本場名古屋で味噌煮込みうどんを食べたことはありますか?
本場の味噌煮込みうどんを初めて食べた人は、味噌煮込みうどんの麺が一般的なうどんよりもはるかにかたいことに驚く人が多いようです。
名古屋の味噌煮込みうどんの麺はどうしてかたいのでしょうか?また、かたい麺が口に合わない場合に、柔らかくする方法はあるのでしょうか?
目次
かたい麺が特徴?!味噌煮込みうどんってどういう料理なの?
名古屋めしで有名な味噌煮込みうどん。単に味噌で煮込んだうどん、というわけではないのです。麺がかたいと言われていますが、名古屋の味噌煮込みうどんはどのような特徴の料理なのでしょうか?
名古屋の味噌煮込みうどんはかたい麺とスープに特徴あり!
名古屋の味噌煮込みうどんの最大の特徴と言えば、濃厚でコクのある豆味噌の汁で、しっかりと噛み応えのあるかたい麺を煮込んでいること。だしは、ムロアジや鰹などの魚介のだしや鶏ガラスープが使われています。
豆味噌とは、東海地方特有の味噌で、一般的な味噌のように米を使わずに豆と塩だけで仕込んだ味噌です。赤味噌とも呼ばれていて、八丁味噌が有名ですね。甘味が少なく渋味や苦味があり、塩分は一般的な味噌よりも少なめです。
そして、濃厚な味噌のスープで煮込まれたうどんは、食べ慣れていない人が食べると、「もしかして、生煮え?!」と思ってしまうほどかたいのが特徴。
一般的なうどんとはまったく異なる食感に、違和感を覚える人も多いようです。
味噌煮込みうどんは「ほうとう」に由来する?
味噌煮込みうどんの発祥については諸説ありますが、山梨県の郷土料理「ほうとう」が起源という説が有力です。
ほうとうとは、小麦粉と水で作った平たい麺を、野菜やきのこなどといっしょに味噌ベースのだしで煮込んだもの。栄養たっぷりで腹持ちが良く身体も温まるため、武田信玄が戦の陣中食として好んで食べていたそうです。
そして、武田氏滅亡後に徳川家についた武士によって、ほうとうが尾張に伝えられたと言われています。
尾張や三河ではすでに味噌文化が定着していたためにほうとうがすんなりと受け入れられ、豆味噌を使って独自にアレンジしたのが、味噌煮込みうどんの由来というわけですね。
さらに、江戸時代になって工業的に豆味噌が生産されるようになると、味噌煮込みうどんは家庭料理として庶民にも浸透していったようです。
原型と言われる『太田屋』の味噌煮込みうどん
家庭料理であった味噌煮込みうどんがお店で提供されるようになったのは、明治時代初期のこと。日本有数の織物産地である尾張一宮の女工たちが、外で昼食を取るようになったためと言われています。
一宮市にある「太田屋本店」は、当時から営業を続けている味噌煮込みうどんの老舗です。
お店によると、記録がないのではっきりとわからないそうですが、昔ながらの方法で作っているという太田屋本店の味噌煮込みうどんが、現在の味噌煮込みうどんの原型ではないかと噂されています。
土鍋で提供される名古屋の味噌煮込みうどんと違い、太田屋本店の味噌煮込みうどんは丼で提供されるもの。
小麦粉と水で作った乾麺を時間をかけてじっくりと煮込む昔ながらの作り方で、麺は名古屋のかたい味噌煮込みうどんと比べるとかなり柔らかめです。
住所 愛知県一宮市大宮1-2-2
電話 0586-72-3136
営業時間 11:00~20:00
定休日 毎週5、15、25日(日・祝日の場合は翌日に振り替え)
かたい味噌煮込みうどんは山本屋総本屋が発祥?
明治時代にお店で出されていた味噌煮込みうどんがかたい麺ではなかったとすると、現在の麺のかたい味噌煮込みうどんはいつ頃から食べられていたのでしょうか?
明治時代後期になると、一宮で定着したお店で食べる味噌煮込みうどんのスタイルが名古屋にも伝えられ、名古屋でも味噌煮込みうどんを提供する店が増えてきたそうです。
そして、一説によると、現在の味噌煮込みうどんの土鍋で提供するスタイルや、独特のコシのあるかたくて太い麺を開発し、名古屋に広く定着させたのは、『山本屋総本屋』だと言われています。
※ 最近では冷凍品が通販でも販売されているようです。店舗で食べると1食1000円を超えますので、冷凍品の方がリーズナブルかもしれませんね。
味噌煮込みうどんの麺がかたい理由に迫ってみよう!
山本屋総本屋の公式サイトによると、独特のコシの太い麺にたどり着くまで、研究に研究、改良に改良を重ねたそうです。では、なぜ、味噌煮込みうどんの麺はかたいのでしょうか?
カギとなるのは味噌煮込みうどんの作り方
名古屋の味噌煮込みうどんの麺は、なぜあれ程までかたいのか?その理由のカギとなるのが、味噌煮込みうどんの作り方です。
一般的なうどんは、生うどんを下茹でし、よく洗ってから調理を行います。鍋焼きうどんや釜揚げうどん、鍋のシメにうどんを入れる場合も同じです。
それに対し、名古屋の味噌煮込みうどんは、味噌で味付けをしたスープの中に生のうどんを下茹でせずに生麺のまま入れて、煮込んでいくのが特徴です。
生の麺を下茹でせずに使うので、味噌煮込みうどんの麺は一般的なうどんとは違い、特殊な作り方をしています。
味噌煮込みうどんの麺は小麦粉と水だけで作る
一般的なうどんは、もちもちとした弾力を出すために1~3%(讃岐うどんは3~5%)程度の塩を加えます。そして、うどんの生麺を下茹ですると、生麺に含まれる塩分の70~80%が茹で汁の中に溶け出します。
一般的なうどんの場合、麺が茹で上がったら茹で汁はすべて捨てるので、溶け出した塩分が料理中に入ることはありません。
しかし、味噌煮込みうどんは生の麺をそのままスープで煮込むため、塩入りのうどんの生麺を使うと、塩分がスープの中に溶け出してしまいスープが塩辛くなってしまいます。
そのため、味噌煮込みうどんの麺は、塩を使わずに小麦粉と水だけで作られているのです。
塩を使わないうどんは他の地域にもあるけど…
味噌煮込みうどんの原型と言われている山梨の「ほうとう」をはじめ、讃岐の「打ち込みうどん」、群馬の「おっきりこみ」など、塩を使わずに小麦粉と水だけで作ったうどんを使用している郷土料理は他にもいくつか存在します。
これらの共通点はすべて、生麺をスープの中にそのまま入れて煮込むこと。スープが塩辛くなってしまわないように、塩を使わないうどんを入れて煮込むというわけですね。
しかし、ほうとうも、打ち込みうどんも、おっきりこみも、麺がかたいということはなく、もちもちとした食感です。では、なぜ味噌煮込みうどんの麺だけが、あれ程までにかたいのでしょうか?
もうひとつのカギは濃厚な味噌スープにあり!
他の煮込み麺料理のうどんはもちもちとしているのに、名古屋の味噌煮込みうどんの麺だけが、生煮えかと思うくらいかたい。その最大の理由は、独特の濃厚な味噌スープにあります。
山本屋総本屋が、研究に研究を重ねて開発したという味噌煮込みうどんは、小麦粉と水だけで作った太いうどんを生のままスープに投入し、短時間に強火で一気に煮込むのがポイント。
こうすることで、塩を使っていないうどんの麺が濃厚な味噌のスープとうまく絡んで、コシの強い独特の食感を生み出すのだそうです。
また、スープが濃厚な分普通のうどんよりも熱く、その上、土鍋で提供されるのでなかなか冷めません。
冷めにくいとうどんも延びやすくなるため、食べ終わりの頃にうどんが柔らかくなりすぎないように、食感の変化も考慮されているようですね。
かたい麺が苦手!味噌煮込みうどんをおいしく食べる方法はあるの?
名古屋の味噌煮込みうどんの特徴的なかたい麺が苦手!という人は案外多いようです。かたい麺が苦手な人が味噌煮込みうどんをおいしく食べるにはどのようにすればよいのでしょうか?
味噌煮込みうどんがかたい場合の対処法
味噌煮込みうどんが口に合わないという人は、通常のうどんよりも麺がかなりかたいのが苦手だと思っている人が多いようですね。
実際に、味噌煮込みうどんの専門店では、味噌煮込みうどんを食べ慣れていない人からの「麺が生煮えだ」というクレームも少なくないようです。
山本屋総本屋や山本屋本店など、店によって味噌煮込みうどんの麺がとてもかたいのは、その店ならではの大きな特徴です。
しかし、かたい麺がどうしても苦手な場合は、「麺を柔らかめで」とお願いすると対応してくれる店も多いようです。
そんなお願いをする勇気がない!という人は、少し時間をおいてゆっくり食べましょう。時間を置いて麺が延びるとだんだん柔らかくなってきますよ。
かたくない味噌煮込みうどんを食べられる店をご紹介!
山本屋総本屋や山本屋本店など、かたい麺が特徴の味噌煮込みうどんの店は多いです。
ですがその一方で、先ほどご紹介した味噌煮込みうどんの原型と言われる「太田屋本店」以外にも、かたくない味噌煮込みうどんを食べられる店があります。
ここからは、柔らかめの味噌煮込みうどんが食べられる店をいくつかご紹介しましょう。
角丸(かどまる)
名古屋の中心地、久屋大通近くに店を構える「角丸」は、1926年(大正15年)創業の老舗。
創業当時から変わらず細めの角打ち麺を使用しているのが特徴です。なめらかな舌触りの麺は程よいコシがあり、味噌がしみ込んだもちもちの食感を味わえます。
スープは、ムロアジと鰹の混合だしをベースに2種類の赤味噌と白味噌をブレンド。赤味噌独特の渋みや苦味が控えめなので、赤味噌が苦手な人でも食べやすいと評判です。
住所 愛知県名古屋市東区泉1-18-33
電話 052-971-2068
営業時間 【月~金】 11:00~19:30 【土】 11:00~14:00
定休日 日曜、祝日
まことや
名古屋市の郊外、昭和区壇渓通に店を構える「まことや」は、地元名古屋の人のみならず、名古屋以外からも多くの人が訪れる人気店。1974年(昭和49年)の開業以来、うどん一筋にこだわっている店です。
まことやの味噌煮込みうどんは、太めでやや縮れた平打ち麺。コシはあるけどかたすぎず、もちもちとした食感を楽しめます。
いちばんおいしい状態で食べられるように、毎朝手打ちで麺を打ち、注文が通ってから切り分けるというこだわりようです。
また、スープは鰹節にアジとサバを混ぜただしに、渋味の少ない2種類の豆味噌をブレンド。濃厚な味噌の風味とともに、魚介のだしをしっかりと感じられるスープです。
住所 愛知県名古屋市昭和区壇渓通4-14
電話 052-841-8677
営業時間 11:00~20:30
定休日 金曜
大正庵釜春 本店
八丁味噌の本場、岡崎市にある明治時代中期創業の手打ちうどんの名店です。
大正庵釜春のうどんは、配合にこだわったオリジナル小麦粉を使用。味噌煮込みうどんに使用するうどんは、煮崩れしないように、名物の「元祖釜揚げうどん」とは異なる専用の麺を別に打っているそうです。
大正庵釜春の味噌煮込みうどんのポイントは、本場の八丁味噌を使っていること。八丁味噌特有の濃厚なコクと芳醇なだしの効いた本場の味噌煮込みうどんを味わえます。
通常の味噌煮込みうどんの麺は固めですが、柔らかめもオーダーできます。メニューに明記してあるので、注文しやすいのはうれしいですね。
住所 愛知県岡崎市中岡崎町6-9
電話 0564-21-0517
営業時間 11:00~21:30 (L.O.21:00)
定休日 不定休
まとめ:味噌煮込みうどんはかたい!苦手なら柔らかいうどんもあり!
味噌煮込みうどんの麺と同じように、塩を使わずに小麦粉と水だけの麺を使った煮込みうどんは全国にいくつかありますが、麺が太くてかたいのは名古屋の味噌煮込みうどんだけ。
生煮えと間違えるくらいかたい麺は、名古屋特有のものと言えますね。
ですが、味噌煮込みうどんのかたい麺がどうしても苦手だという人は、無理をしないで、柔らかく作ってもらうようにお店にお願いしてみましょう。
最初から柔らかい味噌煮込みうどんを提供している店もあるので、麺がかたいからと敬遠せずに、是非、味噌煮込みうどんを楽しんでみてくださいね。