わさびは普段買って食べることは少ない食材です。スーパーなどでは買わなくても、わさびの産地などに旅行に行った時に道の駅やお土産屋さんで生のわさびをおみやげに買うこともあるでしょう。
お店ではかごや水を張った入れ物に、無造作に並んでいることの多いわさび。どうせ買うならおいしいわさびを選びたいですね。この記事ではわさびを買う時の選び方やわさびのすりおろし方、道具の選び方について詳しく解説します。
目次
わさびの基本のすりおろし方
刺身や寿司、最近は肉料理にも薬味として使われているわさび。口に入れた瞬間鼻に抜けるつーんとした辛さ。生わさびのさわやかな緑色や独特の香りは、やはりその場ですりおろしたものは別格の違いがあります。
ちょっとしたポイントを押さえることで、わさびのおいしさをぐっと引き出すことができます。ではわさびの選び方や基本のすりおろし方を見ていきましょう。
おいしいわさびの選び方
普段あまり買う機会のないわさび、どれを選んだらいいのでしょうか。お高いものですのでしっかりと見分けて、おいしいわさびを選びましょう。
・見た目が新鮮で、色はきれいな緑色
・茎や葉が生き生きしている
・全体に同じくらいの太さの円筒形をしている
・しわの幅が狭く、詰まっている
・小さくても手に取った時にしっかりとした重みを感じる
時間をかけてしっかりと育てられたわさびは中身がぎっしりと詰まっていて、すりおろした時に風味や辛味がしっかり感じられるそうです。
下ごしらえの仕方
下ごしらえは特別な道具も不要で、そんなに難しくありません。
1.わさびの茎を手で取り除きます。
2.包丁などを使い、でこぼこした部分や黒くなった所をそぎ落とします。
3.流水でたわしなどを使って軽く洗います。
たわしでこする時にはわさびに傷がつかないように軽くこする程度にしましょう。皮はむかなくても大丈夫です。
すりおろしてみよう
わさびの下ごしらえが出来たら、すりおろしていきます。家にあるおろし器でOKです。セラミックのおろし器は台の上に置いて、ゆっくりとすりおろせるのでおすすめですよ。
わさびのすりおろし方は「軽く優しく、円を描くように」が基本です。できるだけ力を入れずに、ふわふわとしたわさびのすりおろしになるようにしましょう。
昔から「わさびは笑いながらすれ」と言います。これはわさびの辛み成分「アリルイソチオシアネート」が、細胞が破壊され、空気に触れることで始めて生成されることが原因です。
わさびを出来るだけ細かくすりおろすことでより多くの辛味成分が作られると言われています。
すりおろしたわさびが苦い!
せっかく苦労してすりおろしたわさびが苦いことがありますね。これには2つ原因が考えられます。
1つはすりおろしてすぐ食べた場合で、まだ辛味成分が十分に発生していないことが考えられます。3~4分位で辛味成分が発生すると言われていますので、そのまま数分待てば辛くなることがほとんどです。
もう1つは荒くすりおろしてしまった場合で、細胞がきちんと壊れず辛味成分が作られていないことが考えられます。
この場合はいったんまな板の上にすりおろしたわさびを置き、包丁などで細かく叩くと細胞が壊れて辛味成分が生成されます。
苦みはもともとわさびの中に存在する「シニグリン」の味です。わさびの細胞が壊れることで、シニグリンが酵素と反応し辛味成分に変わります。この辛味成分は揮発性のため、時間と共にどんどん失われていきます。
わさびのすりおろし方素朴な疑問
わさびをすりおろすときに、「あれ?これはどっちにしたらいいんだろう」とちょっとした疑問が浮かぶことがありますね。ちょっとしたコツで、わさびをおいしくできます。
ここからはわさびのすりおろし方で、迷いがちな疑問について見ていきましょう。
わさびは生と加熱で辛さが違う
わさびを料理に使うときには、加熱せずに生で使うことをおすすめします。すりおろし方の違いでも辛さが変わってきますが、料理法でもわさびは辛さが違ってくるのです。
わさびの辛さは揮発性で、加熱によってさらに辛味成分が失われてしまいます。加熱して作る料理にわさびを使うなら、出来上がった料理に生のわさびを添えるようにすると辛さや風味を楽しむことができますよ。
皮はむくの?むかないの?
わさびの皮をむくか、むかないかは以前「美味しんぼ」などでも取り上げられた論争です。料理屋さんでも皮をむく店とむかない店があるようですし、どちらでもOKのようです。
皮をむく利点は、色がきれいに仕上がることです。お客様に出すような料理で、見た目を良くしたいなら皮をむいてすりおろしましょう。
皮をむかない利点は、皮の中に豊富にある辛味成分や栄養成分を余すところなく食べられることです。少し色は悪くなりますが、ご家庭で食べるなら皮付きのままですりおろした方が風味や辛味をより楽しめますよ。
すりおろす「向き」はある?
わさびは先の方と茎の方で味や風味が違います。茎の方が後で育った部分のため新鮮な風味を多く感じ、先の方は辛味を多く感じると言われています。
ご家庭で使うなら先の方も茎の方もいつかは食べることになるので、保存をどうするかで向きを決めるといいでしょう。
食べる分ずつすりおろして使うなら、茎の部分を残した方が長持ちするので先の方からすりおろしていきましょう。それ以外の方法で保存するなら、茎の方を先にすりおろした方が新鮮な味を最初に楽しめます。
わさびの保存方法については下記の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
肉と魚ですりおろし方が違う
肉料理に使う場合と魚料理に使う場合でわさびのすりおろし方を変えると、よりおいしくお料理をいただくことができます。
寿司や刺身に使う場合は、優しく「の」の字を書くようにすりおろすのがおすすめです。辛味成分が多く発生して、あのつーんとくる辛さを感じながらおいしく料理を食べることができます。
ステーキなどの肉料理の薬味に使う場合は、まっすぐ前後にすりおろします。辛味成分が優しくすりおろした時に比べて少ないため、多い量のわさびを肉に付けて食べることができます。
これによって肉でおなかがもたれるのを防止できる効果があるそうです。
わさびのすりおろし方にはおろし器のチョイスも大事
わさびは下ごしらえやすりおろし方で、辛味も風味も違ってくることがわかりました。ではすりおろす道具はどうでしょうか。おろし器には鮫皮や金属、プラスチックやセラミックなど様々な素材があります。
ここからはおろし器について、昔からの言い伝えや新しい情報、近年ネットなどで話題になっているおすすめのおろし器などをご紹介します。
なぜわさびには鮫皮なの?
「わさびをすりおろすには鮫皮」とはよく聞くフレーズですね。高級なお寿司屋さんなどでも寿司職人さんが、鮫皮のおろし器を使ってわさびをすりおろすところを見たことがある人もいるでしょう。
「鮫皮おろし」は江戸時代から使われ始めたと言われています。元々は宮大工がやすりとして鮫の皮を使っているのを見て、わさびを鮫皮ですりおろすのに使えないかと考えたのが由来のようです。
わさびは細かくすりおろすことで辛味成分が多く発生しますので、目の細かい鮫皮はうってつけの道具だったのでしょう。
金属のおろし器は厳禁は本当?
様々なサイトで目にする「わさびは金気を嫌う」は本当でしょうか。実はこの話には明確な根拠はありません。
金属のおろし器とプラスチックやセラミック、鮫肌の違いは歯の鋭さです。この歯の鋭さのために、金属のおろし器はすりつぶすように細かくすりおろすことができません。
そのため鮫皮などのおろし器に比べて、辛味や風味が劣ってしまうのが「金気を嫌う」との風評につながったのではないでしょうか。
実際には料理店や寿司店でも、金属のおろし金を使ってわさびをすりおろしているお店もあります。ご家庭でもあまり気にせず、おうちにあるおろし器を使ってください。
【わさび専用おろし器】鋼鮫(はがねざめ)
わさび専用の金属製のおろし器が話題になっています。歯の部分が「わさび」の文字になっているのもかわいらしく、業務用で使われるだけでなく贈答用などでも購入されている人気の商品です。
ネットでの評判は「お手入れが楽ちん」「鮫皮より楽にすりおろせる」「パッケージがかっこいいので、プレゼントとしてぴったり」など非常に好評な意見が多いようです。
「わさびわさび…」と続く文字の中に1か所だけ「わびさび」があるそうです。作り手の遊び心も楽しいですね。
まとめ~おいしいわさびにはすりおろし方が大事
わさびはすりおろしかたの違いで、辛味や風味が変わるデリケートな食材です。江戸時代から長い間使われてきた鮫皮のおろし器は、クリーミーできめ細かいわさびを作るための必須アイテムでした。
現在では誰でも簡単においしいわさびをすりおろせる道具が、新しい発想で発明されています。すりおろし方の工夫で、ぜひ香りや風味のあるおいしいわさびを楽しんでくださいね。