の尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が結晶化して関節の中にとどまります。この尿酸の結晶を白血球が異物として攻撃するために、炎症が起きて激痛が起こるのだそうです。
果糖ブドウ糖液糖に含まれる果糖は、この尿酸値と深い関係があります。果糖は腸から吸収されると肝臓で代謝されますが、代謝しきれなかった果糖が尿酸になります。
以前はビールや魚卵類に多く含まれるプリン体が尿酸値を上げると言われていましたが、近年それに加えて果糖も尿酸値を上げることが分かってきています。
痛風は夏に増え、冬は比較的少ない傾向があるそうです。暑い時期にはビールや清涼飲料水の摂取量が多くなるためではないかと考えられています。
同じペットボトルでも麦茶やミネラルウォーターを選んで、痛くない生活を送りましょう。
「糖化」が「老化」の原因に…
「糖化」って一体なんでしょう。最近耳にすることの多い言葉ですので、聞いたことがある人も多いかもしれません。
糖化とは、たんぱく質と体内の余分な糖分が結合して、変性や劣化したたんぱく質によってAGE(最終糖化物質)が作り出されることをいいます。
「最終糖化物質」なんてアニメやドラマに出て来る、地球を滅ぼす最終兵器みたいな恐ろしげな名前ですね。実はこのAGEが人の体の中に増えると、皮膚や髪、骨などの老化を促進させたり、糖尿病や高血圧をもたらすと言われています。
甘い飲み物などに含まれる果糖ブドウ糖液糖は大量に摂取しやすく、余った糖によって糖化が起こりやすくなります。アンチエイジングには、甘い飲み物はほどほどに。
まとめ~果糖ブドウ糖液糖とは便利と危険の背中合わせ
果糖ブドウ糖液糖は砂糖と同じくらいの甘さで価格が安いことから、昔に比べてペットボトル入りの飲料の価格は安くなっています。500mlや中には1L入りの飲料でも、百数十円で買うことが出来るようになりました。
便利さの代わりに、私たちは糖分の摂り過ぎの危険に直面しています。塩でも水でさえも、摂り過ぎれば健康を害します。健康を害してしまうと、甘いものは摂れなくなってしまうのは悲しいですね。
ペットボトルを2本買うなら1本はお茶やミネラルウォーターを選ぶなど、適度な量の糖分を摂って長く甘いものを楽しめるようにしてください。