とんかつ、コロッケ、エビフライなど、お店で食べる揚げ物や肉屋で売っている揚げ物は、独特のおいしさがありますよね。
その秘密はラードにあると言っても過言ではありません。
この記事では、揚げ物の名店で使われている油をヒントに、ラードがどのような揚げ物に合うのかを検証するとともに、揚げ物にラードを使うメリット・デメリット、家で揚げ物をする際のラードの使い方についてご紹介します。
目次
ラードはどんなジャンルの揚げ物に合うの?
ラードはどのようなジャンルの揚げ物に使われているのでしょうか?揚げ物の人気店ではどのような油を使って揚げているのかについて調べてみました。
専門店のとんかつ
ラードを使っている揚げ物の店として、いちばんに思いつくジャンルはとんかつではないでしょうか。
コーン油や米油など植物油のみで揚げている店もありますが、ほとんどのとんかつ屋では揚げ油にラードを使用しているようです。一部をご紹介します。
とんかつ 成蔵(東京)、とんかつ けい太(東京)、幸楽(静岡)、とんかつ 檍(あおき:東京)、のもと家(東京)など多数
とんかつ マンジェ(大阪:ラードと植物油)、本家 あげづき(東京:ラード、オリーブオイル、キャノラー油)、とんかつ はせ川(東京:ラードと米油)、銀座かつかみ(東京:ラードとサラダ油)など
とんかつ大宝(東京)、イマカツ(東京)など
ラードは豚の脂なのでとんかつとの相性は抜群です。そのため、とんかつをラードで揚げている店が多いようですね。
ラードの種類や使い方も店によって特徴があり、自家製ラードを使っている店、国産ラードとオランダ産ラードをブレンドしている店など、ラードにこだわりのあるとんかつ屋も多く見られました。
肉屋のコロッケやメンチカツ
昔から、「お肉屋さんのコロッケやメンチカツはおいしい!」と定評がありますよね。肉屋で作っているコロッケやメンチカツ、商店街にあるような揚げ物専門店などの多くが、揚げ油にラードを使用しています。
コロッケやメンチカツが人気の精肉店や専門店でラードを使用しているところには、以下のような店舗がありました。
肉の大山(東京)、チョウシ屋(東京)、中村屋(大阪)、さとう(東京)、浅草メンチ(東京)、肉のすずき(東京)など
肉屋で作っているコロッケやメンチカツは、植物油を使わずにラードのみで揚げている店が多いようですが、『肉のすずき』のように、ラードとヘットをブレンドしている店もあります。
洋食屋さんの揚げ物
とんかつ屋と同じように、多くの洋食店で揚げ物にラードが使われています。人気の洋食店のなかから、揚げ物にラードを使っている店の一部をご紹介します。
ぽん多本家(東京)、七條(東京)、レストラン香味屋(東京)、洋食キムラ(神奈川)、レストラン サカキ(東京)など
洋食 小春軒(東京:ラードとサラダ油を9:1でブレンド)、煉瓦亭(東京:ラードとコーン油)
洋食屋の定番の揚げ物と言えば、カツレツやビフカツの他、エビフライ、クリームコロッケ、カキフライなどがあります。肉だけでなく魚介類のフライにもラードがよく使われていることがわかりますよね。
串かつ屋さんの串揚げ
串かつ・串揚げは比較的あっさりと軽い揚げ物のイメージがありませんか?ですから、揚げ油は植物油が主流なのかと思いきや、人気の串かつ・串揚げの店で使っている油脂を調べてみるとやはりラードが主流のようです。
串かつ あーぼん(兵庫)、六波羅(東京)
八重勝(大阪:ラードをベースにサラダ油をブレンド)、はん亭(東京:ラード、植物油、ごま油)、串かつ凡(大阪・東京:ラードと綿実油)
六覺燈(大阪・、東京)
串かつ・串揚げの場合、ラードに植物油をブレンドしている店が多いですね。串かつ・串揚げには野菜の揚げ物もありますので、野菜のフライにもラードが合うことがわかります。
からあげ専門店の鶏唐
一般的な鶏のからあげは、サラダ油やキャノーラ油などの植物油を使うことが多いようです。しかし、『新宿 とさか』の看板メニュー「大山地鶏の半身揚げ」や、からあげチェーンの『カリッジュ』や『からあげ 金と銀』のからあげなど、一部の店ではラードが使われています。
また、北海道の郷土料理の「ザンギ」や、愛媛県の郷土料理である「ざんき・せんざんき」は、しょうゆベースのタレに漬けた鶏肉をラードで揚げているものが多いようです。
また、宮崎の郷土料理「チキン南蛮」の人気チェーン店『おぐら』でも、揚げ油にラードが使用されています。
サラダ油とラードの揚げ物ってどう違うの?
とんかつ、コロッケ、メンチカツ、魚介類や野菜のフライなど、人気店の多くが揚げ油にラードを使っていることがわかりましたよね。
逆に、天ぷらや中国料理にはラードはほとんど使われていません(マクドナルドは牛脂とパーム油のブレンド油だそうです)。
では、揚げ物にラードを使用するメリットとデメリットはどこにあるのでしょうか?
揚げ油にラードを使うメリット
ラードを使って揚げ物をするメリットとして、次の3つがあげられます。
揚げ物に旨味とコクがプラスされる
ラードの大きな特徴のひとつに旨味とコクが強いということがあります。
ラードの旨味とコクの要因となるのが核酸の一種であるイノシン酸。カツオ節の旨味成分と同じ物質で、魚の他に豚肉や鶏肉にも多く含まれています。
ラードを揚げ油に使うとラードの風味が食材に移るため、揚げ物の旨味やコクがアップします。特に、国産豚の脂は風味が良いので、国産のラードにこだわって使う店も多いようです。
冷めてもサクサクの食感が続く
ラードの融点は27~40℃程度なので、常温では固体です。一方、植物油は融点が低いので常温では液体。
ですから、時間が経つと油をたくさん吸った揚げ物の表面から液体の油がにじみ出て、べチャっとしてきてしまいます。
しかし、ラードは冷めてくると衣の表面で固まるので、油が浸み出してくることはありせん。そのため、冷めてきてもベチャっとなりにくく、サクサクの状態が続くのです。
また、科学的な根拠は不明ですが、ラードはパン粉との相性が良くカツやフライがサクサクに揚がりやすいようです。
特にオランダ産の「カメリアラード」は、揚げ物に使うと独特のサクサク感を得られることに定評があり、世界中のレストランで愛用されています。
国内では入手ルートも限られており、通販などでは15kgの缶入りなどで販売されています。
油が劣化しにくい
油脂は構造の違いによって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
・飽和脂肪酸:酸素と結びつきにくい構造をしているので、酸化しにくい。動物性油脂に多い。
・不飽和脂肪酸:化学的に不安定で酸素と結びつきやすい構造をしているので、酸化しやすい。植物性油脂に多い。
油脂は空気に触れたり高温になったりすると酸化しやすくなります。油脂が酸化すると味・匂い・色などが悪くなるだけでなく、気持ち悪くなったり胸やけを起こしたりすることもあるので注意が必要です。
ラードは、サラダ油やキャノーラ油などの植物油脂に比べて飽和脂肪酸が多いので、植物油よりも油が酸化しにくいという特徴があります。
揚げ油にラードを使うデメリット
一方で、揚げ油にラードを使うことには、デメリットも存在します。
取りすぎると生活習慣病の原因に
ラードなどの動物性油脂に多く含まれる飽和脂肪酸には、摂りすぎると血中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が増加しやすい脂肪酸が多いという特徴があります。
LDLコレステロールや中性脂肪が増えすぎると、動脈硬化を引き起こしやすくなります。動物性油脂は肉や乳製品などにも多く含まれているので、過剰摂取には注意が必要です。
昔は中国料理にラードが多く使われていましたが、今は植物油が主流です。そうなった理由は、飽和脂肪酸の摂りすぎを防ぐためだと言われています。
最近ではこれらの健康への配慮から、無添加のラードが注目されています。
揚げ物に使うにはまとまった量が必要
ラードを炒め物や焼き物に使うだけなら量はそれほど必要ありませんが、揚げ物に使うとなるとそれなりの量が必要ですよね。
しかし、通常スーパーで売っているラードは200g程度の少量サイズしかないので、使い勝手が悪いだけでなく、多くの量を使うとなると割高になってしまいます。
通販では、2kgや15kg入りなどの大容量サイズも購入できますが、保管が大変になってしまいますよね。また、使う頻度が少ないとラードが劣化してしまうことも考えられます。
揚げ物がこってりと重たくなりがち
ラードを使用した揚げ物は、コクや旨味が強くなるというメリットがありますが、一方で、こってりと重たい味になりがちです。また、揚げている最中は独特の匂いが部屋の中に充満しやすくなります。
ですから、豚特有の匂いが苦手な人やあっさりした料理を好む人には、ラードを揚げ物に使うことはあまり向かないかもしれません。
また、常温で固まるというラードの性質は、冷めてもサクサクした食感を楽しめる反面、油をしっかりと切らないと揚げ物の表面に余分な油が残ってしまい、かえって油っぽくなってしまう可能性もあります。
揚げ物にラードを使うとカロリーが高くなるの?
ラード、牛脂、バターといった動物性の油脂で揚げ物を作るよりも、植物油を使った方が太りにくくヘルシーなイメージがあるのではないでしょうか?
しかし、カロリーを食品成分表で見ると、ラードが100gあたり885kcalでなたね油が887kcalなので、油自体のカロリーにはあまり差がないことがわかりますよね。
ラードも植物油もカロリーに大差はありませんが、揚げ物にすると衣が油を吸うのでそれだけカロリーは高くなります。
カロリーが気になる場合は、衣を薄くしたり米パン粉のような油を吸いにくいパン粉を使ったりして、カロリーを摂りすぎないように工夫するとよいですね。
これさえ読めば大丈夫!揚げ物にラードを使う方法
では、実際に家でラードを使って揚げ物をするとなると、どのような使い方をすればよいのでしょうか?気になるポイントについて解説します。
1回の揚げ物に必要なラードの量は?
サラダ油やキャノーラ油などの液体の植物油を揚げ物に使う場合、油の量は鍋の底から3~3.5cm程度が適量です。例えば、直径24cmの天ぷら鍋を使うとすると、単純計算で油は800ml必要ということになります。
では、ラードだけを使って揚げ物をする場合はどうでしょうか?ラードの比重は約0.85なので、比重が約0.9の植物油よりも少し軽いですね。
ですから、800mlのサラダ油に相当するラードの量を計算すると、1回の揚げ物に約760gのラードが必要ということになります。
他の油を混ぜる際のラードの割合は?
とんかつ屋や洋食屋、串揚げ屋などでは、ラードを100%使っている店とラードと植物油をブレンドして使っている店がありました。
家でラードを使って揚げ物を作る場合も同じように、好みに合わせてラードとサラダ油などを混ぜて使ってもよいでしょう。
とんかつ屋や洋食屋などで使用しているラードと植物油の割合は、企業秘密のところが多いようですが、SNSなどで調べてみると1:1か4:6くらいで混ぜている人が多いようです。
お店の味に近付けたいのであればラードを多めに、香りづけ程度であっさりと食べたい場合は植物油の割合を多めにするとよさそうですね。
ラードは何回くらい使えるの?再利用の方法は?
ラードは植物油と比べると酸化しにくいとは言っても、高温で揚げ物をするとそれなりに酸化が進んでいきます。
また、ラードはもともと植物油よりも匂いが強い上、肉や魚介類、小麦粉やパン粉の衣は油を汚しやすいという特徴があります。
ですから、植物油と同じように、3~4回くらい使ったら古いラードを処分するようにしましょう。
ラードの色が濃くなってきた、小さな泡が消えにくくなってきた、匂いが強くなってきたなどの様子が見られた時が、交換の目安となります。
ラードがまだ使える状態だけど、揚げ物を頻繁にしないという場合は、炒め物に再利用するとよいでしょう。
まとめ:ラードを使って揚げ物をプロの味に近付けてみよう!
とんかつ屋や洋食屋などでは大半の店でラードを使っています。肉屋に至ってはほとんどの店でラードで揚げ物をしていると言えるかもしれません。
つまり、ラードを使うことで家でも揚げ物をプロの味に近付けられるということになりますよね。まずは試しに、スーパーで購入できる少量のラードを使って試してみると安心ですね。ぜひ、一度試してみてください。