日本一はどこ?わさびの生産量のランキングと名産地もご紹介!

高級なお寿司屋さんやお蕎麦屋さんで見かける生わさび。実はわさびは薬味としてすりおろすだけでなく、葉や茎を刻んで醤油漬けやわさび漬けにして食べられています。

日本のわさびってあまりスーパーでは見かけないけど、どこで作られているのかな。日本一の生産量のある都道府県ってどこなんだろう…。

わさびといえば練りわさびや粉わさびが頭に浮かびますね。日本で作られるわさびのうち茎わさびは細かく刻まれて、練りわさびの材料として使われることもあります。みなさんも知らないうちに食べているかもしれません。

 

この記事ではわさびの日本での生産量のランキングや、わさび栽培で有名な産地をご紹介します。

県別わさび生産量日本一は?

県別わさび生産量日本一は?

日本人の食卓におなじみのわさびは、大きく分けて2種類の栽培方法があります。「水わさび」は主に根を、「畑わさび」は主に茎や葉を収穫しています。

 

一般に知られているのは水わさびで作られた、芋のような根をすりおろして寿司や刺身の薬味に使う方法です。他にもわさびの茎や根は細かく刻んで、醤油漬けなどに加工されて流通しています。

 

では日本で作られるわさびの生産量はどこの県が多いのか、詳しく見ていきましょう。

わさび生産量県別ランキング一覧

農林水産省の「令和元年特用林産基礎資料」によると、令和元年(2019年)のわさびの生産量都道府県別ランキングは、以下のようになっています。

わさびの生産量 都道府県別ランキング

水わさびトン畑わさびトン合計トン
1位長野県780.6岩手県390.9長野県788.5
2位静岡県355.5静岡県131.2静岡県486.7
3位東京都33.0
島根県59.3岩手県411.5
4位岩手県20.6高知県56.8島根県67.1
5位宮崎県9.8北海道17.4高知県56.8
総生産量1251.0722.31973.3

(出典:農水省「令和元年特用林産基礎資料」)

水わさび、畑わさびを合わせた総合1位は長野県で、全国の生産量の約40%のシェア。2位は静岡県で3位は岩手県、このトップ3で全国の生産量の約85%を占めています。

 

平成30年(2018年)までは岩手県が2位で静岡県が3位でしたが、令和に入り順位が逆転しました。全体に少しずつ生産量が減っている中で岩手県の生産量の減少が大きく、前年の約3/4まで減ったことが原因と考えられます。

【堂々の1位!】長野県

わさびの生産量ランキング1位は長野県です。北アルプスの伏流水を利用した水わさびの栽培が盛んで、根わさびだけでなく茎や葉も積極的に加工しています

長野県内でも特にわさびの生産量が多い安曇野市内には、多くのわさび漬けのメーカーが軒を連ねています。北アルプスから湧き出るきれいな水は1年を通して13度前後を保ち、わさびの栽培に適した恵まれた産地となっています。

【惜しくも2位!】静岡県

わさびの生産量ランキング2位は、前年の3位からランクアップした静岡県です。静岡と言えばお茶のイメージですが、わさびの栽培も盛んです。静岡県はわさび栽培発祥の地と言われ、約400年前からわさびの生産がおこなわれていました。

 

実は静岡県はすりおろして使う根わさびの生産量だけで見ると、長野県が211tなのに対し静岡県が240tで全国1位になっています。

 

根わさびの生産量は全国で約490tですので、トップ2だけで92%を占めていることになります。また産出金額も静岡県がダントツの1位で全国の80%を占めており、静岡県のわさびが高級品として高値で取引されていることがうかがえます。

 

静岡のわさびは築地にも流通し知名度が高く、高級なお寿司屋さんなどで使われているのはほとんどが静岡産と言われています。

【僅差で3位!】岩手県

わさびの生産量ランキング3位は、僅差で岩手県でした。前年の調査までは2位でしたが、残念ながらランクダウンとなりました。

 

岩手県では遠野地区など一部の地域で水わさびの栽培が行われているものの、畑わさびの栽培が圧倒的に多いのが特徴です。「畑」の名前はついていますが、栽培されているのは山林の中が多いそうです。おもしろいですね。

 

岩手県は以前はその冷涼な気候がわさびの栽培に向いていましたが、近年地球温暖化の影響で生産量が減少傾向にあります。これについては現在のところ解決策がなく、様々な工夫で対応しているようです。

日本ではわさびの生産量が減少している?

わさびは近年海外でも日本食のブームなどにより、世界的に需要が高まっている植物です。ところが日本での生産量は減少しています。どうしてでしょう。

 

1つの理由は生産者の高齢化で、後継者がいないためにわさびの栽培をやめる生産者が多いからです。もう一つの理由は近年問題になっている地球温暖化で、わさび田の水温上昇や干ばつ傾向の深刻化などによって年々生産量が減少しています。

 

現在でも一般の人はなかなかお目にかかれないわさびは、今後ますます高価で手の出せない食べ物になっていくかもしれません。

わさびの生産量の多い名産地

わさびの生産量の多い名産地

【水わさび生産量日本一】長野県安曇野市

長野県はわさびの生産量が日本一と言われており、その90%以上は安曇野で栽培されています。わさびは雑交配しやすく、厳密な品種の区別はあまりされていません。

安曇野で栽培されているわさびは「安曇野わさび」と呼ばれ、味はまろやかなコクがあり、さらっとした口当たりです。

 

安曇野のわさび栽培は大正時代に始まりました。もともとナシ畑の水はけを良くするために作られた水路で、わさびを栽培したのだそうです。

関東大震災で当時主要な産地だった静岡県などが被害を受けたことがきっかけで注目され、ナシ畑からわさび田へと変わっていきました。

 

安曇野は「扇状地」と言われる地形をしており、北アルプスからの伏流水が集まって湧き出してきます。この伏流水は一度地下を通って湧き出てくるため、夏でも冬でも1年中13度前後の水温を保っています。

 

安曇野で作られているわさびはほとんどが地元で加工され、市場にそのままの生わさびが出回ることはあまりありません。

【畑わさび生産量日本一】岩手県岩泉町

全体のわさび生産量では3位だった岩手県ですが、畑わさびの生産量は堂々の全国1位。岩手県ではわさびのほとんどが岩泉町で栽培されています。

 

岩泉のわさびは水わさびと区別して畑わさびと呼ばれているものの、栽培方法が違うだけで品種は水わさびと同じものが使われているそうです。土にわさびを植え、主に葉や茎を収穫しています。

 

畑わさびの栽培が岩泉で始まったのは昭和59年(1984年)ごろと言われています。はじめは水わさびの栽培に取り組んでいましたが、川の増水などでわさび田が流され定着しませんでした。

試験的に行った林間での栽培が良好だったことから、本格的な畑わさびの栽培が行われるようになったと言います。

【わさび栽培発祥の地】静岡県有東木(うとうぎ)

わさびの全体の生産量では長野県に1位を譲った静岡県ですが、いわゆる「生わさび」と呼ばれる高級なわさびは、ほとんどが静岡産のものです。

静岡のわさびは身がギュッと締まっており、すりおろすとねっとりとした濃厚な味と豊かな香りがするのが特徴です。

 

静岡県有東木地区は「わさび発祥の地」と言われ、江戸時代から400年続くわさび田もあるそうです。有東木地区の通称「わさび山」と呼ばれる沸谷山(ぶっこくさん)には、わさびの巨大な自生地があります。

 

この自生したわさびを植えたのが、わさび栽培の最初だと言われています。江戸時代に徳川家康がわさびのあまりのおいしさに、有東木からわさびを持ち出すことを禁じた言い伝えが残っています。

【奥多摩わさび】東京都奥多摩町

東京にわさび田があるって知っていましたか?少し意外かもしれませんが、東京都は水わさびの生産量全国3位です。

奥多摩町のわさびは「奥多摩わさび」と呼ばれて人気があり、昭和40年代までは東京中央卸売市場の入荷量が静岡に次いで2位でした。

 

奥多摩わさびの味は辛味の強さと切れの良さが特徴で、豊かな香りと風味があります。江戸時代後期には既に栽培されていたとされ、幕府にも献上されていたようです。

一時生産者の高齢化によって生産量が減ったものの、最近ではさまざまなイベントを行って後継者の育成努力をしています。

【青いダイヤ】島根県匹見町(ひきみちょう)

島根県はかつて「東の静岡、西の島根」と呼ばれるほどの、日本の二大わさび産地でした。島根県のわさびは匹見町の「匹見わさび」が有名で、全国に名を轟かしていました。

味は澄んだ辛味と甘み、豊かな香りと粘り強い食感があり、「わさびといえば匹見産」と言われていた時期もあったそうです。

 

品質の良さから「青いダイヤ」と呼ばれ、最盛期の昭和20年代には高額で取引されていました。ところが生産者の高齢化などからわさび田は放棄されるようになり、生産量も激減し「幻のわさび」と呼ばれるようになったと言います。

 

近年この「匹見わさび」の栽培にUIターンの人たちが取り組み、荒廃したわさび田を復活させる試みが始まっています。

まとめ~減りつつあるわさび生産量のカギは若者が握っている

日本人に身近なわさびは、古来日本の山や渓流沿いに自生していた日本固有の植物です。日本では長野、静岡、岩手がその主な産地とされ、全体の85%を占めています。

 

現在では海外での和食ブームでますますその存在感を増しているわさびですが、残念ながら日本のわさび生産量は減少の一途をたどっているようです。

 

今後さらに需要の見込まれるわさびは、若者による取り組みが生産量の増加のカギを握っています。Uターンや新規参入の若者たちを応援するイベントや、参入しやすい環境が今後ますます必要になってくるでしょう。

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