塩麹の漬け込み焼きで鶏肉が激変?!おいしくなる秘密やコツをご紹介
鶏肉を塩麹に漬け込みをしてから焼くと、柔らかくておいしくなるって聞いたけど本当かな?
塩麹の量や漬け込み時間をどれくらいにすればおいしく作れるんだろう?

素材の味を生かしたシンプルな調理法といえば塩焼きですよね。

しかし、スーパーで安く売っている鶏肉を塩焼きにすると、パサついて硬くなってしまった!味が淡泊すぎて物足りなかった!ということも少なくありません。

うま味たっぷりの鶏肉の塩焼きをジューシーで柔らかく作りたいなら、塩麹に漬け込みをしてから焼く方法がとても簡単でおすすめです。

そこで、鶏肉の塩麹焼きの作り方とおいしく作るポイントをご紹介します。

鶏肉を塩麹で漬け込む利点は?漬け込み肉が柔らかくなるって本当?!

鶏肉を塩麹で漬け込む利点は?漬け込み肉が柔らかくなるって本当?!

鶏肉を塩麹に漬け込んでから焼くと、旨味がたっぷりでジューシーに焼けるというのは本当なのでしょうか?最初に、塩麹の漬け込み焼きがおいしくなる理由について解説します。

鶏肉を塩麹で漬け込むことの三大メリット

塩麹とは蒸したお米と塩を混ぜて麹菌で発酵熟成させたもので、味噌やしょうゆと同じ発酵調味料の仲間です。

結論から言うと、塩麹で漬け込むと鶏肉がおいしくなるというのは本当です。具体的には、以下のようなメリットがあります。

・肉が柔らかくなる

・肉がジューシーになる

・うま味が増して肉の味が良くなる

つまり、鶏肉は、塩麹への漬け込みをするだけで、パサつきや硬くなることを防ぐだけではなく、うま味が増して劇的においしくなるのです。

では、なぜ鶏肉を塩麹に漬け込むだけでこのような変化が起こるのでしょうか?

その秘密は、塩麹に含まれる酵素(体内で食べ物の消化吸収を助ける物質)にあります。

塩麹への漬け込みで鶏肉が柔らかくなる理由

蒸した米に麹菌を植え付けて熟成させると、麹菌はたくさんの酵素を作り出します。その中のひとつが「プロテアーゼ」と呼ばれるたんぱく質分解酵素です。

たんぱく質は20種類のアミノ酸がつながってできていますが、分子が大きすぎるのでそのままでは体内に吸収されません。

そこで、体内ではたんぱく質分解酵素によってたんぱく質がバラバラになり、吸収しやすいアミノ酸の形に分解されます。

鶏肉を塩麹に漬けると、この現象と同じことが起こります。塩麹に含まれるたんぱく質分解酵素で肉のたんぱく質が分解されて肉の組織がバラバラになるために、肉が柔らかくなるのです。

塩麹の塩分は肉汁を閉じ込める!

一般的に、市販の塩麹には10%前後の塩分が含まれています。

塩分には、肉の保水性を高める効果や、肉汁の加熱損失(肉を焼いた時などに、熱でたんぱく質が収縮して肉汁が外に流れ出てしまうこと)を抑える効果があることで知られています。

実際に、10%の塩分を含む塩麹で豚肉を漬け込むと、加熱による肉汁の流出を抑えられたという研究結果も報告されています。

鶏肉でも同じように、塩麹に漬け込みをすることで保水性が高まり、焼いた時に肉汁が流れ出ることを防ぐ効果が期待できますよね。

うま味成分も増えるので一石二鳥!

食べ物のうま味の素となる代表的な成分に、「グルタミン酸」と「イノシン酸」と「グアニル酸」があります。

グルタミン酸は昆布に、イノシン酸はかつお節に、グアニル酸はしいたけに多く含まれています。

どの食材も和食のだしを取るために使われる食材ですよね。

さらには、グルタミン酸とイノシン酸、またはグルタミン酸とグアニル酸が組み合わさると相乗効果でうま味が倍増することも知られています。

鶏肉には、もともとイノシン酸がたくさん含まれていますが、グルタミン酸は少ししか含まれていません。

しかし、グルタミン酸はたんぱく質を構成するアミノ酸のひとつなので、塩麹中の酵素でたんぱく質が分解されると、うま味成分のグルタミン酸も大きく増えます

すると、もともと含まれているイノシン酸との相乗効果で鶏肉のうま味も倍増する、という仕組みです。

生きた酵素が入っていないと意味がない!

塩麹で漬け込みをすると鶏肉は柔らかくなりますが、SNSやインターネット上では塩麹に漬け込んでも大して柔らかくならなかった、という声もよく見受けられます。

塩麹に鶏肉を漬け込んでも柔らかくならない原因は、生きた酵素が入っている塩麹を使っていないためです。

酵素は50~70℃になると失活してしまいますが、市販の塩麹の多くは、品質を安定させるために加熱をして酵素の働きを止めています。

生きた酵素が入っていないとたんぱく質を分解することができませんよね。

ですから、鶏肉をジューシーに柔らかくして、うま味を増やしたいのであれば、漬け込みに使う塩麹は酵素が生きたままの「生タイプ」のものを使う必要があります

市販の生タイプの塩麹はこちらの記事で紹介していますので、参考にしてみてくださいね。

漬け込み時間は?塩麹の量は?鶏肉の漬け込み方法をご紹介!

漬け込み時間は?塩麹の量は?鶏肉の漬け込み方法をご紹介!

鶏肉を塩麹に漬け込むと、うま味がたっぷりで柔らかくジューシーに仕上がります。では、漬け込み時間や塩麹の量をどのくらいにすればうまくできるのでしょうか?

漬け込み時間は?30分?一晩?

同じような調理法に味噌漬けがありますが、味噌漬けの場合は少なくとも一晩、できれば1~3日くらいかけてじっくりと漬け込む方がおいしく仕上がります。

一方、塩麹漬けは味噌漬けよりもかなり短い漬け込み時間で作れます。

使う肉の種類やレシピによって差はありますが、塩麹を製造販売しているメーカーが推奨している漬け込み時間は、30分~1日程度

味噌漬けに比べて漬け込み時間が短いことも、塩麹漬けのメリットのひとつと言えますね。

実際に、牛肉での実験ではありますが、塩麹に漬け込みをして10℃で1時間、3時間、24時間保存したものを比較すると、時間をかけるほど柔らかくなったという研究結果も報告されています。

保管温度は漬け込み時間によって変えるとベター

では、漬け込みをしている間は、鶏肉をどこに保存しておけばよいのでしょうか?

塩麹の酵素が活発に働く温度帯は30~40℃程度です。ですから、鶏肉を塩麹に漬け込んでいる間は常温に出しておく方がたんぱく質の分解は早く進みます。

しかし、鶏肉を常温で長時間放置しておくと雑菌も繁殖しやすくなります。

ですから、安全面を考慮すると、漬け込み時間が30分程度なら常温、それ以上になるようであれば冷蔵庫で漬け込むようにするとよいでしょう。

1日以上は漬けすぎ?!漬け込み時間が長くなるとどうなるの?

では、漬け込み時間が1日以上になってしまったら、塩麹に漬け込みをした鶏肉はどうなってしまうのでしょうか?

基本的に、漬け込み始めて2~3日くらいまでは、鶏肉は塩麹の力でどんどん柔らかくなり、同時にどんどん味が浸みこんでいきます。問題になるのは、塩分が浸み込みすぎてしまうことです。

塩麹の塩分濃度は一般的に10~13%程度で鶏肉の塩分は0.1~0.2%程度。塩分は高い方から低い方に移動して同じ濃度になろうとするので、塩麹の塩分がどんどん鶏肉に移っていきます。

ですから、あまり長く漬け込みすぎると、鶏肉に塩が浸み込みすぎて、塩麹漬けが塩辛くなってしまいます。

漬け込みすぎを防ぐには塩麹の量も重要!

漬け込みすぎにより鶏肉が塩辛くなってしまうのを防ぐためには、漬け込み時間が長くならないようにすることが大切ですが、もうひとつ大きなポイントがあります。

それが、漬け込みに使用する塩麹の量です。

塩麹の量が増えれば増えるほど、塩分の量も多くなります。すると、塩麹から鶏肉に塩分が浸み込む速度も上がってしまうために、短時間でも塩分が浸み込みすぎて塩辛くなってしまいます。

鶏肉の塩麹漬け使う塩麹の量は、鶏肉の10%程度が適量です。つまり、200gの鶏肉なら塩麹の量は大さじ1杯程度。漬け込むというよりは、塗り込むと言った方がよいかもしれませんね。

鶏肉の塩麹漬けのレシピ

ご紹介してきた塩麹の量や漬け込み時間を踏まえて、鶏肉の塩麹漬けの上手な漬け方をまとめてみました。

鶏肉の塩麹漬けの漬け方
鶏肉の塩麹漬けのレシピ

【材料】(1人分)

鶏もも肉または鶏むね肉 1枚(200~300g)

生タイプの塩麹 大さじ1~1.5杯(鶏肉の重さの約10%)

【漬け方】

1.鶏肉は厚い部分に切り込みを入れて、厚さを均一にしておく。

2.ビニール袋やストックバックなどに鶏肉と塩麹を入れて手で軽く揉み込み、空気を抜いて常温で30分ほど漬け込む

【ポイント】

漬け込み時間を長くしたい場合は、冷蔵庫に入れて保存しましょう。

・味に変化を付けたい場合は、にんにくやしょうが、ハーブなどを塩麹に混ぜてもよいでしょう。

塩麹に漬け込み終わった鶏肉の上手な焼き方を伝授!

塩麹に漬け込み終わった鶏肉の上手な焼き方を伝授!

鶏肉を塩麹に30分~1日程度漬け込んだら、あとは焼くだけでおいしい鶏肉の塩麹漬けができ上がります。

しかし、焼き方を失敗すると、せっかくのおいしさが半減してしまいますよね。そこで、鶏肉の塩麹漬けを上手に焼くコツをご紹介します。

漬け込み後の塩麹は洗い流す?そのまま?

漬け込み終わった鶏肉をいざ焼くとなって最初に悩むポイントが、表面の塩麹は洗う方がいいのか、そのまま焼くのか?ということですよね。

結論から言うと、鶏肉の表面に付いた塩麹は洗い流さずにそのまま焼く方法がおすすめです。

塩麹自体に独特のうま味があることも理由のひとつですが、塩麹には米のでんぷんが酵素で分解されてできた40~50%程度の糖分(還元糖)が含まれています。

ですから、塩麹を漬けたまま焼くと塩味だけではなく、ほどよい甘味も加わってさらにおいしく焼くことができます。肉の表面に付いた塩麹は、手やキッチンペーパーで軽くぬぐう程度にしておきましょう。

塩麹の風味が苦手な人や塩分を少しでも減らしたい人は洗い流してもよいですが、必ず表面に付いた水分をペーパーなどで拭き取ってから焼くようにしましょう。

塩麹に漬け込んだ鶏肉が焦げる!上手に焼くポイントとは?

鶏肉の塩麹漬け焼きで最も多い失敗例が、肉を焦がしてしまうことです。塩麹の約半分が糖分なので、焼くことで糖がカラメル化して非常に焦げやすいという難点があります。

鶏肉の塩麹漬け焼きを焦がさないで上手に焼くためには、焼き方を工夫する必要があります。焦がさないで焼く方法を紹介しますね。

鶏肉の塩麹漬けを焦がさないで焼く方法
鶏肉の塩麹漬けを焦がさないで焼く方法

1.冷蔵庫に保管している場合は、焼く30分ほど前に出して常温に戻しておく

2.フライパンを熱して大さじ1杯程度の油を入れ、一旦濡れ布巾の上にフライパンを置いて温度を下げる。

3.漬け込み終わった鶏肉の皮面を下にしてフライパンに並べ、弱火~中火くらいにして皮面に焼き色が付くまで焼く。

4.皮面に焼き色が付いたら裏返し、反対側にも焼き色を付ける。

5.両面に焼き色が付いたら再び皮面を下にして蓋をして、ごく弱火で7~10分程度蒸し焼きにする。

【ポイント】

・竹串で鶏肉を刺してみて、出てきた肉汁が澄んでいたら火が通っています。肉汁が濁っている場合は蒸し焼きにする時間を数分増やしてください。

漬け込みすぎた鶏肉はどうすればいい?

塩麹への漬け込み時間は30分~1日程度が適当ですが、うっかり漬けすぎてしまった場合はどうすればよいのでしょうか?

漬け込みすぎた場合は、端を小さく切ってフライパンや電子レンジなどで加熱をして味を確かめてみましょう。

塩辛くなければそのまま焼いても大丈夫です。もしも、塩辛い場合には次のような対処方法があります。

塩抜きをする

鶏肉に浸み込んだ塩分を、水に浸けて抜く方法です。せっかくのうま味が逃げてしまうデメリットはありますが、水に2~3時間浸けておくことで浸み込んだ塩分を抜くことができます。

その際に、水2カップに対して大さじ2杯の酒と大さじ1杯のみりんを加えると、うま味が逃げにくくなるので試してみてくださいね。

スープや鍋物の材料として使う

漬けすぎた鶏肉を薄く切り、スープや鍋物の材料として使う方法もおすすめです。

この方法だと、万一塩といっしょにうま味が逃げてしまってもスープにうま味が残るので、せっかく増えたうま味が無駄になりません。

ただし、鶏肉から抜けた塩分もそのままスープに移ってしまうので、スープが塩辛くなりすぎないようにスープ自体の塩分を調整するようにしましょう。

塩麹で漬け込み終わった鶏肉の賞味期限はどれくらい?

塩麹で漬け込み終わった鶏肉の賞味期限はどれくらい?

鶏肉を塩麹に漬け込むと、味や食感がよくなるだけではなく保存性が高まるというメリットもあります。では、漬け込み終わった鶏肉はどのくらい日持ちがするのでしょうか?

冷蔵保存の日持ちは3日程度

鶏肉は肉類の中でも傷みやすい食材なので、生の鶏肉の場合は翌日には使い切ることが理想です。しかし、買ってきた鶏肉をすぐに塩麹に漬けておくことで、日持ちを伸ばすことができます。

塩麹漬けにした鶏肉の賞味期限は、使う麹の塩分量にも左右されるので一概には言えませんが、冷蔵だと3日程度を目安にするとよいでしょう。

ただし、塩麹に漬けたままの状態で保存するとどんどん塩辛くなってしまいます。

数時間~1日程度漬け込んだ後は表面の塩麹をきれいに拭き取り、キッチンペーパーに包んでからフリーザーバッグに入れて冷凍保存をするようにしましょう。

ジップロック フリーザーバッグ M 大容量 216枚
Ziploc

漬け込みすぎを防ぐためにも冷凍保存がおすすめ!

塩麹で漬け込んだ鶏肉を長く保存したい場合は冷凍庫で保存するようにしましょう。冷凍保存の場合は約1ヶ月程度の日持ちが可能です。

しかも、冷凍庫で保存すると酵素の活性も止まってしまうため、長期間保存しても塩辛くなりすぎることも防げるので一石二鳥ですね。

塩麹に漬けたまま鶏肉を冷凍できるので、手間もかかりません。

フリーザーバックに入れて塩麹をまぶした鶏肉をそのまま冷凍庫に入れてもよいですが、しっかりと漬け込みたい場合は冷蔵庫で数時間漬け込んだ後に、冷凍庫に移動するとよいでしょう。

冷凍した塩麹漬け込み鶏肉を上手に解凍する方法は?

冷凍した塩麹漬けの鶏肉は、解凍に失敗すると肉のドリップが大量に出てしまい、肉のうま味が全部流れてしまうことになりかねません。

うま味をしっかりと閉じ込めたままにしておくためには、ドリップが出ないように解凍することがポイントになります。

最も良くない解凍方法は、常温で解凍をすること。急激な温度変化によってドリップが大量に流れ出てしまいます。うま味を逃さないおすすめの解凍方法は、次の3つです。

・使う前日に冷蔵庫に移し、一晩~1日くらいじっくりと解凍する

・フリーザーバッグのまま氷水に浸けて、1~3時間かけてゆっくりと解凍する

・フリーザーバックのまま緩やかな流水で解凍する(目安時間は100gで5~7分程度)

この中で、最もドリップの流出や解凍ムラの少ない方法は氷水に浸ける方法です。

しかし、温度が下がらないように氷を足す必要があるため、大量の氷と多少の手間が必要になりますよね。解凍にかけられる時間や手間に合わせて解凍方法を選ぶとよいですね。

まとめ:手間いらずで超ウマい!鶏肉の塩麹漬け込み焼きを作ってみよう!

鶏肉は安価でおいしいことがメリットですが、その反面、水分が少ないためにパサついたり硬くなったりしやすいことが難点。

しかし、塩麹に漬け込みをすることで、鶏肉が柔らかくてジューシーに調理できるだけでなく、肉のうま味が数段アップするというメリットがあります。

使う調味料は生タイプの塩麹のみ!多くの調味料で味を調節する必要もありませんし、塩麹をまぶして放置しておくだけで簡単に塩麹漬けを作れます。

初めてでも簡単なので、ぜひ試してみてくださいね。

おすすめの記事