日本酒を製造する際の副産物として生まれる酒粕。酒粕は甘酒や粕汁など、子どもも食べる料理にも使われています。
酒粕にアルコールが含まれているのなら、妊娠中の方や子どもが食べても大丈夫なんでしょうか。気になりますよね。
今回は、昔から親しまれている酒粕に含まれるアルコールについて調べてみました。
目次
酒粕にはアルコールが含まれている!
日本酒を作る時は、酒母・米・麹・水を仕込んで発酵させ、醪(もろみ)を作ります。
この醪をぎゅーっと搾ると日本酒ができあがるわけですが、この時残ったかすが酒粕。酒粕は、名前の通り酒のかすなのです。
残りかすというと聞こえは悪いですが、酒粕はビタミンやアミノ酸など、日本酒に含まれる栄養を豊富に含んでいます。と同時に、アルコール分も残しているんですね。
酒粕のアルコール度数は?
酒粕には5%~10%のアルコールが含まれます。これは、練り酒粕・板酒粕とも同じですが、粉末の酒粕だけはアルコールなしの商品が販売されています。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、一般的な酒粕100gあたりのアルコール含有量は8.2g、つまり、アルコール度数は8%。
日本酒のアルコール度数は15%前後なので、酒粕のアルコール度数は日本酒の約半分ということになります。
缶ビールのアルコール度数は約5%、缶チューハイのアルコール度数は5%~7%なので、酒粕のアルコール度数はビールや缶チューハイより多いんですね。
酒粕のアルコールは完全には飛ばない
料理レシピではよく『酒を煮切る』とか『沸騰させてアルコールを飛ばす』なんて言葉が出てきますよね。アルコールの沸点は78度なので、加熱すればアルコールは飛びます。
ですが、完全に飛ぶわけではありません。酒粕に関して言うならば、120度という高温で加熱しても約2%のアルコールが残ると言われています。
アルコールが残ってしまう原因として考えられるのは、アルコールと水分の合体です。水分と合体した場合、水の沸点に達した段階で水分ばかりが蒸発し、アルコールが残ってしまうようですね。
酒粕に含まれるアルコールの飛ばし方
酒粕のアルコールを飛ばす場合は、アルコールの沸点である78度~80度に近い温度でゆっくり時間をかけて加熱する方が、よりアルコール度数を下げられるようです。
煮沸してアルコールを飛ばす
アルコールの沸点は78度なので、煮沸といってもブクブクと沸騰させる必要はありません。78度以上でゆっくり加熱しましょう。酒粕の成分やうま味を壊さず、アルコールを飛ばせます。
材料(作りやすい分量)
- 酒粕…60g~100g
- 水…150cc~300cc
- 広口で浅めの鍋
作り方
1.鍋に細かくした酒粕と水を入れ、加熱する
2.酒粕を潰しながら78度以上で加熱する
3.焦がさないように気を付けながら15分~1時間程度加熱する
ポイント
- 長い時間加熱する方がアルコール度数は下がります
- 加熱時間によって水分量を調整してください
蒸してアルコールを飛ばす
酒粕のアルコールは、蒸すことでも飛ばせます。水を加えないことでアルコールが揮発しやすく、うっかり焦がす心配もありません。
材料(作りやすい分量)
- 酒粕…60g~100g
- クッキングシート
- 蒸し器
作り方
1.酒粕を厚さ2cm、5cm角くらいにちぎる
2.酒粕をクッキングシートに平らに並べる
3.蒸し器にセットし、30分程度蒸す
ポイント
- 水分が抜け、色が濃くなります。使う時はお好みの固さにのばしてください
- ペースト状の酒粕の場合は、クッキングシートに薄く塗りつけてください
レンジを使ってアルコールを飛ばす
電子レンジでもアルコールを飛ばすことができるんですよ。手軽で片付けも簡単なのが利点ですが、焦がさないように注意してくださいね。
材料(作りやすい分量)
- 酒粕…200g
- クッキングシート
- クッキングスチーマー
作り方
1.クッキングシートに酒粕を薄く塗る
2.水を張ったクッキングスチーマーに1をセット
3.500wで3分、レンジにかける
4.3を取り出しよく混ぜる
5.3~4を2回~3回繰り返す
ポイント
- 焦げを防止するために、複数回に分けてレンジにかけましょう
- 色が濃くなり、水分が抜けることで硬めになります
妊娠中や授乳中の摂取は気を付けて
78度以上で加熱することで、ある程度はアルコールを飛ばすことができますが、完全にアルコールなしにすることはできません。
微量でもアルコールが残ってるため、妊娠中や授乳中、1歳未満の赤ちゃんに酒粕を使った料理は避けた方がよいでしょう。
また、運転を控えている方も、注意が必要です。特にアルコールに弱い方は、運転前の摂取を控えることをおすすめします。
酒粕を使った料理にもアルコールは含まれる?
酒粕を完全にアルコールなしにするのは難しいのですが、これまで何気なく口にしていた酒粕を使ったメニューにもアルコールは含まれるのでしょうか。
飲む点滴と言われる甘酒
甘酒は子どもでも飲める飲み物というイメージがありますが、実は甘酒には酒粕を使ったものと麹を使ったものがあり、酒粕が原料の甘酒にはアルコールが含まれています。
手作りの酒粕甘酒の場合、どの程度加熱したかなどでアルコール度数が変わってきますから、子どもに飲ませたり、運転前に飲んだりするのは控えた方がよいでしょう。
市販の酒粕甘酒は清涼飲料水に分類されているものの、アルコール度数は1%未満。わずかですがアルコールが含まれています。
市販の酒粕甘酒は運転前に飲んでも差し支えない程度のアルコール度数ですが、アルコールに弱い方や心配な方は飲まない方がよいですね。
アルコールなしの甘酒
米麹や玄米麹由来の甘酒にはアルコールが含まれません。子どもや妊娠、授乳中、運転前にも安心して飲めますよ。
体がポカポカ温まる粕汁
酒粕を調味料として使う粕汁。加熱するのである程度アルコールは飛びますが、やはり完全にアルコールなしにはなりません。
過去には、粕汁を食べて飲酒運転で検挙された例もあるそう。粕汁を作る時は、加熱温度や加熱時間に注意してください。心配な場合は、予めアルコールを飛ばした酒粕を使うのもいいですね。
粕汁を給食で提供している地域もあります。しっかりアルコールを飛ばすと、子どもでも安心して食べられることがわかりますね。
おつまみにピッタリな粕漬け
粕漬けは加熱していない酒粕を使うので、当然アルコールは残っています。
魚の粕漬けなど、調理段階で加熱する場合はある程度アルコールが飛びます。ですが、奈良漬けのように加熱しないものや、わさび漬けのように酒粕そのものを味わう場合は注意が必要です。
アルコールに弱い方やアルコールの分解速度が遅い方の場合、食べた直後の運転は控えた方がよいでしょう。また、妊娠中や授乳中の方、子どもは食べないようにしましょう。
甘くて美味しい酒饅頭
お酒の香りが鼻腔をくすぐる酒饅頭。酒饅頭にも酒粕は使われています。ですが、アルコールはほぼなしと言っていいでしょう。
というのも、酒饅頭は調理過程で蒸すため、アルコールは揮発します。さらに、1個あたりに使う酒粕の量が5g程度と少ないのです。
ただし、商品によってはアルコール度数が1%程度の酒饅頭もあるので、食べる時は表示を確認してみるとよいですね。
酒粕は調理しても微量のアルコールが残る
酒粕に含まれるアルコールの飛ばし方は、アルコールの沸点である78度以上の熱をゆっくり長時間加えること。それでも、微量のアルコールは残ってしまいます。
もちろん、健康な方には何の問題もない量ですが、妊娠中の方や子ども、肝臓などに負担をかけたくない方は、控えめにするとよさそうです。上手にアルコールを飛ばすことで、酒粕料理を楽しみたいですね。