みなさんは西洋わさびと言えば、どんなイメージがありますか?
西洋わさびは知らず知らずのうちに口にしている人も多い食品です。日本では北海道でおなじみの西洋わさび。筆者は北海道在住のため、わさびには白と緑の品種があると思っていました。
白い西洋わさびと緑の本わさびはわさびの名前はついていますが、同じアブラナ科でも違う属に分類される別々の植物なんです。
この記事では知らない人も多い西洋わさびの特徴や本わさびとの違い、使い方について解説します。
目次
実は食卓でおなじみ西洋わさびとは?
西洋わさびの名前は、あまりなじみのない人も多いのではないでしょうか。西洋わさびは別名「山葵大根(わさびだいこん)」や「ホースラディッシュ」とも呼ばれ、実は日本人にもなじみの深い食べ物です。
普段食卓で使っている練りわさびやお寿司屋さんで見かける粉わさびは、ほとんどが西洋わさびを原料にしています。気付かずに日本人の多くの人が口にしている西洋わさびとはどんな食べ物なのか、詳しく見ていきましょう。
【馬の大根?】西洋わさびの名前の由来
西洋わさびには様々な別名があります。和名では西洋わさびの他に「山葵大根(わさびだいこん)」と呼ばれています。
これは西洋わさびが大根と同じアブラナ科で白い色をしていることと、わさびに似た味がすることから付けられました。
北海道の山で野生化したことから「山わさび」「蝦夷(えぞ)わさび」との名前もあります。「蝦夷」とは昔の地名で北海道のことです。
英名は「ホースラディッシュ(horseradish)」で、日本語に直訳すると「馬の大根」です。馬が大根を食べるのでしょうか。
「horse」は昔大きいものや強いものを表す時に比喩的に使われた言葉です。「radish」は私たちの知っているあの赤くて小さいラディッシュのことで、「強いラディッシュ」の意味があります。
西洋料理では西洋わさびは一般的に「レフォール(raifort)」と呼ばれています。フランス語で「 racine(根)」と「forte(強い)」で、「強い根」が名前の由来です。
西洋わさびの歴史
西洋わさびはヨーロッパ原産で、ヨーロッパでは3000年以上前から薬として使われていました。
ギリシャ神話ではアポロ神殿の神託で、「西洋わさびは金と同じ価値がある」と語ったとの伝説があります。西洋わさびは薬として非常に珍重されていたようです。
1世紀ごろには薬として使うほかに香辛料として使われるようになりました。その後13世紀にはドイツなど中央ヨーロッパに広がり、北のスカンジナビアや西のイギリスへ広がっていったと言われています。
イギリス人が西洋わさびを広めていったことで、世界中に普及し日本へは明治初期に渡来しました。
【道産子に人気?】日本での栽培地
西洋わさびは以前は長野県や埼玉県、北海道で栽培されていました。寒冷な気候が西洋わさびの生育に適していたため、現在では主に北海道で作られています。国内での生産量の99%が北海道産なのだそうです。
粉わさびや練りわさびの材料の西洋わさびはほとんど中国産で、日本で栽培される西洋わさびは少ないようです。
北海道では比較的流通しているもののスーパーなどで見かけることは少なく、国産の西洋わさびは貴重なものと言えるでしょう。
西洋わさびと本わさびの違いとは
西洋わさびはその名前の通り、ヨーロッパで古くから親しまれてきた食べ物です。同じわさびの名前の付く本わさびは、日本食に無くてはならない薬味として日本人に大切にされてきました。
西洋わさびは白い色をしていて、日本の本わさびは緑色をしています。では見た目や原産地の他に違いがあるのか、味や栄養、栽培方法などを詳しく見ていきましょう。
鼻につーん!辛さや味の違い
西洋わさびと本わさびの一番の違いは香り成分「グリーンノート」が含まれるかどうかです。本わさびのすりおろしには独特の青葉のようなさわやかな香りがありますが、西洋わさびにはこの香りはありません。
味は西洋わさびがまず辛さを感じるのに対して、本わさびはそれほど辛くなく甘みも少し感じます。
西洋わさびも本わさびも「アリルイソチオシアネート(アリルからし油)」という辛味成分が、あの鼻にツーンと来る辛さを作っているのです。
西洋わさびの辛味成分は本わさびの1.5倍ほど含まれているため、本わさびに比べると辛さを強く感じます。辛いものが好きな人は、西洋わさびの方がおいしいと感じるかもしれませんね。
どちらが栄養豊富?
西洋わさびと本わさびの栄養を比べると、カロリーや水分、炭水化物の量にほとんど違いは見られません。
【西洋わさびに多い栄養素】
・不飽和脂肪酸~体内で合成できないため、食べ物から摂取することが必要な脂肪酸です。本わさびにはほとんど含まれていません。
・食物繊維~整腸効果や血糖値上昇の抑制をする物質です。西洋わさびには本わさびの倍の量の食物繊維が含まれています。
・葉酸~赤血球の生産を助けるビタミンで、西洋わさびには本わさびの倍の量が含まれています。
・アリルイソチオシアネート~殺菌殺虫作用を持つ辛味成分で、西洋わさびには本わさびの1.5倍の量が含まれています。
【本わさびに多い栄養素】
・ビタミンE~強い抗酸化作用を持つビタミンで、西洋わさびにはほとんど含まれていません。
・ビタミンK~骨の形成を促すビタミンで、西洋わさびにはほとんど含まれません。
・ナトリウム~体内の水分バランスを維持するミネラルで、西洋わさびにはほとんど含まれません。
・グリーンノート~本わさびにしか含まれない香り成分で、ダイエットや美肌、抗がん効果など様々な効能があることが実験で分かっています。
西洋わさびは山菜に近い?
北海道では春になると山菜を取りに行く感覚で、山に西洋わさびを取りに行く人が多いのを知っていますか。西洋わさびは繁殖力が強く、明治時代に日本に渡来し栽培が始まると北海道の山で自生するようになりました。
たくさんのきれいな水が必要な本わさびと違い、土に埋めれば育つ丈夫な西洋わさびはプランターなどでも簡単に栽培できます。株分けも非常に容易で、根の部分を少しだけ残してまた土に埋めるだけで増やせるのです。
びっくり!価格の違い
西洋わさびの価格はどのくらいなのでしょうか。実際に販売されている価格を調べてみたところ、国産の生の西洋わさびは100gで500円前後で売られていることが多いようです。
生の本わさびの価格は産地によってばらつきがあり、100gで1,000~3,000円程度の価格で売られています。やはり西洋わさびは本わさびに比べると価格が安いようです。
西洋わさびの使い方とは
西洋わさびは日本では本わさびと同じように、薬味として刺身や寿司、そばに使うのが普通です。ヨーロッパでは古くから様々な料理に使われ、愛されて来ました。
西洋わさびには薬味の他にもいろいろな使い方があります。ここからはヨーロッパや海外でよく使われる食べ方や、北海道での利用法などを解説していきましょう。
鉄板!ローストビーフに添える
西洋わさびは最近は「ホースラディッシュ」の商品名で売られていることも多いですね。ホースラディッシュと言えば、西洋料理ではローストビーフに添えるのが一番ポピュラーな方法でしょう。
ローストビーフはイギリスの伝統料理で、牛肉のかたまりをオーブンやフライパンで焼いたものです。
グレイビーソースをかけて西洋わさびを添えていただきます。グレイビーとは英語で肉汁のことで、肉汁を使って作るソース全般を指します。
【やめられないうまさ】醤油漬け
西洋わさびの醤油漬けは北海道の人以外には、あまり知られていない食べ物かもしれません。筆者は北海道在住のため、食卓に常備しています。刺身や生ちらし寿司に使ったり、そのままご飯に乗せて食べたりします。
醤油漬けはそのまま食べるより辛さが抑えられており、ちょうどいい刺激でわさびの辛さが苦手な人も食べやすくなっている食品です。ご飯に乗せる他には納豆や肉料理に添えて使うなど、様々な使い道があります。
海外ではサンドイッチに西洋わさびは定番
海外では西洋わさびはそのまま使うのではなく、酢やクリームと混ぜてソースにして使うのが一般的です。「ホースラディッシュソース」の名前でいろいろなメーカーから瓶詰めが販売されています。
このソースはそのままローストビーフに使われるほか、サンドイッチのソースとしても多く使われています。
元々は余ったローストビーフを食べきるために、サンドイッチに挟んで西洋わさびのソースをつけたのが始まりだったそうです。
まとめ~西洋わさびと日本人とは慣れ親しんだ仲だった
西洋わさびは日本人が毎日の食卓で食べている身近な食材です。本わさびのような認知度はありませんが、日本人の食を支えて地味に活躍しています。
海外では昔から薬として使われ、いまでもマスタードなどと同じようにソースとして様々な料理に活躍しています。本わさびだけでなく、生命力の強い西洋わさびをこれからもおいしく食べ続けてください。