そんな疑問に答えます。
にんにくは日常の食卓で、炒めて香りを出したり、焼いたり煮物に香辛料として使用するほか、かつおのタタキなど薬味として用いられ、食べ物にコクを与えてくれます。
今では、にんにくは、中国料理、韓国料理、フランス料理、そして和食にも料理の風味を高める素材として、なくてはならない食品と言えますよね。
この記事では、この“にんにく“を表す各国の言葉をご紹介します。
目次
スペイン語でにんにくは「アホ」?
スペイン語で“にんにく”は「アホ(ajo)」 その発音は?
スペイン語でにんにくは「ajo」です。発音は「a」にアクセントを置き「アホ」,「アッホ」となります。
にんにくをホクホクといただくイメージで「アッホ」と、促音と呼ばれる小さな「ツ」を入れると正しい発音に近いかもしれません。
また、ヨーロッパ言語では、名詞にも男性/女性と文法上に性がある国が多く、スペイン語で、「ajo」は男性名詞です。
さて、「¿Te gusta el ajo? 」と言われたらどんな意味になるでしょう?「¿te gusta ~ ? は、“あなたは~が好きですか?”となります。つまり「にんにくは好きですか?」という意味です。
“私はにんにくが好きです”と言う場合には、「Me gusta el ajo」。
もし、“私はにんにくが好きではありません”という場合には、「No me gusta el ajo」と言います。尚、te → テ 、me → メ 、gusta → グスタ、No → ノ と読みます。
また、日本人はにんにくの匂いを気にすることが多いですね。「にんにく“なし”で」または「にんにく“入り”で」をスペイン語にするには「シン(~なし)」「コン(~あり)」が使えます。
従って、「sin ajo(にんにくなしで)(シンアホ)」「con ajo(にんにく入りで)(コンアホ)」となります。
さて、スペインでは白にんにくとともに、紫にんにくの生産地でもあり、紫にんにくの人気は日本でも高まっています。
「紫にんにく」は「ajo morado (アホ モラード)」と言いますが、「morado」はスペイン語で「紫の」という意味です。紫にんにくは白にんにくより香りが引き立ち、オリーブオイルを使う料理にもおすすめです。
アホスープって? アヒージョもアホ?
「Sopa de Ajo(ソパ・デ・アホ)」。日本では“アホ スープ”と呼ばれたりしています。
「Sopa」はスープ、「ajo」はにんにくなので、スペインの、“にんにくスープ”です。免疫力を高め体がホカホカと温まる、心落ち込んだ時にも体を回復し元気づけてくれるようなスープです。
基本となる材料は、にんにく、パプリカパウダー、半熟卵とバゲットで、生ハムなど好みの具材を入れていただく、まさに食べるスープです。
もともとは、スペインの貧しい羊飼いが、固くなったパンで空腹を満たすため広まりました。
そして忘れてならない、スペインバールで必ずといってオーダーするもの。そうです。
ぐつぐつと音を立て、風味豊かなにんにくを使いたっぷりのオリーブオイルで具材を煮込んだ大人気のタパスは「アヒージョ(Ajillo)」です。
このアヒージョも「ajo」から付けられた名前で「小さなニンニク」という意味です。つまり“ニンニクを刻んだ”、“にんにく風味の”という料理です。
その他、スペインには、すり潰したにんにくを使ったマヨネーズ風の“アイオリソース”が定番ともいえますが、“アイオリ“も、”にんにくとオイルの“という意味を持つ言葉です。
フランス語の”ail”発音は? にんにくの色々な表現と“ガーリック”
美食の国フランスでも、やはりにんにくは高級レストランでのコース料理から各地の風土や土壌が反映された郷土料理まで、欠かせない存在です。
また、フランス北部に位置するアルル(Arleux)は燻製にんにくの特産として知られ、世界でも伝統的なにんにく祭りで世界中から人々を呼び寄せています。
アルルの燻製にんにくは8日~10日かけて燻製にすると、その琥珀色の耀きを帯びた風味高いアロマを味わえる価値ある食品です。因みに燻製は、フランス語で「fume(フュメ)」です。
さて、フランス語で“にんにく“はどのように言うのでしょうか。そしてその綴りや発音についてご紹介致します。
フランス語でにんにくは「ail(アイユ)」で男性名詞になります。発音は「a」の部分にアクセントをつけ「アイュ」という感じで発音します。
「ail」の語源は、ラテン語「allium(アリウム)」ですが「匂い」と、栄養になるため「養う」という意から、あるいは「にんにくの焼けるような味」という意など様々です。
12世紀に入ってきていると言われていますが、いずれもにんにくの強烈な特徴をあらわしています。
ところで日本と同様、フランスでも英名の「Garlic(ガーリック)」は使われます。
「Garlic」の語源は、古い英語で「槍(ger)」“先の尖ったもの”と、「辛い味(leak) 」を合成した言葉と言われています。「leak」は「ニラ」と言う説もありますが、鋭いにんにくの味と香りが表現された言葉です。
そこで、“にんにく”の英語の使い方とともにフランス語の様々な表現を見て行きたいと思います。
英語でにんにくを数える場合ですが、garlicsにはならず、にんにく丸ごとを数える場合は、“bulb(バルブ)”を使います。球根、鱗茎(りんけい)を意味する単語です。
「a bulb of garlic(ひと株のにんにく)」または「丸っこい頭」の意味で「head」を使い「a head of garlic」といいます。
1個のばらしたひとかけのにんにくは「clove(クロウブ)」を使います。「a clove of garlic」のようになります。
フランス語の場合に於いても、にんにく丸ごと一個を指すときには「une tête d'ail(ユンヌ・テット(ゥ)・ダイュ」)と言います。
「une tête」は“一つの頭”です。そして、一片のにんにくは「une gousse d'ail (ユンヌ・グース・ダイュ)」です。
また「ail」を複数形にした綴りを目にすることもあると思います。規則的な英文法と同じ要領で“s“をつけて「ails」。または、古いフランス語では不規則に変化し「aulx」と綴られていることもあります。
それぞれ複数形の場合の読み方ですが「ails」については「アイユ」です。フランス語では単語の最後の子音は発音しないため、単複数形ともに同じです。そして「aulx」は「オ」と発音します。
その他フランス語でのにんにくの表現ですが、皮つきにんにくを「ail chemise(アイユ・シュミーズゼ)」、皮を剥いたにんにくを「アイユ・ブレ (ail pelé)」、
にんにくのみじん切りを「アイユ・アッシェ(ail haché)」、薄切りにんにくを「アイユ・エマンセ (ail émincé)」、潰しにんにくを「ail écrasé(アイユ・エクラゼ)」といいます。何とも美しい響きですね。
更にフランスでは「~に,にんにくをこすりつける」、「肉などに,にんにくを差し込む」というような“動詞としてのにんにく”「ailler」があり“アイエ”と発音します。
日本にはない単語ですが、日本でいうところの「お茶する」に近いイメージになるのでしょうか?このようなことからも、にんにくは、フランスの食文化に浸透した人気の食品であることが伺えます。
因みに世界各国で食される「ガーリック トースト」または「ガーリック フランス」は、フランスでも「ガーリック トースト」を使うことができます。
フランス語で言うのであれば「baguette à l’ail (バゲットゥ ア ライユ)」となります。
中国語と日本語の“にんにく”、韓国語の“にんにく”
さて、中国は世界一のにんにく生産量を誇る国です。中国産のにんにくは世界の8割と言われています。一方韓国はにんにくの消費量が世界一で、その消費量は何と日本人の20倍ともいわれています。
両国とも東洋医学が盛んで「医食同源」の思想が根付いてます。そしてにんにくは、食用のみでなく、民間薬や漢方薬としても取り入れられています。
日本でも昔は風邪をひいたときに焼きニンニクとして発汗を促したり、傷口におろしたにんにくをつけたり、民間薬として使われていたようです。因みに、日本でにんにくの生薬名は「大蒜(タイサン)」です。
さて、中国語でにんにくは、「大蒜」、「蒜」です。日本名と同じ表記ですが、読み方は「ダー スゥァン」、「スゥァン」となり、「ダ」そして「ゥァ」部分にアクセントをつけ「dàsuàn」、「suàn」と発音します。
これは、日本には古くから中国に接し中国由来の食品が多く存在しています。にんにくもその一つであり、そのため同じ表記となっています。
しかし古くは「ヒル」と呼んでおり、“にんにく”と音を変えて呼ぶようになったのは、室町時代初期頃と言われています。
これは、仏教用語の「忍辱」に由来し、“僧が仏教でこれを食することを禁じられていたので忍び食いした”や、“薬として強い匂いに耐えて利用したをした”など諸説あります。
さて、韓国のその驚くにんにくの消費量ですが、これは「医食同源」の思想とともに、寒冷で乾燥した厳しい寒さのため、にんにくなど香味野菜や唐辛子などの香辛料によって身体を芯から温めることによると言われています。
韓国人の美肌はにんにくの匂いとのトレードオフでありますが、この消費量からうなずけます。
韓国語で“にんにく”は「マヌル」です。ハングルで「마늘」と表記されます。「마」は「ma」。「마늘」は「neul」と発音します。カナで書くと「マヌㇽ」となります。
韓国では、にんにくの球根(鱗茎)の部分だけではなく、葉の部分や芽(茎)の部分もキムチや炒めものとして食べます。
「にんにくの芽」は「종(チョン)」を加えて「葉にんにく」は「잎(イプ)」を加えます。にんにくの芽は「마늘종」。葉にんにくの場合は「마늘잎」となります。
最後に、にんにくには、植物学上では花ではありませんが、ボールのように紫色の小さな花をつけます。そしてにんにくにも花言葉があるのでご紹介します。
にんにくの花言葉は「勇気と力」、「息災」です。米国では「courage and strength」、また西洋ではその匂いから魔除けとして用いられていた歴史より「Force - Protection」です。
いかにもにんにくのスタミナと、独特の香り、歴史を表す花言葉ですね。
にんにくは、独特の味、匂いを持ち、古くから強壮薬としても用いられてきた食品ですが、世界中でどのような料理にも用いられ、各国独自の食文化とともに広い用途を持つ万能で欠かせない食材であることが分ります。
まとめ:各国のにんにくの発音(スペイン語、フランス語、中国語、韓国語等)
各国のにんにくの呼び方をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
にんにく、ガーリック、アホ、アイユ、タイサン、マヌル。同じにんにくでも音の響きで随分と印象は変わりますね。
そして世界の言語は数千に及ぶと言われていますが、その中で“にんにく”の呼び名はどれほどあるのでしょうか?まだまだ知らない“にんにく”。おもしろい“にんにく”。色々ありそうですね。
是非これから、様々な料理とともに、“にんにくツーリズム”楽しんでみてください。