暑い季節になると、冷たい飲み物が飲みたくなりますね。アイスコーヒーに付き物のガムシロップは、溶けやすくて使い勝手のいい甘味料です。
いつも何気なく使っているガムシロップですが、意外にその成分は知られていないことが多いようです。中には砂糖を溶かして作った製品もありますが、ほとんどのガムシロップには化学的に作られた甘味料が使われています。
この記事ではガムシロップの主な成分や砂糖との違い、体への影響などを詳しく解説します。
目次
意外と知られていないガムシロップの成分とは?
甘くてスーッと溶けやすいガムシロップは便利なので、夏になると冷蔵庫に常備する人も多いでしょう。ガムシロップは一般的な商品の他に、カロリーゼロ(ノンカロリー)のものがあります。
ガムシロップはカロリーの違いで、成分も違うのでしょうか。ではガムシロップの成分や原料について詳しく見ていきましょう。
ガムシロップの成分表
ガムシロップはどのような成分で作られているのでしょうか。よく耳にする大手メーカーの成分表を見てみましょう。日新精糖は「カップ印」といえばピンとくる人も多い、精糖メーカーでは国内3位のシェアのあるメーカーです。
ガムシロップの成分一覧
商品名 シュガーシロップ ガムシロップ ガムシロップ シュガーシロップ
メーカー キーコーヒー 日新製糖 AGF(味の素) めいらく(スジャータ)
成分 果糖ぶどう糖液糖 果糖ぶどう糖液糖 果糖ぶどう糖液糖 果糖ぶどう糖液糖
砂糖
カロリー 26kcal 26.7kcal 30kcal 25kcal
内容量 11g 11g 11g 9g
カロリーゼロのガムシロップ成分一覧
商品名 ノンカロリーシロップ ガムシロップ
カロリーゼロパルスイート
カロリーゼロノンカロリーシロップ
メーカー キーコーヒー 日新製糖 AGF(味の素) めいらく(スジャータ)
成分 エリスリトール
アセスルファムK
香料
増粘剤
ビタミンCエリスリトール
スクラロース
増粘剤
クエン酸
保存料エリスリトール
アスパルテーム
アセスルファムK
増粘剤
クエン酸
ビタミンCエリスリトール
アスパルテーム
PH調整剤
増粘剤
香料
ビタミンC
カロリー 0kcal 0kcal 0kcal 0kcal
内容量 5g 7g 7g 6ml
一般的なガムシロップの成分は一部砂糖も使われていますが、「果糖ぶどう糖液糖」を使っているものが多いようです。
カロリーゼロのガムシロップの成分は、あまり聞きなれない難しい名前の甘味料が使われています。ガムシロップ独特のドロッとした粘りを出すための増粘剤や、保存料なども使われているようです。
名前に糖が3つも!【果糖ブドウ糖液糖】とは
一般的なガムシロップの主な成分である「果糖ブドウ糖液糖」。長い名前ですね。この名前には「果糖とブドウ糖が入った液体の糖」の意味があり、「異性化糖」の一種です。
異性化糖とは果糖やブドウ糖を主成分にする糖のことを言います。でんぷんを酵素によってブドウ糖に分解し、さらにもう一度酵素を使ってブドウ糖の一部を果糖にして作られます。
異性化糖には以下の4種類があります。
・ブドウ糖果糖液糖:果糖の割合が50%未満
・果糖ブドウ糖液糖:果糖の割合が50%以上90%未満
・高果糖液糖:果糖の割合が90%以上
・砂糖混合異性化液糖:上記3種類の異性化糖に10%以上の砂糖を加えたもの
現在多く使われているのは、果糖が55%の果糖ブドウ糖液糖です。甘さは砂糖と同じくらいで、価格が安く、低い温度で甘さを強く感じる特徴があります。
カロリーゼロ?【エリスリトール】とは
エリスリトールはキシリトールなどと同じ糖アルコールの一種です。でんぷんやブドウ糖を発酵させて作ることからアルコールの名前がついていますが、もちろん酔っぱらってしまうようなことはありません。
糖アルコールは自然界に存在する甘味成分で、果物や味噌などにほんの少しだけしか含まれないことから希少糖と呼ばれています。
エリスリトールは砂糖の約70%の甘さで、スーッと抜けるような清涼感のある味です。カロリーは日本では1gあたり、0calと表示していいことになっています。アメリカなどでは1gあたり、約0.2kcalと言われています。
エリスリトールは自然に存在する物質のため、合成甘味料とは違います。最近スーパーなどで見かける「ラカント」などの商品の成分は、ほとんどがエリスリトールです。
甘みを砂糖に近づけるために、砂糖の300倍の甘さがあるといわれる羅漢果エキスを少量混ぜています。
同じ理由で、カロリーゼロのガムシロップにはエリスリトールの他に甘みの強い成分が混ぜられ、砂糖と同じくらいの甘さになるようにしています。
200倍の甘味【アセスルファムK】って?
アセスルファムKの「K」はカリウムの略で、化学物質から作られた合成甘味料です。1967年にドイツで実験中に偶然発見された物質で、甘みが砂糖の約200倍あり人体に吸収されないことからカロリーゼロと言われています。
単体では苦みや後味の悪さがあるため、アスパルテームなどの別の甘味料と一緒に使われることが多い食品です。
味はすっきりとしたキレのある甘みが特徴。以前はほとんどドイツから輸入されていましたが、現在では中国からの輸入が60%を超えています。
【スクラロース】は砂糖の600倍の甘さ!
スクラロースは化学物質から作られた合成甘味料です。1976年にイギリスで開発され、砂糖の600倍の甘さがあります。こちらも人間の体に吸収されないため、カロリーゼロと言われています。
砂糖に近い甘みがあり少量で甘みが感じられることから、様々な食品に使われています。日本では中高年におなじみ「シュガーカット」にも使われています。
【アスパルテーム】
アスパルテームは、アミノ酸から作られた合成甘味料です。「アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物」と表示される場合もあります。1965年にアメリカで発見され、現在製造特許は味の素が持っているそうです。
砂糖の200倍の甘さがあり、1gあたり4kcalのカロリーがあります。日本では100mlあたり5kcal以下なら「カロリーゼロ」の表示が認められているため、ノンカロリーの製品にも使用されてることが多いようです。
砂糖に近い柔らかな甘みがあり、様々な低カロリー食品に使われています。
ガムシロップの原料には何が使われているの?
通常のガムシロップの主な成分である果糖ブドウ糖液糖は、とうもろこしや馬鈴薯、さつまいものでんぷんを原料にして作られています。
元々は日本で余ったサツマイモの有効利用のために開発された製品で、アメリカではとうもろこしを原料にすることが多いため、「コーンシロップ」と呼ばれています。
カロリーゼロのガムシロップは、エリスリトールが食品を発酵させて作る以外は化学物質が原料として使われています。
ガムシロップと砂糖の『成分』以外の特徴の違いは?
ガムシロップの成分はそのほとんどが砂糖ではなく、化学的に作られた甘味料を使っていることが分かりました。
甘味料は価格が安いことや、甘みが強く少量で砂糖と同じような甘さにできることから現在ではガムシロップ以外にも様々な食品に使われています。
ここからはガムシロップと砂糖の特徴の違いや、使い分け方などを見ていきましょう。
飲み物への溶けやすさの違い
ガムシロップの砂糖との違いは、第一に冷たい飲み物に溶けやすいことです。グラニュー糖を冷たい飲み物に入れたら、なかなか溶けなくて困りますね。
現在のように人工甘味料が使われる前は、砂糖を煮溶かしたものをガムシロップの原料として使っていました。ドロッとした粘り気をつけるのと、長期保存するときに砂糖が結晶化しないようにアラビアガムを使ったそうです。
アラビアガムは別名「アラビアゴムノキ」でアカシアの一種の樹木です。木を傷つけることで採れる樹脂が、増粘剤として使われています。「ガムシロップ」の名前が付いたのは、アラビアガムを使っていたためです。
今ではアラビアガムが使われない商品がほとんどのため、中にはガムシロップではなく「シュガーシロップ」などの商品名にしているメーカーもあります。
ホットドリンクにガムシロップは使ってもいいの?
ガムシロップと砂糖のもう一つの特徴の違いは、甘さを感じる温度、です。アイスコーヒーを飲んだ後で余ったガムシロップをホットコーヒーに入れたら、思ったよりも甘くなかった経験はありませんか?
実は一般的なガムシロップに使われている果糖ぶどう糖液糖は、高い温度では甘さを感じにくく40度以下で砂糖よりも甘くなる傾向があります。
砂糖は温度が高い方が甘く感じやすいため、ホットコーヒーに入れるなら砂糖を、アイスコーヒーにはガムシロップを使った方が少しの量で甘さを感じることができますよ。
ガムシロップの成分は体に影響があるのか
砂糖に限らず、現在は甘いものを食べることに罪悪感がつきまといます。甘いものの取り過ぎは体に悪いとか、糖質制限が流行したりなど、甘いもの好きな人にはいろいろ気になることも多いでしょう。
甘くて使いやすいガムシロップですが、化学的に作られた甘味料が使われており体に影響はないのか心配です。ここからはガムシロップの成分の、健康への影響について見ていきましょう。
一般的なガムシロップは体に悪いのか
一般的なガムシロップの成分の果糖ブドウ糖液糖は、砂糖と比べて早く体内に吸収されるため血糖値が急上昇すると言われています。
これには2つの影響があります。1つは血糖値が急に上がるために、脳内に快楽物質が分泌されることです。これによって甘いものが飲みたくなり、肥満につながる可能性を指摘されています。
もう1つは血糖値の急激な上昇から、インシュリンが過剰に分泌され糖尿病になりやすいのではないかとの報告があります。
カロリーゼロのガムシロップの健康への影響は?
カロリーゼロのガムシロップには、様々な甘味料が使われています。現在一番多く使われていると考えられるエリスリトールは、食品に含まれている自然な物質なので比較的安全な食品と言えるでしょう。
WHOなどが運営する食品添加物専門家会議(JECFA)でも、エリスリトールが安全であると認可しています。
そのほかの合成甘味料については自然界に存在しない合成品であり、健康への影響が皆無とは言えないようです。ただし甘味が強く使う量が微量で済むために、影響があったとしても問題になるほどではないとの見解が示されています。
まとめ~ガムシロップの成分には先進化学が詰まってる
ガムシロップの成分はかつては砂糖でしたが、現在ではほとんどが甘味料に代わっています。安価で大量生産が可能な合成甘味料は、メーカーにとっては便利な食材なのでしょう。
知らない間に口にしていることも多いガムシロップの成分を、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。今まで気づかなかったことを見つけられるかもしれませんよ。