日本は海に囲まれた島国なので、塩と言えば海水を煮詰めて作られるイメージがありますね。世界では山から採掘される岩塩が流通量の2/3を占めており、岩塩が盛んに取引されて日本にも輸入されています。
岩塩はどうやって作られたのでしょうか。この記事では岩塩のでき方や採掘の仕方、世界の有名な岩塩の鉱山や日本では岩塩が採れるかどうかなど詳しく解説します。
目次
岩塩のでき方って?
毎日の食卓で利用する塩に、岩塩を使っているご家庭も多いでしょう。岩塩はミネラルたっぷりで、食用の他バスソルトやそのままの形でインテリアにするなど様々な使い方があります。
日本で流通の多いのはヒマラヤの岩塩です。白やピンク、黒いものなど色も様々で、同じヒマラヤ産と言ってもいろいろの種類があります。
近年使う人の多くなってきた岩塩は、どうやって作られたのでしょうか。岩塩のでき方や採掘方法などを見ていきましょう。
岩塩が出来た理由
岩塩は海水が蒸発して結晶化したものです。もともと海だった場所が地殻変動で内陸に閉じ込められ、長い時間をかけて水分が蒸発し結晶となり固まったものと考えられています。
湖に川から少しずつミネラル分が流れ込み、塩分濃度が上がって徐々に干上がって結晶化した岩塩もあります。結晶化の過程で土中のミネラルが一緒に結晶化することで、様々な色に変化したりミネラルが豊富になったりしています。
岩塩の作り方や採掘方法
岩塩の採掘方法には二種類あります。一つは鉱石と同じように、地層を砕いて採掘されるもの。
比較的不純物が少ない岩塩層から採掘された岩塩はそのまま流通されますが、不純物の多い岩塩は一度水に溶かして不純物を取り除いてから流通されることがあります。
もう一つは岩塩層に水を流し込んで濃度の高い食塩水を作り、それを煮たり日光で乾燥させたりして再結晶化させて採掘する方法。
一度溶かした時点で岩塩では無いような気がしますが、この方法で採掘されたものも岩塩として流通しています。
色の違いは成分の違い
岩塩は結晶化する時に周りの土中にあるミネラル分を取り込むことがあり、世界中には様々な色の岩塩が存在します。主な色とその原因となる物質は以下の通りです。
・白や乳白色:細かい気泡や水分
・ピンク:鉄分やマンガン
・赤やローズ:鉄分
・グレーや黒:粘土や硫黄
・オレンジ色:塩化カリウム
・黄色:微量の鉄分や微量の塩化カリウム、微量の硫黄
このほか、青や緑、紫色の岩塩もあるそうです。いろいろな色の岩塩を集めるのも楽しそうですね。
世界の岩塩のでき方と有名な鉱山
岩塩はアメリカやヨーロッパ、アフリカやアジアなど、世界中で採掘されています。高い山や砂漠、湖が干上がった場所など実に様々な岩塩の産地があります。
日本で流通している岩塩で一番多いのは、パキスタンで掘られているヒマラヤ産の岩塩です。ピンクソルトなどの名前で売られているので、皆さんにもおなじみかもしれません。
ここからは世界で有名な岩塩の鉱山や産地について詳しく見ていきましょう。
岩塩の生産量世界一はアメリカ
世界の塩生産量第一位は中国ですが、岩塩だけの生産量で見るとアメリカが世界一です。アメリカには全土にいくつもの岩塩鉱山があり、ユタ州、オハイオ州、テキサス州などの岩塩が日本にも流通しています。
アメリカでは観光地としても有名な「デスバレー」に干上がった巨大な塩湖があり、「バッドウオーター」と呼ばれて人気の観光スポットになっています。
見渡す限りひび割れた岩塩に囲まれた塩の大地は、自然の驚異を人々に思い出させます。デスバレーは国立公園に指定されているため、デスバレー産の岩塩は採掘されていません。
四川料理を支えた中国の岩塩
中国は四川省の岩塩が日本でも流通しています。四川省の岩塩は世界的にも有名で、古来から塩の名産地として知られてきました。
地下約1kmの穴を掘り、岩塩層に水を入れて溶かして再結晶化して作られています。四川料理はこの岩塩に支えられていたのですね。
「中国 岩塩」で検索すると四川省に「岩塩山」という山がヒットします。この山から岩塩が採れるかどうかはわかりませんが、山に岩塩の名前が付くほど四川省では岩塩が大切にされているのでしょう。
イタリアには各地に岩塩の鉱山がある
イタリアでも岩塩は採掘されており、主な産地はシチリア、トスカーナ、カラプリアなどです。日本ではシチリアとトスカーナ地方の岩塩がネットでも販売されていて、1kg500円前後の買いやすい価格で取引されています。
イタリア国内で使われる塩は、95%が海水から作られた海塩が使われているそうです。岩塩は主に輸出の目的で採掘され、世界中に流通しています。
イタリア料理にイタリアの岩塩を使ったら、なんとなくおいしくなりそうな気がしますね。
ポーランドには岩塩坑内に宮殿が!
かつてポーランドでは、採掘される岩塩が国の重要な収入源でした。現在では世界中で岩塩が採掘されるようになったため昔ほどの規模ではなくなったものの、今でも岩塩の生産は続けられています。
ポーランドの岩塩で有名なのは、世界遺産に登録されている「ヴィエリチカ岩塩抗」です。岩塩鉱山の中に作られたまるで宮殿のような美しい観光スポットで、礼拝堂や食堂、運動場などの20の地下室があります。
中にはたくさんの岩塩から作られた彫刻があり、シャンデリアや階段、祭壇などもすべてが岩塩で作られています。これを作ったのは芸術家や建築家ではなく、鉱山で働く鉱夫が掘り出したものだそうです。
3.5kmの見学ルートには年間100万人以上の観光客が世界中から訪れ、中には喘息の治療のために長期滞在する人もいるとのことです。
砂漠の岩塩マリ共和国
マリ共和国の岩塩は、板状の形で掘り出されています。サハラ砂漠の真ん中にある「タウデニ村」の鉱床は、平らな地面を約3m掘ると岩塩の層がある珍しい岩塩抗です。
厚さ約20cmの薄い岩塩の層が広がっており、これを掘り出していきます。不純物の入っている部分をはぎ取って、大きさ1.2m×40cm、厚さ4cm~5cmほどの板状に形を整えます。
昔はサハラ砂漠の北では岩塩が採れ、南では金が採掘されていました。サハラ砂漠を縦断する交易は8世紀ごろから盛んにおこなわれ、北の岩塩と南の金は同じ重さで交換されていたと言います。
それほど塩は人間にとって貴重なのでしょう。日本ではほとんどタウデニ村の岩塩は流通しておらず、50gで1,000円程度の高価な値段で販売されています。
岩塩は日本にもある?でき方は?
世界中で掘り出されている岩塩ですが、日本で岩塩は採掘されていないのでしょうか。残念ながらいわゆる「岩塩抗」というものは、日本には存在しません。
けれど日本各地の海のない山の中で、塩の産出が行われていた歴史が存在しています。日本では塩の専売によって一時廃れていた山の塩が、近年復活して注目されているようです。
正確には岩塩と言えるかどうかはわかりませんが、日本の山で作られている「山塩」をご紹介します。
会津の山塩ってどんな塩?
「会津磐梯山(あいづばんだいさん)は宝の山よ」とは昔の民謡の歌詞ですが、磐梯山のふもとの大塩裏磐梯温泉で貴重な山塩が作られています。会津地方は福島県西部一帯の地域のことです。
山塩というのは、塩分濃度の濃い温泉水を煮詰めて作られた塩のことを言います。世界では岩塩層に水を入れて煮詰めて作られた岩塩もあるので、山塩も岩塩の一種と言えなくないかもしれません。
会津の山塩は弘仁年間(810~824年)に、弘法大師(空海)が岩を割って噴出した温泉が元になったと言われています。地層の中に閉じ込められた海水が地下の溶岩で温められて、海のない山の中にわき出したものです。
当時は海のない地方で貴重な塩源として珍重され、江戸時代までは塩づくりが盛んにおこなわれていたそうです。
温泉の泉質はナトリウムー塩化物強食塩泉で、成分は塩化ナトリウム約78%、カルシウムやマグネシウム、カリウムなどが含まれています。
会津の山塩は公式サイトからお取り寄せができ、袋入り30g432円~540円、ミル付きは1,296円~販売されています。
海が無い長野県で塩が採れる
長野県大鹿村にある鹿塩(かしお)温泉でも、山塩が作られています。
鹿塩温泉のある南アルプスの地下には、はるか昔に閉じ込められた海水の層が存在します。地熱で温められた海水が地上に湧き出ており、平安時代末期には「鹿塩」の名の荘園として既にあったようです。
鹿塩の山塩の歴史は、明治時代から始まります。岩塩層を発見しようと調査を重ねるも結局発見できず、代わりに塩分の濃い温泉水から山塩を作るようになりました。
現在では鹿塩温泉の「山塩館」で山塩が作られています。大量生産が出来ないため「幻の塩」と呼ばれ、山塩館や近くの塩の直売所に訪れた人だけが、鹿塩の山塩を買うことができます。価格は50g600円です。
【鹿塩温泉 湯元 山塩館】
住所:長野県下伊那郡大鹿村鹿塩
Tel:0265-39-1010
(受付時間 AM9:00~PM9:00)
まとめ~岩塩のでき方はロマンが溢れる歴史の宝庫
岩塩は世界中で採掘されていますが、そのでき方や採掘のされ方は場所によって様々。一つ一つの岩塩の産地を調べてみると、古い時代からのロマンあふれる歴史を垣間見ることができました。
世界の有名な岩塩を色々試してみるのも楽しいですね。日本にも正確には岩塩とは言えませんが、山で採れる貴重な山塩があることがわかりました。どんな味がするのか、ぜひ一度ご自分の舌で味わってみてくださいね。