和食や中華料理を作るときに付けるとろみは、片栗粉で付ける方法が一般的ですよね。コーンスターチの見た目は片栗粉にとてもよく似ていますが、片栗粉と同じように料理のとろみを付ける用途で使えるのでしょうか?
この記事では、コーンスターチと片栗粉のとろみの違いやコーンスターチでとろみ付けをする方法などについてご紹介します。
目次
コーンスターチで料理にとろみを付けることはできる?
麻婆豆腐や八宝菜、あんかけうどんに煮物など、中華料理や和食ではとろみを付けた料理がたくさんありますよね。
料理にとろみを付ける料理のレシピには、「水溶き片栗粉」と書かれています。コーンスターチと片栗粉は同じような見た目の粉ですが、コーンスターチも片栗粉と同じようにとろみ付けに使うことはできるのでしょうか?
料理のとろみの正体は?
料理のとろみは、デンプンの性質を利用したものです。
加熱していない生のデンプンは硬くて消化されにくいという特徴があります。しかし、生のデンプンを水とともに加熱するとデンプンは水を吸って膨らみ、やわらかく消化しやすい形に変化します。これをデンプンの「α(アルファ)化」といいます。
α化は別名「糊化」とも呼ばれていますが、糊化の方がデンプンの性質をわかりやすく表していますよね。
デンプンは水といっしょに加熱すると、糊のようにドロドロの状態になります。料理のとろみは、このデンプンの糊化を利用したものです。
デンプンの糊化でとろみが付く例としてわかりやすいものがお粥です。お粥のドロドロの正体は、米から流れ出たデンプンが糊化したものです。
水溶き片栗粉でとろみが付くのはどうして?
片栗粉はじゃがいものデンプンです。
もともとはカタクリという植物の球根から作られていましたが、現在ではほとんどの片栗粉はじゃがいもから作られています。すり潰したじゃがいものデンプンを水で洗い流して乾燥させ、デンプンだけを抽出して作ります。
水溶き片栗粉のとろみも、デンプンの糊化の性質を利用したものです。
片栗粉を水に浸けて水を吸わせてから加熱するとデンプンが糊化します。糊化したデンプンはさらに水を吸って体積が増えドロドロの状態になるために、料理にとろみが付くというわけですね。
コーンスターチでも料理にとろみを付けられる!
では、コーンスターチで料理にとろみを付けることはできるのでしょうか?
コーンスターチとは、その名のとおりトウモロコシから取ったデンプンです。乾燥したトウモロコシをやわらかくしてから砕き、片栗粉と同じようにデンプンだけを抽出して作ります。
ですから、コーンスターチも片栗粉と同じように、水を加えて加熱すると糊化してドロドロの液体になります。つまり、コーンスターチを水分といっしょに加熱することで、料理にとろみを付けられるというわけですね。
コーンスターチのとろみは水溶き片栗粉の代用になるの?
とろみを付ける料理のレシピには、どれも水溶き片栗粉を使うように書かれていますよね。コーンスターチでも料理にとろみを付けることはできますが、はたして水溶き片栗粉の代用として使えるのでしょうか?
コーンスターチと片栗粉ではとろみの性質が異なる
コーンスターチは片栗粉と同じように、料理にとろみを付けるために使うことができます。しかし、コーンスターチで付けたとろみと片栗粉で付けたとろみでは、以下のようにとろみの性質が少し異なります。
1.とろみが付く温度の違い
片栗粉の糊化温度(とろみが付く温度)は56~66℃。それに対しコーンスターチの糊化温度は62~74℃です。
つまり、コーンスターチでとろみを付けるには、片栗粉でとろみを付ける場合よりも10℃くらい高い温度で、しっかりと加熱する必要があるということになりますね。
2.とろみの粘度や色の違い
片栗粉で付けたとろみは、コーンスターチで付けたとろみに比べると、粘性が高く糸も引きやすいという特徴があります。
ということは、コーンスターチで付けたとろみは、片栗粉で付けたとろみよりも粘度が低くサラサラとした状態になりやすいと言えますよね。
また、片栗粉を加熱して糊化させると透明のとろみが付きますが、コーンスターチはとろみを付けても透明にならず白濁したままという特徴もあります。
3.温度による硬さの変化の違い
片栗粉を混ぜた液体を加熱すると、60℃付近で一気にとろみが付き始めます。
そして、そのまま加熱を続けると、ある時点で突然粘度が下がりサラサラの液体状態に戻ってしまいます。専門用語で「ブレイクダウン」と言われる現象です。
それに対し、コーンスターチは65℃付近から少しずつ粘度が高くなり、時間をかけてゆっくりととろみが付いていきます。
そして、そのまま加熱を続けてもブレイクダウンが起こりにくいため、片栗粉のようにとろみがなくなることはありません。
また、片栗粉のとろみは温度が下がると粘度も下がり、とろみのない状態に戻ってしまいますが、コーンスターチ付けたとろみは温度が下がってもとろみがなくなることはありません。
性質に合わせてとろみの役割を使い分けることが理想!
コーンスターチと片栗粉は、どちらも料理にとろみを付けることができます。しかし、コーンスターチのとろみと片栗粉のとろみは性質が異なるため、それぞれのデンプンの性質に合わせて、使い分けるとよいでしょう。
コーンスターチのとろみが向く料理
コーンスターチで付けたとろみのいちばんの特徴は、温度が低くなっても粘度が下がらないということ。冷やしてもとろみが消えないので、冷たいソースや冷たいあんかけ料理を作る場合に重宝します。
とろみを一度付けた料理を温め直す必要がある場合も、コーンスターチを使うと便利です。
片栗粉のとろみは料理が冷めるとなくなってしまうので、温めす際に再度とろみを付け直す必要があります。しかし、コーンスターチで付けたとろみは冷めても残るので、そのまま温め直せばOKです。
また、コーンスターチで付けたとろみは片栗粉のとろみよりも粘度が低くなる特徴があるため、とろみを少しだけ付けたい料理にもコーンスターチの方が向いています。
風味が飛びやすい調味料を使う料理には向かない!
コーンスターチは片栗粉よりも糊化温度が10℃程高いので、コーンスターチでとろみを付けるには、片栗粉でとろみを付けるよりも高温で長めに加熱する必要があります。
ですから、コーンスターチは、加熱によって風味が飛びやすい調味料を使う料理のとろみ付けにはあまり向きません。代表的な調味料が酢です。
酢は加熱すればするほど風味が飛ぶので、甘酢あんやワインビネガーソースなど酢の風味や酸味を生かした料理のとろみ付けには、コーンスターチよりも片栗粉が方が向いています。
また、しっかりとした硬さのとろみを付けたい場合や透明なとろみに仕上げたい場合も、コーンスターチよりも片栗粉の方が向いています。
コーンスターチを使ったとろみの付け方や注意点を解説!
では、コーンスターチを使って料理のとろみを付ける場合、どのようにすればうまくできるのでしょうか?コーンスターチで上手にとろみを付けるポイントについて解説します。
コーンスターチを使ったとろみの付け方
コーンスターチを使ってとろみを付ける場合、基本的には片栗粉と同じ方法と考えて問題ありません。
とろみを付けたスープやあんかけの餡を作る場合や煮物にとろみを付ける場合は、水溶き片栗粉を使う場合と同様に、加熱したスープや煮汁に水で溶いたコーンスターチを加えます。
コーンスターチと水の割合は1:1が基本です。コーンスターチの糊化温度は片栗粉よりも高いので、コーンスターチを入れた後は水溶き片栗粉を入れる場合よりも少し長めに加熱する必要があります。
1分~1分半ほどしっかりと沸騰させましょう。
中華料理の炒め物や野菜を入れたあんかけなどは、野菜が煮込まれ過ぎるの防ぐために、液体調味料と混ぜて一気に入れるとよいでしょう。
分量は片栗粉と同量でいいの?
コーンスターチでとろみを付けると、片栗粉でとろみを付けた場合よりも粘度が低くなるという特徴があります。
そのため、水溶き片栗粉を使うレシピと同量のコーンスターチでとろみを付けると、できあがりがゆるくなってしまいます。
ですから、コーンスターチでとろみを付ける場合は、片栗粉よりも多めの量を入れるようにしましょう。ただし、単純にコーンスターチの量を増やすだけでは、ダマができやすくなります。
水で溶いた片栗粉でとろみを付ける場合は、コーンスターチと水の割合は変えずに、水溶きコーンスターチの量を増やすようにしましょう。調味料に混ぜる場合は、同じ割合の水を足すとよいですね。
コーンスターチがダマにならないための3つのポイント
とろみ付けをする際にいちばん多い失敗はダマができることですよね。コーンスターチでとろみを付ける時にダマができないようにするには、どうすればよいのでしょうか?ダマができにくいコツを伝授します。
1.溶く水の量を増やす
デンプンでとろみを付ける場合、デンプンと水の量は1:1が基本ですが、ダマが心配な場合はコーンスターチと水の割合を1:1.5~1:2くらいにするとよいでしょう。
水溶きコーンスターチの濃度を下げることでダマができにくくなります。
片栗粉は加熱しすぎるとブレイクダウンを起こしてとろみが消えてしまう恐れがありますが、コーンスターチならその心配はほとんどいりません。
長時間加熱しても粘度が下がりにくいので、薄めの水溶きコーンスターチを使い、水分を蒸発させて粘度を調整する方法がおすすめです。
2.水と混ぜてしばらく置く
デンプンをきれいに糊化させるためには、デンプンにしっかりと水を吸わせることが大切です。
ですから、コーンスターチと水を混ぜてすぐ使うのではなく、デンプンがたっぷりと吸水できるようにしばらく時間をおいてから使うようにしましょう。材料の下準備をする間に水に浸けておくとよいですね。
また、水ではなくお湯を使うと吸水と糊化が同時に起こってダマになってしまいます。必ず水で溶くようにしましょう。
3.火を止めてから入れる
作っている料理が沸騰している状態で水や液体調味料に混ぜたコーンスターチを入れると、デンプンが急激に加熱されるためダマができやすくなります。
ですから、とろみを付けるためにコーンスターチを入れる場合は、一旦火を止めてから入れるようにしましょう。
火を止めてコーンスターチを入れてよく混ぜたら、火を付けて再沸騰させます。加熱中は均一にとろみが付くまで、絶えずかき混ぜることも大切です。
コーンスターチでうまくとろみが付かない!原因は?
コーンスターチを使った場合にうまくとろみが付かない!という場合は、以下の2つの原因が考えられます。
1.コーンスターチの加熱不足
コーンスターチは片栗粉よりも糊化温度が高いため、片栗粉でとろみを付ける場合よりも高い温度でしっかりと加熱する必要があります。
加熱温度が低かったり加熱時間が足りなかったりすると、デンプンが完全に糊化されないのでしっかりとしたとろみが付きません。
ですから、コーンスターチを入れた後はとろみが出てきても加熱をやめずに、そのまま1分~1分半程度沸騰させるようにしましょう。
加熱時間が足りないとデンプンが完全に糊化されないため、生デンプン特有の臭みが出ることもあるので注意したいですね。
2.コーンスターチの量が足りない
コーンスターチで付けたとろみは、片栗粉を使った場合と比べて粘度が低くなるという特徴があります。
コーンスターチを入れてもとろみがあまり付いていないような場合は、入れるコーンスターチの量が少なかった可能性が高いです。
とろみが足りなかった場合は、水で溶いたコーンスターチを追加してしっかりと加熱することで、程よいとろみを付けられます。
こんな使い方も!コーンスターチでとろみを付ける簡単レシピ3選
コーンスターチは片栗粉と同じように料理のとろみを付けることができますが、コーンスターチの性質をうまく利用すると片栗粉でとろみを付けることが難しい料理も作れます。
コーンスターチのとろみの性質を生かせるレシピをいくつかご紹介しましょう。
冷たくてトローリ!冷製中華風コーンスープ
中華料理で出てくるコーンスープは、程よいとろみでコーンポタージュとはひと味違う味わいを楽しめますよね。片栗粉ではなくコーンスターチでとろみを付けると、冷製スープとしても楽しめます。
【材料】(4人分)
クリームコーン缶 1缶(410g)
水 400g
顆粒の鶏ガラスープの素 大さじ1
卵 2個
☆コーンスターチ 大さじ1
☆水 大さじ1.5
ごま油 小さじ2
塩またはしょうゆ 適宜
【作り方】
1.☆の分量で水溶きコーンスターチを作り、しばらく置いておく。
2.鍋にクリームコーン缶、水、鶏ガラスープの素を入れて火にかける。
3.沸騰したら一旦火を止めて、よく混ぜながら1の水溶きコーンスターチを少しずつ入れる。
4.再び火にかけて1分半ほど沸騰させたら、溶き卵を少しずつ入れ、卵が固まって浮き上がってくるまで加熱する。
5.仕上げにごま油を入れ、必要であれば塩かしょうゆで味を整える。
6.粗熱を取って冷蔵庫でよく冷やす。
【ポイント】
・卵を入れる際は、糸状に細く垂らしましょう。そして、卵を入れた後は、卵が固まって浮き上がってくるまでかき混ぜずに加熱を続けてください。
・冷蔵庫で数時間放置すると硬くなるので、冷やし過ぎないように注意しましょう。
夏に食べたい!夏野菜たっぷりの冷やしあんかけうどん
あんかけうどんといえば熱々で食べるイメージがありますが、コーンスターチでとろみを付けると、冷たいあんかけうどんも作れます。
あんかけにすることで麺に味が絡みやすくなるので、薄味であっさりと食べられますよ。暑い夏におすすめです。
【材料】(2人分)
冷凍うどん 2玉
だし汁 600cc
麺つゆ(3倍濃縮) 大さじ4~5
☆コーンスターチ 大さじ1.5
☆水 大さじ2
鶏ささみ 2本
酒 大さじ2
なす 2本
オクラ 8本
大葉 2枚
しょうが 少々
白ごま 少々
塩 適宜
【作り方】
1.☆を混ぜて水溶きコーンスターチを作っておく。
2.冷凍うどんを600wの電子レンジで1袋につき4分ほど加熱し、水で冷やしておく。
3.鍋にだし汁を沸騰させ麺つゆで味を付けたら、一旦火を止めて水溶きコーンスターチを入れ、かき混ぜながら1分半ほど火を通す。
4.必要であれば塩で味を整え、粗熱を取り冷蔵庫で冷たく冷やしておく。
5.ささみは筋を取り、酒と共に容器に入れてふんわりとラップをして、600wの電子レンジで3~4分加熱して冷ましておく。
6.なすはヘタを取って縦に4等分し、ふんわりとラップをして、600wの電子レンジで2分ほど加熱して冷ましておく。
7.オクラは下茹でをして、5~6mmの厚さの小口切りにしておく。
8.丼にうどんと具を盛り付けて、冷たく冷やしたあんかけのつゆをかけ、しょうが、大葉、白ごまを乗せる。
【ポイント】
・あんかけのつゆは冷たくすると味をやや感じにくくなります。熱いときよりも少しだけ味を濃いめに作るとよいでしょう。
・あんかけのつゆを冷蔵庫で長時間放置しておくと、硬くなりすぎるので注意しましょう。
混ぜるだけで超簡単!ふるふる食感のはちみつレモンゼリー
ゼリーを作る際に、ゼラチンを使わずにコーンスターチでとろみを付けて冷蔵庫でしっかりと冷やし固めると、ふるふるとした食感のゼリーを作れます。
【材料】(3~4人分)
コーンスターチ 20g
水 450cc
砂糖 20g
はちみつ 40g
レモン果汁 50cc
【作り方】
1.鍋にコーンスターチと砂糖を入れてよく混ぜ、水を加えて中火で加熱する。
2.とろみが付いてきたら火を止め、レモン汁を加えてしっかりと混ぜる。
3.2を型に流し、粗熱が取れたら冷蔵庫で2~3時間冷やし固める。
【ポイント】
・水、レモン汁、はちみつの代わりに100%のオレンジジュースを500cc入れると、フルーツゼリーになります。
まとめ:コーンスターチのとろみは片栗粉のとろみと性質が異なる!
片栗粉はじゃがいものデンプンであるのに対し、コーンスターチはトウモロコシのデンプンです。コーンスターチも片栗粉と同じように料理のとろみ付けに使えますが、同じデンプンでも性質が少し違います。
コーンスターチで付けるとろみは片栗粉よりもやわらかく、火を通し過ぎたり冷ましたりしてもとろみが消えることはありません。
コーンスターチと片栗粉、それぞれの性質を使い分けるとレパートリーも広がります。いろいろな料理のとろみ付けにコーンスターチを使ってみてくださいね。