黒糖焼酎は、日本で唯一奄美群島だけで製造が許されている焼酎です。
喜界島生まれの『朝日』は、地元では古くから島の酒として親しまれていた黒糖焼酎で、2007年に日経プラスワンで紹介された、専門家が薦める焼酎ランキングの2位になったことで、全国的に知られるようになりました。
この記事では、黒糖焼酎『朝日』の魅力やおすすめの飲み方をご紹介します。
目次
喜界島生まれの黒糖焼酎『朝日』のこだわりとは?
黒糖焼酎『朝日』を造っているのは、喜界島の酒造会社「朝日酒造株式会社」です。まずは、代表酒の『朝日』をはじめこだわりの黒糖焼酎造りを行っている朝日酒造についてご紹介します。
奄美群島で最も歴史のある蔵
朝日酒造株式会社は喜界島に2社ある酒造会社のひとつで、奄美群島(奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島)に26社ある黒糖焼酎の酒造メーカーのなかで、最も歴史のある酒蔵です。
朝日酒造の創業は1916年(大正5年)。「喜禎(きてい)康二商店」として創業し、1960年(昭和35年)に、現在の朝日酒造株式会社となりました。
奄美群島で黒糖焼酎を製造している他の酒蔵と同様に、第二次世界大戦前までは泡盛を製造していました。
しかし、戦後のアメリカ占領下で日本本土との流通を断たれて、泡盛の原料である米の調達ができなくなり、島で使い道のなくなっていた黒糖を原料にして焼酎造りを始めました。
喜界島にこだわった黒糖焼酎造り
朝日酒造は、「黒糖焼酎を通して、喜界島の魅力を世に発信する企業」を目指しています。その一環として取り組んでいるのが、自社栽培、自社製糖での黒糖作りです。
サトウキビ栽培は喜界島の主要産業ですが、そのほとんどは大手製糖会社のザラメ糖などに利用されていて、黒糖に加工されるサトウキビは僅かだそうです。
朝日酒造では、原料作りから一貫して喜界島にこだわった黒糖焼酎を造りたい、という思いから、サトウキビを栽培し、黒糖の製糖も行っています。奄美地方の黒糖焼酎の酒蔵のなかで、黒糖を自社で作っているのは朝日酒造を含めほんの僅かの蔵だけです。
朝日酒造の黒糖は有機栽培にこだわっていて、2015年(平成27年)には有機JAS認証を取得しています。
伝統と新しい技術の癒合が生み出す黒糖焼酎
朝日酒造の現在の代表は4代目の喜禎浩之氏。
東京農業大学の醸造科学科で醸造学を学び、鹿児島の「小鹿酒造」で3年間修行した後、朝日酒造に戻ってきたそうです。その後、先代とともに黒糖の有機栽培に着手し、黒糖製造工場も完成させました。
そして、自社有機黒糖を使用した焼酎『陽出る國の銘酒(ひいずるしまのせえ)』をはじめ、大学で学んだ醸造科学の知識を生かして新しい銘柄を次々と造り出しました。
また、長年培った伝統と経験による職人の五感や技術に加え、データによるチェックを取り入れ、黒糖焼酎の質の向上に取り組んでいるそうです。
朝日酒造の黒糖焼酎は、まさに伝統の技術と最新の技術の融合によって造り出されていると言えますね。
黒糖焼酎『朝日』は朝日酒造の代表酒
喜界島の発信基地を目指して黒糖焼酎造りを行っている朝日酒造の代表酒が、黒糖焼酎『朝日』です。では、『朝日』とはどのような黒糖焼酎なのでしょうか。『朝日』の特徴やおすすめの飲み方をご紹介します。
黒糖焼酎『朝日』とは?
1916年(大正5年)の創業当時、「喜禎康二商店」では、『朝日』という銘柄の泡盛を製造していました。
『朝日』という名前は、喜界島が奄美群島で最も東に位置しているため、海から昇る朝日を奄美群島で最初に望める島で造った泡盛、という意味で付けられたそうです。
太平洋戦争で全壊した蔵を復興させ、泡盛に代わって黒糖焼酎が造られるようになった時、『朝日』の名前はそのまま新しい黒糖焼酎に引き継がれました。
1960年(昭和35年)に生まれ変わった新たな会社の名を「朝日酒造株式会社」としていることからも、黒糖焼酎『朝日』にいかに思い入れがあり、大切にしている銘柄かということは容易に想像がつきますよね。
『朝日』の原料と製造方法
『朝日』の製造工程は、まず、蒸したタイ米に白麹を混ぜ2日間熟成させて米麹を造り、さらに水と酵母を加え約1週間熟成させて、酒母(一次もろみ)を造ります。
主原料の黒糖は、現在は沖縄産のものを主に使っています。黒糖焼酎の命とも言える黒糖の香りが逃げないように、低温で時間をかけてじっくりと溶かすことも、朝日酒造のこだわりのひとつです。
溶かし終わった黒糖を酒母に加え、10~15日間熟成させます。熟成が終わると、伝統的な常圧蒸留という方法で蒸留を行い、アルコール濃度が約44%の『朝日』の原酒が完成するのです。
その後、タンクで1年以上貯蔵・熟成した後、アルコール度数を調整する割水を行ってから、瓶詰めをして出荷されます。
黒糖焼酎『朝日』の味の特徴
黒糖焼酎『朝日』は、黒糖の豊かな香りとコクのある甘さをしっかりと感じられる黒糖焼酎です。口当たりはやさしく、まろやかなのに後味にはしっかりとしたキレがあります。
やさしくまろやかな口当たりは白麹に由来します。泡盛に使われる黒麹がどっしりとしたコクがあるのに対し、白麹は軽くて穏やかな味わいになるのが特徴です。
そして、後味のスッキリとしたキレは、仕込み水に秘密があります。喜界島はサンゴ礁が隆起してできた島で、石灰岩層から湧く地下水はミネラル分を豊富に含む硬水です。
硬水で仕込むことにより、シャープでキレのある味わいの黒糖焼酎になります。そして、割水に軟水化した水を使うことで、飲みやすい黒糖焼酎に仕上がっています。
黒糖焼酎『朝日』のラインアップとおすすめの飲み方
朝日酒造の代表酒である『朝日』には、いくつかの種類が存在します。それぞれの銘柄の特徴とおすすめの飲み方をご紹介します。
尚、黒糖焼酎の一般的な飲み方については、こちらの記事でも紹介しています。
朝日( 25度・30度)
代表酒の『朝日』のラインアップには、25度と30度の2種類があります。どちらも、蒸留後1年以上貯蔵タンクで熟成させた後に、軟水化した水で割水を行っています。
まろやかな口当たりを好む人は25度を、『朝日』本来のしっかりとした味わいを楽しみたい人は30度を選ぶと良いでしょう。
『朝日』は、どのような飲み方にも合う黒糖焼酎ですが、まろやかな口当たりとシャープなキレのある後味をより楽しむには、ロックや水割りで飲むのがおすすめです。また、どのような料理にもよく合うので、食中酒にも向いています。
壱乃醸(いちのじょう)朝日
現4代目代表が杜氏として最初に仕込んだ黒糖焼酎であることから、この名が付けられました。
『壱乃醸朝日』は、代表酒である『朝日』の2.5倍の量の黒糖を贅沢に使用し、黒麹で仕込んだ25度の黒糖焼酎です。仕込む黒糖の量が『朝日』よりもかなり多い分しっかりとしたコクがあり、芳醇な甘い黒糖の風味をしっかりと感じられます。
また、通常の『朝日』は白麹で仕込んでいますが、『壱乃醸朝日』は黒麹で仕込むことで、『朝日』の2.5倍量の黒糖を使っていながらも、スッキリとキレのある風味を楽しめます。
芳醇でシャープな味わいなので、濃いめの味付けの料理に良く合い、水割りやロックの他、ぬるめのお湯割りで飲むのがおすすめです。
飛乃流(ひのりゅう)朝日
通常の『朝日』はタイ米で米麹を造っているのに対し、この『飛乃流朝日』は国産米を使用した米麹で仕込んだ25度の焼酎です。
ぬるめのお湯割りで飲んだ時に、黒糖の香りが穏やかにゆっくりと立ち上る味わいを楽しめる黒糖焼酎を造りたい、という杜氏の思いで開発されました。
黒糖がゆっくりと香るように、通常の『朝日』よりも黒糖の量を少なめにして仕込んでいます。また、『朝日』とは別の酵母を使って低温で発酵させることで、優しくやわらかでフルーティーな甘さを味わえるのが特徴です。
ぬるめのお湯割りが合うのはもちろんですが、ストレートやロックでもフルーティーな香りを楽しめます。また、黒糖焼酎初心者の人にもおすすめの黒糖焼酎です。
奄美 黒潮
戦前までは泡盛を造っていた朝日酒造では、泡盛造りのさまざまな技術や伝統を現在の黒糖焼酎造りにも生かしています。そのひとつが「仕次ぎ」と呼ばれる手法です。
仕次ぎとは、泡盛の古酒(クースー)を熟成させる手法で、親酒となる古酒に年次の違う泡盛を継ぎ足すことで、より芳醇な古酒を造ることができます。
この仕次ぎの手法を応用した黒糖焼酎が『奄美 黒潮』です。『朝日』の原酒のなかから良質なものを厳選し、仕次ぎをしながら5年間熟成させ、35度に調整しています。
『奄美 黒潮』が持つキリリとしまった味わいをより楽しみたいのなら、ロックで飲むのがおすすめです。熟成によってどっしりとした旨味と深みのある芳醇な香りを楽しめます。
島育ち
『奄美 黒潮』と同じように仕次ぎの手法で熟成させた25度の黒糖焼酎です。厳選した『朝日』の原酒を約3年間熟成させることで、調和の取れたまろやかなコクと熟成酒ならではの芳醇な香りを楽しめます。
『奄美 黒潮』と同様に、ロックで飲むとスッキリとした口当たりになり、熟成酒の豊かな香りを堪能できます。レトロ感のある陶器のボトルに入っているので、お土産や贈答品にもおすすめです。
まとめ:黒糖焼酎『朝日』で喜界島の味を楽しもう!
黒糖焼酎『朝日』は、大正時代からの泡盛製造の伝統を引き継ぎ、喜界島の豊かな風土とセーヤ(島の酒蔵)によって大切に育まれてきた黒糖焼酎です。
まろやかな甘みとキレの良い後味が特徴の喜界島生まれの『朝日』を、ぜひ一度味わってみてください。