私たちの食生活に欠かせない冷凍食品。いつできて、いつから日本の家庭で食べられるようになったか知っていますか?
なんと、昨年2020年は日本で冷凍食品が生まれてから、100周年だったそうです。
100年の歴史ともなると、冷凍食品は戦争も大きな震災も経験してきたわけです。今回は、歴史に翻弄されながらも発展し、私たちの食生活を豊かにしてきた冷凍食品の歴史を振り返ってみたいと思います。
目次
【世界の】冷凍食品の歴史が始まったのはアメリカだった
氷菓を冷凍食品に含めると、古代ギリシャやローマ時代、古代中国でも、甘くて冷たいお菓子は貴族や裕福な人たちに嗜好品として愛されていました。
また、自然の力を利用した冷凍保存法はそれより昔からあったと考えられています。ここでは、私たちが普段買うような、現代の冷凍食品の始まりについてご紹介していきます。
世界で初めての冷凍食品は「いちご」だった
世界で初めての市販の冷凍食品は、アメリカの大手食品メーカーのゼネラルフーズ(現 モンデリーズ・インターナショナル)が発売しました。
1900年代にアメリカで、あまり日持ちがしないジャム用のいちごを冷凍し、輸送しやすくしたのが、現代の冷凍食品の始まりと言われています。
当時、家庭用冷凍庫はなかったので、家庭に冷凍食品が普及し始めるのはそれから約20年後のことです。アメリカでは1920年代になると、冷凍冷蔵庫が一般家庭に広まり、果物などが中心に冷凍されていました。
冷凍食品を出すレストランまで人気に
その後1950年代に入ると、アメリカでは冷凍食品が「未来の食品」としてもてはやされるようになりました。果物だけでなく今の冷凍食品に近い調理済み食品も開発され、種類も増えてきました。
まだ、解凍するための電子レンジや電気オーブンが家庭に普及していなかったことから、冷凍食品を出すレストランまで現れ、人気になったそうです。
【日本の】冷凍食品の歴史の始まり 大正~昭和
日本で、初めて機械式冷凍装置によって冷凍保管が試みられたのは1899年。なんと明治時代のことでした。
ただ、品質は満足のいくものではなく、評価は散々なものだったそうです。その後、1920年にアメリカから急速凍結法を導入したことにより、日本の冷凍食品100年の歴史が始まります。
1920年 北海道に日本初の冷凍工場ができる
北海道森町に日本で初めての、本格的な魚の冷凍工場が建設されました。
このことが、日本の冷凍食品の歴史の始まりと言われています。この森町の工場は冷凍食品の発祥の地となりました。(現)株式会社ニチレイに引き継がれ、今も、当時の冷凍機が展示されています。
1923年 関東大震災後の食糧不足を冷凍食品が救う
関東大震災後、被災地は食糧難にみまわれました。その時に、北海道森町の冷凍工場から東京芝浦の冷蔵庫に冷凍魚を運び込み、被災者に届けられたそうです。
この出来事が、最新の食品の保存技術であった冷凍食品の知名度を上げました。
1930年 日本で初めて市販用冷凍食品が販売される
大阪・梅田の阪急百貨店で、日本で初めて一般向けの冷凍食品が販売されます。日本初の市販用冷凍食品は「イチゴシャーべ」という冷凍いちごでした。
その後1935年に東京の三越本店などで、冷凍の魚介類が一般向けに販売開始されるなど、冷凍食品が一般的になりつつありました。
しかし、この後日本は第二次世界大戦を迎え、海軍へ凍結野菜の納入などが主になっていきます。また冷凍食品が一般家庭に普及し始めるのは、戦後のことです。
【日本の】冷凍食品の成長 戦後~の歴史
第二次世界大戦後、アメリカでの冷凍食品の普及に押され、日本でも一般家庭向けの冷凍食品が復活していきます。また、軍事用に開発されていた冷凍食品の製造技術を民間で活用することにより、市販用冷凍食品の品質も向上しました。
東京オリンピック、大阪万博の2つの国際的なイベントは、冷凍食品が急速に成長するきっかけとなります。
1957年 南極越冬観測隊へ冷凍食品が供給される
南極観測船「宗谷」に冷凍食品が積み込まれました。
食品の持ち込みが制約される厳しい環境では、保存食が中心となります。その中でも、冷凍食品は野菜や肉・魚介類などの生鮮食品の持ち込みを可能としました。
持ち込まれた冷凍食品の中には茶碗蒸しもあり、閉ざされた環境下で隊員の支えとなったことが想像できますね。
1964年 東京オリンピックの選手村で冷凍食品が活用される
世界から7,000人を超える選手団を迎え入れる選手村で、冷凍食品が提供されます。この世界的な大イベントのため、国内の冷凍食品メーカーの協力の元、新しい冷凍技術の開発が進められました。
当時の五輪担当大臣の佐藤栄作が「このローストビーフはうまい」とほめたことで、冷凍食品のイメージがいっきによくなりました。
1970年 大阪万博でさらに冷凍食品の知名度が上昇
大阪万博では、冷凍食品を使っての大規模給食の試みが行われました。この試みは、外食チェーンの発端となります。
これら、歴史的にも重要なイベントを機に、冷凍食品が日本で認知度を上げ、一般向けの販売も増える結果となりました。
【日本の】冷凍食品の進化 平成~の歴史
冷凍冷蔵庫や電子レンジが一般的になり、さらに共働き家庭の増加といった社会的な背景が後押しし、冷凍食品の市場はさらに広がります。
平成に入ると、冷凍食品は便利さだけでなくおいしさも兼ね備えた商品として、ときにはブームも生み出すようになりました。
ここでは、平成の冷凍食品の歴史とともに、年代順に人気があった冷凍食品も紹介します。
1980年代 洋風メニューや中華料理が人気!あのヒット商品も登場
1980年代は家庭で再現することが難しい料理が人気でした。洋風のピラフやグラタンが軽食として人気だった他、中華料理系のシュウマイ、春巻き、餃子の生産量が伸びました。
1980年代終わりのごろには、「冷凍焼きおにぎり」が発売されヒット商品になりました。また、冷凍で買う方が多いのでは?と思う「冷凍讃岐うどん」が販売されたのもこのころです。
1990年代 揚げ物も電子レンジでの時代が到来
冷凍食品の技術がさらに進化。「電子レンジで解凍できる冷凍コロッケ」が開発されたのが、1994年。電子レンジの普及率が8割を超えたころです。
1999年には自然解凍で食べられる商品が販売されました。朝お弁当に入れたら、お昼には食べごろになる手軽さで人気に。
2000年代 冷凍食品はおしゃれに進化
2000年「冷凍そばめし」が空前のヒットになりました。ご当地グルメを家庭で食べられることがウケたようです。このように、冷凍食品が便利さ、おいしさ以上のことを提供する時代になりました。
2001年には「電子レンジでできるピザ」が人気商品に、2011年にはいつでも焼き立てパンが食べられると「冷凍パン」が話題になりました。
2016年には南青山にフランスの冷凍食品専門店の「picard(ピカール)」1号店がオープン。2018年には無印良品の冷凍食品が話題になり、スーパーに並ぶ冷凍食品とは差別化された商品が求められるようになっています。
※picard(ピカール)の魅力については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
歴史的なパンデミックにも負けない冷凍食品
2020年から続く、歴史的なパンデミック。コロナ禍で、冷凍食品の市場は急激に伸びています。
一般社団法人日本冷凍食品協会が2021年2月22日から2月24日(10 都県で緊急事態宣言発令中)に行った『“冷凍食品の利用状況”実態調査』では、
・冷凍食品を使わない人がかなり減少し、冷凍食品の新規利用者が増加。
・冷凍食品の利用頻度は「増えた」が男女とも 3 割近くで、「減った」を大幅に上回る。
・冷凍食品の魅力は「おいしい」と回答する人は男女とも 6 割前後で、年々増加。
という調査結果が出ています。
コロナ禍を背景に、家庭用冷凍食品の好調が続いているようです。子供たちの「臨時休校」や在宅ワークの増加の為、自宅で仕事をしながらも、手軽に昼食を摂る必要がでてきたからと予想されます。
実際、「緊急事態宣言」直後に、スーパーマーケットに冷凍食品コーナーがからっぽになったのを見た方も多いのではないでしょうか?
家族の在宅時間の増加や、買い物へ出かけにくい環境により、テイクアウトやスーパーの惣菜のような日持ちのしないものより、保存期間が圧倒的に長い冷凍食品のメリットが見直されました。
それだけでなく、和食からエスニック、ご当地グルメまで幅広いバリエーションで飽させない工夫や、揚げ物まで電子レンジ出来てしまう技術を生み出した企業努力が、コロナ禍も味方につけたのでしょうね。]
冷凍食品は日本の歴史とともに進化している
冷凍食品の100年史いかがだったでしょうか?家庭でも外食でもお世話になっている冷凍食品、日本の現代史とともに歩んできたといっても過言ではありませんね。
「冷凍おにぎり」や「冷凍さぬきうどん」販売開始から30年以上とはびっくりでした。これからもどんな冷凍食品がヒットするのか目が離せません。