ニュースやSNSで「にんにくの食べ過ぎでおなかをお壊してしまった」「にんにくを食べ過ぎて、入院した」なんて話を聞いたことはありませんか?
そんな風に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
にんにくは、美味しいし、食欲増進効果も手伝って、ついつい食べ過ぎてしまうこともありますよね。
今回の記事では、にんにくを食べ過ぎるとどうなるのか、また適量はどのくらいなのか、という疑問から、万が一食べ過ぎてしまった場合の対処法まで解説していきます。
目次
にんにくの食べ過ぎで死亡することはある?
にんにくを食べ過ぎて死亡したという事例は、見つかりませんでした。しかし、深刻な症状を引き起こしたという事例は、結構あります。その一部を紹介します。
◆23歳男性 (インド) が前日の夜に大量のニンニクを摂取したところ、急性心筋梗塞を起こした。
◆46歳男性 (トルコ) が、高血圧の発作予防にニンニクを飲み込む習慣があり、水なしでニンニクを飲み込んだところ (摂取量不明) 、嚥下障害を伴う食道炎を起こした。
◆生ニンニクを8片/日、6ヶ月間摂取していた37歳女性 (オーストラリア) が、子宮摘出術を受けた際に、重度の術後出血を起こした 。
◆87歳の老人が、ニンニクの根およそ2 グラムを毎日摂取したところ、血小板機能障害を起こした
(「健康食品」の素材情報データベースより 抜粋)
この人達が死亡したかなど、その後どうなったかまでは分かりませんが、命に係わる症状には、間違いないですよね。
ここまで極端なにんにくの食べ方をする人は珍しいと思います。しかし、深刻な症状に至らないにしろ、にんにくの食べ過ぎによって、体調を壊すことはよくあります。
にんにくを食べ過ぎるとどうなる?副作用の症状と原因
にんにくを食べ過ぎた時に困ることは、なんといっても体臭や口臭ですよね。
他にも、にんにくを食べた後の腹痛、胸やけを経験した人はいるのではないでしょうか。他には、吐き気、頭痛、眠れない、下痢、鼻血といった症状をきたすことも。
にんにくを食べ過ぎた時に起こる不快な症状
胃痛、胸やけなどの急性の胃腸症状
にんにくは適量であれば、胃液の分泌を促し、食欲増進や消化吸収を助ける働きがあります。一方で、にんにくに含まれる強い刺激物質によって、摂りすぎると胃の粘膜が荒れ、胃痛、胸やけなど急性の胃腸症状が起こります。
特に、胃腸の弱い人や小さい子供、体調悪い時などに、にんにくを食べると、少量でもお腹が痛くなったり、胸やけを感じてしまったりすることがあるでしょう。
下痢、便秘
にんにくに含まれる成分の中にはコレラ菌、大腸菌O-157などへの殺菌効果が期待されているほど、強い殺菌作用を持つものがあります。
私たちの腸内は、様々な種類の善玉菌によって、腸内環境を維持しています。しかし、にんにくの殺菌作用は、このような善玉菌にも作用してしまいます。
そのため、にんにくを食べ過ぎると、善玉菌と悪玉菌のバランスが乱れて、下痢、便秘、腹痛を起こすこともあるのです。
口内炎や肌荒れ
胃腸症状に伴って、口内炎や肌荒れが起こることがあります。胃の粘膜が荒れることで、本来、胃から吸収されるはずのビタミンB群の吸収量が減ってしまいます。
また、腸内の善玉菌が作り出していた、ビタミン類も減ってしまうことによる、ビタミン不足が原因です。
貧血
にんにくの持つ溶血作用によって貧血が起こることがあります。にんにくを食べ過ぎてしまうと、溶血作用により血液中の赤血球が破壊されます。
また、胃が荒れることで鉄分の吸収も悪くなるので、貧血、血圧の低下、めまいといった症状が起こります。
アレルギー症状
にんにくに含まれる、タンパク質によって食物アレルギーを起こす可能性もあります。
にんにくを初めて食べた時や、少量しか食べていないのに毎回気分が悪くなったら、アレルギー症状を起こしている可能性があります。症状は腹痛や下痢、咳、蕁麻疹などの皮膚症状など様々です。
アレルギー発症を避けるための注意点や対処方法については、以下の記事にまとめていますので、こちらもご覧ください。
原因はにんにくに含まれる「アリイン」と「アリシン」
生のにんにくには「アリイン」という成分が豊富に含まれており、にんにくの健康効果や、独特の風味をもたらしています。
調理の過程でにんにくを切ったり、すりおろしたりすると、この「アリイン」は酵素「アリナーゼ」によって、より刺激の強い「アリシン」に変化します。
アリシンには、殺菌作用、疲労回復効果、さらに血中コレステロールの上昇を抑える働きがあり、生活習慣病予防に効果的ともいわれています。また、食欲をそそるにんにくの香り成分の一つです。
一方で、にんにくを食べ過ぎた時、一番起こりやすいのがこのアリシンの刺激による胃腸症状です。にんにくの適量と、上手な食べ方を知るために、まず「アイリン」と「アリシン」の特徴を簡単にまとめておきます。
溶血作用を持ち、にんにくを食べ過ぎた時におこる貧血の原因になります。にんにくに多く含まれ、熱に対して安定性があり、加熱してもあまり変化しません。そのため、丸焼きや漬物の食べ過ぎにより、過剰になりやすい成分です。
食べ過ぎると、胃酸の分泌を過剰にして、胃粘膜の荒らしてしまいます。また、強い殺菌作用により、腸内環境を悪化させます。アリシンの特徴は熱に弱く、加熱すると刺激が弱くなることと、水溶性であるということです。
にんにくの食べ過ぎは厳禁!適量と安全な食べ方を解説
にんにくは食べ過ぎず、適量を食べる分には健康にいい食材です。ここでは、年齢別・体調別に1日に食べてもいい摂取量の目安について解説していきます。
1日に何個まで?にんにくの適量とは
にんにくの適量は、調理法や人によって違ってきます。
健康な大人の場合
適切に摂取する分には安全な食品です。生のにんにくは1日2片(10~15グラム)まで、加熱した場合は1日に4~6片(20~40グラム)までが適量の目安です。また、過剰摂取の範囲は一日に10片以上とされています。
※にんにく1片(ひとかけ)の分量や下処理方法等については以下の記事にまとめていますので、こちらもご覧ください。
子供、妊娠・授乳中の場合
生のにんにくは刺激が強すぎるので避けてください。また、長期にわたって連続で食べる場合の危険性も指摘されています。
短期間、適切に食べるには安全な食品です。小さな子供が初めて、にんにくを食べるときは、アレルギーの心配もあるので、香り付け程度の量にとどめておきましょう。
食べるときは、加熱したにんにくを2個(20g)未満が目安になります。にんにくは、適量を食べるには安全な食品と言えるでしょう。
にんにくは何歳から与えていいのか、にんにくを赤ちゃんにあげるときの注意点等については以下の記事にまとめていますので、こちらもご覧ください。
薬を服用している・手術を控えているとき
香り付け程度に使ったり、毎日食べたりしなければ大丈夫です。例えば、血液凝固剤を使っている場合は、にんにくをたくさん食べることや、にんにくサプリメントを摂取するのは避けた方がよいでしょう。
にんにくには血液を固まりにくくする成分あるので、薬の効果が少なくなってしまうからです。また、手術や歯科治療が控えている場合もにんにくサプリメントは控えてください。
付け加えて、もともと病気のある人や体調を崩しているときは特に注意が必要です。
・糖尿病の人は、血糖が低がりすぎる
・低血圧の人は、血圧が低がりすぎる
・出血性疾患患者は、出血のリスクを増加させる
・消化性の潰瘍の症状を悪化させる
などの可能性が指摘されています。摂りすぎなければ起こりにくい症状ですし、病気の程度にもよります。気になる方は、医師や薬剤師、栄養士に相談してみてください。
お腹にやさしいにんにくの食べ方
加熱してから食べた方がよい
にんにくの刺激成分は、生のまますりおろしたり、スライスすることで生成され、その後加熱すると減ります。そのため、加熱したにんにくの方が、多めに食べても大丈夫というわけです。
空腹を避ける
にんにくは、胃の粘膜に直接着くことでも胃を荒らしてしまいます。時には、接触性皮膚炎の原因にもなるくらいです。他の飲み物や食べ物と一緒に取ることで、胃へのダイレクトな刺激を減らすことができます。
肉・魚・大豆製品といっしょに食べる
にんにくの刺激成分の「アリシン」はタンパク質と結合しやすく、刺激性が減ります。またビタミンB1と結合すると「アリチミン」という別の成分に変化します。
「アリチミン」にも、抗菌・殺菌作用がありますが、「アリシン」よりは刺激が低くなります。
その、タンパク質とビタミンB1がどちらも豊富に含まれているのが、肉・魚・大豆製品です。にんにくの香りとの相性も良いので、おすすめです。
水でしっかりと洗ってから食べる
「アリシン」は水溶性なので、水で洗うと多少減らすことができます。
ただ、丸のままのにんにくを洗っても、まだ「アリシン」ができていない状態なので意味がありません。スライスしたり、刻んだりしたものを、水にさらしてから使うといいでしょう。
生食は控えめにした方がいい
生のスライスにんにくや、ラーメンのトッピングの場合、量がわかりにくいですが、適量は2片までです。おろしにんにくの場合は、小さじ1杯で1片分くらいです。
丸ごと調理は美味しいけれど食べ過ぎ注意
丸焼きや漬物など、にんにくを丸ごと食べる場合には香りがそれほど強くないので食べ過ぎやすいです。調理するときや、食卓に出す時点で、適量分にしておきましょう。連続して、たくさん食べないよう注意してください。
にんにくを食べ過ぎてしまったときの対処法は2つ
それでも、ついついにんにくを食べ過ぎてしまったときはどうすればよいのでしょうか?
水を飲んで体外に排出する
まずは、お水をたっぷり飲みましょう。にんにくに含まれる「アリシン」は水溶性なので、水を飲むことで体からの排出を促すことができます。
すでに、胸やけや、おなかの調子が…という場合は、お腹への刺激を避けるため、冷たい水ではなく、常温のお水をお勧めします。
発酵食品を食べる
発酵食品を食べて腸内環境を整えましょう。にんにくを食べてすぐでなくても大丈夫です。にんにくを食べ過ぎてしまった次の食事や次の日に、納豆、ヨーグルトなどの発酵食品や、乳酸菌飲料で腸に善玉菌を補ってあげましょう。
にんにくの強い抗菌作用によって減ってしまった善玉菌を増やして、正常な腸内環境に戻すのを助けてくれます。そしてしばらくは、胃粘膜の修復のために消化吸収のよい食事をしてくださいね。
にんにくのサプリメント、健康食品にも食べ過ぎはある?
にんにくは滋養強壮や殺菌効果で伝統的に健康食品として食べられてきました。最近では、血圧を下げたり、コレステロールを下げたりする作用があるとされ、生活習慣病予防への効果が期待されています。
そんなにんにくを使った、サプリメント、健康食品はドラックストアやスーパーでも、手軽に買うことができるので、毎日摂っているという人は少なくないと思います。
そんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
ですが、にんにくを食事として摂取する場合も、サプリメントや健康食品として摂取する場合も、考えられる副作用、注意点は同じです。
副作用:口臭や体臭、胸やけ、およびアレルギー反応があります。
注意点:血液を薄める作用(血液を固まりにくくする)があります。
手術や歯の治療の予定があったり、あるいは出血性疾患があったりする場合は摂取を控えましょう。同様に、子供や妊娠・授乳中、他の薬を服用しているときにもサプリメントの摂取は注意してください。
まとめ:にんにくは食べ過ぎなければ、栄養豊富で安全な食品
今回は、食べ過ぎた時に起こる症状や副作用などデメリットが強調されてしまいましたが…。
本来は、にんにくは何千年も前から、健康食品としてまた、香辛料として世界中で、食されてきました、現代でも、私たちの食事に欠かせない食品です。
食べ過ぎなければ、安全で体にいい食品であることは、確かです。にんにくの適量と食べ方を知って、健康に過ごしてくださいね。