豆乳スープを作ったら、分離してモロモロになった!という経験をした人も少なくないのではないでしょうか。
豆乳スープが分離するとモロモロした食感がそのまま口の中に残り、本来のまろやかさが半減してしまいますよね。
では、豆乳スープを分離させないように作るにはどのようにしたらよいのでしょうか?
この記事では、豆乳スープを分離させずに作るコツや、保存方法や温め直しの方法、市販の豆乳スープを利用する方法などをご紹介します。
目次
豆乳スープが分離する原因は「たんぱく質の凝固」
豆乳には約3~4%のたんぱく質が含まれています。豆乳スープが分離してしまうのは、豆乳中の大豆たんぱくが固まってしまうためです。
大豆たんぱくが固まる主な要因として、加熱によるもの、酸によるもの、「にがり」によるものの3つがあげられます。ひとつひとつの要因について詳しく見ていきましょう。
「加熱」によるたんぱく質の凝固
たんぱく質が固まるいちばんの原因は、加熱によるものです。卵を加熱すると固まることや、牛乳を温めすぎると表面に膜が張ることと同じ原理ですね。
無調整豆乳を加熱していくと大豆のたんぱく質が固まって、牛乳と同じように表面に膜ができます。これが湯葉です。
豆乳を加熱していくと空気に触れている部分の水分が蒸発して、豆乳表面が部分的に濃縮されてたんぱく質の濃度が部分的に高くなります。
大豆のたんぱく質は約70℃で固まり始めるので、豆乳表面の濃くなった部分の大豆たんぱくが少しずつ固まって膜になる、というわけです。
豆乳の膜を作らないようにすることが大切
豆乳を加熱すると、表面の水分が蒸発して表面付近の豆乳が濃縮されるため、大豆たんぱくが固まって膜ができやすくなります。
さらに、豆乳を沸騰させると表面にできた膜がバラバラになるため、分離してモロモロの小さな塊になってしまうのです。
つまり、豆乳スープが分離しないようにするには、豆乳の大豆たんぱくが固まってできる膜を作らないようにすることが最大のポイントとなります。具体的なコツは次の3つです。
1.豆乳は最後に入れる。豆乳を入れた後は沸騰させない。
2.豆乳を入れた後に弱火で温めると、温まるまでに時間がかかり表面の水分がどんどん蒸発するので、中火~やや強火にしてできるだけ短時間で温める。
3.豆乳を入れた後は表面付近が濃縮されないように、ゆっくりとかき混ぜ続ける。
最初から豆乳を入れて具材を煮ると豆乳のたんぱく質が固まりやすくなります。ですから、最初はコンソメスープや出汁だけで具材を煮込み、火が通ってから最後に豆乳を入れることが大切です。
豆乳スープを分離させないようにするには、豆乳を入れた後は絶対に沸騰させず、温める程度に留めておきましょう。また、お風呂と同じで上の方が先に熱くなって、水分が蒸発しやすい状態なります。
ですから、豆乳を入れた後は絶えず全体をかき混ぜるようにすると、表面付近の温度の上がり方がゆっくりになるので、表面付近の豆乳成分の濃縮を防ぐことができます。
「酸」によるたんぱく質の凝固
たんぱく質は酸性になると凝固する性質があります。牛乳に酢やレモン汁を入れるとドロドロになってヨーグルト状の飲み物ができ上がりますが、これは酢やレモン汁を入れることで牛乳のpHが下がるためです。
豆乳も同じように酸性に傾くとたんぱく質が固まります。
ちなみに、牛乳のたんぱく質はpH4.6くらいで固まり始め、大豆たんぱくはpH4.5くらいで固まり始めるので、だいたい同じくらいの酸の量で固まることがわかりますね。
酸味の強い食材は使わないようにする
豆乳スープが酸によって分離しないようにするために、酸味の強い食材は使わないようにしましょう。例えば、レモンや柚子などの柑橘類の果汁、梅干しなどが該当しますよね。
また、特に注意したい食材がトマトです。トマトジュースと調製豆乳を混ぜるだけでも、トロトロのスムージーのような状態になります。
トマトジュースやトマト缶はスープに使うことが多い便利な食材ですが、豆乳スープに入れると豆乳が分離してモロモロになりやすいので、できるだけ使わないようにする方がよいでしょう。
「にがり」によるたんぱく質の凝固
豆乳に「にがり」を入れると固まって豆腐になることは有名ですよね。本来、にがりとは海水を煮詰めて塩を取った後に残る液体のことで、主成分は塩化マグネシウムです。
少し化学的な話になりますが、塩化マグネシウムは水の中では塩化物イオンとマグネシウムイオンとして存在しています。
これらのイオンは大豆たんぱくの分子同士を結びつける性質があるため、豆乳ににがりを加えると大豆たんぱくが固まります。
豆腐はこの性質を利用したものです。豆腐を固める目的で使用される凝固剤には、塩化マグネシウムの他に硫酸カルシウムや塩化カルシウムなども使われています。
水や塩の成分にも注意!
にがりと同じように、水や塩も種類によってはカルシウムやマグネシウムが含まれていることがあるため注意が必要です。
例えば、最近は風味がまろやかな天然塩の人気が高いですよね。天然塩は風味をよくするために、純粋な塩の成分の他に、マグネシウムやカルシウムなどの海水のミネラル分をあえて残しています。
また、水も同様に、水道水や国産のペットボトルの天然水は軟水なので問題ありませんが、「エビアン」や「コントレックス」などの硬水にはマグネシウムやカルシウムが多く含まれています。
使う量からするとミネラル分はわずかなので豆腐ができるほどの凝固性はありませんが、精製塩や軟水を使うよりもたんぱく質が分離する可能性が高いということは覚えておくとよいかもしれませんね。
豆乳スープが分離しにくいのは無調整豆乳?調製豆乳?
豆乳には、蒸した大豆をすり潰して絞っただけの「無調整豆乳」と、糖分や塩や植物油などを加えて飲みやすい味に調製した「調製豆乳」とがありますよね。豆乳スープを作る場合に分離しにくいのはどちらの豆乳なのでしょうか?
無調整豆乳は大豆固形分が多い!
調製豆乳は大豆固形分が6%以上、無調整豆乳は8%以上と決まっていて、無調整豆乳には大豆固形分が10%を超える特濃タイプもあります。
大豆固形分が多いと大豆たんぱくの量も増えるので、調製豆乳よりも無調整豆乳の方がたんぱく質が固まりやすいと言えます。
また、調製豆乳には大豆固形分が均一に混ざるように乳化剤や安定剤(糊料)などの添加物が含まれています。それに対し、無調整豆乳の原料は大豆だけなので、大豆固形分が沈殿しやすいという特徴もあります。
これらのことを考慮すると、豆乳スープには無調整豆乳よりも調製豆乳を使う方が分離しにくいことがわかりますよね。
調製豆乳は無調整豆乳よりもやや甘めですが、成分的には牛乳に近いという特徴があります。ですから、豆乳スープにもそれほど違和感なく使え、しかも無調整豆乳よりも分離しにくいのでおすすめです。
無調整豆乳でも分離しにくくする裏技2つ
調製豆乳の方が分離しにくいとは言え、それでも豆乳の成分の濃い無調整豆乳を使って豆乳スープを作りたい!という場合もありますよね。
無調整豆乳を使って失敗なく豆乳スープを作るには、ちょっとした裏技を使う方法があります。
その1:重曹を入れる
佐賀県嬉野温泉には「温泉湯豆腐」という名物料理があります。豆腐を嬉野温泉の温泉水で茹でると豆腐が溶けてトロトロになるという湯豆腐です。
トロトロになる秘密は嬉野温泉の成分にあります。嬉野温泉はの泉質は「重曹泉(ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉)」。
その名のとおり重曹(炭酸水素ナトリウム)が主成分の温泉です。実はこの重曹に、大豆たんぱくを溶かしてしまう性質があるのです。
嬉野温泉の温泉水を使ったトロトロに溶ける湯豆腐は、市販の重曹を使うことで家庭でも再現できます。
水(出汁)500mlに対し、小さじ1/2杯の重曹を入れて豆腐を茹でると、豆腐の大豆たんぱくがが溶けだしてトロトロになります。これを応用した方法が、無調整豆乳でも分離しにくくする裏技です。
大豆たんぱくが重曹で溶けるなら、最初から重曹を入れることで無調整豆乳の大豆たんぱくを固まりにくくしてしまおう!という発想ですね。
使う重曹の分量はとろける湯豆腐と作る場合と同じく、合わせて500mlの水と豆乳に、小さじ1/2(約2g)を目安にするよいでしょう。
その2:とろみを付ける
2つ目の裏技が豆乳スープにとろみを付ける方法です。これは、粘度の高い液体の方が水分が蒸発しにくいという性質を利用しています。
豆乳スープにとろみを付け粘度を上げて水の蒸発を抑えることで、表面付近で濃縮が起こりにくいようにする効果が期待できます。
豆乳スープにとろみを付けるには片栗粉を使います。片栗粉の糊化温度(のり状になる温度)は約65℃。
小麦粉やコーンスターチよりも20℃近く低い温度で糊化するので、沸騰させたくない豆乳スープにとろみを付ける食材として最適です。
400~500mlの豆乳スープに対して大さじ1杯程度の片栗粉を入れるとよいでしょう。片栗粉を入れてよく混ぜた豆乳を加えると簡単ですね。
豆乳スープが残った場合の保存方法と温め直し方は?
残った煮物や汁物は、再度火を通す(再加熱する)と殺菌ができるので保存性が高まると言いますよね。
多くの細菌は75℃で1分間の加熱により死滅するので、一般的なスープの場合はしっかりと沸騰させて、具材の中心温度を75℃以上にすることが大切です。
しかし、豆乳スープは沸騰させると分離してモロモロになってしまいますよね。再加熱で沸騰させられないならば、食べきれずに残った豆乳スープはどのように保存するとよいのでしょうか?
小分けにして保存する方法が正解!
食中毒や食あたりの原因となる細菌の多くは20~50℃で生育し、特に30~40℃で増殖速度がピークになります。ですから、調理済の料理の保存性を高めるにはできるだけ速く20℃以下に冷ますことが大切です。
豆乳スープが残ったら、まずは鍋ごと冷水や氷水に当ててできるだけ早く粗熱を取りましょう。少量ずつ保存する方が温度が下がりやすいので、粗熱が取れたら1食分ずつ小分けにして保存容器に入れてください。
※ジップロックのしっかりとした300ml容器でも、1つ100円程度で手に入りますよ!
その後、冷凍庫に入れてできるだけ速く食材の中心温度を10℃以下に冷ましましょう。
保存は冷蔵と冷蔵とどっちがいい?日持ちは何日?
調理済の食品の場合、一般的に冷蔵庫では2~3日程度、冷凍庫では約2~3週間の保存が可能と言われています。豆乳スープの保存性も同じくらいと考えてよいでしょう。
ただし、豆乳は一度冷凍したものを解凍すると、品質が劣化して分離したり風味が悪くなったりするため、豆乳スープの冷凍保存はあまりおすすめできません。
ですから、冷凍庫で急冷した後は冷蔵庫に保存し、できるだけ早く食べ切るようにした方がよいでしょう。
残った豆乳スープの温め直し方
冷蔵保存した豆乳スープを温め直す場合は、表面付近の温度が上がりすぎないようにすることと、沸騰させないことがポイントとなります。
電子レンジでは温めすぎると突沸しやすいので、鍋に移してコンロで温める方法がおすすめです。
冷蔵保存した豆乳スープを鍋に移し、作る時と同じように常にかき混ぜながら、弱火~弱めの中火で沸騰しないように気を付けて温めてください。
一気に温度を上げすぎると突沸する恐れがあるので、最初は弱火で温め、ある程度温まってきたら弱めの中火にするとよいでしょう。また、温度が急激に上がらないように、常にゆっくりとかき混ぜることが大切です。
また、温め直した豆乳スープは再保存すると腐りやすくなるため、必ず食べ切るようにしてくださいね。
豆乳スープをスープジャーに入れて持って行ったら腐る?
豆乳スープをスープジャーに入れてランチ用に持って行くことは可能ですが、腐らないようにするためには温度に気を付ける必要があります。
食中毒や食あたりの原因になる細菌は、20~50℃、特に30~40℃の時に増殖しやすいため、豆乳スープをスープジャーに入れて持って行く場合は、50℃以下になる時間をできるだけ短くするように注意しなければなりません。
スープジャーの保温機能はどのくらい?
スープジャーの保温効力は、95±1℃の熱湯をスープジャーに入れて6時間後に保てる温度で表されます。
参考までに、象印の「ステンレスフードジャー」の保温効力は6時間後で64℃以上、THERMOS(サーモス)の「真空断熱スープジャー」の保温効力は6時間後で55℃以上となっています。
しかし、豆乳スープを沸騰直前まで温めるとなると温度はせいぜい90℃程度。ですから、示されている保温効率よりも6時間後の温度は低くなることが予想されますよね。
前日の作り置きは避ける
豆乳スープは沸騰させると分離するので、保存性は一般的なスープよりも劣ります。
スープジャーに入れた豆乳スープを傷みにくくするには、前日に作り置きしておいた豆乳スープを入れることは避け、作りたてのものを入れるようにしてください。
また、具材の中心温度を75℃以上にして殺菌ができるように、具材はできるだけ小さく薄く切るようにしましょう。
保存性を重視するのであれば、豆乳スープは多少分離してしまいますが、しっかりと沸騰させた方が安全ですね。
ぬるくなっていたら食べない方が無難
食中毒や食あたりを起こす多くの最近は20~50℃付近で増殖でき、30~40℃くらいが最も増殖する温度帯です。
そのため、豆乳スープが腐らないようにするには、50℃以下になる時間をできるだけ短くする必要があります。
したがって、豆乳スープをスープジャーに入れてから食べるまでに6時間以上ある場合は、スープジャーに入れて持って行かない方がよいですね。
一般的に、スープや味噌汁をぬるいと感じずにおいしく飲める限界は60℃付近で、55℃を下回るとぬるく感じるようです。
もし、スープジャーに入れた豆乳スープがかなりぬるいと感じたら、雑菌が繁殖しやすい温度帯が長く続いている可能性が高いので、食べない方が無難ですね。
分離を気にしなくてもいい市販の豆乳スープをご紹介!
分離を気にせずに手軽に豆乳スープを味わいたいのであれば、市販品を活用する方法もあります。おすすめの市販豆乳スープを3つご紹介します。
ミツカン 『SOUP食堂 ごま豆乳』
好きな肉や魚、野菜などを切っていっしょに煮込むだけで、簡単に豆乳スープを作れるスープの素です。
昆布だしと鶏ガラスープと合わせてごまと豆乳を加えたやや和風のテイスト。あっさりしているのにコクはしっかりとあるため、洋風の具材を入れてもよく合います。
使い方は、 『SOUP食堂 ごま豆乳』を沸騰させて肉や野菜などを煮込むだけ。鍋スープと同じような感覚で使えるので、時間がない時でも簡単に豆乳スープを作ることができます。
マルサン 『豆乳仕立てのじゃがいもスープ』
豆乳と味噌の専門メーカー「マルサンアイ株式会社」のレトルトタイプの豆乳スープ。自社の有機大豆豆乳を使っていて、まろやかで自然なやさしい味わいであることが特徴です。
レトルトタイプなので温めるだけで簡単に豆乳スープを楽しめます。
180gの1人用のレトルトなので飲みたい時にいつでも飲める手軽さもうれしいですね。具材を入れたい場合は、電子レンジなどで下茹でしてから入れるとよいでしょう。
じゃがいもスープの他に、とうもろこしスープ、かぼちゃスープ、にんじんスープもそろっています。
キッコーマン 『豆乳仕立てのコーンスープ』
キッコーマンの豆乳飲料部門である「キッコーマンソイフーズ株式会社」が作っている豆乳スープです。
バターや生クリームなど動物性の素材を使わずに、豆乳でとうもろこしの素材のおいしさを引き出しているので、まろやかでやさしい味わいであるのが特徴です。
また、おからパウダーを入れることで豆乳らしさもしっかりと味わえます。
こちらの商品は500mlの紙パック入りなので、家族全員の食事にも使いやすいサイズ。コーン缶を入れて粒コーンスープにしてもよいですし、玉ねぎやベーコンなどを炒めて入れるとますますコクがアップします。
同じシリーズに、『豆乳仕立てのかぼちゃスープ』もあります。
まとめ:コツさえつかめば意外に簡単!分離なしの豆乳スープを楽しもう!
豆乳スープは、牛乳を使ったスープよりも分離して失敗しやすいスープのようですね。SNSでも分離した!モロモロになった!という投稿がよく見られます。
しかし、豆乳を後入れする、混ぜながら加熱する、沸騰させないなどというちょっとしたポイントにさえ気を付ければ、意外と簡単に分離しない豆乳スープを作れます。ぜひ、試してみてくださいね。