日本テレビの「世界一受けたい授業」やNHKの「あさイチ」などで健康に良い!と取り上げられたことで、話題になった『発酵あんこ(発酵アズキ)』をご存じでしょうか?
美容や健康にとても良く、米麹と小豆があれば家でも簡単に作れると聞けば、どのようなものか気になりますよね。
発酵あんこは本当に身体に良いのでしょうか?発酵あんことはどのようなものなのか、健康や美容への効果や作り方について詳しくご紹介します。
目次
米麹と小豆で作る『発酵あんこ』って何?発酵で何が変わるの?
一般的に「あんこ」というと小豆の粒あんやこしあんのことを指しますよね。
茹でた小豆を砂糖といっしょに炊き上げるあんこです。では、発酵あんことはいったいどのような食べ物なのでしょうか?
『発酵あんこ』っていったい何?
「発酵あんこ」は、茹でた小豆と米麹を発酵させて作るあんこのこと。「世界一受けたい授業」で、家で簡単に作れる発酵食品として紹介されたことで話題になりました。
発酵小豆は茹でた小豆と米麹を混ぜて発酵させただけなのですが、砂糖やはちみつは一切入っていないのにもかかわらず甘いことが特徴です。
SNSでも、発酵あんこが優しい甘さでおいしい!という感想が多く見られます。
では、なぜ発酵あんこは砂糖不使用であるのに甘くなるのでしょうか。これには、米麹が持つ発酵の力が大きく関係しています。
発酵って何?米麹で発酵するとどうなるの?
発酵とは、食品中の成分が微生物の力によって、人にとって良いものに変化することをいいます。
発酵させてできた食品を発酵食品といい、主な発酵食品には、しょう油や味噌、ヨーグルトやチーズ、納豆や漬物などがあります。
どれも身体に良いと言われている食材ですよね。また、日本酒やパンなども発酵を利用して作られます。
米麹は、麹菌(コウジカビ)というカビを蒸した米に繁殖させたもののことで、米麹を発酵させると食品の甘味を増やす効果があります。
つまり、発酵あんこが砂糖不使用にもかかわらず甘くなるのは、麹菌による発酵の力によるものなのですね。
発酵あんこは砂糖不使用なのになぜ甘い?
米麹の表面には、麹菌が無数に繁殖しています。
麹菌は自分自身が生育するためにたくさんの酵素を作り出しますが、そのなかに、アミラーゼ(でんぷん分解酵素)という、ヒトの消化酵素と同じ酵素が含まれています。
発酵あんこは、米麹と茹でた小豆を発酵させることで、米や小豆のでんぷんが酵素によって分解されてブドウ糖やオリゴ糖などの糖を作り出します。
これらの分解されてできた数種類の糖分が発酵あんこの甘味を作り出しているのです。
発酵あんこには、工業的に精製された砂糖ではなく天然の糖が数種類含まれているため、まろやかで上品な甘みになることが特徴です。
一般的な粒あんよりも低カロリー!
小豆から作るあんこの代表といえば粒あんですよね。粒あんは、一般的に小豆と同量の砂糖を加えて作ります。
和菓子は洋菓子に比べと低カロリーですが、それでも、大福1個分の粒あんだけで100kcal前後のカロリーがあります。
一方、発酵あんこは砂糖を加えずに、米や小豆のでんぷんを分解してできた天然の糖類のみ。
「世界一受けたい授業」で発酵あんこを紹介した東京農業大学の前橋健二教授によると、発酵あんこの糖質の量は一般的な粒あんよりも約37%少なく、カロリーは約26%も低いそうです。
一般的な粒あんに比べると甘さは控えめですが、SNSでは、優しい自然な甘さが好きという意見も多く見られました。控えめな甘さが好きな人やダイエット中の人にはもってこいですね。
米麹+小豆でパワーアップ?発酵あんこが身体にいい理由とは?
粒あんは、小豆に砂糖を加えて炊き上げたあんこです。それに対し、発酵あんこは、茹でた小豆と米麹に水を加えて発酵させて作ります。
もともと、小豆は栄養価が高く、身体に良い成分を多く含む健康食品ですが、米麹とともに発酵させることでさらに多くの健康・美容効果が期待できます。詳しくご紹介しましょう
小豆の栄養成分と効果
小豆に多く含まれている栄養成分や機能成分には、以下のようなものがあります。
・食物繊維:腸内環境を良くする、血糖値の上昇を抑える、血中コレステロール値を下げるなどの働きをする。
・カリウム:高血圧の予防、筋肉の働きを正常に保つなどの働きをする。
・鉄:赤血球のヘモグロビンの材料となり、身体中に酸素を運ぶ働きをする。不足すると貧血になる。
・ビタミンB群:主にエネルギー代謝(生命維持に必要なエネルギーを作り出す作用)を助ける働きをする。
・ポリフェノール:身体に悪さをする活性酸素を取り除き(抗酸化作用)、身体の老化や生活習慣病を予防する。
・サポニン:抗酸化作用があり、血中のコレステロールや中性脂肪を減らしたり、血糖値の上昇を抑えたりする効果が期待されている。
つまり、小豆には腸内環境を良くする効果や、生活習慣病を防ぐ効果などが期待できることがわかりますよね。
特に、腸内環境が良くなると、免疫力が高まる、代謝が良くなり太りにくくなる、美肌になるなどさまざまな効果が期待できます。
麹菌の力で小豆の効果がパワーアップ!
発酵あんこは小豆と米麹を発酵させたものでしたよね。
米麹とは、蒸した米に麹菌(コウジカビ)を繁殖させたもので、麹菌が作り出すたくさんの酵素の働きによって、味噌、しょう油、塩麹などの発酵食品が作られます。
麹菌で発酵させた食品には、でんぷんから天然の糖が作られる他にも以下のような特徴があります。
・消化吸収を良くする
・ビタミンB群を作り出す
・旨味成分や香りの成分を作り出す
つまり、麹菌で発酵させて作ったあんこは、普通の粒あんよりも旨味や香りが良く、ビタミンB群が豊富で、さらに消化吸収が良くなることで、体内での栄養効果がアップするというメリットがあります。
さらには米麹甘酒との相乗効果も生まれる!
米麹の代表的な発酵食品に米麹甘酒があります。米麹甘酒は、米麹に水と炊いたごはんを加えて発酵させて作った甘酒です。米麹と水だけで作ることもできます。
米麹甘酒には、身体に良い栄養成分や機能性成分が350種類以上も確認されていて、「飲む点滴」と呼ばれるほど健康効果や美容効果が高いことで知られています。
・発酵によって作られるオリゴ糖が腸内環境を整える
・血行促進、免疫力アップ、美肌効果、疲労回復など
・中性脂肪の燃焼を促進させる効果
・血圧やLDL(悪玉)コレステロール値を低下させる など
発酵あんこは、小豆と米麹を発酵させて作るため、小豆が発酵するのと同時に米麹甘酒も作られていることになりますよね。
つまり、発酵あんこは、小豆を発酵させて得られる効果と米麹甘酒の多くの効果の両方を一度に得られる、優れものの発酵食品といえます。
米麹と小豆があれば簡単に作れる!発酵あんこのレシピをご紹介
優れた栄養効果で、高い健康効果や美容効果が期待できる発酵あんこは、米麹と小豆があれば家でも簡単に作れます。ここからは、家で簡単にできる発酵あんこの作り方をご紹介します。
ステンレスボトル(魔法瓶)を使った発酵あんこの作り方
発酵あんこを作る場合は、「世界一受けたい授業」で、前橋健二教授によって紹介されたレシピを参考にするとよいでしょう。
このレシピは、ステンレスボトルで発酵させる方法を取っています。ボトルは、450~500mlほどの容量の広口タイプがおすすめです。
【材料】(500mlの水筒分)
乾燥米麹100g
小豆100g
水300cc
【下準備】
ステンレスボトルは70℃くらいのお湯を入れて温めておく。
【作り方】
1.小豆はさっと洗ってザルにあげ、水気を切っておく。
2.鍋に洗った小豆と水を入れて弱火にかけ、アクを取りながら1時間程度茹でる。
3.小豆を指で簡単に潰せるくらいのやわらかさになったら火を止め、65℃になるまで冷ます。
4.65℃になったら米麹を混ぜ、ステンレスボトルに移してフタをする。
5.8時間保温する。時々温度をチェックし、温度が下がったら鍋に戻して弱火で温め直す。
【ポイント】
・茹で上がった小豆の水分の量は、市販のゆであずきを目安にするとよいでしょう。小豆の粒が水分にひたひたに浸っている程度の状態です。水分が少なすぎる場合はお湯を足して調整しましょう。
・米麹を混ぜる際は、温度が下がらないように手早く混ぜるようにしましょう。
発酵あんこを失敗しないための重要ポイント~温度管理~
発酵あんこを作る上で、最も重要なポイントは温度管理です。
発酵あんこを作るには、麹菌が作り出すアミラーゼという酵素が小豆や米のでんぷんを分解することが主要となりますが、温度が低すぎると発酵は進まず、逆に温度が高すぎると酵素が失活してしまいます。
酵素が最も活性化する温度は62℃前後で、70℃を超えると酵素の働きが弱くなります。ステンレスボトル内で最適な温度を保つためには、温度計を使って正確に温度を測ることが重要です。
もしも、温度が下がりすぎてしまった場合は、再度鍋に戻し弱火にかけて良くかき混ぜながら温め直します。その場合も、絶対に70℃以上にならないように注意してください。
生麹でも作れる?
米麹は、蒸した米に麹菌を繁殖させたものをそのまま袋詰めした生麹と、生麹を乾燥させて水分量を減らした乾燥麹の2種類が販売されています。
生麹は保存性が良くないので、スーパーなどで売られている米麹は乾燥麹です。乾燥麹の方が保存しやすいという特徴があります。
乾燥麹は水分量が10%以下であるのに対し生麹の水分量は25~30%と、水分量がかなり違います。
発酵小豆は生麹でも作れますが、入れる水の量を減らしてしまうと小豆がうまく茹でられない可能性があります。
また、茹で汁を捨ててしまうと小豆から流れ出した栄養成分も捨ててしまうことになります。ですから、作り慣れていない人は乾燥麹を使う方が失敗が少ないでしょう。
小豆の渋切りはしなくても大丈夫?
小豆を茹でていると、アク(灰汁)がたくさん浮いてきます。このアクの正体はサポニンです。サポニンは強い抗酸化作用があり、生活習慣病を防ぐ効果が期待されている成分です。
しかし、その一方で、大量に摂取すると赤血球の細胞膜を溶かす溶血作用があることも確認されています。
小豆サポニンの毒性は低いという論文も発表されていますが、はっきりとしたことはまだわかっていないようです。
また、サポニンは苦み、渋み、えぐみの素となる成分でもあるため、和菓子に利用する際は茹で汁を数回捨ててしまう「渋切り」という作業を行います。
しかし、小豆の主要な栄養素であるビタミンB群やカリウムなどは水に溶けやすいため、渋切りを行うと茹で汁に流れ出た栄養分を捨ててしまうことになります。
ですから、小豆の栄養成分を最大限に生かすためには、渋切りは行わずにアクを取る方法がおすすめです。小豆の茹で汁も捨てずに全部使うようにしましょう。
小豆を圧力鍋や「ホットクック」で茹でても大丈夫?
ご紹介した発酵あんこのレシピは、鍋を使って1時間くらいかけてゆっくりと小豆を茹でる方法ですが、小豆を茹でる工程で、圧力鍋や電気圧力鍋や「ヘルシオ ホットクック」などを使っても特に問題はありません。小豆をややわらかく茹でられれば大丈夫です。
圧力鍋や「ホットクック」を使って小豆を茹でる場合は、使用する調理器具の説明書に従って茹でてください。小豆の茹で方がない場合は、煮豆などのレシピを参考にするとよいでしょう。
スープジャーでも小豆と米麹を発酵できる?炊飯器や他の器具は?
「世界一受けたい授業」で紹介された発酵あんこのレシピは、ステンレスボトルを使って小豆と米麹を発酵させる方法を取っていました。
では、炊飯器やヨーグルトメーカーなどのステンレスボトル以外の調理器具を使っても発酵あんこは作れるのでしょうか?
重要ポイントは約60℃を数時間保てるかどうか
米麹と小豆をしっかりと発酵させておいしい発酵あんこを作るポイントは、麹菌の酵素がしっかりと働ける60℃前後の温度を8時間程度保てるかどうか、ということになります。
つまり、60℃前後で長時間保温できる調理器具であれば、スープジャーや炊飯器など、何を使っても発酵あんこは作れるということになりますよね。
逆に、ステンレスボトルでも保温機能が弱く、すぐに温度が下がってしまうようなものでは、米麹と小豆をうまく発酵できないので注意しましょう。
どの調理器具を使うにしても、小豆を茹でるところまでは同じです。その後の方法や発酵時間は、使用する器具によって変わってくることもあります。
発酵あんこを炊飯器で作る方法
米麹を小豆を炊飯器で発酵させる場合には、炊飯器の保温機能を利用します。
炊飯器は容量が大きいので、仕込む量が少ないと温度管理がうまく行かなかったり水分が蒸発したりしやすくなります。基本レシピの2倍の量で作るとよいでしょう。
茹でた小豆を65℃に冷まして米麹を混ぜたら炊飯器に移して保温スイッチを押します。フタをすると温度が高くなってしまうため、フタは閉めずに濡れ布巾を炊飯器の上にかけて保温します。
濡れ布巾をかけた状態のまま8~10時間程度保温します。もし、発酵不足で甘さが足りないようであればさらに数時間保温するとよいでしょう。
途中、布巾が乾いてくるようであれば、霧吹きなどで濡らすようにしましょう。
ヨーグルトメーカーを使うとさらに簡単!
ヨーグルトメーカーは家庭で簡単にヨーグルトを作れる調理器具です。
ヨーグルトメーカーにもさまざまなタイプがありますが、専用容器を使うタイプで、温度調整機能が付いているタイプであれば発酵あんこを作れます。
ヨーグルトメーカーを使うメリットは、温度を一定に保つ機能があるため温度管理をしっかりとできることと、米麹と小豆をセットすれば出来上がりまで完全に放置できることです。
タイマーが付いているタイプであればさらに楽に作れますね。
ヨーグルトメーカーを使用して発酵させる場合は、60℃で8時間にセットしましょう。1℃単位で調節できるタイプであれば、62℃がおすすめです。
ヨーグルトよりも、発酵あんこや甘酒や塩麹などを作ることが多いのであれば、甘酒メーカーもおすすめです。
まとめ:米麹と小豆で作る発酵あんこは栄養満点で作り方も簡単!
発酵あんこは、小豆と米麹甘酒の良いとこ取り!身体にうれしい栄養成分や機能性成分がたっぷりと含まれているだけでなく、自然の力で作られた天然の糖分の優しい甘さが特徴です。
麹菌が産み出す酵素の力で発酵しているので、使う材料や仕込み温度によっても風味が変わってきます。もしも、甘さを足したい時は米麹甘酒を混ぜてもよいですね。
そのまま、お茶請けとして食べるのもよし、パンに乗せてたりヨーグルトに混ぜて食べたりしてもよし。もちろん、粒あんの代わりに和菓子作りに使用してもOKです。
米麹と小豆さえあれば簡単に作れるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。