分離してしまって混ぜても混ぜてもクリーム状にならない!!
はい。失敗です。昔、私も失敗しました。
単純な作業だけどけっこう難しいマヨネーズ作り。でも、ちょっとしたコツを覚えれば大丈夫です。
この記事ではマヨネーズの分離に注目します。マヨネーズを失敗なく作るための科学的な根拠に基づいたコツや失敗マヨネーズの救済方法のほか、市販マヨネーズが分離する原因についても解説します。
目次
手作りマヨネーズが失敗する原因は?
マヨネーズの原料は主に3つ。卵と植物油とお酢です。簡単に言うとそれらを混ぜるだけなんですが、これが意外に難しい。
マヨネーズはもったりとしたペースト状で色も白っぽいです。しかし、失敗するといつまでたっても水分と油が分かれた状態で、色も黄色っぽいままです。こうなってしまうと失敗です。
そもそもなぜ失敗してしまうのでしょうか?マヨネーズ作りに失敗する原因を探ってみましょう。
まずはマヨネーズの乳化をおさらい!
ドレッシングの原料は主に植物油とお酢(水分)です。
クリーミータイプではなく液体タイプのドレッシングは普段は2層に分かれていて、使う前に容器を振ると混ざったように見えますが、しばらく放置すると元の状態に戻りますよね。
これは、油の表面と水の表面には、お互いが混ざり合わないようにする境界張力という力が働いているためです。容器を振ることで水と油の粒子は小さくなって分散します。しかし、水と油が完全に混ざり合うことはないので、時間がたつとまた油と水分に分かれてしまいます。
一方、マヨネーズもドレッシングと同じように植物油とお酢(水分)からできていますが、ペースト状でそのまま放置しても油と水は分離しません。
これは、卵黄中に含まれるレシチンという物質が仲介して、油と水の界面張力を弱めて油の分子を水の中に入り込ませることで、完全に混ざり合う状態が作られるからです。これが乳化です。
油とお酢を乳化してクリーム状にすることで舌触りがよくなり、油っぽさを感じにくく、まろやかになるのです。
手作りマヨネーズが分離する原理
マヨネーズを手作りして失敗する原因は、乳化がうまくできていないからです。では、なぜ乳化がうまくいかずに分離してしまうのでしょうか?
マヨネーズの乳化は水中油滴型(O/W=Oil in Water)と呼ばれる乳化状態、つまり水(お酢)の中に油を閉じ込めてしまうタイプです。お酢と油を攪拌することで界面張力を壊し、油の粒子を水の中に入り込ませます。
卵の乳化力を利用してお酢の中に油の粒子を入り込ませるわけですから、先にお酢と卵を混ぜ合わせて、後から油を混ぜていく必要があります。この時に、攪拌が足りなかったり油の量が多すぎたりすると、うまく乳化させることができずに分離してしまうのです。
また、お酢と卵と油を一度に混ぜても、激しく攪拌すれば乳化できないわけではありません。しかし、一部が油中水滴型(W/O=Water in Oil)になり、油で水を閉じ込める構造になってしまうので、表面に油が浮いたり油っぽくなったりしてしまう可能性があります。
マヨネーズを分離させないで作る方法
マヨネーズが分離する理由については何となくわかってもらえたのではないかと思います。では、マヨネーズをきちんと乳化させるために、具体的にどのようにすればよいのでしょうか?
失敗しないようにするポイントと基本の作り方について解説していきましょう。
マヨネーズを失敗なく作る4つのコツ
マヨネーズを作る際に分離させないようにするために、次の4つのポイントを覚えておきましょう。
★コツその1:卵は新鮮なものを使用すべし!
卵黄中に含まれるレシチンというタンパク質が『乳化剤』として働き、油と水を乳化させます。卵が古くなるとレシチンの乳化力が弱まってしまうので、できるだけ新鮮な卵を使うようにしましょう。
★コツその2:卵は常温に戻すべし!
乳化は温度の影響を受けやすいことがわかっています。マヨネーズを作る時の温度については諸説あるようですが、原料の温度は15~20℃くらいが適温だと言われています。
冷蔵庫から出してすぐの卵だと温度が低すぎて乳化がうまく進まない可能性があるので、常温に戻した卵を使うようにしましょう。卵をぬるま湯に30分程度漬けておく方法が早くて簡単です。
★コツその3:混ぜる順番を守るべし!
O/W型の乳化がうまくいくように、材料を混ぜる順番を守るようにしましょう。具体的には、塩・お酢の半量程度・卵をしっかりと攪拌しながら油を少量ずつ加えていき、固くなったら少量のお酢で伸ばす。これを繰り返すのが理想です。
★コツその4:油は少しずつ加えるべし!
油を入れる時は、最初はほんの少量から始めます。特に手動で攪拌する場合は、最初はポタリ、ポタリ、くらいのスピードから始め、ペースト状になってきたら入れる油の量を少しずつ増やしていくとよいでしょう。
マヨネーズの基本の作り方
マヨネーズの作り方を検索すると、卵黄に油を先に混ぜる方法も紹介されていますが、今回はO/W乳化のまろやかなマヨネーズにこだわり、油を後入れする作り方を紹介します。
【材料】
卵黄(全卵でもOK) 1個分
酢 大さじ1
塩 小さじ1/2弱(2g程度)
植物油 100cc
※砂糖・はちみつ、マスタードなど お好みで小さじ1程度加えてもOK
【作り方】
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ボールに、卵・塩・酢の半量を入れて泡立て器でよく混ぜます。砂糖やはちみつ、マスタードなどを使う場合はこの段階でいっしょに入れておきましょう。
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しっかりと混ざったら、攪拌しながら、大さじ1杯くらいの油をほんの少しずつ加えていきます。
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ペースト状になってきたら、お酢を小さじ1/2程度加えてよく混ぜ、さらに攪拌しながら残りの油のうち1/4~1/3程度を少しずつ加えます。これを3~4回繰り返しましょう。
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最後に酢が残っていれば全量加え、固すぎるようであれば分量外のお酢(小さじ~大さじ1/2程度)で伸ばして調整します。
※注1
油は、最初はポタリポタリというスピードから始め、50ccくらいまでは糸状に垂らしていく程度がベター。50ccくらい入れてしっかりと乳化できてきたら、加えるスピードを上げても大丈夫です。
※注2
混ぜる時は泡立て器を使って手動で行ってもよいですが、ハンドミキサーを使うと簡単です。また、ブレンダーやフードプロセッサで作ることもできます。
時間がたってから分離することも!
うまく乳化に成功してマヨネーズができても、冷蔵庫で保存しているうちに表面に油が浮いてくることがよくあります。これは、一度は乳化したものの、乳化が不安定で乳化した状態を長く保つことができないことが原因です。
手動やハンドミキサーなどで手作りした場合、油の粒子が大きいため乳化が不安定で、再び分離しやすい状態にあります。もし、作ってしばらくしたマヨネーズが分離してきたら、油の劣化が進んでいる状態です。食べるのはあきらめて処分した方がいいでしょう。
分離した失敗マヨネーズの救済・再生方法
失敗しないコツを紹介しましたが、マヨネーズ作りは繊細です。慣れている人でも失敗することもあります。
でも、捨てるのはちょっと待って!!失敗した未完成マヨネーズを救済する方法があるのです。その方法を紹介しましょう。
乳化に失敗するとどういう状態になる?
卵・塩・酢の混合液に少しずつ油を入れていきますが、最初に油を大さじ1杯程度加えた段階で固まってきてペースト状になれば、成功したも同然です。
逆に、この最初の段階でいつまでたってもペースト状にならないようであれば、マヨネーズ作りは失敗です。乳化がうまくいかずに分離してしまっているので、その後どんなに攪拌を続けても、残念ながら二度とマヨネーズになることはありません。
乳化に失敗すると、油と水分が分散している状態、つまり液体タイプのドレッシングのようなシャバシャバの状態になります。見た目はドレッシングのようですが、ドレッシングに比べると油の量が桁違いに多いです。油っぽいだけなのでそのまま食べることはおすすめしません。
失敗マヨネーズを復活させる方法
分離した失敗品に新たに卵黄を加えることで、再度乳化させられる可能性があります。
まずは、常温に戻した卵黄をボールに入れます。そこに、失敗して分離した未完成マヨネーズを大さじ1杯くらいずつ加えて攪拌します。しっかりと攪拌する必要があるので、手動で行うよりもハンドミキサーで攪拌する方がより確実です。
しっかり混ざって少し白っぽくなってきたら、さらに失敗した液体を大さじ1杯程度加えて攪拌します。液体は一気に入れずに乳化の状態を見ながら、少しずつ加えるようにしてください。
少しずつ入れては攪拌し、入れては攪拌する…を繰り返し、失敗液がなくなるまですべて入れていきましょう。
ただし、この方法はあくまで食べられる状態にするための応急処置です。卵黄を加えて無理やり乳化させた状態なので、味のバランスも悪くなりがちですし、またすぐに油が浮いてきてしまう可能性もあるので、その点は頭に入れておきましょう。
市販のマヨネーズでも分離するの?保存の際の注意点
手作りしたマヨネーズは冷蔵庫でしばらく置いておくと、分離して油が浮く状態になりやすいことはすでに説明した通りです。
では、市販のマヨネーズは分離しないのでしょうか?また、万一分離してしまった場合は、食べても大丈夫なのでしょうか?
市販のマヨネーズは分離しにくい
市販のマヨネーズも植物性油脂とお酢を卵で乳化させるのと同じです。しかし、手作りしたマヨネーズに比べると市販マヨネーズは分離しにくい構造になっています。
市販のマヨネーズは専用の機械で乳化を行います。機械を使うと油の粒子の大きさを非常に細かくできるので、油の粒子が大きい手作りのマヨネーズよりも乳化を安定させることができるのです。
ですから、よほどの条件が重ならない限り、滅多に分離しないと思ってよいでしょう。
市販のマヨネーズが分離する理由は3つ
乳化が安定しているとはいっても、分離してしまうこともあります。市販のマヨネーズが分離してしまう原因として次の3つが考えられます。
その1:マヨネーズが0℃以下になった場合
0℃以下になるとマヨネーズは凍り、油が結晶化して針状の結晶ができます。その結晶が乳化の膜を突き破り、油の粒子が水の内側から流れ出てしまうのです。その結果、油と水が分離してしまいます。
その2:マヨネーズが高温になった場合
マヨネーズをフライパンなどで加熱すると溶けるように見えますが、実は溶けているのではなく乳化が壊れて分離してしまっているのです。
マヨネーズの乳化は卵黄中のレシチンが乳化剤の働きをすることで成り立っています。しかし、マヨネーズが高温になるとタンパク質が熱によって変性し、乳化の力が弱まり、油が水の外に流れ出してしまうのです。
その3:強い衝撃が掛かった場合
市販のマヨネーズの粒子は非常に細かいので安定した乳化の状態を保っていますが、強い衝撃が加わったり長い時間振動したりすると、粒子がぶつかり合って大きくなっていきます。その結果乳化が壊れ、油が分離してマヨネーズの表面に油が浮いてきてしまうことがあります。
市販のマヨネーズの分離を避けるには?
家庭において市販のマヨネーズが分離してしまう原因として最も多いのが、冷蔵庫の中で0℃以下の状態が作られてしまった時です。
通常、冷蔵室の温度は各メーカーとも2℃~6℃くらいに設定されています。しかし、冷風の吹き出し口付近では0℃以下になることも珍しくありません。また、チルド室は冷蔵室よりも設定温度が低く0℃前後です。
ですから、吹き出し口のある冷蔵庫の奥やチルド室ではマヨネーズが分離してしまうことがあります。マヨネーズを冷蔵庫で保存する場合は、ドア付近や野菜室での保存がおすすめです。
また、お弁当用のマヨネーズを電子レンジでいっしょに加熱してしまったり、調理の際コンロのそばにマヨネーズを置いたりすると、熱で分離してしまいます。長時間直射日光にあたっていても高温になり分離することもあります。
高温の状態にならないように注意しましょう。
分離した市販マヨネーズは食べられるの?
マヨネーズは乳化が壊れて分離してしまうと、元の状態には二度と戻りません。例えば、お弁当用のマヨネーズを電子レンジで加熱してしまい、その後すぐに気付いたのなら食べても問題ありません。
しかし、冷蔵庫に長時間放置していた場合は、油が劣化している可能性が高いです。直射日光や夏の高温のもとに長時間放置して表面に油が浮いている場合は、油の劣化だけでなく食中毒の危険もあります。分離したマヨネーズは食べない方がよいでしょう。
まとめ:分離に注意してマヨネーズをおいしく食べよう!
マヨネーズを手作りすると、材料や分量を調整して好みの味や固さにすることも可能です。添加物が気になる人も安心ですね。ぜひ、コツを抑えて手作りマヨネーズに挑戦してみてください。
その一方で、分離してしまうとおいしくないだけでなく、油が劣化しやすい状態になります。市販品も含め保存状態にも注意しましょう。